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司法試験の短答式試験とは?科目・足切り点・対策方法を詳しく解説

司法試験の短答式試験について調べているあなたへ。「短答式試験はどのような形式なのか」「足切り点は何点なのか」「どのように対策すればよいのか」という疑問は、試験の仕組みと効果的な学習方法を理解することで解決できます。本記事では、司法試験の短答式試験の基本情報、科目構成と配点、足切り制度の詳細、合格点と合格率、効果的な勉強法について、最新のデータを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、司法試験合格に向けて、短答式試験対策の具体的な計画を立てましょう。

この記事を読むとわかること

  • 司法試験の短答式試験の科目構成と配点バランス
  • 足切り制度の詳細と回避するための戦略
  • 合格点の目安と近年の合格率データ
  • 過去問演習を中心とした効果的な対策方法

押さえておきたい3つのポイント

  1. 短答式試験は3科目175点満点のマークシート方式:憲法50点、民法75点、刑法50点の3科目で構成され、論文式試験の前に実施される基礎試験です。
  2. 各科目40%未満で足切り:憲法20点、民法30点、刑法20点を下回ると即不合格となるため、苦手科目を作らないバランスの取れた学習が求められます。
  3. 合格点は100点前後で合格率は70~80%台:論文式試験に比べて合格率は高いものの、足切りリスクがあるため油断は禁物です。過去問演習を中心に、確実な得点力を身につけましょう。

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目次

司法試験の短答式試験とは?マークシート方式の基礎試験

司法試験の短答式試験は、法律の基礎知識を問うマークシート方式の試験です。論文式試験の前に実施され、一定の得点に達しない場合は論文式試験が採点されない足切り制度が設けられています。このセクションでは、短答式試験の基本情報と司法試験における位置づけについて解説します。

短答式試験の基本情報(3科目・マークシート方式)

司法試験の短答式試験は、憲法、民法、刑法の3科目で構成されています。全ての科目がマークシート方式で実施され、5肢択一形式が中心となります。試験時間は合計175分で、憲法が50分(20問程度)、民法が75分(37問程度)、刑法が50分(20問程度)となっています。

各科目は条文や判例の正確な知識を問う問題が中心で、単なる暗記だけでなく、法的思考力や判断力も求められます。民法は出題範囲が広く、37問程度と問題数も多いため、特に重点的な対策が欠かせません。

短答式試験は毎年5月中旬に実施され、論文式試験より前に行われます。司法試験の日程を確認し、計画的に学習を進めることが大切です。

司法試験における短答式試験の位置づけ

短答式試験は、司法試験の中で基礎的な法律知識を確認する役割を担っています。総合得点における配点比率は、短答式試験と論文式試験で1対8となっており、論文式試験が重視されています。しかし、短答式試験で足切りラインを下回ると、論文式試験の答案は採点されず、即座に不合格となります。

また、短答式試験の得点は総合得点に加算されるため、短答式試験で高得点を取ることは最終合格にも有利に働きます。論文式試験対策に重点を置きながらも、短答式試験を軽視することはできません。

司法試験の基本情報を理解することで、短答式試験がどのような位置づけにあるのか、より明確に把握できます。試験全体の流れを理解した上で、短答式試験対策に取り組むことが大切です。

予備試験の短答式試験との違い(科目数の差)

司法試験の短答式試験は3科目(憲法・民法・刑法)ですが、予備試験の短答式試験は7科目(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・一般教養科目)で構成されています。予備試験の方が科目数が多く、一般教養科目も含まれるため、対策範囲が広くなります。

司法試験の短答式試験は、法科大学院で2年間(既修者コース)または3年間(未修者コース)の学習を経た受験者を対象としているため、科目が絞られています。一方、予備試験は法科大学院を経由しない受験者が対象であるため、より広範囲の知識が求められます。

司法試験の短答式試験の合格率は70~80%台で推移していますが、予備試験の短答式試験の合格率は20%前後と大きく異なります。科目数の違いだけでなく、受験者層の違いも合格率に影響しています。

司法試験の短答式試験に関してもっと詳しい内容は、司法試験とは?試験制度・受験資格・合格後の流れを徹底解説をご覧ください。

司法試験の短答式試験の科目構成と配点

司法試験の短答式試験は、憲法、民法、刑法の3科目で構成され、合計175点満点となっています。各科目の配点バランスと試験時間は綿密に設計されており、効率的な時間配分が合格の鍵となります。このセクションでは、各科目の詳細な配点と試験時間について解説します。

