土地家屋調査士試験の合格を目指しているあなたへ。「土地家屋調査士試験の難易度はどのくらいなのか」という疑問は、試験の実態と効果的な対策を知ることで解決できます。
本記事では、土地家屋調査士試験の合格率や偏差値から見る難易度、他の国家資格との比較、試験が難しいとされる具体的な理由について、最新のデータを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、土地家屋調査士試験合格に向けて、現実的な学習計画を立てましょう。
- 土地家屋調査士試験の合格率・偏差値から見る客観的な難易度
- 司法書士・行政書士・宅建など他資格との具体的な難易度比較
- 試験が難しいとされる5つの理由と効果的な対策方法
- 午前の部免除制度を活用した難易度を下げる戦略
- 合格率は9~11%で推移する難関試験:土地家屋調査士試験の合格率は毎年9~11%程度で、相対評価方式により上位400名程度しか合格できません。平均受験回数は3回程度と、一発合格は容易ではない試験です。
- 偏差値60~64の難関資格レベル:土地家屋調査士試験の偏差値は60~64で、大学に例えるとMARCH・上智レベルに相当します。行政書士と同程度、宅建の約3倍の難易度といえるでしょう。
- 法律と測量の両方が必須で対策が難しい:土地家屋調査士試験は民法・不動産登記法などの法律知識と、測量・作図などの技術を同時に習得する必要があります。文系・理系の両分野にまたがるため、独学での対策が難しい試験です。
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土地家屋調査士試験の難易度は高い?合格率から見る実態
土地家屋調査士試験の難易度を客観的に判断するには、合格率のデータを見るのが最も確実です。ここでは、最新の合格率推移と相対評価方式の仕組み、そして合格までの平均受験回数から、土地家屋調査士試験の実態を明らかにします。
土地家屋調査士試験の合格率は9~11%で推移
土地家屋調査士試験の合格率は、毎年9~11%前後で推移しています。2023年度の合格率は10.47%で、受験者数4,429名に対して合格者数は464名でした。過去10年間のデータを見ても、合格率が12%を超えることはほとんどなく、安定して10%前後を維持しています。
この合格率の低さは、土地家屋調査士試験が難関資格であることを示す明確な指標です。約10人に1人しか合格できないという事実は、試験の高い難易度を物語っています。他の国家資格と比較すると、宅建士の合格率が15~17%、行政書士が10~13%であることを考えると、土地家屋調査士試験は行政書士と同等かそれ以上の難易度といえるでしょう。
合格率が低い主な理由は、後述する基準点制度と試験時間の厳しさにあります。択一式と記述式の両方で基準点をクリアする必要があるため、どちらか一方が得意でも合格できない仕組みになっています。
上位400名程度しか合格できない相対評価方式
土地家屋調査士試験の大きな特徴は、相対評価方式を採用している点です。これは、あらかじめ合格者数の目安が決まっており、受験者の成績上位者から順に合格させる仕組みです。毎年の合格者数は400~500名程度で、受験者数に関わらずほぼ一定の人数が合格します。
この相対評価方式により、自分の実力だけでなく他の受験者との競争も意識する必要があります。例えば、自分が前年より高い点数を取ったとしても、他の受験者全体のレベルが上がっていれば不合格になる可能性があるのです。逆に、試験問題が難しくて自分の点数が低くても、全体の平均点が下がっていれば合格できることもあります。
相対評価方式の試験では、合格ラインが毎年変動します。2023年度の筆記試験の基準点は、択一式が14.5点(満点20点)、記述式が34.0点(満点50点)でした。前年の2022年度は択一式が14.5点、記述式が36.5点であり、年度によって基準点が変わることが分かります。
このため、「何点取れば合格」という明確な目標点数を設定しにくく、常に上位を目指す意識が求められます。目安としては、択一式で7~8割、記述式で7割以上の得点を安定して取れる実力が必要でしょう。
合格までの平均受験回数は3回程度
土地家屋調査士試験の合格者データを分析すると、合格までの平均受験回数は3回程度とされています。一発合格する人は全体の2~3割程度で、多くの合格者が複数回の受験を経て合格を勝ち取っています。中には5回以上受験して合格する人も珍しくありません。
複数回受験が必要な理由は、試験範囲の広さと問題の複雑さにあります。民法・不動産登記法などの法律知識、測量計算、作図技術、申請書作成など、習得すべき内容が多岐にわたります。これらを全て実戦レベルまで引き上げるには、1年間の学習期間では不十分なケースが多いのです。
また、初回受験では試験の雰囲気や時間配分の感覚を掴めず、実力を発揮できないことも多くあります。2回目以降の受験で本番の緊張に慣れ、時間配分のコツを掴むことで、ようやく実力通りの結果が出せるようになります。
合格までの受験回数を減らすには、初回受験前に徹底的な準備を行うことが重要です。予備校や通信講座を活用し、本番を想定した模擬試験を数多く受けることで、一発合格の可能性を高められるでしょう。
土地家屋調査士試験の合格率に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験の合格率推移と合格ライン・合格点の分析
土地家屋調査士試験の偏差値は60~64|難易度をランク付け
土地家屋調査士試験の難易度を理解するには、偏差値による客観的な評価が役立ちます。ここでは、土地家屋調査士試験の偏差値と、それを大学や他の国家資格と比較した場合の位置づけについて解説します。
土地家屋調査士の偏差値は60~64で難関資格に分類
各種資格予備校や資格情報サイトの分析によると、土地家屋調査士試験の偏差値は60~64程度とされています。これは国家資格の中でも「難関」に分類されるレベルで、相当な学習時間と努力が必要な試験といえます。
偏差値60~64という数値は、受験者全体の上位約15~20%に入る必要があることを意味します。前述の通り土地家屋調査士試験の合格率は約10%ですから、偏差値による評価と実際の合格率は整合性が取れています。
この偏差値レベルの試験に合格するには、単に知識を暗記するだけでなく、それを応用して問題を解く力が求められます。特に土地家屋調査士試験の場合、法律知識と測量技術の両方を高いレベルで習得する必要があるため、偏差値以上の難しさを感じる受験者も少なくありません。
偏差値60~64という評価は、他の難関国家資格と比較しても妥当なレベルといえます。司法書士試験の偏差値が67~70、行政書士試験が60~62、宅建士試験が55~57とされていることから、土地家屋調査士試験は行政書士と同程度かやや高めの難易度と判断できるでしょう。
偏差値を大学に例えるとMARCH・上智レベル
土地家屋調査士試験の偏差値60~64を大学受験に例えると、MARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)や上智大学のレベルに相当します。これらの大学は、受験生の中でも上位層が目指す難関校として知られています。
