MENU

土地家屋調査士のメリット・デメリット|資格取得の魅力と課題

土地家屋調査士のメリット・デメリットについて知りたいあなたへ。「資格取得を目指すべきか」という疑問は、メリットとデメリットの両面を正しく理解することで解決できます。本記事では、土地家屋調査士の独占業務や高収入の可能性といったメリット、体力面や休日対応といったデメリット、そして資格取得を判断する際の重要なポイントについて、実際のデータを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、土地家屋調査士としてのキャリアが自分に合っているか、具体的な判断材料を得ることができるでしょう。

この記事を読むとわかること

  • 土地家屋調査士の4つの主要なメリット(独占業務・高収入・働き方・将来性)
  • 土地家屋調査士の4つの主要なデメリット(体力面・勤務時間・景気変動・試験難易度)
  • メリット・デメリットを踏まえた資格取得の判断基準
  • 土地家屋調査士に向いている人の特徴

押さえておきたい3つのポイント

  1. 独占業務と安定需要:土地家屋調査士は表示に関する登記の独占業務を持ち、法律で守られた専門職として安定した需要があります。AIに代替されにくい専門性の高さも大きな魅力です。
  2. 高収入と体力のトレードオフ:独立開業で年収1000万円以上も目指せる一方、天候に左右される屋外作業や測量機材の運搬など、体力的な負担が伴います。収入面のメリットと体力面のデメリットのバランスを理解することが重要です。
  3. 試験難易度と将来性:合格率約9%の難関資格ですが、高齢化社会における相続案件の増加など、将来性は高い職業です。資格取得の難しさを超える価値があるかを見極めることが大切です。

土地家屋調査士を一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら

目次

土地家屋調査士のメリット・デメリットとは

土地家屋調査士の資格取得を検討する際、メリットとデメリットの両面を正しく理解することが非常に重要です。この資格には独占業務や高収入といった魅力的なメリットがある一方、体力面や勤務時間の柔軟性といったデメリットも存在します。ここでは、土地家屋調査士として働く実態を踏まえながら、資格取得を判断するために知っておくべき基本的な情報を解説します。

土地家屋調査士の資格取得を検討する前に知るべきこと

土地家屋調査士は、不動産の物理的状況を正確に調査し、登記に反映させる専門職です。資格取得を検討する前に、この職業の特性を理解しておく必要があります。

まず、土地家屋調査士は国家資格であり、合格率約9%という難関試験を突破する必要があります。試験には1,000〜1,500時間の勉強時間が必要とされ、働きながら取得を目指す場合は1〜2年の学習期間を覚悟しなければなりません。

一方で、資格取得後は表示に関する登記という独占業務を持つため、安定した需要が見込めます。特に高齢化社会において相続案件が増加しており、土地の境界確定や分筆登記のニーズは高まっています。

収入面では、勤務調査士の平均年収が500〜600万円、独立開業した場合は年収1,000万円以上も目指せる可能性があります。しかし、その実現には専門知識だけでなく、測量作業に必要な体力や、顧客対応のコミュニケーション能力も求められます。

土地家屋調査士とはの記事では、資格の基本情報や仕事内容について詳しく解説していますので、まずは職業全体の理解を深めることをおすすめします。

土地家屋調査士の良い面と課題の両面を理解する重要性

資格取得を判断する際、メリットだけでなくデメリットも正直に理解することが、後悔しないキャリア選択につながります。

土地家屋調査士の良い面としては、独占業務による安定性、高収入の可能性、内業と外業のバランスの良さ、社会貢献性の高さなどが挙げられます。法律で守られた業務範囲を持つため、競合が限定的で、専門性を活かした長期的なキャリア形成が可能です。

一方、課題としては、屋外作業による体力的負担、休日出勤を含む柔軟な勤務時間、不動産市場の景気変動による影響、そして試験の難易度の高さがあります。特に独立開業を目指す場合は、技術力に加えて営業力や経営センスも必要となります。

これらの良い面と課題を総合的に判断し、自分の適性や価値観に合っているかを見極めることが重要です。例えば、デスクワーク中心の仕事を好む人にとっては屋外作業が苦痛となる可能性がありますが、現場に出て動き回ることが好きな人にとっては大きな魅力となります。

また、収入の安定性を重視するか、独立開業による高収入を目指すかによっても、デメリットの受け止め方が変わってきます。勤務調査士として働く場合は比較的安定した収入が見込めますが、独立開業の場合は景気変動の影響を直接受けることになります。

土地家屋調査士として働く実態

土地家屋調査士の日常業務は、デスクワークと現場作業の両方で構成されています。この二つのバランスが、この職業の大きな特徴と言えるでしょう。

現場作業では、測量機器を使った土地の測量、境界標の設置、境界立会いなどを行います。夏場は暑さ、冬場は寒さとの戦いとなり、天候によっては作業が中止になることもあります。測量機材の運搬や長時間の移動も日常的に発生し、一定の体力が求められます。

デスクワークでは、測量データの処理、図面の作成、登記申請書類の作成などを行います。CADソフトを使った精密な作図作業や、法律に基づいた書類作成には高度な専門知識が必要です。近年はデジタル技術の導入が進み、効率的な業務処理が可能になっています。

勤務時間については、境界立会いは土地所有者全員の立ち会いが必要なため、平日に時間が取れない顧客に合わせて土日に対応することも少なくありません。そのため、完全週休二日制とはいかないケースが多く、プライベートの時間確保が課題となることもあります。

仕事量は不動産市場の動向に影響を受けやすく、繁忙期と閑散期の差が明確です。相続税の申告期限前や、年度末の不動産取引が活発になる時期は多忙になる傾向があります。独立開業の場合は、この波をどう乗り切るかが経営の安定につながります。

土地家屋調査士のメリット①:独占業務で需要が安定している

土地家屋調査士の最大のメリットの一つは、法律で守られた独占業務を持つことです。この独占業務により、安定した需要と競争優位性が確保されています。ここでは、土地家屋調査士が持つ独占業務の内容と、なぜ仕事がなくならないのか、そしてAI時代においても専門性が保たれる理由について詳しく解説します。

土地家屋調査士は表示に関する登記の独占業務を持つ

土地家屋調査士は、不動産登記法に基づき「表示に関する登記」の申請代理業務を独占的に行うことができます。この独占業務が、土地家屋調査士の職業的地位を確固たるものにしています。

表示に関する登記とは、土地や建物の物理的状況(所在、地番、地目、地積、構造など)を登記簿に記録する手続きのことです。具体的には、土地の分筆登記、合筆登記、地目変更登記、建物の表題登記、滅失登記などが該当します。