憲法(50点満点・50分・20問程度)

憲法は50点満点で、試験時間は50分、問題数は20問程度となっています。1問あたり2~3分で解答する必要があり、スピードと正確性が求められます。出題範囲は人権分野と統治機構分野に大別され、判例の正確な理解が特に重要です。

憲法の特徴は、判例問題の比重が高いことです。最高裁判所の重要判例については、事案の概要、争点、判旨を正確に把握しておく必要があります。また、条文の文言を正確に覚えることも不可欠で、特に人権に関する条文は頻出です。

憲法は3科目の中で最も問題数が少ないため、1問のミスが大きく響きます。確実に得点できる問題を見極め、難問に時間をかけすぎないことがポイントです。過去問演習を通じて、時間配分の感覚を身につけましょう。

民法(75点満点・75分・37問程度)

民法は75点満点で、試験時間は75分、問題数は37問程度と、3科目の中で最も配点が高く、問題数も多い科目です。出題範囲は総則、物権、債権、親族、相続の全分野に及び、対策範囲が非常に広いことが特徴です。

民法の難易度は高く、条文の正確な理解に加えて、判例法理や学説の知識も必要となります。特に債権分野は出題頻度が高く、契約法や不法行為法は重点的に学習する必要があります。また、民法改正により変更された条文についても、最新の内容を把握しておくことが欠かせません。

民法は37問を75分で解答する必要があるため、1問あたり約2分という短い時間配分となります。迷った問題は後回しにし、確実に解ける問題から解答していく戦略が有効です。時間不足による失点を防ぐため、過去問演習で時間管理のスキルを磨きましょう。

刑法(50点満点・50分・20問程度)

刑法は50点満点で、試験時間は50分、問題数は20問程度となっており、憲法と同じ配点です。出題範囲は総論と各論に分かれ、構成要件、違法性、責任といった犯罪論の基本的な理解が求められます。

刑法の特徴は、具体的な事例問題が多いことです。事例を読み解き、どの犯罪が成立するのか、どの条文が適用されるのかを正確に判断する能力が求められます。判例の知識も不可欠で、特に最高裁判所の判例については、結論だけでなく理由付けまで理解しておくことが求められます。

刑法は条文数が比較的少ないため、全ての条文を正確に暗記することが可能です。特に各論の罪名と法定刑については、正確に覚えておく必要があります。また、総論の理論については、異なる学説の内容と判例の立場を整理して理解しておきましょう。

合計175点満点の配点バランス

短答式試験の合計点は175点満点で、憲法50点、民法75点、刑法50点という配点バランスになっています。民法の配点が全体の約43%を占めるため、民法の出来が総合得点に大きく影響します。

配点バランスを考慮すると、学習時間の配分も民法に重点を置くことが合理的です。ただし、各科目に足切りラインが設定されているため、民法だけに集中するのではなく、3科目全てでバランスよく得点できるように学習を進める必要があります。

合格点は例年100点前後(約57%)で推移しており、各科目で6割程度の得点を目指すのが一般的な戦略です。民法で高得点を狙いつつ、憲法と刑法でも確実に得点できるよう、バランスの取れた学習計画を立てましょう。

司法試験の科目一覧では、短答式試験だけでなく、論文式試験の科目構成についても詳しく解説しています。

司法試験の科目構成に関してもっと詳しい記事はこちら
司法試験の科目一覧|短答式・論文式・選択科目を徹底解説

司法試験の短答式試験における足切り制度

司法試験の短答式試験には、各科目で一定の得点に達しない場合に不合格となる足切り制度が設けられています。足切りラインを下回ると、論文式試験の答案は採点されず、即座に不合格が確定します。このセクションでは、足切り制度の詳細と回避するための戦略について解説します。

足切りとは?各科目40%未満で即不合格

足切りとは、各科目において満点の40%に達しない場合、その時点で不合格が確定する制度です。司法試験の短答式試験では、憲法、民法、刑法の3科目全てで足切りラインを超える必要があります。1科目でも足切りラインを下回ると、論文式試験がどれだけ優秀な答案であっても採点されません。

この制度の目的は、法律の基礎知識が十分でない受験者を篩い落とすことにあります。司法試験は法曹資格を取得するための試験であり、全ての科目において最低限の知識が求められるという考え方に基づいています。

足切り制度があるため、短答式試験では「得意科目で高得点を取り、苦手科目は捨てる」という戦略は通用しません。3科目全てでバランスよく学習し、苦手科目を作らないことが鍵となります。

