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社労士と行政書士の違いを徹底比較!どっちを取るべき?

社労士と行政書士の違いについて知りたいあなたへ。「どちらの資格を目指すべきか」という疑問は、それぞれの特徴や将来性を正しく理解することで解決できます。

本記事では、社労士(社会保険労務士)と行政書士の業務内容の違い、試験難易度の比較、年収や働き方の違いについて、公式データを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、あなたのキャリア目標に最適な資格選択を実現しましょう。

この記事を読むとわかること
  • 社労士と行政書士の業務内容と専門分野の違い
  • 試験難易度・合格率・勉強時間の具体的な比較データ
  • 年収や働き方、将来性の違いと特徴
  • どちらを選ぶべきかの判断基準とダブルライセンスの価値
押さえておきたい3つのポイント
  1. 専門分野の違い:社労士は労務管理・社会保険の専門家として「深く狭く」、行政書士は許認可書類作成の専門家として「浅く広く」業務を展開します。独占業務の内容が全く異なるため、自分の興味関心に合わせた選択が重要です。
  2. 難易度と年収:社労士の合格率は6〜7%で勉強時間は約1000時間、行政書士は合格率10〜13%で勉強時間は600〜800時間と、社労士の方が難易度が高い傾向にあります。平均年収も社労士が約780万円、行政書士が約580万円と社労士が高めです。
  3. キャリアパスの違い:社労士は企業の人事労務部門での勤務型と独立開業型の両方が選択でき、行政書士は独立開業が主流です。企業内でのキャリアを考えるなら社労士が有利ですが、幅広い業務で独立したいなら行政書士も魅力的な選択肢となります。
目次

社労士(社会保険労務士)と行政書士の基本的な違い

社労士と行政書士は、どちらも法律系の国家資格ですが、専門分野と業務範囲が大きく異なります。この違いを理解することが、資格選択の第一歩となります。

社労士は労務管理・社会保険の専門家(深く狭く)

社労士(社会保険労務士)は、企業の労務管理と社会保険手続きに特化した専門家です。労働基準法、労働安全衛生法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法など、労働・社会保険関連の法令を深く学び、企業の人事労務分野で専門性を発揮します。

社労士の専門性は「深く狭く」という言葉で表現されます。扱う法律分野は限定的ですが、その分野においては非常に高度な専門知識を持ちます。従業員の採用から退職まで、労務管理のあらゆる場面で企業をサポートできる力を持っています。

クライアントの多くは企業であり、継続的な顧問契約を結ぶことが一般的です。毎月の給与計算や社会保険手続き、就業規則の作成・変更など、企業運営に欠かせない業務を担当します。

行政書士は許認可書類作成の専門家(浅く広く)

行政書士は、官公署に提出する許認可申請書類の作成を中心とした専門家です。建設業許可、飲食店営業許可、会社設立、相続手続き、外国人在留資格など、非常に幅広い分野の書類作成を扱います。

行政書士の専門性は「浅く広く」と表現されます。扱える業務の範囲が非常に広い一方で、一つ一つの分野における専門性は社労士ほど深くありません。ただし、この幅広さが行政書士の大きな強みとなり、様々な顧客ニーズに対応できます。

クライアントは企業だけでなく個人も多く、単発の案件が中心となることが特徴です。会社設立時の定款作成、遺言書作成、車庫証明申請など、人生や事業の節目で必要となる手続きをサポートします。

独占業務の内容が全く異なる

社労士と行政書士では、それぞれが独占的に行える業務(独占業務)が法律で明確に定められています。

社労士の独占業務は、労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成・提出代行、帳簿書類の作成です。具体的には、雇用保険や健康保険、厚生年金保険の加入・脱退手続き、労災保険の給付申請、36協定の届出などが該当します。これらの業務は社労士資格を持たない者が報酬を得て行うことは違法となります。

行政書士の独占業務は、官公署に提出する書類の作成と提出手続きの代理です。ただし、他の士業の独占業務となっている分野(登記は司法書士、税務は税理士など)は除かれます。建設業許可申請、飲食店営業許可申請、遺産分割協議書の作成、内容証明郵便の作成などが代表的な業務です。

両資格とも、自分の専門分野以外の独占業務に手を出すことはできません。そのため、業務内容の違いを理解した上で、自分が興味を持てる分野の資格を選ぶことが重要です。

社労士(社会保険労務士)と行政書士の仕事内容を比較

資格選択において、実際の仕事内容を具体的にイメージすることは非常に重要です。ここでは両資格の主要業務を詳しく比較します。

社労士の主な業務(1号・2号・3号業務)