これらの登記申請は、土地家屋調査士または土地所有者本人しか行うことができません。司法書士や行政書士など、他の士業であっても表示登記の申請代理はできないのです。この法的な独占性が、土地家屋調査士の需要を支える基盤となっています。

特に重要なのは、不動産取引や相続、開発行為など、様々な場面で表示登記が必要となることです。土地を分割して売却する場合の分筆登記、新築建物の表題登記、相続に伴う土地の境界確定など、不動産に関する多くの手続きで土地家屋調査士の専門知識が求められます。

また、境界確定測量も実質的に土地家屋調査士が担う業務となっています。土地の売買や相続において境界を明確にすることは必須であり、この業務需要が途切れることはありません。

法律で守られた業務範囲で仕事がなくならない

土地家屋調査士の仕事がなくならない理由は、法律による独占業務の保護に加え、社会的なニーズの継続性にあります。

まず、日本の不動産登記制度は土地と建物を別個の不動産として扱うという世界的にも特殊な制度を採用しています。この制度が続く限り、表示登記の需要は確実に存在し続けます。登記制度の根幹に関わる業務であるため、制度変更によって業務がなくなる可能性は極めて低いと言えます。

次に、高齢化社会における相続案件の増加が、土地家屋調査士の需要を押し上げています。2025年以降、団塊の世代の相続が本格化し、土地の境界確定や分筆のニーズが急増すると予測されています。特に、境界が不明確な土地では、相続前に境界を確定させる必要があり、土地家屋調査士の役割が重要になります。

また、都市開発や土地の有効活用も継続的な需要源です。古い建物を取り壊して新築する場合の建物表題登記、大規模開発に伴う土地の分筆、農地転用に伴う地目変更など、様々な場面で土地家屋調査士の専門知識が必要とされます。

さらに、所有者不明土地問題への対応として、政府は境界の明確化を推進しています。2023年には相続登記の義務化が始まり、これに伴い境界確定のニーズも高まっています。このような政策的な後押しも、土地家屋調査士の需要を支える要因となっています。

競合の面でも、独占業務であるため新規参入は資格取得者に限られます。毎年の合格者数は約400〜500名程度であり、急激な供給増加は起こりにくい構造になっています。

AIに代替されにくい専門性の高さ

AI技術の進化により多くの職業が自動化の影響を受けていますが、土地家屋調査士の業務はAIに代替されにくい特性を持っています。

まず、境界確定業務には人間の判断と交渉能力が不可欠です。土地の境界を確定する際には、隣接地所有者との合意形成が必要であり、過去の経緯や現地の状況を総合的に判断する必要があります。時には感情的な対立が生じることもあり、これらを調整するには高度なコミュニケーション能力と経験が求められます。

測量技術自体はデジタル化が進んでいますが、それは業務効率を向上させる道具であり、測量結果の法的解釈や境界の判断は専門家である土地家屋調査士が行います。GPSやドローンを使った最新の測量技術を活用しながらも、最終的な判断には人間の専門知識と経験が必要です。

また、現地調査には複雑な状況判断が伴います。境界標が見つからない場合の推定、古い図面と現況の不一致への対応、地形の特殊性を考慮した測量など、マニュアル化できない判断が日常的に発生します。これらはAIが学習データから判断することが難しい領域です。

法律知識と実務経験の組み合わせも重要です。不動産登記法、民法、測量法などの法律知識を実際の現場に適用する能力は、長年の経験によって培われます。法律の解釈は時に複雑で、個別のケースに応じた柔軟な対応が求められます。

むしろ、AI技術やデジタルツールは土地家屋調査士の業務を効率化し、より高度な判断業務に集中できる環境を作り出しています。3Dレーザースキャナーやドローン測量などの技術を使いこなすことで、調査の精度と速度が向上し、付加価値の高いサービスを提供できるようになっています。

土地家屋調査士の独占業務に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士とは?資格の仕事内容・試験制度・取得メリットを徹底解説

土地家屋調査士の仕事内容に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の仕事内容とは?業務範囲・働き方・キャリアパスを詳しく解説

土地家屋調査士のメリット②:高収入・独立開業が可能

土地家屋調査士のもう一つの大きなメリットは、高収入を得られる可能性と独立開業の道が開かれていることです。専門性の高い独占業務を持つことから、スキルと経験に応じて着実に収入を増やすことができます。ここでは、土地家屋調査士の収入実態と、独立開業による収入アップの可能性について詳しく見ていきます。

土地家屋調査士の平均年収は500-600万円

土地家屋調査士として勤務する場合、平均年収は500〜600万円程度となっています。これは日本の平均年収と比較してやや高い水準であり、専門職としての価値が反映されています。

勤務調査士の給与体系は、勤務先の事務所規模や地域によって異なります。大手の調査士法人では、新人でも年収400万円前後からスタートし、経験を積むことで600〜800万円に到達するケースが多く見られます。中小規模の個人事務所では、初任給はやや低めですが、実務経験を積んで独立する際の技術を学べるメリットがあります。

年齢別に見ると、30代で500〜600万円、40代で600〜700万円、50代で700〜800万円程度が一般的な水準です。経験年数に応じて測量技術や法律知識が蓄積され、複雑な案件にも対応できるようになることで、収入も着実に上昇していきます。

地域差も収入に影響します。首都圏や大都市圏では案件数が多く、単価も高めに設定されているため、年収は全国平均を上回る傾向にあります。一方、地方では案件単価は低めですが、生活費も抑えられるため、実質的な生活水準では大きな差がないケースもあります。

また、勤務調査士の場合は安定した収入が得られる点が魅力です。毎月の給与が保証され、社会保険も完備されているため、生活設計が立てやすいというメリットがあります。独立開業のリスクを避けたい方や、技術を学びながら安定収入を得たい方には、勤務調査士という選択肢が適しています。

独立開業で年収1000万円以上も目指せる

土地家屋調査士の大きな魅力の一つが、独立開業による高収入の可能性です。実力次第で年収1,000万円以上を目指すことができ、中には年収2,000万円を超える調査士も存在します。

独立開業の収入は、受注する案件の数と単価によって決まります。一般的な業務単価の目安として、境界確定測量で30〜80万円、建物表題登記で8〜15万円、土地分筆登記で50〜100万円程度となっています。これらの案件を月に何件こなせるかが収入を左右します。

年収1,000万円を達成するためには、月間売上で約100万円(年間1,200万円から経費を差し引いて約1,000万円の所得)が必要です。例えば、境界確定測量を月2件(単価60万円)と建物表題登記を月4件(単価10万円)受注できれば、月間売上120万円を確保できる計算になります。

開業後の収入推移は、一般的に以下のようなパターンをたどります。開業1〜2年目は顧客開拓期間で年収400〜600万円程度、3〜5年目に安定期に入り年収700〜1,000万円、6年目以降は実績と信頼が蓄積され年収1,000万円以上も視野に入ってきます。