具体的な足切り点(憲法20点・民法30点・刑法20点)

具体的な足切り点は、憲法が20点(50点満点の40%)、民法が30点(75点満点の40%)、刑法が20点(50点満点の40%)となっています。これらの得点を1点でも下回ると、その時点で不合格が確定します。

憲法と刑法は20問程度の出題で、1問あたり2~3点の配点となります。つまり、8問以上正解すれば足切りを回避できる計算になります。民法は37問程度の出題で、1問あたり約2点の配点となり、15問以上正解すれば足切りラインを超えることができます。

足切り点は決して高いラインではありませんが、苦手科目や準備不足の科目があると、このラインを下回るリスクがあります。特に民法は出題範囲が広く、準備不足になりやすい科目です。早めに対策を開始し、全分野をカバーできるよう計画的に学習を進めましょう。

足切りされる受験者数の推移データ

近年の司法試験では、短答式試験で足切りとなる受験者は全体の20~30%程度となっています。2022年度の司法試験では、受験者3,082人のうち、短答式試験合格者は2,252人で、合格率は約73%でした。つまり、約830人が足切りまたは合格点未達により短答式試験で不合格となっています。

足切りとなる主な原因は、特定の科目の準備不足です。特に民法は出題範囲が広く、体系的な理解が必要なため、足切りラインを下回る受験者が比較的多い科目です。また、憲法や刑法でも、判例の理解不足や条文知識の曖昧さが足切りにつながるケースがあります。

予備試験合格者と法科大学院修了者を比較すると、予備試験合格者の方が短答式試験の合格率が高い傾向にあります。これは、予備試験の短答式試験が7科目と範囲が広く、より高度な知識が求められるためです。予備試験の短答式試験に合格した受験者は、司法試験の短答式試験でも高得点を取る傾向があります。

足切りされないための基本戦略

足切りを回避するための基本戦略は、3科目全てでバランスよく学習することです。得意科目と苦手科目の差を小さくし、全ての科目で確実に足切りラインを超えられるよう準備を進めましょう。

具体的な対策としては、まず過去問分析を通じて出題傾向を把握することが大切です。頻出分野を優先的に学習し、短答プロパー知識(短答式試験でのみ問われる知識)についても漏れなく押さえておく必要があります。

苦手科目については、早めに対策を開始することが大切です。民法が苦手な場合は、論文式試験対策の前に短答式試験の基礎固めを優先しましょう。また、判例集や条文集を繰り返し読み込み、正確な知識を身につけることが足切り回避の鍵となります。

模擬試験を活用して、本番と同じ時間配分で問題を解く練習をすることも効果的です。時間不足による失点を防ぎ、確実に解ける問題から解答していく戦略を身につけましょう。司法試験の勉強法では、科目別の効果的な学習方法について詳しく解説しています。

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司法試験の短答式試験の合格点と合格率

司法試験の短答式試験は、合格点が毎年変動し、合格率も70~80%台で推移しています。論文式試験に比べて合格率は高いものの、足切りリスクがあるため、確実に合格点を超える得点力を身につけることが重要です。このセクションでは、合格点の目安と近年の合格率について詳しく解説します。

合格点は100点前後(6割程度が目安)

司法試験の短答式試験の合格点は、例年100点前後(175点満点中)で推移しています。これは全体の約57%の得点率に相当し、6割程度の得点を目指すのが一般的な戦略となります。合格点は毎年変動しますが、大きく変わることは少なく、95点~105点の範囲内で推移することが多いです。

2022年度の合格点は95点、2021年度は90点、2020年度は96点となっており、近年は90点台後半~100点程度が合格ラインとなっています。試験の難易度によって合格点は調整されるため、難しい年は合格点が下がり、易しい年は合格点が上がる傾向があります。

合格点に達するためには、各科目で6割程度の得点を目標とするのが現実的です。憲法30点、民法45点、刑法30点で合計105点となり、余裕を持って合格点を超えることができます。ただし、足切りラインも考慮する必要があるため、苦手科目でも最低限4割以上の得点を確保できるよう準備を進めましょう。

近年の合格率は70~80%台で推移

司法試験の短答式試験の合格率は、近年70~80%台で推移しています。2022年度は約73%、2021年度は約75%、2020年度は約78%となっており、論文式試験の合格率(40~50%程度)に比べると高い水準です。