社労士の業務は、社会保険労務士法により1号業務、2号業務、3号業務の3つに分類されます。

1号業務(書類作成・提出代行)は社労士の独占業務です。労働社会保険諸法令に基づく申請書、届出書、報告書などの作成と行政機関への提出代行を行います。雇用保険の資格取得・喪失届、健康保険・厚生年金保険の加入手続き、労災保険の給付申請、助成金の申請などが含まれます。

2号業務(帳簿書類作成)も独占業務です。労働者名簿、賃金台帳、就業規則、36協定書など、労働関連法令で作成が義務付けられている帳簿書類を作成します。特に就業規則は企業の労務管理の基盤となる重要な書類であり、社労士の専門性が発揮される分野です。

3号業務(コンサルティング)は、労務管理や労働・社会保険に関する相談・指導業務です。人事制度の設計、賃金体系の見直し、働き方改革への対応、労使トラブルの予防など、企業の人事労務戦略全般をサポートします。この業務は独占業務ではありませんが、社労士の専門性を活かせる重要な収益源となっています。

行政書士の主な業務(許認可・権利義務・事実証明)

行政書士の業務は非常に多岐にわたりますが、主に3つのカテゴリーに分類できます。

許認可業務は、行政書士業務の中核を成します。建設業許可、飲食店営業許可、宅建業免許、産業廃棄物処理業許可、倉庫業登録など、様々な事業を始める際に必要な許認可申請をサポートします。許認可の種類は1万種類以上あると言われ、行政書士はこの幅広い分野に対応します。

権利義務に関する書類作成として、契約書、示談書、遺産分割協議書、各種合意書などを作成します。法的効力を持つ重要な文書を正確に作成することで、トラブルの予防や円滑な権利関係の調整に貢献します。内容証明郵便の作成も、この分野の重要な業務です。

事実証明に関する書類作成として、実地調査に基づく各種図面、会社設立時の定款、議事録、会計帳簿などを作成します。特に会社設立支援は行政書士の主要業務の一つであり、定款認証から設立後の各種届出まで、起業家をトータルサポートします。

クライアントの違い(企業中心 vs 個人・企業)

社労士のクライアントは、主に企業です。中小企業を中心に、従業員を雇用している事業所が顧客となります。顧問契約を結んで毎月の給与計算や社会保険手続きを継続的に行うビジネスモデルが一般的です。一度契約すれば長期的な関係が続くことが多く、安定した収入を得やすいという特徴があります。

行政書士のクライアントは、企業と個人の両方です。会社設立や許認可申請では企業が顧客となりますが、相続手続きや遺言書作成、離婚協議書作成などでは個人が顧客となります。案件は単発のものが多く、一つの案件が完了すれば関係が終わることもあります。そのため、常に新規顧客を開拓し続ける営業力が求められます。

この違いは、収入の安定性や働き方に大きく影響します。社労士は継続的な顧問収入が見込めますが、行政書士は案件ごとの報酬となるため、営業活動と業務遂行の両立が重要になります。

社労士(社会保険労務士)と行政書士の難易度を徹底比較

資格取得を目指す上で、試験の難易度は重要な判断材料です。合格率、勉強時間、受験資格などを詳しく比較します。社労士試験の難易度についてさらに詳しく知りたい方は、専門ページもご覧ください。

合格率:社労士6〜7% vs 行政書士10〜13%

社労士試験の合格率は、近年6〜7%程度で推移しています。2023年度の合格率は6.4%(全国社会保険労務士会連合会発表データ)でした。受験者数は約4万人前後で、合格者は2,500〜3,000人程度です。10人受験して1人未満しか合格できない非常に狭き門と言えます。

行政書士試験の合格率は、10〜13%程度です。2023年度の合格率は13.98%(一般財団法人行政書士試験研究センター発表データ)で、社労士試験の約2倍の合格率となっています。受験者数は約5万人前後で、合格者は5,000〜7,000人程度です。

合格率だけを見ると、社労士試験の方が明らかに難関です。ただし、合格率が低い理由には、受験生の質の違いも影響しています。社労士試験は受験資格に制限があるため、ある程度学習能力が高い受験生が集まる傾向にあります。

必要な勉強時間:社労士1000時間 vs 行政書士600〜800時間

社労士試験の合格に必要な勉強時間は、一般的に800〜1000時間と言われています。法律初学者の場合は1000時間以上かかることも珍しくありません。勉強期間としては、1日2〜3時間の学習で1年から1年半が目安となります。