大学受験でMARCH・上智レベルに合格するには、高校での基礎学習に加えて、受験勉強として最低でも1年間は集中的な学習が必要です。同様に、土地家屋調査士試験でも、法律や測量の基礎から始めて1,000~1,500時間程度の学習時間を確保する必要があります。
この比較は、土地家屋調査士試験の準備に必要な労力を理解する上で有益です。MARCH・上智レベルの大学合格を目指した経験がある人なら、その時と同程度かそれ以上の努力が必要だとイメージできるでしょう。特に法律初学者や測量未経験者の場合、新しい分野を一から学ぶ必要があるため、大学受験以上の困難を感じることもあります。
ただし、大学受験と土地家屋調査士試験では性質が異なる点にも注意が必要です。大学受験は主に暗記と理解が中心ですが、土地家屋調査士試験では作図や計算などの実技的な能力も求められます。そのため、単純に偏差値だけで比較するのではなく、試験の特性を理解した上で対策を立てることが重要です。
国家資格偏差値ランキングでの位置づけ
土地家屋調査士試験を国家資格全体の偏差値ランキングで見ると、中堅から難関の間に位置します。以下は主な国家資格の偏差値ランキングの目安です。
主な国家資格の偏差値ランキング
- 司法試験:偏差値75~78(最難関)
- 公認会計士:偏差値70~72(超難関)
- 司法書士:偏差値67~70(超難関)
- 不動産鑑定士:偏差値65~67(難関)
- 税理士:偏差値65~66(難関)
- 土地家屋調査士:偏差値60~64(難関)
- 行政書士:偏差値60~62(難関)
- 社会保険労務士:偏差値58~60(中堅~難関)
- 宅地建物取引士:偏差値55~57(中堅)
- マンション管理士:偏差値55~58(中堅)
このランキングから分かるように、土地家屋調査士試験は国家資格の中でも上位に位置する難関試験です。司法書士や公認会計士ほどではないものの、行政書士と同等以上、宅建士よりも明らかに難しいレベルといえます。
国家資格偏差値ランキングでの位置づけを理解することで、自分が挑戦しようとしている試験のレベルを客観的に把握できます。また、他の資格との比較により、ダブルライセンスを目指す場合の難易度の違いも分かるでしょう。例えば、土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンスは難易度が近いため相性が良いですが、土地家屋調査士から司法書士へのステップアップは大きな難易度の差があることが分かります。
土地家屋調査士試験と他資格の難易度比較ランキング
土地家屋調査士試験の難易度を具体的に理解するには、他の人気国家資格と比較するのが効果的です。ここでは、司法書士・行政書士・宅建士・測量士との難易度の違いを、合格率・勉強時間・偏差値の観点から詳しく比較します。
土地家屋調査士vs司法書士|偏差値と勉強時間の差
土地家屋調査士試験と司法書士試験を比較すると、司法書士試験の方が明らかに難易度が高いといえます。両資格とも不動産登記に関わる仕事をする点では共通していますが、試験の難易度には大きな差があります。
難易度比較のポイント
- 偏差値:土地家屋調査士60~64 vs 司法書士67~70
- 合格率:土地家屋調査士約10% vs 司法書士約4~5%
- 勉強時間:土地家屋調査士1,000~1,500時間 vs 司法書士3,000~5,000時間
- 試験科目:土地家屋調査士は民法・不動産登記法・測量 vs 司法書士は11科目
司法書士試験は法律系資格の中でも最難関クラスに位置し、合格までに3~5年かかることも珍しくありません。試験科目が11科目と多く、各科目の出題範囲も非常に広いため、膨大な学習時間が必要です。
一方、土地家屋調査士試験は科目数が少なく、合格までの期間も1~2年程度が一般的です。ただし、測量や作図といった実技的要素があるため、法律知識だけでは対応できない点が特徴です。
両資格を比較すると、司法書士の方が約2~3倍難しいといえるでしょう。もし土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンスを目指す場合は、まず土地家屋調査士を取得してから司法書士に挑戦する方が現実的です。
土地家屋調査士と司法書士の比較に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士と司法書士の違い|資格比較と選び方
土地家屋調査士vs行政書士|同程度の難易度
土地家屋調査士試験と行政書士試験は、偏差値や合格率から見ると同程度の難易度といえます。両資格とも法律系の国家資格として人気が高く、独立開業を目指す人に選ばれています。
難易度比較のポイント
- 偏差値:土地家屋調査士60~64 vs 行政書士60~62
- 合格率:土地家屋調査士約10% vs 行政書士10~13%
- 勉強時間:土地家屋調査士1,000~1,500時間 vs 行政書士800~1,200時間
- 試験内容:土地家屋調査士は測量・作図あり vs 行政書士は法律のみ
合格率と偏差値は両資格ともほぼ同じレベルですが、試験内容の性質は大きく異なります。行政書士試験は憲法・民法・行政法など法律科目が中心で、純粋に法律知識を問う試験です。一方、土地家屋調査士試験は法律知識に加えて測量計算や作図技術が求められるため、より多様な能力が必要です。
勉強時間は行政書士の方がやや短めですが、これは土地家屋調査士試験に測量や作図の練習時間が含まれるためです。法律科目だけを比較すれば、行政書士の方が試験範囲が広いといえます。
どちらを選ぶかは、自分の適性と興味によります。法律の勉強が好きで、書類作成や許認可申請の仕事に興味がある人は行政書士が向いています。一方、現地調査や測量といった屋外作業も含む仕事に興味がある人は土地家屋調査士が適しているでしょう。
土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンスを目指す人も多く、両資格の相性は良好です。不動産関連の業務で幅広いサービスを提供できるため、独立開業時の強みになります。
土地家屋調査士vs宅建|合格率・勉強時間で3倍の差
土地家屋調査士試験と宅地建物取引士(宅建士)試験を比較すると、土地家屋調査士の方が明らかに難易度が高いといえます。両資格とも不動産関連の国家資格ですが、難易度には大きな差があります。
難易度比較のポイント
- 偏差値:土地家屋調査士60~64 vs 宅建士55~57
- 合格率:土地家屋調査士約10% vs 宅建士15~17%
- 勉強時間:土地家屋調査士1,000~1,500時間 vs 宅建士300~500時間
- 試験形式:土地家屋調査士は記述式・作図あり vs 宅建士は四肢択一のみ
宅建士試験は不動産関連資格の入門編として位置づけられ、比較的短期間の学習で合格が可能です。試験は全て四肢択一式で、記述式や実技問題はありません。合格率も15%前後と、土地家屋調査士の約1.5倍高くなっています。