ただし、この合格率は「司法試験の受験資格を持つ者」を母集団としている点に注意が欠かせません。司法試験を受験するためには、法科大学院を修了するか、予備試験に合格する必要があります。つまり、既に一定の学習を積んだ受験者の中での合格率であり、決して簡単な試験ではありません。

合格率が70~80%台と聞くと「比較的合格しやすい」と感じるかもしれませんが、20~30%の受験者が不合格となっている事実も忘れてはいけません。油断せず、確実に合格できる実力を身につけることが大切です。

予備試験合格者と法科大学院修了者の合格率比較

予備試験合格者と法科大学院修了者では、短答式試験の合格率に差があります。予備試験合格者の短答式試験合格率は90%以上と非常に高く、一方で法科大学院修了者の合格率は70%前後となっています。

この差は、予備試験の短答式試験が7科目と範囲が広く、より高度な知識を要求されることに起因します。予備試験の短答式試験に合格した受験者は、既に司法試験の短答式試験に十分対応できる実力を持っているため、高い合格率となっています。

法科大学院修了者の場合、短答式試験対策が不十分なまま司法試験を受験するケースがあります。法科大学院では論文式試験対策に重点が置かれることが多く、短答式試験の準備が後回しになる傾向があります。司法試験と法科大学院では、法科大学院での学習と司法試験対策について詳しく解説しています。

短答式試験合格者の最終合格率との相関

短答式試験で高得点を取った受験者は、最終合格率も高い傾向にあります。短答式試験で8割以上(140点以上)の得点を取った受験者の最終合格率は、60~70%程度と高い水準です。一方、短答式試験をギリギリで通過した受験者の最終合格率は30~40%程度にとどまります。

この相関関係は、短答式試験の得点が法律の基礎知識の定着度を示す指標となっているためです。短答式試験で高得点を取れる受験者は、条文や判例の正確な知識を持ち、論文式試験でもその知識を応用できる可能性が高いです。

また、短答式試験の得点は総合得点に加算されるため、短答式試験で高得点を取ることは最終合格に直接的に有利に働きます。論文式試験対策に重点を置きつつも、短答式試験で確実に得点できる実力を身につけることが、最終合格への近道となります。

司法試験の合格率では、法科大学院別の合格率や最終合格率の詳細なデータを分析しています。

司法試験の合格率に関してもっと詳しい記事はこちら
司法試験の合格率推移|法科大学院別・予備試験組の傾向分析

司法試験の短答式試験と論文式試験の関係

司法試験は短答式試験と論文式試験の両方に合格する必要があり、両者の関係を理解することが重要です。配点比率は短答と論文で1対8と論文重視ですが、短答式試験で足切りされると論文式試験は採点されません。このセクションでは、短答式試験と論文式試験の関係について詳しく解説します。

配点比率は短答:論文=1:8(論文重視)

司法試験の総合得点における配点比率は、短答式試験と論文式試験で1対8となっています。短答式試験の配点は175点、論文式試験の配点は1,400点(必須科目1,000点、選択科目400点)で、論文式試験の方が圧倒的に配点が高くなっています。

この配点比率から、司法試験では論文式試験の出来が最終合格を大きく左右することがわかります。実際、多くの受験者は学習時間の7~8割を論文式試験対策に充てています。短答式試験対策に時間をかけすぎて、論文式試験の準備が不十分になることは避けなければなりません。

ただし、配点比率が1対8だからといって、短答式試験を軽視してよいわけではありません。短答式試験で足切りされると論文式試験は採点されませんし、短答式試験の得点も総合得点に加算されるため、短答式試験でも確実に得点できる実力を身につけることが不可欠です。

短答で足切りされると論文は採点されない

短答式試験で足切りラインを下回ると、論文式試験の答案は採点されず、その時点で不合格が確定します。これは非常に厳しい制度ですが、法律の基礎知識が不十分な受験者を排除するという明確な目的があります。

過去には、論文式試験で高得点を取ったにもかかわらず、短答式試験の1科目で足切りラインを下回り、不合格となったケースもあります。このような事態を避けるため、短答式試験の準備を怠らず、全ての科目で確実に足切りラインを超えられるよう対策を進める必要があります。

足切りラインは各科目40%と決して高いものではありませんが、苦手科目や準備不足の科目があると、このラインを下回るリスクがあります。短答式試験の学習を早めに開始し、全科目でバランスよく得点できるよう準備を進めましょう。

短答の得点は総合得点に加算される仕組み

短答式試験の得点は、論文式試験の得点と合算されて総合得点が算出されます。総合得点は短答式試験(175点満点)と論文式試験(1,400点満点)を合計した1,575点満点で計算され、総合得点が高い順に合格者が決定されます。