高収入を実現するポイントは、専門分野の確立です。相続案件に強い、開発案件に特化している、特殊な測量技術を持っているなど、独自の強みを持つことで高単価の案件を受注しやすくなります。また、司法書士や不動産業者との連携により、継続的な案件紹介を受けられる体制を構築することも重要です。

土地家屋調査士の年収については、開業・勤務別の詳細な収入分析を別記事で解説していますので、収入面についてさらに詳しく知りたい方はご覧ください。

スキルに応じて着実に収入アップできる

土地家屋調査士は、スキルと経験の向上に比例して収入を増やせる職業です。資格取得後も継続的に学び、専門性を高めることで、確実なキャリアアップが可能です。

測量技術のスキルアップは、直接的な収入増につながります。基本的な測量だけでなく、3Dレーザースキャナーやドローンを使った最新の測量技術を習得することで、大規模案件や高単価案件を受注できるようになります。これらの技術は習得に時間がかかりますが、一度身につければ競合との差別化要因となります。

法律知識の深化も重要です。民法、不動産登記法、測量法などの理解を深めることで、複雑な案件にも対応できるようになります。特に相続案件では、相続法の知識と測量技術を組み合わせた総合的な提案ができる調査士は、高い評価を得られます。

顧客対応力の向上も収入に直結します。境界立会いでは利害関係者との調整が必要となるため、コミュニケーション能力と問題解決能力が求められます。これらのスキルが高い調査士は、難易度の高い案件でも円滑に進められるため、紹介案件が増えていきます。

ダブルライセンスによる収入アップも選択肢の一つです。土地家屋調査士と測量士、あるいは土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンスを取得することで、提供できるサービスの幅が広がり、ワンストップでの対応が可能になります。これにより顧客満足度が高まり、継続的な受注につながります。

また、経営スキルの習得も独立開業後の収入を左右します。営業力、見積もり作成能力、スケジュール管理、資金管理など、経営者としてのスキルを磨くことで、安定した事業運営が可能になります。多くの成功している調査士は、技術力と経営力の両方を高いレベルで持ち合わせています。

継続教育制度も充実しており、土地家屋調査士会が主催する研修や勉強会に参加することで、常に最新の知識と技術を学べる環境が整っています。このような学びの機会を活用し、自己投資を続けることが、長期的な収入アップにつながります。

土地家屋調査士の年収に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の年収は?平均給与・開業・勤務別の収入を徹底分析

土地家屋調査士を一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら

土地家屋調査士のメリット③:内業・外業のバランスが良い

土地家屋調査士の働き方における大きな魅力の一つが、デスクワーク(内業)とフィールドワーク(外業)のバランスの良さです。一日中室内にこもることもなく、かといって常に屋外というわけでもないこの働き方は、多様な業務内容を楽しめる点で高く評価されています。ここでは、内業と外業の具体的な内容と、そのバランスがもたらすメリットについて解説します。

土地家屋調査士はデスクワークとフィールドワークの両方がある

土地家屋調査士の業務は、現場での測量作業(外業)とオフィスでの図面作成・書類作成(内業)の両方で構成されています。この二つの業務形態が適度に組み合わさることで、仕事に変化と刺激が生まれます。

外業の代表的な業務には、土地の測量、境界確認、境界標の設置、建物の調査などがあります。現場では、GPSやトータルステーションなどの測量機器を使用し、土地の正確な位置や面積を測定します。境界立会いでは、土地所有者や隣接地所有者と直接対面し、境界の位置について確認と合意を得る作業を行います。

内業では、測量データの処理、CADソフトを使った図面作成、登記申請書類の作成、報告書の作成などを行います。測量で得たデータをコンピュータで処理し、正確な図面に仕上げる作業には、高度な専門知識と集中力が必要です。また、法律に基づいた登記申請書類の作成は、一文字の誤りも許されない精密な作業となります。

一般的な業務の流れとしては、午前中に現場で測量作業を行い、午後は事務所に戻ってデータ処理や図面作成を行うというパターンが多く見られます。季節や案件の状況によって内業と外業の比率は変動しますが、おおよそ外業40%、内業60%程度のバランスで業務を行う調査士が多いようです。

天候によっても業務内容が変わります。晴天時は現場作業を優先し、雨天時は事務所で内業に集中するなど、柔軟に業務を調整できる点も、この職業の特徴と言えます。

室内にこもりっぱなしではないストレス軽減

一日中デスクに向かう仕事とは異なり、土地家屋調査士は定期的に外に出る機会があるため、身体的・精神的なストレスを軽減できます。

完全なデスクワークの職業では、長時間同じ姿勢で座り続けることによる健康リスクや、閉塞感によるストレスが問題となることがあります。土地家屋調査士の場合、現場に出て身体を動かす機会が定期的にあるため、運動不足になりにくいという利点があります。

測量作業では、測量機器を持って現場を歩き回ったり、地形を確認するために多少の山登りをしたりすることもあります。このような身体活動は、適度な運動となり、健康維持にもつながります。デスクワークだけの生活に比べて、生活習慣病のリスクを抑えられる可能性があります。

また、屋外で新鮮な空気を吸いながら仕事ができることは、精神的なリフレッシュ効果があります。季節の変化を肌で感じながら働けることも、この職業ならではの魅力です。春の新緑、夏の青空、秋の紅葉、冬の澄んだ空気など、自然の中で働く喜びを感じられる場面が多くあります。

現場では様々な人々と対面で接する機会があり、コミュニケーションを通じて人間関係の充実も得られます。土地所有者、隣接地所有者、不動産業者、建築会社など、多様な立場の人々と関わることで、社会性を保ちながら仕事ができます。これは、一人で黙々とパソコンに向かう仕事とは大きく異なる点です。

気分転換しやすい働き方

内業と外業を交互に行う働き方は、仕事に変化をもたらし、モチベーションの維持につながります。同じ作業を長時間続けることによる倦怠感を避けられる点が、大きなメリットです。

午前中に現場で測量作業を行い、午後は事務所で図面作成という働き方は、業務の切り替えによる気分転換効果があります。現場での身体を動かす作業と、デスクでの頭を使う作業が適度に混在することで、集中力を保ちやすくなります。一つの作業に飽きる前に別の作業に移れるため、仕事への新鮮さが維持されます。

また、案件ごとに現場の場所や状況が異なるため、毎回新しい発見があります。都市部のマンション、郊外の一戸建て、山間部の土地、農地など、様々な場所で測量を行うことになり、仕事に単調さがありません。それぞれの現場で異なる課題に直面するため、問題解決能力を磨く機会にもなります。