勉強時間の差は約3倍で、土地家屋調査士試験の方が長期的な学習計画が必要です。これは、土地家屋調査士試験が法律知識だけでなく、測量計算や作図技術といった実技的能力も求めるためです。
宅建士の資格取得後、さらにステップアップとして土地家屋調査士を目指す人も多くいます。宅建士で学んだ民法や不動産関連の知識は、土地家屋調査士試験でも活用できるため、無駄になることはありません。
ただし、難易度の差を考えると、宅建士と土地家屋調査士を同時に目指すのはおすすめできません。まずは宅建士で不動産の基礎知識を身につけ、その後に土地家屋調査士に挑戦する方が効率的でしょう。
土地家屋調査士vs測量士|難易度の比較
土地家屋調査士試験と測量士試験を比較すると、総合的な難易度は土地家屋調査士の方が高いといえます。ただし、測量士試験は測量の専門性が非常に高く、分野によっては土地家屋調査士以上の知識が求められます。
難易度比較のポイント
- 偏差値:土地家屋調査士60~64 vs 測量士58~62
- 合格率:土地家屋調査士約10% vs 測量士10~15%
- 勉強時間:土地家屋調査士1,000~1,500時間 vs 測量士1,000~1,200時間
- 試験内容:土地家屋調査士は法律+測量 vs 測量士は測量特化
測量士試験は測量に特化した専門資格で、GPS測量や航空写真測量など、土地家屋調査士試験よりも高度な測量技術が問われます。一方、土地家屋調査士試験は測量に加えて民法や不動産登記法といった法律知識も必要なため、学習範囲が広くなります。
多くの土地家屋調査士受験者は、まず測量士補の資格を取得して午前の部免除を受けてから、土地家屋調査士試験に挑戦します。測量士補の試験は測量士よりも易しく、勉強時間は300~500時間程度が目安です。
測量士の資格を既に持っている人が土地家屋調査士を目指す場合、測量部分の学習負担は軽減されますが、法律科目の学習は一から始める必要があります。逆に、土地家屋調査士から測量士へのステップアップを考える場合は、より専門的な測量知識の習得が求められるでしょう。
両資格のダブルライセンスを持つことで、測量業務と登記業務の両方を手がけられるため、業務の幅が大きく広がります。ただし、両資格を同時に目指すのは負担が大きいため、段階的に取得することをおすすめします。
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土地家屋調査士試験に必要な勉強時間は1,000時間
土地家屋調査士試験の合格に必要な勉強時間は、一般的に1,000~1,500時間とされています。ここでは、学習経験や午前の部免除の有無による勉強時間の違いと、他資格との比較について詳しく解説します。
初学者は1,000~1,200時間が目安
法律や測量の学習経験がない完全な初学者が土地家屋調査士試験に合格するには、1,000~1,200時間程度の勉強時間が必要とされています。この時間は午前の部免除を受ける前提での目安です。
1,000時間の勉強時間を確保するには、1日3時間の学習で約11ヶ月、1日2時間なら約17ヶ月(約1年5ヶ月)かかります。働きながら合格を目指す社会人の場合、平日2時間・休日5時間の学習ペースで約1年~1年半が現実的な学習期間となるでしょう。
学習時間の内訳(目安)
- 民法:200~300時間
- 不動産登記法(択一式):200~300時間
- 書式問題(土地・建物):300~400時間
- 作図練習:150~200時間
- 過去問演習・模擬試験:150~200時間
初学者が特に時間を要するのは書式問題と作図です。これらは知識を覚えるだけでなく、手を動かして繰り返し練習する必要があるため、相応の時間が必要になります。最初のうちは1問を解くのに2時間以上かかることも珍しくありません。
また、法律初学者の場合は民法の理解に時間がかかります。民法は日常生活に関わる法律ですが、法律特有の考え方や用語に慣れるまでに時間が必要です。焦らず基礎からしっかり学習することが、結果的に合格への近道となります。
測量士補取得も含めると約1,200時間必要
土地家屋調査士試験では、測量士補の資格を取得して午前の部免除を受けるのが一般的です。測量士補の取得も含めた総学習時間は、約1,200~1,500時間となります。
測量士補試験の合格に必要な勉強時間は300~500時間程度です。測量の基礎知識から学ぶ初学者の場合、400~500時間を見込んでおくと良いでしょう。測量士補試験は毎年5月に実施されるため、多くの受験者は年明けから勉強を始めて5月の測量士補試験に合格し、その後10月の土地家屋調査士試験に向けて学習を継続します。
測量士補取得を含めた学習スケジュール例
- 1~5月(5ヶ月):測量士補の学習(400時間)
- 6~10月(5ヶ月):土地家屋調査士試験の学習(800時間)
- 合計:約1,200時間
このスケジュールであれば、1年間で両試験の合格を目指せます。測量士補で学んだ測量の知識は土地家屋調査士試験の書式問題でも活用できるため、無駄になることはありません。
ただし、測量士補を取得せずに土地家屋調査士試験に挑戦する場合は、午前の部の学習時間も追加で必要になります。午前の部の対策に300~400時間を要するため、総学習時間は1,300~1,600時間程度に増加します。
効率的に合格を目指すなら、まず測量士補を取得して午前の部免除を受けることをおすすめします。午前の部は平面測量・写真測量など専門性が高く、土地家屋調査士の実務で使用頻度が低い内容も含まれるため、免除を受けた方が効率的です。
勉強時間を他資格と比較した場合の位置づけ
土地家屋調査士試験に必要な勉強時間1,000~1,500時間を、他の主要国家資格と比較してみましょう。
主な国家資格の勉強時間比較
- 司法書士:3,000~5,000時間
- 公認会計士:3,000~4,000時間
- 税理士:2,500~4,000時間
- 社会保険労務士:1,000~1,500時間
- 土地家屋調査士:1,000~1,500時間
- 行政書士:800~1,200時間
- 宅地建物取引士:300~500時間
- マンション管理士:500~800時間
この比較から分かるように、土地家屋調査士試験は中堅から難関の国家資格の中間に位置します。司法書士や公認会計士ほどではないものの、行政書士よりもやや多めの勉強時間が必要です。
勉強時間が他資格と比べて多い理由は、法律知識と測量技術の両方を習得する必要があるためです。行政書士試験は法律のみ、宅建士試験は不動産関連法規のみですが、土地家屋調査士試験は法律・測量・作図という異なる分野を全て学ぶ必要があります。
働きながら資格取得を目指す場合、1,000~1,500時間の確保は決して容易ではありません。しかし、計画的に学習時間を確保し、効率的な勉強法を実践すれば、1~2年での合格は十分に可能です。
土地家屋調査士の勉強時間に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験に必要な勉強時間|合格までのスケジュール
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由①:択一と書式の基準点制度