例えば、短答式試験で140点(8割)を取った受験者と、100点(約57%)を取った受験者では、40点の差があります。この40点の差は、論文式試験の得点に換算すると約230点(40点÷175点×1400点)に相当します。つまり、短答式試験で高得点を取ることは、論文式試験で大きなアドバンテージを得ることにつながります。

逆に、短答式試験をギリギリで通過した場合、論文式試験で高得点を取らなければ最終合格は難しくなります。短答式試験で余裕を持って合格点を超えることが、最終合格への近道となります。

論文重視でも短答を軽視できない理由

司法試験は配点比率から見ると論文重視の試験ですが、だからといって短答式試験を軽視することはできません。その理由は、足切り制度の存在と、短答式試験の得点が総合得点に加算されることにあります。

また、短答式試験で問われる条文や判例の正確な知識は、論文式試験でも必要不可欠です。論文式試験では、問題文を読み解き、適切な法的構成を組み立て、論理的に記述する能力が求められますが、その基礎となるのは条文や判例の知識です。短答式試験対策を通じて基礎知識を固めることは、論文式試験対策にもつながります。

さらに、短答式試験は論文式試験の前に実施されるため、短答式試験で不合格となると、論文式試験を受験することすらできません。時間をかけて準備した論文式試験の実力を発揮する機会すら得られないという事態を避けるため、短答式試験の準備を怠らないことが必須です。

論文式試験と短答式試験のバランスを考えた学習計画を立てることが、司法試験合格への鍵となります。司法試験の問題形式では、短答式試験と論文式試験の問題形式の違いについて詳しく解説しています。

司法試験の問題形式に関してもっと詳しい記事はこちら
司法試験の問題形式と出題傾向|過去問から見る対策のポイント

司法試験の短答式試験の出題傾向

司法試験の短答式試験は、条文や判例の正確な知識を問う問題が中心となっています。各科目で出題傾向が異なるため、科目ごとの特徴を把握し、効率的に対策を進めることが重要です。このセクションでは、短答式試験の出題傾向について詳しく解説します。

条文・判例からの知識問題が中心

短答式試験の問題は、条文や判例の知識を直接問うものが大半を占めます。条文の文言を正確に覚えているか、判例の結論と理由付けを理解しているかが問われます。単なる暗記だけでなく、条文や判例の趣旨や適用場面を理解することが不可欠です。

条文問題では、条文の文言の一部を空欄にして正しい語句を選ばせる問題や、条文の内容について正誤を判断させる問題が出題されます。特に、数字や要件を正確に覚えているかを問う問題が多く、曖昧な記憶では対応できません。

判例問題では、判例の事案と結論を提示し、その理由付けや射程について問う問題が中心です。判例を単に「知っている」だけでなく、なぜそのような結論になったのか、どのような場合に適用されるのかを理解していることが求められます。最高裁判所の重要判例については、事案、争点、判旨を正確に把握しておく必要があります。

民法の出題範囲が広く難易度が高い

民法は、総則、物権、債権、親族、相続の全分野から出題されるため、対策範囲が非常に広い科目です。問題数も37問程度と多く、難易度も高いため、短答式試験の中で最も対策に時間がかかる科目と言えます。

特に債権分野は出題頻度が高く、契約法、不法行為法、事務管理、不当利得など、幅広い範囲から出題されます。また、民法改正により変更された条文についても出題されるため、最新の条文内容を正確に把握しておく必要があります。

民法の短答式試験で高得点を取るためには、条文の正確な暗記に加えて、判例法理や学説の理解も必要です。過去問演習を通じて出題傾向を把握し、頻出分野を重点的に学習することが効果的です。

短答プロパー知識(短答のみで問われる知識)の重要性

短答プロパー知識とは、短答式試験でのみ問われる知識のことを指します。論文式試験では問われないが、短答式試験では頻出の知識があり、これらを押さえておくことが短答式試験対策では欠かせません。

例えば、条文の細かい数字(期間、人数、金額など)や、判例の具体的な事実関係などは、短答プロパー知識に該当します。論文式試験では大まかな理解で対応できる内容でも、短答式試験では正確な知識が求められることがあります。

短答プロパー知識を効率的に習得するためには、短答式試験専用の参考書や問題集を活用することが有効です。また、過去問演習を通じて、どのような知識が短答式試験で問われるのかを把握し、重点的に学習することが大切です。