行政書士試験の合格に必要な勉強時間は、600〜800時間程度です。法律知識がある方であれば500時間程度で合格する例もあります。勉強期間としては、1日2〜3時間の学習で半年から1年程度が一般的です。

社労士試験の方が必要な勉強時間が長い理由は、試験範囲の専門性の高さにあります。社労士試験では、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法など、10科目の法律を深く理解する必要があります。各法律の条文や施行規則、通達まで細かく学習しなければなりません。

受験資格:社労士は制限あり vs 行政書士は誰でも受験可能

社労士試験には、受験資格の制限があります。主な受験資格は、①学歴(大学や短大、専門学校で62単位以上修得)、②実務経験(労務担当として3年以上の実務経験)、③他の国家資格(行政書士など特定の国家資格保有者)のいずれかを満たす必要があります。

この受験資格の中で、「行政書士試験合格者は社労士試験の受験資格が得られる」という点は重要です。行政書士試験に合格すれば、たとえ登録していなくても社労士試験の受験資格が手に入ります。これが「行政書士を先に取る」という戦略の理由の一つです。

一方、行政書士試験には受験資格の制限がありません。年齢、学歴、国籍に関係なく、誰でも受験できます。この受験のしやすさは、行政書士試験の大きなメリットです。高校生でも受験可能ですし、社会人が思い立ったらすぐにチャレンジできます。

試験内容の違い(深い専門性 vs 広い法律知識)

社労士試験は、選択式試験(8科目、80分)と択一式試験(7科目、210分)で構成されます。労働法令と社会保険法令という限定された分野ではありますが、非常に深い知識が求められます。細かい数字、日数、金額などを正確に覚える必要があり、暗記量が膨大です。

また、社労士試験には「基準点」という仕組みがあり、総得点が合格点に達していても、1科目でも基準点未満があれば不合格となります。苦手科目を作らず、全科目をバランスよく学習することが合格の鍵です。

行政書士試験は、行政法、民法、憲法などの法令科目と、一般知識(政治・経済・情報通信など)で構成されます。法律の範囲は社労士より広いですが、一つ一つの法律の深さは社労士ほど要求されません。基本的な法律知識と理解力があれば対応できる問題が中心です。

行政書士試験も基準点の仕組みはありますが、社労士試験ほど厳しくはありません。記述式問題が含まれるため、法的思考力や文章力も試されます。

結論:社労士の方が難易度が高い

合格率、勉強時間、試験内容の専門性を総合的に判断すると、社労士試験の方が行政書士試験より難易度が高いと言えます。合格率は社労士が約6〜7%、行政書士が約10〜13%と約2倍の差があり、必要な勉強時間も社労士が200〜400時間多くかかります。

ただし、難易度の感じ方は個人の得意分野によっても変わります。労働法や社会保険に興味があり、暗記が得意な方にとっては、社労士試験の方が取り組みやすいかもしれません。逆に、幅広い法律知識を学ぶことが好きな方は、行政書士試験の方が向いている可能性があります。

難易度だけでなく、自分の興味や将来のキャリアプランに合った資格を選ぶことが、モチベーションを維持し合格を勝ち取る秘訣です。

社労士と行政書士の年収・収入を比較

資格取得後の収入は、キャリア選択において重要な要素です。両資格の年収について、データに基づいて比較します。社労士の年収の詳細については、別途専門ページで解説していますので参考にしてください。

社労士の平均年収は約780万円

社労士の平均年収は、約780万円と言われています(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータに基づく推計)。ただし、勤務形態や経験年数によって大きく異なります。

企業の人事労務部門で働く勤務社労士の場合、一般的な会社員の給与体系に準じます。初任給は年収350〜450万円程度ですが、経験を積むにつれて500〜700万円程度まで上昇します。大企業や専門性の高いポジションでは、800万円以上の年収を得ることも可能です。

独立開業している社労士の年収は、顧問先の数と報酬額によって大きく変動します。開業初期は年収300万円以下ということもありますが、顧問先を20〜30社確保できれば年収1000万円以上も十分可能です。成功している開業社労士の中には、年収2000〜3000万円を超える方もいます。

行政書士の平均年収は約580万円

行政書士の平均年収は、約580万円程度と推定されています。ただし、行政書士は独立開業が主流のため、個人差が非常に大きい職業です。

日本行政書士会連合会の調査によれば、行政書士の年間売上は「500万円未満」が約半数を占めます。開業後数年は年収300万円以下という方も少なくありません。ただし、専門分野を確立し、安定した顧客基盤を築くことができれば、年収1000万円以上も十分に可能です。