土地家屋調査士試験が難しいとされる最大の理由の一つが、択一式と記述式(書式)の両方に基準点が設定されている点です。この制度により、どちらか一方が得意でも合格できない仕組みになっています。
択一式・記述式それぞれに基準点が設定
土地家屋調査士試験の午後の部では、択一式20問(満点20点)と記述式2問(満点50点)が出題されます。合格するには総得点が合格点を超えるだけでなく、択一式・記述式それぞれで基準点以上を取る必要があります。
2023年度の基準点は以下の通りでした。
2023年度筆記試験の基準点
- 択一式の基準点:14.5点(満点20点)→ 正答率72.5%
- 記述式の基準点:34.0点(満点50点)→ 正答率68.0%
- 総合点の合格ライン:68.0点(満点70点)→ 正答率97.1%
この基準点制度により、例えば択一式で満点20点を取っても、記述式が基準点の34点に届かなければ不合格になります。逆に記述式で高得点を取っても、択一式が基準点未達なら合格できません。
基準点は毎年変動しますが、おおむね択一式で7~8割、記述式で6.5~7.5割程度の正答率が必要です。両方の分野で安定して高得点を取る必要があるため、バランスの良い学習が求められます。
合計点が高くても基準点未達で不合格になる
基準点制度の厳しさは、合計点が高くても不合格になるケースがある点です。例えば、択一式18点・記述式49点で合計67点を取った場合を考えてみましょう。
合計67点は決して低い点数ではありませんが、2023年度の基準点(択一式14.5点、記述式34.0点)と照らし合わせると、総合的には合格ラインに達しています。しかし、もし択一式が13点(記述式54点で合計67点)だった場合、択一式の基準点14.5点に届かないため不合格となります。
不合格になるパターン例
- パターン1:択一式12点、記述式48点、合計60点 → 択一式が基準点未達で不合格
- パターン2:択一式19点、記述式32点、合計51点 → 記述式が基準点未達で不合格
- パターン3:択一式14点、記述式54点、合計68点 → 2023年度の場合、択一式が基準点14.5点未達で不合格
この制度により、得意分野で点数を稼いで苦手分野をカバーする戦略が通用しません。択一式・記述式の両方で確実に基準点を超える実力を身につける必要があります。
実際の受験者の中には、「記述式は得意だったのに択一式で足切りされた」「択一式は順調だったのに書式問題で時間が足りず基準点に届かなかった」という声も多く聞かれます。基準点制度が土地家屋調査士試験の難易度を高めている大きな要因といえるでしょう。
両方の分野でバランス良く得点する必要性
基準点制度があるため、土地家屋調査士試験では択一式と記述式の両方をバランス良く対策する必要があります。どちらか一方に偏った学習では合格できません。
効果的な学習戦略としては、まず択一式で確実に基準点を超える実力をつけることです。択一式は知識問題が中心なので、過去問を繰り返し解くことで正答率を上げられます。目安としては、過去問で8割以上の正答率を安定して取れるレベルを目指しましょう。
記述式については、早い段階から書式問題に取り組むことが重要です。書式問題は知識だけでなく、計算や作図の技術も必要なため、習得に時間がかかります。最低でも50問以上の書式問題を解いて、パターンに慣れておく必要があります。
また、本番の試験では時間配分も重要です。択一式に時間をかけすぎて記述式が未完成になる、あるいは記述式に集中しすぎて択一式の見直しができないといった失敗を防ぐため、模擬試験で時間配分の感覚を掴んでおきましょう。
両分野のバランスを取るには、定期的に自分の得点を確認し、弱点を補強することが大切です。予備校の模擬試験や答練を活用して、本番と同じ形式で実力を測ることをおすすめします。
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由②:試験時間が厳しい
土地家屋調査士試験の難易度を高めているもう一つの大きな要因が、試験時間の厳しさです。午後の部は2時間30分という限られた時間の中で、択一式・記述式・作図の全てを完成させる必要があります。
午後の部は2時間30分で全問題を解く必要
土地家屋調査士試験の午後の部は、13時30分から16時00分までの2時間30分(150分)で実施されます。この時間内に以下の全ての問題を解く必要があります。
午後の部の出題内容
- 択一式問題:20問(民法3問、登記法・調査士法等17問)
- 記述式問題:土地の書式1問、建物の書式1問
- 作図:土地1枚、建物2枚の合計3枚
150分という時間は一見長く感じるかもしれませんが、実際に解いてみると非常にタイトです。特に記述式問題は、問題文を読み、計算を行い、申請書を作成し、図面を作図するという一連の作業に時間がかかります。
多くの受験者が「時間が足りない」と感じており、時間不足が不合格の主な原因の一つとなっています。実際、記述式問題を最後まで解けずに時間切れになってしまう受験者も少なくありません。
合格者の多くは、本番までに何度も模擬試験を受けて時間配分の感覚を身につけています。自分に最適な時間配分を見つけ、それを本番で実行できるように練習することが重要です。
択一20問・書式2問・作図3枚を時間内に完成
150分で全ての問題を解くには、各問題への時間配分が重要になります。一般的な時間配分の目安は以下の通りです。
標準的な時間配分(目安)
- 択一式20問:30~40分(1問あたり1.5~2分)
- 記述式(土地):50~60分
- 記述式(建物):40~50分
- 見直し・調整:10~20分
この時間配分は受験者の得意不得意によって調整が必要です。択一式が得意な人は25~30分で終わらせて記述式に多くの時間を割く、逆に書式が得意な人は択一式にやや時間をかけて確実性を高めるなど、自分に合った配分を見つけることが大切です。
記述式問題では、土地と建物のどちらから解くかも戦略の一つです。多くの受験者は土地から解きますが、問題の難易度によっては建物から解く方が有利な場合もあります。過去問演習の中で、自分に合った解答順序を確立しておきましょう。
作図については、定規や電卓などの道具の使い方に習熟することで時間短縮が可能です。作図に慣れていない初学者は、最初は1枚の作図に1時間以上かかることもありますが、練習を重ねることで30分程度で完成できるようになります。
時間配分の失敗が不合格の主な原因
土地家屋調査士試験で不合格になる理由として最も多いのが、時間配分の失敗です。以下のような失敗パターンが典型的です。
よくある時間配分の失敗例
- 択一式に時間をかけすぎて記述式が未完成になる
- 土地の書式に時間を取られて建物が手つかずになる
- 計算ミスに気づいて修正に時間を費やし、作図が未完成になる
- 見直しの時間が取れず、単純なミスに気づけない
特に初めて受験する人は、本番の緊張や焦りから普段の練習通りの時間配分ができないことがあります。模擬試験で何度も本番と同じ時間感覚を体験し、時間配分を体に染み込ませることが重要です。