旧司法試験の過去問も参考になる

司法試験の短答式試験対策では、現行の司法試験の過去問だけでなく、旧司法試験の短答式試験の過去問も参考になります。旧司法試験は2011年まで実施されており、条文や判例の知識を問う問題が多く出題されていました。

旧司法試験の過去問は、現行の司法試験よりも難易度が高い問題が多く含まれていますが、その分、条文や判例の深い理解を養うのに役立ちます。特に、判例の理由付けや射程を問う問題は、論文式試験対策にもつながります。

ただし、法改正により変更された条文については注意が欠かせません。特に民法は2020年に大きな改正があったため、旧司法試験の過去問を解く際は、現行法との違いを確認しながら学習を進めましょう。

短答式試験の出題傾向を把握し、効率的に対策を進めることが合格への近道となります。

司法試験の短答式試験の効果的な勉強法

司法試験の短答式試験対策では、過去問演習を中心とした学習が最も効果的です。条文や判例の正確な知識を身につけ、時間配分を意識した問題演習を繰り返すことで、確実に合格点を超える実力を養うことができます。このセクションでは、短答式試験の効果的な勉強法について詳しく解説します。

過去問演習が最も重要(10年分×3周以上)

短答式試験対策の基本は、過去問演習です。最低でも10年分の過去問を3周以上解くことが推奨されます。過去問演習を通じて、出題傾向を把握し、頻出分野を重点的に学習することができます。

1周目は時間を気にせず、全ての問題を丁寧に解き、解説をしっかり読むことが大切です。間違えた問題については、なぜ間違えたのかを分析し、関連する条文や判例を確認しましょう。2周目は本番と同じ時間配分で解き、時間管理のスキルを磨きます。3周目以降は、苦手分野や間違えた問題を中心に復習し、知識の定着を図ります。

過去問演習の際は、正解した問題であっても、他の選択肢がなぜ誤りなのかを確認することが欠かせません。短答式試験では、正しい選択肢を選ぶだけでなく、誤りの選択肢を見抜く力も必要です。全ての選択肢について検討することで、より深い理解を得ることができます。

条文・判例の正確な暗記方法

短答式試験では、条文や判例の正確な知識が求められます。特に条文の文言や数字、判例の結論と理由付けについては、正確に暗記する必要があります。効率的な暗記方法を身につけることが、短答式試験対策の鍵となります。

条文暗記のコツは、六法を繰り返し読み、重要な条文にマーキングすることです。特に数字や要件が含まれる条文については、声に出して読むことで記憶に定着しやすくなります。また、条文同士の関係性を理解し、体系的に覚えることも不可欠です。

判例暗記については、判例集を活用し、事案、争点、判旨を簡潔にまとめたノートを作成することが効果的です。判例の結論だけでなく、その理由付けや射程についても理解し、類似の事案にどのように適用されるかを考えながら学習を進めましょう。

論文対策と短答対策の時間配分(2~3割を短答に)

司法試験の学習では、論文式試験対策と短答式試験対策の時間配分が大切です。配点比率が1対8であることを考慮すると、学習時間の7~8割を論文式試験対策に、2~3割を短答式試験対策に充てるのが一般的です。

ただし、この時間配分は受験者の実力や得意・不得意科目によって調整する必要があります。短答式試験に不安がある場合は、試験の数ヶ月前から短答式試験対策に重点を置き、確実に足切りラインを超えられる実力を身につけることが優先です。

また、論文式試験対策と短答式試験対策は完全に分離するのではなく、相互に関連させながら学習を進めることが効果的です。論文式試験の学習で身につけた知識を短答式試験で活用し、短答式試験で正確に覚えた条文や判例を論文式試験で使えるようにすることで、効率的に学習を進めることができます。

短答対策の開始時期とスケジュール

短答式試験対策の開始時期は、試験の6~8ヶ月前が目安です。それ以前は論文式試験対策に重点を置き、基礎的な法律知識を体系的に学習します。試験の6~8ヶ月前から短答式試験の過去問演習を開始し、徐々に短答式試験対策の時間を増やしていきます。

試験の3~4ヶ月前からは、本格的に短答式試験対策に取り組みます。週に2~3日は短答式試験の過去問演習に充て、苦手科目や頻出分野を重点的に学習します。試験の1~2ヶ月前には、模擬試験を受験し、本番と同じ時間配分で問題を解く練習をします。

試験直前の1週間は、短答式試験対策に集中します。過去問や模擬試験で間違えた問題を中心に復習し、条文や判例の最終確認を行います。論文式試験対策も並行して進めますが、短答式試験を確実に通過することを最優先に考えましょう。