業務の自己管理がしやすい点も魅力です。特に独立開業している場合、その日の天候や体調、案件の優先順位に応じて、外業と内業のスケジュールを柔軟に調整できます。雨の日は無理に現場に出ず、じっくりと図面作成に取り組むといった働き方ができます。

さらに、デジタル技術の進化により、内業の効率が大幅に向上しています。CADソフトの自動化機能や、測量データの自動処理により、単純作業にかかる時間が短縮され、より創造的で付加価値の高い業務に時間を使えるようになっています。これにより、仕事の質的な充実度も高まっています。

ただし、このバランスの良さを活かすには、両方の業務をこなせる能力が必要です。測量技術だけでなく、CAD操作や書類作成のスキルも磨く必要があります。両方の能力を高めることで、この職業の魅力を最大限に享受できるでしょう。

土地家屋調査士のメリット④:将来性・やりがい・社会貢献性が高い

土地家屋調査士は、単に収入面で恵まれているだけでなく、将来性があり、やりがいを感じられ、社会貢献性の高い職業です。高齢化社会における需要増加、不動産の権利保護という重要な役割、そして国家資格としての社会的評価の高さが、この職業の価値を高めています。ここでは、土地家屋調査士の将来性とやりがいについて詳しく見ていきます。

土地家屋調査士は高齢化社会で相続案件が増加

日本の高齢化社会の進展に伴い、土地家屋調査士の需要は今後さらに高まることが予測されています。特に相続に関連する案件の増加が、業界の将来性を支える重要な要因となっています。

団塊の世代(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者となる2025年以降、相続が本格的に増加する「大相続時代」を迎えます。国土交通省のデータによると、土地所有者の高齢化率は年々上昇しており、今後10〜20年間で大量の土地が相続されることになります。

相続において土地家屋調査士が必要とされる主な場面は、境界確定測量、土地の分筆、現況測量などです。相続財産を分割する際、土地の境界が不明確では分割協議が進みません。また、複数の相続人で土地を分ける場合、分筆登記が必要となります。これらすべてに土地家屋調査士の専門知識が求められます。

2024年4月からは相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しなければなりません。この制度改正により、放置されていた土地の相続登記が進むことになり、それに伴う境界確定や測量の需要も増加しています。罰則規定もあるため、相続人は積極的に対応せざるを得ない状況です。

所有者不明土地問題も、土地家屋調査士の需要を押し上げています。全国で約410万ヘクタール(九州の面積を超える)の所有者不明土地が存在するとされ、政府はこの問題の解決に向けて様々な施策を打ち出しています。境界の明確化は所有者不明土地問題の解決に不可欠であり、土地家屋調査士の役割はますます重要になっています。

地方の農地や山林の相続も増加傾向にあります。これらの土地は境界が不明確なケースが多く、測量や境界確定の需要が見込まれます。都市部だけでなく、地方においても土地家屋調査士の活躍の場が広がっています。

不動産の権利を守る重要な役割

土地家屋調査士は、国民の財産である不動産の権利を守るという、社会的に非常に重要な役割を担っています。この使命感が、仕事のやりがいにつながっています。

不動産は多くの人にとって一生で最も高額な財産です。その不動産の物理的状況を正確に登記することで、所有権を明確にし、財産を守ることができます。土地家屋調査士は、この財産保護の最前線で働く専門家です。

境界トラブルの予防と解決も重要な役割です。境界が不明確なままでは、隣地とのトラブルに発展する可能性があります。土地家屋調査士が正確な測量と境界確定を行うことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。実際に境界紛争が発生した場合も、客観的な測量データに基づいて解決の道筋を示すことができます。

公共の利益にも貢献しています。正確な登記情報は、都市計画、防災計画、インフラ整備など、公共政策の基礎データとなります。土地家屋調査士が作成する図面や測量データは、社会インフラを支える重要な情報源なのです。

また、相続円滑化支援も大きなやりがいの一つです。相続は家族間の感情的な問題も絡む繊細な場面ですが、土地家屋調査士が客観的なデータを提供することで、公平な遺産分割を実現できます。「調査士のおかげで相続がスムーズに進んだ」という感謝の言葉は、大きな達成感をもたらします。

顧客との信頼関係を築く喜びもあります。一度仕事を依頼した顧客が、その後も継続的に相談してくれたり、知人を紹介してくれたりすることは、仕事の質が評価された証です。このような信頼の積み重ねが、専門家としての誇りにつながります。

社会的評価が高い国家資格

土地家屋調査士は、難関国家資格の一つとして社会的に高い評価を受けています。この社会的地位の高さも、職業としての大きなメリットです。

国家資格の中でも、土地家屋調査士は合格率約9%という難関資格に位置づけられます。これは司法書士(合格率約5%)や不動産鑑定士(合格率約15%)と同等の難易度であり、資格そのものの価値が高く評価されています。

専門家としての社会的信頼も厚く、不動産取引の現場では欠かせない存在として認識されています。銀行、不動産会社、建築会社、司法書士など、様々な専門家と対等に協働できる立場にあります。このような専門家ネットワークの一員として活躍できることは、キャリアの充実につながります。

地域社会における存在感も大きく、特に地方では土地家屋調査士は地域の不動産問題解決の専門家として頼りにされています。地域の祭りや行事にも参加し、地域貢献できる機会があります。地域に根ざした専門家として、長期的なキャリアを築くことができます。

また、生涯現役で働ける職業である点も魅力です。測量技術と法律知識は、年齢を重ねても衰えるものではなく、むしろ経験が蓄積されることで価値が高まります。実際に、70代、80代でも現役で活躍している土地家屋調査士は少なくありません。長く働き続けられる職業として、人生設計の安定につながります。

資格の汎用性も評価されています。土地家屋調査士の知識と技術は、不動産業界全体で活用できるため、キャリアの選択肢が広がります。調査士事務所だけでなく、不動産会社、建設会社、測量会社など、様々な業界で土地家屋調査士の資格が活かせます。

土地家屋調査士の将来性に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の現状と将来性|業界の実態とキャリア展望を解説

土地家屋調査士のデメリット①:体力が必要・屋外作業がきつい

土地家屋調査士のメリットを見てきましたが、デメリットについても正直にお伝えすることが重要です。最初のデメリットは、体力面での負担です。屋外での測量作業は、天候の影響を受けやすく、季節によっては非常に厳しい環境での作業となります。ここでは、土地家屋調査士の体力的な側面について詳しく解説します。

土地家屋調査士は天候に左右される屋外作業が多い

土地家屋調査士の業務は、天候に大きく影響を受けます。雨天時は測量作業ができないことが多く、スケジュール管理が難しくなることがあります。

測量作業は、基本的に晴天時に行う必要があります。雨が降ると測量機器が濡れて故障のリスクがあるだけでなく、視界が悪くなり正確な測量ができません。また、境界標の設置作業も、地面が濡れていると困難になります。そのため、雨の日は現場作業を延期せざるを得ません。