時間配分で失敗しないためには、以下のポイントを意識しましょう。
時間配分成功のポイント
- 択一式は迷った問題に時間をかけすぎず、一旦飛ばして後で戻る
- 記述式の計算で行き詰まったら、別の問題に移って時間を有効活用する
- 作図は完璧を目指さず、減点されない程度の精度で効率的に仕上げる
- 時計を頻繁に確認し、予定時刻を過ぎていたら潔く次の問題に移る
時間配分の練習には、予備校の模擬試験や市販の予想問題集を活用すると効果的です。本番と同じ2時間30分で解く練習を、試験前に最低でも5回以上は行うことをおすすめします。
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由③:民法の範囲が広い
土地家屋調査士試験では、民法から3問が出題されます。わずか3問のためとはいえ、民法の出題範囲は非常に広く、法律初学者にとって大きな壁となっています。
民法は総則・物権・相続から各1問出題
土地家屋調査士試験の択一式では、民法から3問が出題されます。出題範囲は主に以下の分野からです。
民法の主な出題範囲
- 総則編:権利能力、意思表示、代理、時効など
- 物権編:所有権、用益物権、担保物権、占有権など
- 相続編:相続人、相続分、遺言、遺産分割など
これら3つの分野から各1問ずつ出題されるのが一般的です。各分野とも条文数が多く、判例や学説も複雑なため、3問のためとはいえ学習範囲は決して狭くありません。
民法は全1,050条近くある大法典で、その中から土地家屋調査士試験に関連する部分だけでも数百条に及びます。これら全てを理解し、問題に対応できるレベルまで習得するには、相当な学習時間が必要です。
また、民法は抽象的な概念や理論が多く、暗記だけでは対応できません。条文の趣旨を理解し、具体的な事例にどう適用するかを考える力が求められます。法律初学者にとっては、この法律的思考に慣れることが最初の難関となるでしょう。
3問のために広範囲を学習する必要がある
土地家屋調査士試験における民法の配点は、択一式20問中の3問に過ぎません。しかし、どの分野から出題されるか事前には分からないため、総則・物権・相続の全範囲を学習しておく必要があります。
これは学習効率の面で大きな負担となります。例えば、相続法の勉強に50時間を費やしても、試験では1問(1点)しか出題されません。費やした時間に対するリターンが小さいため、「民法は捨てる」という戦略を取る受験者もいます。
しかし、基準点制度がある以上、択一式で確実に基準点を超えるには民法の3問も無視できません。特に、民法以外の問題で取りこぼしがあった場合、民法の3問が合否を分けることもあります。
効率的に民法を学習するには、過去問の出題傾向を分析し、頻出テーマを優先的に学習することが重要です。全範囲を完璧に理解するのは難しいため、まずは頻出分野を確実に押さえ、余裕があれば出題可能性の低い分野まで手を広げるという戦略が現実的でしょう。
法律初学者にとっての民法の壁
法律を初めて学ぶ人にとって、民法は特に高い壁となります。日常生活では使わない法律用語や、独特の論理展開に慣れるまでに時間がかかるためです。
法律初学者が苦労するポイント
- 法律用語の理解(善意・悪意、物権、債権、瑕疵など)
- 条文の読み方と解釈の仕方
- 要件と効果の関係性の把握
- 複数の条文を組み合わせた問題への対応
- 判例の理解と事例への適用
特に、「善意」「悪意」などの法律用語は、日常的な意味とは異なる法律上の定義があるため、混乱しがちです。また、条文は独特の言い回しで書かれているため、慣れるまでは読むだけでも時間がかかります。
法律初学者が民法を効率的に学習するには、入門書や予備校の講義を活用することをおすすめします。独学で条文を読むだけでは理解が難しい部分も、講師の説明を聞くことでスムーズに理解できることが多いでしょう。
また、民法は不動産登記法の理解にも必要な基礎知識となります。民法の物権編や相続編の知識がないと、登記法の問題も正確に解けません。そのため、民法の学習は土地家屋調査士試験全体の基礎固めとして重要な意味を持っています。
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由④:書式問題の複雑さ
土地家屋調査士試験で最も難しいとされるのが記述式の書式問題です。計算・作図・申請書作成という3つの要素を全て正確にこなす必要があり、高度な総合力が求められます。
計算・作図・申請書作成の全てが必要
土地家屋調査士試験の書式問題(記述式)は、単なる知識問題ではなく、実務に近い形式の総合問題です。1問を解くには以下の全ての作業が必要になります。
書式問題で求められる作業
- 問題文と添付資料の読み込み(10~15分)
- 測量計算(座標計算、面積計算など)(15~20分)
- 作図(トレース、地積測量図の作成など)(15~20分)
- 申請書の作成(登記の目的、原因、添付情報など)(10~15分)
- 全体の見直しと調整(5~10分)
これら全てを50分程度(土地)または40分程度(建物)で完成させる必要があります。一つのミスが連鎖的に他の部分にも影響するため、正確性とスピードの両立が求められます。
書式問題の難しさは、単に正解を出すだけでなく、限られた時間内に一定の品質で仕上げる必要がある点です。計算が合っていても作図が雑だったり、作図は完璧でも申請書に不備があったりすると減点されます。
また、書式問題は実務の知識も必要です。例えば、どのような場合に境界確定が必要か、分筆登記と合筆登記の違いは何か、といった実務的な判断も問われます。単に計算や作図ができるだけでなく、土地家屋調査士の業務内容も理解しておく必要があります。
三角関数などの数学知識が求められる
土地家屋調査士試験の書式問題では、測量計算を行うために数学の知識が必要です。特に三角関数(sin、cos、tan)や座標計算は頻出で、これらに不慣れだと大きな時間ロスになります。
書式問題で使用する主な数学知識
- 三角関数(正弦、余弦、正接)
- 座標計算(X座標、Y座標の計算)
- 面積計算(三斜求積、座標法など)
- 辺長計算(平方根の計算)
- 角度の計算(方位角、夾角など)
これらの計算は全て電卓を使って行いますが、計算式自体を理解していないと正確な答えを出せません。特に、文系出身者や長年数学から離れていた社会人にとっては、これらの数学知識を思い出す(または新たに学ぶ)ことが最初のハードルとなります。
三角関数の計算では、関数電卓を使用します。関数電卓の使い方に慣れていないと、計算ミスや時間ロスにつながるため、試験前に十分な練習が必要です。また、電卓の種類によって操作方法が異なるため、自分が使う電卓で繰り返し練習することが重要です。
数学が苦手な人でも、書式問題で使う数学は限られた範囲なので、パターンを覚えてしまえば対応可能です。予備校のテキストや問題集で出題パターンを把握し、同じ形式の問題を繰り返し解くことで、徐々に計算スピードと正確性を上げられます。
製図用具の使い方に習熟する必要性
土地家屋調査士試験の書式問題では、作図を行うために製図用具を使用します。定規、三角定規、コンパス、ディバイダーなどの道具を使いこなす技術も、合格には不可欠です。