行政書士で高収入を得ている方の多くは、建設業許可や産業廃棄物処理業許可など、特定の許認可分野に特化しています。また、外国人在留資格(ビザ)や相続・遺言など、ニーズの高い分野で専門性を発揮している行政書士も高収入を得やすい傾向にあります。

社労士の方が年収が高い理由

平均年収を比較すると、社労士が約780万円、行政書士が約580万円と、社労士の方が約200万円高い結果となっています。この差が生まれる理由はいくつかあります。

継続的な顧問契約モデルが社労士の強みです。企業と顧問契約を結べば、毎月安定した収入が得られます。給与計算や社会保険手続きは毎月発生する業務のため、一度契約すれば長期的な関係が続きます。この収入の安定性が、平均年収を押し上げる要因となっています。

企業内でのキャリアパスも年収に影響します。社労士資格を持って企業の人事労務部門で働くことで、専門職としての高い給与を得られます。管理職になれば、さらに年収が上がります。一方、行政書士は企業内でのポジションが限定的で、多くは独立開業を選択します。

専門性の深さも重要な要素です。社労士は労務管理という専門分野に特化しており、その分野では他の士業と競合しません。この独自性が、高い報酬単価につながっています。

独立開業時の収入比較

独立開業した場合の収入は、両資格とも個人の営業力や専門性によって大きく変動します。

社労士が独立開業した場合、顧問契約1社あたりの月額報酬は3〜5万円が相場です。顧問先を20社確保できれば、月収60〜100万円、年収720〜1200万円となります。給与計算や社会保険手続きという継続的業務があるため、収入の安定性が高いのが特徴です。

行政書士が独立開業した場合、案件単価は業務内容によって大きく異なります。建設業許可申請なら10〜20万円、会社設立なら10〜15万円、相続手続きなら30〜50万円程度です。月に5〜10件の案件をこなせば、月収50〜100万円、年収600〜1200万円も可能です。ただし、案件は単発のものが多く、常に営業活動を続ける必要があります。

両資格とも、独立開業で成功すれば年収1000万円以上も十分に可能です。しかし、社労士の方が収入の安定性が高く、行政書士は営業力次第で収入が大きく変動する傾向にあります。

社労士と行政書士の働き方を比較

資格取得後の働き方は、ライフスタイルやキャリアプランに大きく影響します。両資格の働き方の違いを理解しておきましょう。

社労士は勤務型と開業型の選択肢

社労士は、勤務型と開業型の2つの働き方を選択できます。この選択肢の広さが、社労士資格の大きな魅力です。

勤務社労士は、企業の人事労務部門や社労士事務所で働く形態です。会社員として安定した給与を得ながら、専門職としてのキャリアを積めます。大企業の人事部、コンサルティング会社、社労士法人などが主な勤務先です。ワークライフバランスを重視したい方や、独立のリスクを避けたい方に適しています。

開業社労士は、自分で事務所を開設し、企業と直接契約する形態です。収入の上限がなく、努力次第で高収入を得られる可能性があります。自分のペースで働けるため、柔軟な働き方が可能です。ただし、営業活動や事務所経営の責任も自分で負う必要があります。

両方の働き方を経験することもできます。まず企業や社労士事務所で経験を積み、人脈や顧客基盤を築いてから独立開業するというキャリアパスが一般的です。

行政書士は独立開業が主流

行政書士は、独立開業が主流の資格です。企業内で行政書士資格を活かせるポジションは限定的で、多くの行政書士が自分で事務所を開設します。

行政書士事務所を開業すると、自分で顧客を開拓し、案件を受注し、業務を遂行するすべてを管理します。自由度が高く、自分の得意分野に特化して業務を展開できます。会社設立支援、相続手続き、許認可申請など、自分が興味を持てる分野で専門性を高められます。

ただし、独立開業には営業力が不可欠です。案件は単発のものが多く、継続的に新規顧客を獲得し続ける必要があります。開業初期は収入が不安定になることも覚悟しなければなりません。

行政書士法人や他士業の事務所で補助者として働くという選択肢もありますが、多くの行政書士は独立開業を目指して資格を取得します。起業家精神や営業力に自信がある方に向いている資格と言えます。

社労士は企業内でも活躍しやすい

社労士資格は、企業内でのキャリアアップに非常に有効です。人事労務部門は企業の中核的な部門であり、社労士の専門知識は高く評価されます。

大企業の人事部では、社労士資格保有者を優遇する傾向があります。給与計算、社会保険手続き、就業規則の作成・改定、労務コンプライアンスの管理など、社労士の専門性を活かせる業務が豊富にあります。管理職やマネージャーとしてのキャリアパスも開けており、人事部長や役員を目指すことも可能です。