天気予報を常にチェックし、急な天候変化に対応する必要があります。午前中は晴れていても午後から雨という予報の場合、その日のスケジュールを大幅に変更することになります。顧客との約束を天候理由で変更しなければならないことも頻繁にあり、スケジュール調整のストレスが生じます。

梅雨時期は特に厳しく、数週間にわたって屋外作業ができない日が続くこともあります。この期間は内業に集中することになりますが、境界立会いなど顧客との調整が必要な作業は延期するしかありません。繁忙期と梅雨が重なると、業務の遅延が発生しやすくなります。

台風シーズンも業務に影響します。台風が接近している間は外出できませんし、台風通過後も現場の安全確認が必要になります。倒木や土砂崩れなどで現場へのアクセスが困難になることもあります。

冬季の積雪地域では、雪が積もっている間は測量作業が事実上不可能になります。雪解けを待つ必要があり、その間の収入減少も課題となります。北海道や東北、北陸地方では、冬季の業務量が大幅に減少します。

夏場・冬場の測量作業の厳しさ

季節による体力的負担も、土地家屋調査士の大きなデメリットの一つです。特に真夏と真冬の屋外作業は、身体への負担が大きくなります。

夏場の測量作業は、猛暑との戦いです。気温が35度を超える日も珍しくなく、直射日光の下で長時間作業することになります。測量機器を扱うため日傘をさすこともできず、熱中症のリスクが常につきまといます。こまめな水分補給と休憩が必要ですが、スケジュールの都合で十分な休憩が取れないこともあります。

アスファルトの照り返しも厳しく、都市部の測量では体感温度がさらに上がります。夏場は早朝や夕方に作業を集中させる工夫が必要ですが、境界立会いは土地所有者の都合に合わせる必要があるため、真昼間の作業を避けられないケースも多くあります。

冬場は寒さと凍結が課題です。気温が氷点下になる地域では、指先の感覚がなくなり、細かい作業が困難になります。測量機器の操作にも支障が出ることがあります。また、早朝の測量では地面が凍結しており、境界標の設置作業が難しくなります。

防寒対策をしても、長時間の屋外作業では身体が冷え切ってしまいます。特に風が強い日は体感温度がさらに下がり、作業効率が落ちます。冬場は日照時間も短いため、作業可能な時間帯が限られるという問題もあります。

体調管理が非常に重要になります。夏場の熱中症、冬場の風邪やインフルエンザなど、季節ごとの健康リスクに注意を払う必要があります。体調を崩すと業務に直接影響するため、自己管理能力が問われます。

測量機材の運搬や長時間の移動

測量機材の運搬も、体力的な負担の一因です。測量機器は精密機器でありながら、それなりの重量があるため、現場での持ち運びは重労働となります。

基本的な測量セットだけでも、トータルステーション(測量機器本体)、三脚、プリズム、ポール、電子野帳など、複数の機材を運ぶ必要があります。これらの総重量は10〜15キログラムにもなり、現場内を移動しながら何度も運搬することになります。

駐車場から現場までの距離がある場合、この運搬作業がさらに大変になります。都市部では駐車スペースが現場から離れていることも多く、重い機材を持って何百メートルも歩くこともあります。山間部では、車が入れない場所まで徒歩で機材を運ぶ必要があるケースもあります。

現場の地形によっては、階段の上り下りや坂道の移動が伴います。特に傾斜地の測量では、重い機材を持って斜面を移動する必要があり、足腰への負担が大きくなります。一日に複数の現場を回る場合、この作業を何度も繰り返すことになります。

長時間の移動も身体的疲労の原因です。現場は様々な場所にあるため、車での移動時間が長くなることがあります。都市部では渋滞に巻き込まれることも多く、一日の大半を移動に費やすこともあります。地方では一つの現場まで片道1〜2時間かかることも珍しくありません。

長距離運転による腰痛や肩こりも職業病として挙げられます。測量作業自体の体力的負担に加えて、長時間の運転疲労が蓄積されることで、慢性的な身体の不調に悩まされる調査士も少なくありません。

このような体力的な負担は、年齢を重ねるにつれて課題となってきます。若いうちは問題なくこなせた作業も、40代、50代になると厳しく感じることがあります。そのため、測量補助者を雇用したり、デジタル技術を活用して作業効率を上げたりする工夫が必要になります。

土地家屋調査士のデメリット②:休日出勤・柔軟な勤務時間が求められる

土地家屋調査士のもう一つの大きなデメリットは、勤務時間の不規則さです。特に境界立会いでは顧客のスケジュールに合わせる必要があるため、土日や祝日の勤務が発生することがあります。ここでは、土地家屋調査士の勤務時間に関する課題について詳しく見ていきます。

土地家屋調査士は境界立会いで土日対応が多い

境界立会いは、土地の境界を確定する際に関係者全員が現地に集まって境界を確認する重要な手続きです。この境界立会いが、土地家屋調査士の休日勤務の主な原因となっています。

境界立会いには、通常、土地所有者本人と隣接地所有者の立ち会いが必要です。これらの関係者が全員平日に時間を取れるケースは少なく、特にサラリーマンの土地所有者は平日の日中に時間を作ることが困難です。そのため、土曜日や日曜日に境界立会いを設定することが非常に多くなります。

一つの土地の境界確定には、複数の隣接地所有者との立会いが必要になることもあります。例えば、一つの土地に4つの隣接地がある場合、4回の境界立会いを行う必要があります。これらすべてを平日に完了させることは現実的ではなく、結果として複数の休日を境界立会いに充てることになります。

相続案件では、相続人全員の立ち会いが求められることもあります。相続人が遠方に住んでいる場合、全員が集まれる日程は限られており、土日や祝日、あるいはお盆や年末年始といった大型連休になることも珍しくありません。

繁忙期には、週末の両日とも境界立会いが入ることもあります。春や秋の不動産取引が活発な時期は特に忙しく、土曜日に2件、日曜日に2件といった過密スケジュールになることもあります。この時期は、家族との時間や自分の休息時間が大幅に削られることになります。

顧客のスケジュールに合わせた働き方

土地家屋調査士の業務は、顧客の都合を最優先する必要があるため、自分のスケジュールを思い通りにコントロールできないことがあります。

急な日程変更も日常茶飯事です。境界立会いの予定日に、関係者の一人が急用で来られなくなることがあります。その場合、全員が集まれる別の日を再調整する必要があり、すでに組んでいたスケジュールを大幅に変更しなければなりません。