主な製図用具と用途
- 三角スケール(縮尺定規):図面の寸法を測定・作図
- 三角定規:平行線や垂直線の作図
- コンパス:円弧や円の作図
- ディバイダー:距離の測定と転写
- 製図用シャープペン:0.3mm~0.5mmの細い線を引く
これらの道具の使い方に不慣れだと、作図に時間がかかったり、線が曲がったり太さが不均一になったりして減点されます。特に初学者は、製図の練習だけで数十時間を費やすことも珍しくありません。
作図の技術は、実際に手を動かして練習するしか上達の方法がありません。最初は1枚の作図に1時間以上かかることもありますが、50枚、100枚と練習を重ねることで、徐々にスピードと精度が向上します。
また、製図用具は自分に合ったものを選ぶことも重要です。例えば、三角スケールは様々なメーカーから発売されており、目盛りの見やすさや使い心地が異なります。試験本番で初めて使う道具ではなく、練習の段階から同じ道具を使い続けることで、道具の扱いに習熟できます。
作図の品質を上げるには、予備校の添削指導を受けることも有効です。自分では気づかない線の曲がりや太さの不均一などを指摘してもらうことで、改善点が明確になります。
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由⑤:法律と測量の両方が必須
土地家屋調査士試験の最大の特徴は、法律知識と測量技術の両方を習得する必要がある点です。文系・理系の両分野にまたがるため、どちらか一方が得意でも合格は難しく、独学での対策も困難です。
法律知識と測量技術の両方を習得
土地家屋調査士試験では、以下の両分野で高いレベルの能力が求められます。
法律分野(文系的能力)
- 民法(総則・物権・相続)
- 不動産登記法
- 土地家屋調査士法
- その他関連法規(建物の区分所有等に関する法律など)
測量・作図分野(理系的能力)
- 測量計算(三角関数、座標計算、面積計算)
- 作図技術(地積測量図、建物図面の作成)
- 製図用具の操作技術
- 測量の実務知識
これら両方の分野で基準点以上を取る必要があるため、どちらか一方だけが得意でも合格できません。文系出身者は測量計算や作図に苦戦し、理系出身者は民法や登記法の理解に時間がかかる傾向があります。
他の法律系資格と比較すると、この両分野にまたがる性質が土地家屋調査士試験を特別に難しくしています。司法書士や行政書士は主に法律知識が問われ、宅建士は不動産関連の法規が中心です。一方、土地家屋調査士試験は法律と測量という異なる専門性を同時に求めるため、学習負担が大きくなります。
文系・理系の両分野にまたがる試験
土地家屋調査士試験が文系・理系の両分野にまたがることは、受験者にとって様々な影響をもたらします。
文系出身者の課題
- 数学(三角関数、座標計算)への苦手意識
- 関数電卓の使い方に不慣れ
- 製図の経験がなく、道具の扱いに時間がかかる
- 測量の専門用語や概念の理解に時間を要する
理系出身者の課題
- 法律特有の論理展開や用語に不慣れ
- 民法の抽象的な概念の理解が難しい
- 条文の読み方や解釈の仕方が分からない
- 登記実務の知識が不足している
このように、どちらの出身者にも苦手分野が存在します。合格するには、自分の苦手分野を早期に克服し、得意分野をさらに伸ばすバランスの取れた学習が必要です。
文系出身者は、数学への苦手意識を克服することが最初のステップです。土地家屋調査士試験で使う数学は、高校数学の三角関数が中心で、それほど高度ではありません。予備校の測量計算講座などを活用し、基礎から学び直すことで対応可能です。
理系出身者は、法律の学習方法を身につけることが重要です。法律は理系科目と違い、公式を覚えて当てはめれば解けるわけではありません。条文の趣旨を理解し、事例に適用する思考プロセスを習得する必要があります。予備校の講義や基本書を活用して、法律的な思考方法に慣れることが大切です。
独学での対策が難しい理由
土地家屋調査士試験は、独学での合格が特に難しい資格の一つといわれています。その主な理由は以下の通りです。
独学が難しい理由
- 教材が少ない:市販のテキストや問題集が他の資格に比べて少なく、独学用の教材が不足している
- 作図の添削が必要:作図の品質は自分では判断しにくく、第三者の添削が不可欠
- 計算のコツが掴みにくい:測量計算の効率的な解法は、独学では発見しにくい
- 時間配分の指導が必要:限られた時間内で全問題を解く技術は、指導者のアドバイスが有効
- 法律の理解が難しい:法律初学者が独学で民法や登記法を理解するのは困難
特に、作図の添削は独学では対応が難しい部分です。自分では丁寧に書いたつもりでも、線の太さが不均一だったり、わずかにずれていたりすることがあります。これらは第三者に見てもらわないと気づきにくく、本番で減点される原因となります。
また、書式問題の解法には様々なテクニックやコツがあり、これらは予備校の講師から直接学ぶことで効率的に習得できます。例えば、計算の順序を工夫して時間を短縮する方法や、作図で優先すべきポイントなどは、経験豊富な講師の指導が大きな助けとなります。
独学で挑戦する場合でも、最低限、通信講座の添削サービスや模擬試験は利用することをおすすめします。完全な独学よりも、部分的にでもプロの指導を受けた方が、合格の可能性は大きく高まるでしょう。
土地家屋調査士試験の難易度を下げる午前の部免除制度
土地家屋調査士試験の難易度を大きく下げる方法として、午前の部免除制度の活用があります。測量士補の資格を取得することで午前の部が免除され、学習負担を軽減できます。
測量士補で午前の部を免除できる
土地家屋調査士試験は、午前の部(平面測量・作図)と午後の部(択一式・記述式)で構成されています。このうち午前の部は、測量士・測量士補・一級建築士の資格を持っている人は免除されます。
午前の部免除の条件
- 測量士の資格を持っている
- 測量士補の資格を持っている
- 一級建築士の資格を持っている
この中で最も取得しやすいのが測量士補です。測量士補試験は毎年5月に実施され、合格率は25~35%程度で、土地家屋調査士試験よりも難易度が低くなっています。勉強時間も300~500時間程度で合格可能なため、多くの土地家屋調査士受験者がまず測量士補を取得します。
午前の部免除を受けることで、土地家屋調査士試験の学習範囲を大きく絞ることができます。午前の部の出題内容は、GPS測量や写真測量など、土地家屋調査士の実務であまり使われない専門的な測量技術も含まれています。これらを学習する時間を、午後の部の対策に充てられる点が大きなメリットです。
測量士補の学習内容は、土地家屋調査士試験の書式問題でも役立ちます。測量の基礎知識や計算方法は共通しているため、測量士補の勉強は決して無駄にはなりません。
午前免除により4時間半の長丁場を回避
午前の部免除を受けることで、試験時間の負担も大きく軽減されます。午前の部免除がない場合、土地家屋調査士試験は以下のような長時間の試験となります。
免除なしの試験スケジュール
- 午前の部:10時00分~12時00分(2時間)