中小企業でも、社労士資格は重宝されます。専門知識を持った人材として、労務管理全般を任されることが多く、経営層との距離も近くなります。経営に関わる立場として、企業の成長に貢献できるやりがいがあります。

転職市場でも、社労士資格は強力な武器になります。人事労務の専門職としての求人は常にあり、資格を持っているだけで選択肢が広がります。

登録手続きの違い(実務経験の要否)

社労士として業務を行うためには、全国社会保険労務士会連合会への登録が必要です。登録には、2年以上の実務経験または事務指定講習の修了が条件となります。事務指定講習は、通信指導と4ヶ月間の集合研修で構成され、費用は約77,000円です。

この実務経験の要件が、社労士登録のハードルとなることがあります。試験合格後すぐに開業できるわけではなく、実務経験を積むか講習を受ける必要があります。ただし、企業の人事労務部門で働きながら実務経験を積むこともできるため、計画的にキャリアを進めることが重要です。

行政書士の登録には、実務経験の要件はありません。試験に合格すれば、すぐに行政書士会に登録して開業できます。登録費用は都道府県によって異なりますが、25〜30万円程度です。

この登録のしやすさは、行政書士の大きなメリットです。試験合格後、すぐに自分の事務所を開設して業務を始められます。社労士の開業ガイドでは、開業に必要な手続きや準備について詳しく解説しています。

社労士と行政書士、どっちを取るべき?選び方のポイント

どちらの資格を目指すべきか迷っている方のために、選択のポイントを整理します。社労士になるにはのページでは、社労士取得の全体像を詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

労務管理に興味があるなら社労士

「企業の人事制度や労務管理に興味がある」「従業員が働きやすい環境づくりに貢献したい」「社会保険制度を深く理解したい」という方には、社労士が適しています。

社労士の仕事は、企業と従業員の良好な関係を築くサポートをすることです。適切な労務管理は、従業員のモチベーション向上や企業の生産性向上につながります。働き方改革が進む現代において、社労士の役割はますます重要になっています。

また、数字に強い方や細かい作業が得意な方にも向いています。給与計算や社会保険料の計算など、正確性が求められる業務が多いためです。労働法や社会保険法という専門分野を深く学ぶことに喜びを感じられる方は、社労士としてのキャリアに満足できるでしょう。

許認可業務に興味があるなら行政書士

「幅広い法律知識を活かしたい」「起業家や個人の人生の節目をサポートしたい」「許認可制度に興味がある」という方には、行政書士が適しています。

行政書士の仕事は非常に多様です。会社設立支援では起業家の夢の実現をサポートし、相続手続きでは遺族の負担を軽減し、許認可申請では新しい事業のスタートを助けます。一つの分野に特化することもできれば、複数の分野を扱うこともできる柔軟性があります。

また、人とのコミュニケーションが好きな方や、営業力に自信がある方にも向いています。顧客は企業だけでなく個人も多く、様々な人と関わることができます。フットワークの軽さや柔軟な対応力が求められる職業です。

企業で働きたいなら社労士が有利

会社員として安定したキャリアを築きたい方には、社労士が有利です。企業の人事労務部門では社労士資格が高く評価され、専門職としてのポジションを確立できます。

大企業、中小企業を問わず、人事労務の専門家は必要とされています。社労士資格を持っていれば、転職市場でも有利になり、キャリアの選択肢が広がります。給与や福利厚生などの待遇面でも、専門資格を持つことで優遇される可能性があります。

また、企業で働きながら独立開業の準備をすることもできます。実務経験を積み、人脈を作り、顧客基盤を築いてから独立するというキャリアパスは、リスクを抑えた理想的な独立方法です。

独立志向が強いなら行政書士も選択肢

「自分の事務所を持って働きたい」「自由な働き方を実現したい」という独立志向の強い方には、行政書士も魅力的な選択肢です。

行政書士は独立開業が前提の資格であり、試験合格後すぐに開業できます。自分の得意分野に特化して業務を展開でき、努力次第で高収入を得られる可能性があります。働く時間や場所も自分で決められるため、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。

ただし、独立開業にはリスクも伴います。収入が不安定になる期間があることや、営業活動を継続する必要があることを理解した上で選択しましょう。起業家精神や自己管理能力に自信がある方であれば、行政書士として成功する可能性は十分にあります。