顧客からの問い合わせや相談は、営業時間外に来ることもあります。平日の日中は仕事で連絡できない顧客から、夕方や夜間に電話がかかってくることも少なくありません。緊急性の高い案件では、休日であっても対応を求められることがあります。

時期による業務の偏りも課題です。不動産取引は3月、9月に集中する傾向があり、この時期は極端に忙しくなります。逆に、閑散期には業務量が減少するため、年間を通じて均等な勤務時間を維持することが難しくなります。

早朝や夕方の業務対応も発生します。夏場は日差しを避けるため、朝7時から測量を開始したり、夕方遅くまで作業を続けたりすることがあります。また、サラリーマンの顧客と打ち合わせをする場合、平日の夜7時や8時に対応することもあります。

このような柔軟な働き方は、顧客満足度を高める一方で、調査士自身の生活リズムを不規則にします。家族との食事時間が合わない、子どもの学校行事に参加できないといった問題が生じることもあります。

プライベートの時間確保が難しい場合もある

休日勤務や柔軟な勤務時間の要求は、プライベートの時間確保を困難にすることがあります。ワークライフバランスを重視する人にとっては、これが大きなデメリットとなる可能性があります。

家族との時間が犠牲になるケースがあります。子どもの運動会や発表会などの学校行事と境界立会いが重なってしまい、家族の大切なイベントに参加できないことがあります。配偶者との休日の予定も、直前の業務変更で取り消しになることがあり、家族関係にストレスが生じる可能性があります。

友人との約束も守りにくくなります。休日に友人と会う予定を立てていても、急な境界立会いが入れば仕事を優先せざるを得ません。このような状況が続くと、プライベートの人間関係を維持することが難しくなります。

趣味やリフレッシュの時間も十分に取れないことがあります。休日を計画的に使って旅行に行く、スポーツを楽しむ、といったことが難しくなります。特に繁忙期は、連続して休日勤務が続き、心身のリフレッシュができないまま疲労が蓄積することもあります。

独立開業している場合は、さらに時間のコントロールが難しくなります。顧客からの要望を断りにくく、できるだけ顧客の希望に応えようとすると、自分の時間が犠牲になりがちです。事業を軌道に乗せるまでの期間は特に、プライベートを犠牲にして働くことが多くなります。

ただし、この状況は事務所の規模や経営方針によって異なります。複数の調査士が所属する事務所では、交代制で休日対応を行うことで、個人の負担を軽減できます。また、独立して経験を積んだ後は、ある程度業務のコントロールが可能になり、プライベートの時間を確保しやすくなることもあります。

勤務調査士として働く場合は、雇用主の方針によって休日出勤の頻度が変わります。土日対応を積極的に行う事務所もあれば、できるだけ平日に業務を集中させる方針の事務所もあります。就職先を選ぶ際には、働き方について事前に確認することが重要です。

土地家屋調査士のデメリット③:景気に左右されやすい

土地家屋調査士の業務は、不動産市場の動向に大きく影響を受けます。好景気時には案件が増加しますが、不況時には仕事量が減少するという、景気変動のリスクがあります。ここでは、土地家屋調査士の仕事量が景気によってどのように変動するか、そしてその影響について解説します。

土地家屋調査士の仕事量は不動産市場の影響を受ける

土地家屋調査士の主要な業務は、不動産取引や開発に関連するものが多いため、不動産市場の動向がダイレクトに業務量に反映されます。

不動産取引が活発な時期には、建物表題登記や土地分筆登記などの案件が増加します。新築住宅の建設ラッシュや、土地の売買が活発に行われる時期は、土地家屋調査士にとっての繁忙期となります。逆に、不動産市場が冷え込むと、これらの案件が減少し、収入に直接影響します。

経済全体の景気も重要な要因です。景気が良いときは個人の住宅購入意欲が高まり、企業の設備投資も活発になるため、土地家屋調査士の業務需要が増えます。一方、景気後退期には不動産投資が控えられ、建築着工件数が減少するため、業務量も減少します。

金利動向も影響します。住宅ローン金利が低い時期は住宅購入が増え、それに伴い建物表題登記の需要が高まります。逆に金利が上昇すると住宅購入が減少し、土地家屋調査士の仕事も減る傾向があります。2024年以降の金利上昇局面では、この影響が顕在化しつつあります。

地域開発プロジェクトの有無も大きく影響します。大規模な商業施設の建設や住宅団地の開発などがある地域では、まとまった測量・登記業務が発生します。しかし、こうしたプロジェクトは不定期であり、安定した収入源とは言えません。

相続案件は比較的景気変動の影響を受けにくいですが、相続税の税制変更によって需要が変動することがあります。相続税の基礎控除が縮小された2015年以降は、相続対策としての土地分筆や評価の見直しが増加しました。

繁忙期と閑散期の差が激しい

土地家屋調査士の業務には、明確な繁忙期と閑散期が存在します。この業務量の波が、収入や生活リズムに大きな影響を与えます。

年度末の2〜3月は、最も忙しい時期の一つです。企業の決算期に合わせた不動産取引が集中し、また個人も新年度の引っ越しに向けて住宅購入を進めるため、登記業務が急増します。この時期は連日深夜まで作業が続くこともあります。

9〜10月も繁忙期です。秋の不動産取引シーズンであり、気候も測量作業に適しているため、多くの案件が集中します。また、年内に登記を完了させたいという顧客の要望もあり、業務が立て込みます。

逆に、1月や8月は閑散期となることが多くあります。1月は年末年始の休暇明けで不動産取引が少なく、8月は猛暑で測量作業が困難なため、案件が減少します。この時期は収入が大幅に減少することもあります。

梅雨時期(6〜7月)も業務が減少しがちです。雨天が多いため屋外作業ができず、境界立会いや測量がスケジュール通りに進まないことが多くなります。この時期は内業に集中することになりますが、新規案件の受注も減少する傾向があります。

地域によっても繁閑の差があります。雪国では冬季に測量作業ができないため、春から秋にかけて業務が集中します。逆に、温暖な地域では比較的年間を通じて業務が可能ですが、それでも時期による差は存在します。

この繁閑の差が、収入の安定性を損なう要因となります。繁忙期に稼いだ収入を閑散期に備えて蓄えておく必要があり、計画的な資金管理が求められます。勤務調査士の場合は給与が安定していますが、独立開業の場合はこの波を自分で管理しなければなりません。

独立開業の場合の収入の不安定さ

独立開業した土地家屋調査士にとって、収入の不安定さは大きな課題となります。特に開業初期は、顧客基盤が確立されていないため、収入変動のリスクが高くなります。

開業当初の数年間は、安定した収入を得ることが困難です。顧客を開拓し、信頼関係を築くまでには時間がかかります。開業1年目は特に厳しく、月によっては数万円しか収入がないこともあります。この期間を乗り越えるための生活資金の確保が、開業の大きなハードルとなります。