- 午後の部:13時30分~16時00分(2時間30分)
- 合計:4時間30分の試験
4時間半の長丁場は、集中力を維持するだけでも大変です。午前の部で疲労が蓄積すると、午後の部でパフォーマンスが落ちる可能性があります。特に、午前の部の出来が悪かった場合、その動揺が午後の部に影響することもあります。
免除ありの試験スケジュール
- 午後の部のみ:13時30分~16時00分(2時間30分)
午前の部免除を受ければ、2時間30分の試験に集中するだけで済みます。体力的・精神的な負担が大幅に軽減され、午後の部により集中できるでしょう。
また、午前の部がないため、試験当日の朝はゆっくり過ごせます。午前中に最終確認の勉強をしたり、リラックスして本番に備えたりすることで、ベストな状態で午後の部に臨めます。
試験時間の短縮は、特に社会人受験者にとって大きなメリットです。1日がかりの試験よりも、半日で終わる試験の方が仕事との両立もしやすくなります。
ほとんどの合格者は午前免除を利用
土地家屋調査士試験の合格者の大多数は、午前の部免除を利用しています。法務省の統計によると、合格者の約9割以上が午前免除を受けた受験者です。
これは、午前の部免除がいかに合格に有利かを示す明確なデータです。午前の部を受験しながら合格する人はごく少数であり、効率的に合格を目指すなら午前免除の利用はほぼ必須といえるでしょう。
午前免除を利用するメリットのまとめ
- 学習範囲を絞れる(午後の部に集中できる)
- 試験時間が半分になる(体力・精神的負担の軽減)
- 測量士補で学んだ知識が書式問題でも活用できる
- 合格率が実質的に高まる(合格者の9割以上が免除利用者)
測量士補の取得から土地家屋調査士試験合格までの標準的なスケジュールは、1~1.5年程度です。年明けから測量士補の勉強を始めて5月に合格し、その後10月の土地家屋調査士試験を受験するパターンが一般的です。
もし測量士補に不合格だった場合でも、測量の基礎知識は身についているため、土地家屋調査士試験の書式問題対策に活かせます。翌年再度測量士補を受験して免除を獲得する戦略も有効でしょう。
土地家屋調査士の午前の部免除に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験の午前の部免除制度|測量士補資格で免除される条件
土地家屋調査士試験の難易度を攻略する勉強法
土地家屋調査士試験は難関資格ですが、正しい勉強法と戦略で合格を目指せます。ここでは、効率的な学習順序と具体的な対策方法について解説します。
民法から始める効率的な学習順序
土地家屋調査士試験の学習では、科目の順序が重要です。効率的な学習順序は以下の通りです。
推奨される学習順序
- 民法(総則・物権・相続):2~3ヶ月
- 不動産登記法(択一式):2~3ヶ月
- 書式問題の基礎:1~2ヶ月
- 書式問題の応用・過去問演習:3~4ヶ月
- 総合的な模擬試験・答練:1~2ヶ月
民法から始める理由は、民法が不動産登記法の基礎となるためです。物権や相続の概念を理解していないと、登記法の学習で躓いてしまいます。まず民法でしっかり基礎を固めてから、登記法に進むことで理解が深まります。
登記法の択一式対策が一通り終わったら、早めに書式問題に着手することが重要です。書式問題は慣れるまでに時間がかかるため、遅くとも試験の4~5ヶ月前には開始したいところです。最初は解答に2時間以上かかることもありますが、徐々にスピードが上がっていきます。
書式問題に慣れてきたら、択一式と書式を並行して学習します。午後の部は両方が出題されるため、どちらか一方に偏らないバランスの取れた学習が必要です。週の前半は択一式、後半は書式といったペース配分が効果的でしょう。
試験の2~3ヶ月前からは、本番を想定した模擬試験を定期的に受けることをおすすめします。時間配分の練習や弱点の発見ができ、本番での実力発揮につながります。
書式問題は早めに着手して練習量を確保
土地家屋調査士試験で最も重要なのが書式問題の対策です。書式問題は以下の理由から、早めの着手と十分な練習量の確保が不可欠です。
書式問題の練習が重要な理由
- 計算・作図・申請書作成の全てに習熟が必要
- 最初は1問に2時間以上かかるが、練習で時間短縮できる
- 作図の品質を上げるには数十枚の練習が必要
- パターンを覚えることで解答スピードが向上する
書式問題の目標練習量は、最低でも土地30問・建物30問の合計60問です。できれば土地50問・建物50問の合計100問を解くことが理想的です。これだけの問題数をこなすには、少なくとも3~4ヶ月は必要です。
書式問題の練習では、同じ問題を繰り返し解くことも有効です。1回目は2時間かかった問題を、2回目は1時間、3回目は50分で解けるようになることで、時間短縮のコツが身につきます。
また、書式問題は実際に手を動かして作図することが重要です。答えを見るだけでは作図技術は向上しません。面倒でも、全ての問題で実際に図面を作成し、製図用具の扱いに習熟しましょう。
予備校や通信講座を利用する場合は、書式の添削サービスを積極的に活用してください。自分では気づかない作図のミスや、より効率的な解法を教えてもらえます。
予備校・通信講座の活用で合格率を上げる
前述の通り、土地家屋調査士試験は独学での合格が難しい資格です。予備校や通信講座を活用することで、合格率を大きく高められます。
予備校・通信講座のメリット
- 体系的なカリキュラムで効率的に学習できる
- 書式問題の添削指導が受けられる
- 法律科目の講義で理解が深まる
- 模擬試験で本番の感覚を掴める
- 学習仲間との情報交換ができる(通学の場合)
特に土地家屋調査士試験で定評があるのが、東京法経学院の講座です。合格者の多くが東京法経学院を利用しており、書式の添削指導や模擬試験の質が高いと評価されています。
通信講座を選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。
通信講座選びのポイント
- 書式の添削回数が十分か(最低10回以上が望ましい)
- 模擬試験が含まれているか
- 質問サポートが充実しているか
- 過去の合格実績はどうか
- 教材の質は高いか(テキスト・問題集・講義動画)
予備校や通信講座の費用は決して安くありませんが、独学で不合格を繰り返して受験料を払い続けるよりも、最初から講座を利用して短期合格を目指す方が、結果的に費用も時間も節約できます。
働きながら学習する社会人の場合、通信講座がおすすめです。自分のペースで学習を進められ、通学時間も不要です。ただし、通信講座は自己管理が求められるため、学習計画をしっかり立てて継続することが重要です。
土地家屋調査士の勉強法に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の効果的な勉強法|科目別対策と時間管理術
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土地家屋調査士試験の難易度に関連するよくある質問(FAQ)
- 土地家屋調査士試験の難易度は他の資格と比べてどのくらいですか?