司法試験の勉強時間では、学習スケジュールの立て方や時間管理の方法について詳しく解説しています。

司法試験の勉強時間に関してもっと詳しい記事はこちら
司法試験に必要な勉強時間|社会人・学生別の学習スケジュール

司法試験の短答式試験対策におすすめの教材

短答式試験対策では、適切な教材を選ぶことが欠かせません。過去問集、短答プロパー対策の参考書、六法など、目的に応じた教材を効果的に活用することで、効率的に学習を進めることができます。このセクションでは、短答式試験対策におすすめの教材について紹介します。

司法試験・予備試験の短答過去問集

短答式試験対策の基本教材は、過去問集です。司法試験と予備試験の短答式試験の過去問が収録された問題集を使用し、実際の試験問題を解くことで、出題傾向を把握し、実戦力を養うことができます。

おすすめの過去問集は、辰已法律研究所の「司法試験・予備試験 短答過去問パーフェクト」シリーズや、早稲田経営出版の「司法試験・予備試験 短答式試験 過去問題集」などです。これらの問題集には、詳しい解説が付いており、間違えた問題の理解を深めることができます。

過去問集を使用する際は、年度順に解くのではなく、科目別・分野別に解くことをおすすめします。同じ分野の問題をまとめて解くことで、出題パターンを把握しやすくなり、知識の定着も図れます。また、間違えた問題にはチェックを入れ、繰り返し解くことで、苦手分野を克服することができます。

短答プロパー対策のための参考書

短答プロパー知識を効率的に習得するためには、短答式試験専用の参考書を活用することが有効です。短答式試験でよく問われる条文や判例を体系的にまとめた参考書を使用することで、効率的に知識を身につけることができます。

おすすめの参考書は、「司法試験・予備試験 短答過去問集」の解説部分や、「短答肢別問題集」などです。これらの教材では、過去の短答式試験で出題された論点が体系的に整理されており、重要度の高い知識を優先的に学習することができます。

また、各科目の基本書や判例集も併用することで、より深い理解を得ることができます。短答式試験対策だけでなく、論文式試験対策にもつながるため、基本書や判例集を活用した学習も効果的です。

六法の活用方法(マーキング・見直し)

六法は、短答式試験対策において必須の教材です。条文の正確な知識を身につけるためには、六法を繰り返し読み、重要な条文にマーキングすることが効果的です。過去問演習で出題された条文や、頻出の条文には色を付けたり、アンダーラインを引いたりして、視覚的に重要度が分かるようにしましょう。

六法の活用方法としては、過去問を解いた後に該当する条文を六法で確認し、条文の文言を正確に覚えることが基本です。また、関連する条文同士を矢印で結んだり、余白にメモを書き込んだりすることで、条文の体系的な理解を深めることができます。

試験直前には、マーキングした条文を中心に六法を見直すことで、最終確認を行います。特に数字や要件が含まれる条文については、試験前日に再度確認しておくことで、本番での失点を防ぐことができます。

無料で使える過去問演習ツール

短答式試験対策には、無料で利用できる過去問演習ツールも活用できます。法務省のウェブサイトでは、過去の司法試験の問題と正解が公開されており、無料でダウンロードすることができます。

また、一部の法律系予備校やウェブサイトでは、過去問演習用のオンラインツールを無料で提供しています。これらのツールを使用することで、スマートフォンやタブレットで手軽に過去問演習を行うことができ、通勤時間や休憩時間などのスキマ時間を有効活用できます。

ただし、無料ツールの場合、解説が簡易的であったり、最新の法改正に対応していなかったりすることがあるため、有料の過去問集と併用することをおすすめします。司法試験の過去問では、過去問の入手方法や活用法について詳しく解説しています。

司法試験の過去問に関してもっと詳しい記事はこちら
司法試験の過去問活用法|論文・短答の解答分析と入手方法

司法試験の短答式試験に関連するよくある質問(FAQ)

Q. 司法試験の短答式試験に科目免除制度はありますか?

司法試験の短答式試験には、科目免除制度はありません。憲法、民法、刑法の3科目全てを受験する必要があります。ただし、予備試験に合格した場合は、司法試験の短答式試験において一定の優位性があるとされています。予備試験の短答式試験は7科目と範囲が広く、より高度な知識が求められるため、予備試験合格者は司法試験の短答式試験でも高得点を取る傾向があります。