案件の受注が不規則であることも課題です。ある月は10件の案件があっても、次の月はゼロということもあり得ます。特に大口案件に依存している場合、その案件が終了すると急激に収入が減少します。安定的な案件供給源を複数確保することが、収入安定化の鍵となります。

経費の固定性も収入不安定のリスクを高めます。事務所の賃料、測量機器のリース代、保険料などの固定費は、売上に関わらず毎月発生します。閑散期でも固定費を賄う必要があるため、資金繰りが厳しくなることがあります。

取引先の倒産リスクもあります。不動産会社や建設会社からの案件が多い場合、取引先が経営不振に陥ると、未回収の報酬が発生する可能性があります。また、取引先の倒産により継続的な案件供給が途絶えることもあります。

このような収入の不安定さに対処するため、多くの独立開業調査士は複数の収入源を確保する工夫をしています。測量士の資格も持って測量業務も受注する、不動産会社と提携して安定的な案件供給を受ける、相続専門として特定分野に強みを持つなど、様々な戦略があります。

また、勤務調査士としてのキャリアスタートも選択肢の一つです。事務所に勤務しながら技術と顧客基盤を築き、十分な準備が整ってから独立することで、開業後の収入不安定リスクを軽減できます。

土地家屋調査士の需要に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士は「仕事がない・食えない」は本当?需要の実態を検証

土地家屋調査士のデメリット④:資格取得の難しさ

土地家屋調査士になるための最大のハードルは、資格取得の難しさです。合格率が約9%という難関試験を突破するには、相当な努力と時間が必要です。ここでは、土地家屋調査士試験の難易度と、資格取得に必要な準備について詳しく解説します。

土地家屋調査士試験の合格率は約9%

土地家屋調査士試験は、国家資格の中でも難関試験の一つに数えられます。その最大の理由は、極めて低い合格率です。

過去10年間の合格率を見ると、おおむね8〜10%の範囲で推移しています。2023年度の合格率は10.47%でしたが、これは比較的高い年であり、9%を下回る年も少なくありません。10人受験して1人合格するかどうかという狭き門です。

合格者数も限られており、毎年400〜500名程度です。受験者数は約4,000〜5,000名ですから、大多数の受験者が不合格となります。しかも、この受験者の多くは何度も受験を重ねている経験者であり、初学者が一発合格することは極めて困難です。

試験の難しさは、出題範囲の広さと深さにあります。民法、不動産登記法、測量法などの法律知識に加え、測量計算、作図技術など、文系と理系の両方の能力が求められます。さらに、書式問題では実務に即した総合的な問題解決能力が試されます。

午後の部の書式問題は特に難関です。土地の書式問題と建物の書式問題の2題が出題されますが、これらは実務を模した複雑な問題であり、時間内に正確に解答することは容易ではありません。作図も手書きで行う必要があり、精密さとスピードの両立が求められます。

他の士業資格と比較しても、土地家屋調査士試験の難易度は高水準です。司法書士試験(合格率約5%)よりはやや易しいとされますが、行政書士試験(合格率約10〜15%)よりは明らかに難しく、宅地建物取引士試験(合格率約15〜17%)とは比較にならない難易度です。

土地家屋調査士試験の難易度では、他資格との詳細な比較や、合格への具体的な道筋を解説していますので、試験対策を考えている方はぜひご覧ください。

1000-1500時間の勉強時間が必要

土地家屋調査士試験に合格するには、一般的に1,000〜1,500時間の勉強時間が必要とされています。これは、働きながら学習する場合、1〜2年の期間を要することを意味します。

初学者の場合、1,500時間以上の学習時間を確保することが推奨されます。法律の基礎知識がない場合は、民法や不動産登記法の理解に時間がかかります。また、測量計算や作図の技術も一朝一夕には身につかないため、十分な練習時間が必要です。

測量士補資格を持っている場合は、午前の部が免除されるため、学習時間を1,000〜1,200時間程度に短縮できます。多くの受験者が、まず測量士補試験に合格してから土地家屋調査士試験に臨むという戦略を取っています。

働きながら学習する場合、時間の確保が最大の課題となります。平日に2〜3時間、休日に6〜8時間の学習時間を確保すると、週に約20〜30時間の学習が可能です。この ペースで学習すると、1,500時間に到達するには約1〜1.5年かかります。

学習期間が長引くほど、モチベーションの維持が困難になります。1年以上の長期学習では、途中で挫折する受験者も少なくありません。計画的な学習スケジュールの作成と、継続的な努力が合格の鍵となります。

予備校や通信講座を利用すると、効率的な学習が可能です。東京法経学院やLECなどの予備校では、合格に必要な知識を体系的に学べるカリキュラムが用意されています。独学も可能ですが、書式問題の対策など、専門的な指導を受けた方が効率的な分野もあります。

土地家屋調査士の勉強時間では、合格までの具体的なスケジュールや、効率的な学習方法を詳しく解説しています。

未経験者にとっての高いハードル

法律や測量の知識がない未経験者にとって、土地家屋調査士試験は特に高いハードルとなります。

法律科目の学習は、法学部出身者以外には難関です。民法や不動産登記法は条文や判例の理解が必要であり、法律独特の論理思考に慣れるまでに時間がかかります。法律用語の意味を理解し、条文を正確に解釈する能力を養う必要があります。

測量計算も理系でない受験者には負担です。三角関数や面積計算など、高校数学レベルの知識が必要になります。数学が苦手な文系出身者は、まず基礎的な数学の復習から始める必要があります。

作図技術の習得も大きな課題です。製図の経験がない人にとって、正確で読みやすい図面を短時間で描くことは容易ではありません。線の引き方、文字の書き方、図面の構成など、基礎から学ぶ必要があります。

実務経験がないことも不利な要因です。書式問題は実務を模した内容であるため、実務を知っている受験者の方が問題の意図を理解しやすい傾向があります。未経験者は、問題文から実際の状況をイメージすることが難しく、正解にたどり着くまでに時間がかかります。

年齢的なハードルもあります。30代、40代から資格取得を目指す場合、記憶力や集中力の維持が若い頃よりも困難になることがあります。一方で、人生経験が豊富な分、学習の目的意識がはっきりしているため、モチベーションを保ちやすいという利点もあります。

経済的な負担も無視できません。予備校の受講料は20〜40万円程度かかり、教材費、試験受験料、交通費なども必要です。働きながら学習する場合、収入を得ながら資格取得を目指せますが、独学で失敗を繰り返すと、トータルのコストは高くなります。

このような高いハードルにもかかわらず、多くの人が土地家屋調査士を目指すのは、資格取得後のメリットがそれだけ大きいからです。難関資格だからこそ価値があり、一度取得すれば生涯にわたって活かせる専門性を手に入れることができます。