-
土地家屋調査士試験の難易度は、偏差値60~64で行政書士と同程度、司法書士よりは易しく、宅建士よりは明らかに難しいレベルです。合格率は約10%で、合格までの平均受験回数は3回程度とされています。法律知識と測量技術の両方を習得する必要があるため、単一分野の資格よりも学習負担が大きいといえるでしょう。国家資格の中では「難関」に分類される試験です。
- 土地家屋調査士試験に独学で合格できますか?
-
土地家屋調査士試験は独学での合格が特に難しい資格の一つです。市販教材が少ないこと、書式問題の作図に第三者の添削が必要なこと、法律初学者が独学で民法や登記法を理解するのが困難なことが主な理由です。完全独学で合格する人もいますが、少数派です。効率的に合格を目指すなら、少なくとも通信講座の添削サービスや模擬試験は利用することをおすすめします。予備校や通信講座を活用することで、合格率は大きく高まるでしょう。
- 土地家屋調査士試験の勉強時間はどのくらい必要ですか?
-
土地家屋調査士試験に必要な勉強時間は、一般的に1,000~1,500時間とされています。法律や測量の学習経験がない完全な初学者の場合、1,000~1,200時間が目安です。測量士補の取得も含めると約1,200~1,500時間必要になります。1日3時間の学習で約11ヶ月、1日2時間なら約17ヶ月かかる計算です。働きながら合格を目指す社会人の場合、平日2時間・休日5時間の学習ペースで1~2年での合格を目指すのが現実的でしょう。
- 土地家屋調査士試験で一番難しいのはどの科目ですか?
-
土地家屋調査士試験で最も難しいとされるのは、記述式の書式問題です。計算・作図・申請書作成という3つの要素を全て正確にこなす必要があり、限られた時間内に完成させるには高度な総合力が求められます。三角関数などの数学知識、製図用具の操作技術、登記実務の知識が全て必要で、習得に最も時間がかかる分野です。択一式の科目では、民法が法律初学者にとって大きな壁となります。広範囲を学習する必要があり、法律特有の論理展開に慣れるまで時間がかかるためです。
- 土地家屋調査士試験の偏差値はどのくらいですか?
-
土地家屋調査士試験の偏差値は60~64程度とされています。これは国家資格の中でも「難関」に分類されるレベルで、大学受験に例えるとMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)や上智大学レベルに相当します。他の国家資格と比較すると、司法書士(偏差値67~70)よりは易しく、行政書士(偏差値60~62)と同程度、宅建士(偏差値55~57)よりは明らかに高い難易度です。偏差値60~64は、受験者全体の上位約15~20%に入る必要があることを意味します。
- 土地家屋調査士試験は働きながらでも合格できますか?
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土地家屋調査士試験は働きながらでも十分合格可能です。実際、多くの合格者が仕事と両立しながら1~2年で合格を達成しています。平日は朝1時間・夜2時間、休日は5~6時間の学習時間を確保することで、年間1,000~1,500時間の学習が可能です。ポイントは、計画的に学習時間を確保することと、予備校や通信講座を活用して効率的に学習することです。測量士補で午前の部免除を受けることで、学習負担を軽減できる点も働く人には有利です。ただし、相応の努力と時間管理が必要であることは覚悟しておきましょう。
- 土地家屋調査士試験の難易度は年々上がっていますか?
-
土地家屋調査士試験の難易度は、長期的に見ると若干上昇傾向にあると言われています。受験者の質が向上していることや、予備校のカリキュラムが充実して全体のレベルが上がっていることが理由です。ただし、合格率は毎年9~11%程度で安定しており、急激な難化はしていません。相対評価方式のため、受験者全体のレベルが上がれば基準点も上昇しますが、適切な対策を行えば合格は十分可能です。過去問を分析し、頻出分野を重点的に学習することで、難易度上昇にも対応できるでしょう。
まとめ:土地家屋調査士試験は難関だが正しい対策で合格可能
本記事では、土地家屋調査士試験の難易度について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 合格率約10%・偏差値60~64の難関資格:土地家屋調査士試験は行政書士と同程度の難易度で、宅建士の約3倍難しい試験です。相対評価方式により上位400名程度しか合格できず、平均受験回数は3回程度です。
- 法律と測量の両分野が必須で学習負担が大きい:民法・不動産登記法などの法律知識に加えて、測量計算や作図技術も習得する必要があります。文系・理系の両分野にまたがるため、どちらか一方が得意でも合格は難しく、総合的な能力が求められます。
- 基準点制度・試験時間・書式問題の複雑さが難易度を高める:択一式と記述式の両方に基準点が設定されているため、バランスの良い得点が必要です。また、2時間30分という限られた試験時間の中で全問題を解く必要があり、書式問題では計算・作図・申請書作成の全てを正確にこなす高度な総合力が求められます。
土地家屋調査士試験は確かに難関資格ですが、正しい対策を行えば合格は十分可能です。まず測量士補を取得して午前の部免除を受け、予備校や通信講座を活用して効率的に学習することをおすすめします。民法から順に学習を始め、書式問題には早めに着手して十分な練習量を確保しましょう。土地家屋調査士の勉強時間や土地家屋調査士の勉強法を参考に、計画的に学習を進めることで、1~2年での合格を目指せます。
本記事を通じて、土地家屋調査士試験の難易度と効果的な対策方法を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、土地家屋調査士試験合格に向けて具体的な一歩を踏み出しましょう。
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