Q. 司法試験の短答式試験で8割取ると最終合格率はどのくらいですか?

司法試験の短答式試験で8割以上(140点以上)の得点を取った受験者の最終合格率は、60~70%程度と高い水準です。短答式試験で高得点を取れる受験者は、法律の基礎知識がしっかりと定着しており、論文式試験でもその知識を応用できる可能性が高いためです。また、短答式試験の得点は総合得点に加算されるため、短答式試験で高得点を取ることは最終合格に直接的に有利に働きます。

Q. 司法試験の短答式試験は予備試験より簡単ですか?

一般的に、司法試験の短答式試験は予備試験の短答式試験よりも簡単とされています。司法試験の短答式試験は3科目(憲法・民法・刑法)ですが、予備試験の短答式試験は7科目(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・一般教養科目)で構成されているため、対策範囲が大きく異なります。また、司法試験の短答式試験の合格率は70~80%台ですが、予備試験の短答式試験の合格率は20%前後と大きく異なります。

Q. 司法試験の短答式試験で足切りされたらどうなりますか?

司法試験の短答式試験で足切りラインを下回った場合、論文式試験の答案は採点されず、その時点で不合格が確定します。どれだけ優秀な論文を書いても、短答式試験で足切りされると、その努力は評価されません。足切りラインは各科目40%(憲法20点、民法30点、刑法20点)で、1科目でもこのラインを下回ると不合格となります。足切りを回避するためには、3科目全てでバランスよく学習し、苦手科目を作らないことが重要です。

Q. 司法試験の短答式試験の勉強時間はどのくらい必要ですか?

司法試験の短答式試験対策に必要な勉強時間は、個人の実力や学習効率によって異なりますが、一般的には300~500時間程度が目安とされています。過去問演習を中心に、条文や判例の正確な知識を身につけるために、継続的な学習が必要です。法科大学院修了者の場合、法科大学院での学習を通じて基礎知識を習得しているため、短答式試験対策に特化した学習時間は比較的少なくて済む場合があります。一方、予備試験ルートの場合は、短答式試験対策により多くの時間を割く必要があります。

Q. 司法試験の短答式試験対策はいつから始めるべきですか?

司法試験の短答式試験対策は、試験の6~8ヶ月前から本格的に開始するのが一般的です。それ以前は論文式試験対策に重点を置き、基礎的な法律知識を体系的に学習します。試験の6~8ヶ月前から過去問演習を開始し、徐々に短答式試験対策の時間を増やしていきます。試験の3~4ヶ月前からは本格的に短答式試験対策に取り組み、週に2~3日は過去問演習に充てることが推奨されます。司法試験の勉強法では、学習スケジュールの立て方について詳しく解説しています。

Q. 司法試験の短答式試験で時間が足りない場合の対処法は?

司法試験の短答式試験では、限られた時間内で全ての問題を解答する必要があるため、時間管理が鍵となります。時間が足りない場合の対処法としては、まず確実に解ける問題から解答し、難しい問題や時間がかかりそうな問題は後回しにすることが効果的です。また、過去問演習を繰り返し行うことで、問題を解くスピードを上げることができます。模擬試験を活用して、本番と同じ時間配分で問題を解く練習をすることも不可欠です。時間配分の感覚を身につけることで、本番での時間不足を防ぐことができます。

まとめ:司法試験の短答式試験は足切り回避と確実な得点が鍵

本記事では、司法試験の短答式試験について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. 短答式試験は3科目175点満点のマークシート方式:憲法50点、民法75点、刑法50点で構成され、論文式試験の前に実施される基礎試験です。各科目で40%未満の得点だと足切りとなり、論文式試験は採点されません。
  2. 合格点は100点前後で合格率は70~80%台:6割程度の得点を目標とし、バランスよく得点することが重要です。短答式試験で高得点を取ることは、最終合格にも有利に働きます。
  3. 過去問演習を中心とした対策が最も効果的:10年分の過去問を3周以上解き、条文や判例の正確な知識を身につけましょう。論文式試験対策と並行して、学習時間の2~3割を短答式試験対策に充てることが推奨されます。

司法試験の短答式試験対策を理解できたら、次は具体的な学習計画を立てましょう。司法試験の勉強時間司法試験の過去問活用法を参考に、計画的に学習を進めることをおすすめします。

本記事を通じて、司法試験の短答式試験の科目構成、足切り制度、合格点、効果的な勉強法を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、司法試験合格に向けて、短答式試験対策を着実に進めていきましょう。

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