土地家屋調査士試験の難易度に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験の難易度|他資格との比較と合格への道筋

土地家屋調査士の勉強時間に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験に必要な勉強時間|合格までのスケジュール

土地家屋調査士のメリット・デメリットに関連するよくある質問(FAQ)

土地家屋調査士のメリット・デメリットについて、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。資格取得を判断する際の参考にしてください。

Q. 土地家屋調査士のメリットは何ですか?

土地家屋調査士の主なメリットは、独占業務による安定需要、高収入の可能性、内業と外業のバランスの良い働き方、そして将来性の高さです。

特に重要なのは、表示に関する登記という法律で守られた独占業務を持つことです。この独占性により、競合が限定的で、専門家としての地位が確立されています。また、高齢化社会における相続案件の増加により、今後も需要は堅調に推移すると予測されています。

収入面では、勤務調査士で平均年収500〜600万円、独立開業で年収1,000万円以上も目指せます。スキルと経験に応じて着実に収入を増やせる点も魅力です。デスクワークと現場作業の両方があるため、一日中座りっぱなしということもなく、気分転換しやすい働き方ができます。

Q. 土地家屋調査士のデメリットは何ですか?

土地家屋調査士の主なデメリットは、体力的な負担、休日出勤の多さ、景気変動の影響、そして資格取得の難しさです。

屋外での測量作業は、夏場の猛暑や冬場の寒さといった厳しい環境下で行われます。測量機材の運搬や長時間の移動も身体的な負担となります。また、境界立会いは顧客のスケジュールに合わせる必要があるため、土日や祝日の勤務が多く、プライベートの時間確保が難しい場合があります。

不動産市場の景気変動により、仕事量と収入が大きく変動することもデメリットです。特に独立開業の場合、繁忙期と閑散期の差が激しく、安定した収入を得るまでに時間がかかります。資格取得には1,000〜1,500時間の勉強時間が必要で、合格率約9%という難関試験を突破する必要があります。

Q. 土地家屋調査士は「やめとけ」と言われる理由は?

土地家屋調査士が「やめとけ」と言われる理由は、主に体力面の厳しさ、休日出勤の多さ、資格取得の難しさにあります。しかし、これらは必ずしも全員に当てはまるわけではありません。

確かに、屋外作業の体力的負担は無視できません。真夏や真冬の測量作業は厳しく、年齢を重ねるにつれて体力的な課題が大きくなります。また、境界立会いで土日対応が多く、家族との時間が取りにくいという側面もあります。

ただし、これらのデメリットを上回るメリットもあります。独占業務による安定需要、高収入の可能性、専門性の高さなど、魅力的な側面も多くあります。「やめとけ」という意見は、主に体力面や働き方の柔軟性を重視する人の視点であり、全ての人に当てはまるわけではありません。

土地家屋調査士は「やめとけ」の実態では、ネガティブな評判の真偽を詳しく検証していますので、ぜひご覧ください。

Q. 土地家屋調査士の魅力は何ですか?

土地家屋調査士の魅力は、専門性の高さと社会貢献性、そして働き方の多様性です。

不動産の権利を守るという重要な役割を担っており、仕事を通じて社会に貢献できる実感を得られます。境界トラブルを解決したり、相続を円滑に進めたりすることで、顧客から感謝される機会も多く、やりがいを感じられる職業です。

また、独立開業の道が開かれているため、自分の裁量で働き方をデザインできます。勤務調査士として安定的に働くことも、独立して高収入を目指すことも可能です。内業と外業のバランスが良く、一日中同じ作業を続けることがないため、飽きにくい仕事でもあります。

専門性が高く、AIに代替されにくい職業であることも魅力です。測量技術と法律知識の両方が必要で、人間の判断と経験が重視される分野であるため、長期的なキャリア形成が可能です。

Q. 土地家屋調査士として働くのに向いている人は?

土地家屋調査士に向いているのは、体力があり、細かい作業が得意で、コミュニケーション能力がある人です。

まず、屋外作業が多いため、一定の体力と健康が必要です。暑さや寒さに耐えられる体力、重い機材を運べる体力があることが望ましいです。また、デスクワークとフィールドワークの両方を楽しめる人は、この職業の魅力を最大限に感じられるでしょう。

精密な測量や作図が必要なため、細かい作業が得意で、正確性を重視できる人に適しています。ミスが許されない登記業務では、慎重さと注意深さが求められます。

境界立会いでは関係者との調整が必要なため、コミュニケーション能力も重要です。時には感情的な対立を調整する場面もあり、対人スキルが高い人は有利です。

また、継続的な学習意欲がある人も向いています。法律改正や測量技術の進化に対応するため、資格取得後も学び続ける姿勢が必要です。独立開業を目指す場合は、経営センスや営業力も求められます。

土地家屋調査士に向いている人では、適性や必要なスキルについて詳しく解説していますので、自分に向いているか確認したい方はご覧ください。

土地家屋調査士を一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら

まとめ:土地家屋調査士のメリット・デメリットを踏まえた判断

本記事では、土地家屋調査士のメリット・デメリットについて詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. メリットは独占業務・高収入・将来性:土地家屋調査士は表示に関する登記の独占業務を持ち、法律で守られた専門職として安定した需要があります。勤務調査士で年収500〜600万円、独立開業で年収1,000万円以上も目指せる可能性があります。高齢化社会における相続案件の増加により、将来性も高い職業です。
  2. デメリットは体力面・勤務時間・試験難易度:屋外作業による体力的負担、境界立会いでの土日対応、不動産市場の景気変動による影響が主なデメリットです。また、合格率約9%の難関試験を突破するには、1,000〜1,500時間の勉強時間が必要となります。
  3. 自分の適性と価値観で判断することが重要:メリットとデメリットの両面を理解した上で、自分の適性や価値観に照らして判断することが大切です。体力に自信があり、現場仕事を楽しめる人、高収入を目指したい人、社会貢献性の高い仕事をしたい人には適している職業と言えます。

土地家屋調査士のメリット・デメリットを理解できたら、次は資格取得に向けた具体的な準備を始めましょう。土地家屋調査士の勉強時間土地家屋調査士予備校の選び方を参考に、計画的に進めることをおすすめします。

本記事を通じて、土地家屋調査士という職業の実態を理解いただけたはずです。メリットとデメリットの両面を踏まえた上で、自分にとって価値ある選択かどうかを判断してください。資格取得は決して容易ではありませんが、その先には専門性の高いやりがいのあるキャリアが待っています。

土地家屋調査士は「やめとけ」の実態に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士は「やめとけ・後悔する」は本当?資格の実態を検証

土地家屋調査士を一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら

土地家屋調査士の関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次