どちらを先に取るか(一般的には行政書士→社労士)

両方の資格に興味がある場合、一般的には「行政書士→社労士」の順番で取得することが推奨されます。

その理由は、受験資格の獲得です。行政書士試験に合格すれば、自動的に社労士試験の受験資格が得られます。大学で62単位を取得していない方や、労務の実務経験がない方でも、行政書士試験に合格すれば社労士試験にチャレンジできるようになります。

また、難易度の順序も理由の一つです。行政書士試験の方が合格率が高く、必要な勉強時間も短いため、まず行政書士試験で法律学習の基礎を身につけてから、社労士試験に挑戦するという戦略が有効です。法律の勉強に慣れることで、社労士試験の学習もスムーズに進められます。

ただし、最初から社労士を目指すことが明確であり、受験資格を満たしている場合は、直接社労士試験にチャレンジしても問題ありません。自分の状況とキャリアプランに合わせて選択しましょう。

社労士と行政書士のダブルライセンスのメリット

両方の資格を取得するダブルライセンス戦略には、大きなメリットがあります。社労士のダブルライセンスについて、さらに詳しい戦略を知りたい方は専門ページをご覧ください。

業務の相互補完が可能になる

社労士と行政書士のダブルライセンスを持つことで、業務の相互補完が可能になります。両資格は専門分野が異なるため、重複することなく業務範囲を広げられます。

社労士として労務管理を担当している企業に対して、行政書士として許認可申請をサポートすることができます。逆に、行政書士として会社設立を支援した企業に対して、社労士として労務管理の顧問契約を提案できます。一つの顧客から複数の業務を受注できるため、効率的に収益を上げられます。

また、それぞれの資格の弱点を補完できます。社労士は継続的な顧問業務が強みですが、新規案件の獲得が課題になることがあります。行政書士業務で新しい顧客と接点を持ち、そこから社労士業務につなげることができます。

会社設立から労務管理まで一貫サポートできる

ダブルライセンスの最大の強みは、会社設立から労務管理まで一貫してサポートできることです。これは起業家にとって非常に価値の高いサービスです。

会社設立時には、行政書士として定款作成、会社登記のサポート(司法書士との連携が必要な部分もあります)、事業開始に必要な許認可申請を担当します。その後、社労士として就業規則の作成、社会保険の加入手続き、給与計算システムの構築、労務管理体制の整備をサポートします。

起業家は、複数の専門家に依頼する手間が省け、窓口が一本化されるメリットを享受できます。あなたにとっても、一つの顧客から長期的かつ多面的な収益を得られるため、ビジネスの安定性が高まります。

顧客獲得・単価向上につながる

ダブルライセンスは、営業活動において大きな武器になります。「社労士・行政書士」という肩書きは、専門性の高さと業務範囲の広さを同時にアピールできます。

顧客側から見ると、一人の専門家が複数の業務に対応してくれることは大きな安心感につながります。信頼関係が構築されれば、新たな業務が発生した際にも優先的に依頼してもらえる可能性が高まります。

また、業務の単価向上にもつながります。複数の専門知識を持つ専門家として、より高い報酬を設定できます。会社設立パッケージとして、定款作成から労務管理の初期設定まで一括で提供すれば、個別に提供するより高い報酬を得られる可能性があります。

ワンストップサービスが強力な営業武器に

現代のビジネス環境では、「ワンストップサービス」の価値が高まっています。顧客は複数の専門家を探し回るより、一人の専門家にまとめて依頼できることを望んでいます。

社労士と行政書士のダブルライセンスは、まさにこのニーズに応えるものです。「企業法務のワンストップサービス」として、会社設立、許認可、労務管理、社会保険手続きなど、企業運営に必要な幅広い業務を提供できます。

このワンストップサービスは、競合との差別化にもなります。社労士だけ、行政書士だけの事務所と比べて、明確なアドバンテージを持つことができます。顧客獲得の成功率が上がり、紹介による新規顧客の獲得も期待できます。

社労士と行政書士の将来性を比較

資格を取得する際には、将来性も重要な判断材料です。社会の変化とともに、両資格の需要がどう変化するかを見ていきましょう。

社労士:働き方改革で需要増加中

社労士の需要は、働き方改革の推進によって増加しています。2019年に施行された働き方改革関連法により、企業は時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金などへの対応が求められています。

これらの法改正に適切に対応するためには、専門知識を持った社労士のサポートが不可欠です。特に中小企業では、人事労務の専門部署を持たないことが多く、外部の社労士に依存する傾向が強まっています。

また、高齢化社会の進展により、年金相談や高齢者雇用に関する需要も増加しています。企業の労務管理が複雑化する中で、社労士の専門性はますます重要になっています。

さらに、人手不足が深刻化する中で、人材の採用・定着・育成が企業の最重要課題となっています。社労士は人事制度の設計や労働環境の改善を通じて、この課題解決に貢献できます。これらの要因から、社労士の将来性は非常に明るいと言えます。

行政書士:許認可業務は継続的に需要あり

行政書士の需要も、継続的に存在します。日本では様々な事業を始める際に許認可が必要であり、この仕組みが大きく変わることは考えにくいためです。

建設業許可、飲食店営業許可、産業廃棄物処理業許可など、主要な許認可業務は今後も継続的に発生します。新規事業の立ち上げや事業拡大に伴い、許認可申請のニーズは常にあります。

また、外国人労働者の増加により、在留資格(ビザ)関連の業務が急増しています。入管業務を専門とする行政書士は、高い需要を享受しています。グローバル化が進む中で、この分野の需要はさらに拡大する見込みです。

相続・遺言分野も、高齢化社会の進展により需要が増加しています。相続手続きの複雑さから、行政書士のサポートを求める人が増えています。

ただし、行政書士は競争も激しい業界です。全国に約5万人の行政書士がおり、開業しても顧客を獲得できずに廃業する方も少なくありません。専門分野を確立し、差別化を図ることが成功の鍵となります。

両資格とも将来性は十分

社労士と行政書士は、どちらも将来性が十分にある資格です。社会の変化に伴い、それぞれの専門性が求められる場面が増えています。

社労士は、働き方改革、人手不足、高齢化社会という社会課題に対応する専門家として、需要が高まっています。企業が継続的に必要とする労務管理業務があるため、安定した需要が見込めます。

行政書士は、起業、許認可、国際化、相続など、社会の様々な場面で必要とされる専門家です。業務範囲の広さを活かし、社会のニーズに柔軟に対応できます。

ただし、両資格とも「資格を取れば安泰」というわけではありません。専門知識を常にアップデートし、顧客に価値を提供し続ける努力が必要です。変化する社会のニーズに対応し、自分の専門性を高めていくことで、長期的なキャリアを築くことができます。

社労士と行政書士の比較に関連するよくある質問(FAQ)

Q. 社労士と行政書士、どちらが難しいですか?

社労士試験の方が難易度が高いと言えます。合格率は社労士が約6〜7%、行政書士が約10〜13%と、社労士の合格率が明らかに低くなっています。必要な勉強時間も、社労士が800〜1000時間、行政書士が600〜800時間と、社労士の方が200〜400時間多く必要です。

社労士試験は、労働法や社会保険法という限定された分野を非常に深く学ぶ必要があり、細かい数字や条文を正確に記憶する暗記量が膨大です。また、全科目で基準点をクリアする必要があるため、苦手科目を作らずバランスよく学習することが求められます。

ただし、難易度の感じ方は個人の得意分野によっても異なります。労働法に興味があり暗記が得意な方は社労士試験に取り組みやすいかもしれません。幅広い法律知識を学ぶことが好きな方は行政書士試験の方が向いている可能性があります。

Q. 社労士と行政書士、どちらが年収が高いですか?

平均年収を比較すると、社労士が約780万円、行政書士が約580万円と、社労士の方が約200万円高い傾向にあります。社労士は企業との継続的な顧問契約により安定した収入を得やすく、企業内で働く場合も専門職として高い給与を得られることが理由です。

ただし、独立開業した場合の収入は、両資格とも個人の営業力や専門性によって大きく変動します。成功している開業社労士・開業行政書士であれば、年収1000万円以上も十分可能です。行政書士でも、建設業許可や外国人ビザなど専門分野を確立し、高単価の案件を継続的に獲得できれば高収入を得られます。

年収だけでなく、働き方や仕事のやりがい、将来のキャリアプランなども含めて総合的に判断することが重要です。

Q. 社労士と行政書士のダブルライセンスは意味がありますか?

社労士と行政書士のダブルライセンスには大きな意味があります。両資格は専門分野が異なるため、業務範囲を広げて相互補完できるからです。会社設立から労務管理まで一貫してサポートできるワンストップサービスは、顧客にとって非常に価値が高く、競合との差別化にもつながります。

実際、独立開業して成功している専門家の中には、ダブルライセンスを活かしている方が多くいます。一つの顧客から複数の業務を受注でき、効率的に収益を上げられます。また、行政書士業務で新規顧客と接点を持ち、社労士業務の顧問契約につなげるという営業戦略も有効です。

ただし、両方の資格を取得するには時間と労力がかかります。まず一つの資格で実務経験を積み、基盤を作ってから次の資格にチャレンジするという段階的なアプローチが現実的でしょう。

Q. 社労士と行政書士、どちらを先に取るべきですか?

一般的には、行政書士を先に取得してから社労士を目指すことが推奨されます。最大の理由は、行政書士試験に合格すると社労士試験の受験資格が得られることです。大学で62単位を取得していない方や労務の実務経験がない方でも、行政書士試験合格により社労士試験にチャレンジできるようになります。

また、行政書士試験の方が合格率が高く(10〜13%)、必要な勉強時間も短い(600〜800時間)ため、まず行政書士試験で法律学習の基礎を身につけてから、社労士試験に挑戦するという戦略が効率的です。法律の勉強に慣れることで、社労士試験の学習もスムーズに進められます。

ただし、最初から社労士を目指すことが明確で、すでに受験資格を満たしている場合は、直接社労士試験にチャレンジしても問題ありません。自分の状況とキャリアプランに合わせて柔軟に判断しましょう。

Q. 行政書士合格で社労士の受験資格が得られるって本当?

本当です。行政書士試験に合格すると、社労士試験の受験資格が得られます(社会保険労務士法第14条の2)。これは、行政書士が国家資格として一定の法律知識を証明するものと認められているためです。

重要なのは、行政書士として登録していなくても、試験に合格しているだけで社労士試験の受験資格が得られるという点です。行政書士試験合格後、登録せずに社労士試験の勉強を始めることができます。

この仕組みを活用して、「行政書士試験合格→社労士試験受験資格獲得→社労士試験合格→社労士として登録・開業」というルートを選ぶ方もいます。大学で必要な単位を取得していない方や、労務の実務経験がない方にとって、行政書士試験は社労士試験への入り口となる重要な資格です。

まとめ:社労士と行政書士は専門分野が違う、自分の目標に合わせて選ぼう

本記事では、社労士(社会保険労務士)と行政書士の違いについて詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

1. 専門分野と業務内容の違い:社労士は労務管理・社会保険の専門家として「深く狭く」業務を展開し、企業の人事労務分野で専門性を発揮します。一方、行政書士は許認可書類作成の専門家として「浅く広く」業務を扱い、会社設立から相続まで幅広い分野でサポートします。独占業務の内容が全く異なるため、自分の興味関心に合った資格を選ぶことが重要です。

2. 難易度と年収の比較:社労士試験は合格率約6〜7%、必要勉強時間約1000時間と、行政書士試験(合格率約10〜13%、必要勉強時間600〜800時間)より難易度が高い傾向にあります。平均年収も社労士が約780万円、行政書士が約580万円と社労士が高めですが、独立開業後の収入は両資格とも個人の努力次第で大きく変動します。

3. 働き方とキャリアパス:社労士は企業内勤務と独立開業の両方を選択でき、特に企業内でのキャリアアップに有利です。行政書士は独立開業が主流で、自由な働き方を実現できます。ダブルライセンスを取得すれば、会社設立から労務管理まで一貫してサポートするワンストップサービスを提供でき、大きな競争優位性を持てます。

どちらも価値ある国家資格

社労士と行政書士は、どちらも価値ある国家資格です。社労士は働き方改革や人手不足という社会課題に対応する専門家として需要が高まっており、行政書士は起業支援や許認可業務で継続的に必要とされています。

どちらの資格を選ぶかは、「労務管理に興味があるか、許認可業務に興味があるか」「企業内で働きたいか、独立開業したいか」「どの程度の学習時間を確保できるか」といった要素を総合的に判断して決めましょう。

ダブルライセンスも視野に入れて戦略的に

長期的なキャリアを考えるなら、ダブルライセンスも視野に入れた戦略的な資格取得がおすすめです。一般的には「行政書士→社労士」の順で取得することで、受験資格の獲得と段階的な学習が可能になります。

まず一つの資格で実務経験を積み、顧客基盤を作ってから次の資格にチャレンジすることで、リスクを抑えながらスキルアップできます。両方の資格を持つことで、ワンストップサービスという強力な武器を手に入れ、競合との差別化を図れます。

あなたのキャリア目標やライフスタイルに合わせて、最適な資格を選択しましょう。どちらの資格も、努力次第で充実したキャリアを築くことができる魅力的な選択肢です。

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