社労士(社会保険労務士)試験は「最も法改正の影響を受ける試験」と言われ、毎年必ず法改正問題が出題されます。しかし、いつから対策を始めるべきか、どの法改正が試験範囲なのか、効率的な勉強法は何か、悩む受験生が多いのが現実です。
本記事では、法改正対策の開始時期、試験対象となる法改正の基準、具体的な勉強法、おすすめ教材まで、合格に必要な社労士試験の法改正対策の全てを解説します。この情報をもとに、社労士試験合格に向けて、効果的な法改正対策を実践しましょう。
- 社労士試験の法改正対策を始める最適な時期と準備方法
- 試験対象となる法改正の基準と出題されやすい傾向
- 独学でも実践できる効率的な法改正対策の具体的な勉強法
- おすすめの教材と通信講座の活用方法
- 開始時期は5月から:社労士試験の法改正対策は5月から始めるのがベストです。4月中旬に試験対象の法律が確定し、5月以降に法改正専用テキストが発売されるため、この時期から対策を開始すれば十分な準備期間を確保できます。
- 広く浅く学習する:法改正対策では全ての改正を完璧に覚えようとせず、広く浅く学習することが重要です。特に数字の変更と新しい用語に着目し、改正理由を理解することで効率的に得点につなげられます。
- メイン教材に一元化:法改正内容をメイン教材に書き込んで一元化することで、直前期の復習効率が格段に向上します。別々に管理すると混乱を招くため、情報を集約することが合格への近道です。
社労士(社会保険労務士)試験における法改正対策の重要性
社労士試験では、法改正に関する問題が毎年必ず出題されます。特に労働法や社会保険に関する法律は頻繁に改正されるため、最新の法律知識を把握していないと合格は困難です。ここでは、なぜ法改正対策が社労士試験合格に不可欠なのかを詳しく解説します。
社労士試験は最も法改正の影響を受ける試験
社労士試験は、弁護士や税理士などの他の法律系資格と比較しても、最も法改正の影響を受ける試験と言われています。その理由は、社労士が扱う労働法や社会保険制度が、社会情勢や経済状況の変化に応じて頻繁に改正されるためです。
例えば、働き方改革関連法の施行により、労働基準法や労働安全衛生法が大きく改正されました。また、少子高齢化に伴い、年金制度や医療保険制度も毎年のように見直しが行われています。社労士は企業の人事労務管理を支援する専門家であるため、こうした最新の法律知識を常にアップデートしておく必要があります。
試験問題も、この実務上の要請を反映して、直近の法改正から多く出題される傾向にあります。古い法律知識だけでは対応できない問題が必ず含まれているため、法改正対策は避けて通れません。
毎年必ず法改正問題が出題される
社労士試験では、択一式・選択式のいずれにおいても、法改正に関する問題が毎年複数出題されます。過去5年間の出題実績を見ると、択一式では各科目で1〜3問、選択式では各科目で1〜2箇所、法改正に関連する内容が問われています。
特に注目すべきは、法改正問題が基準点(各科目で必ず超えなければならない最低点)に大きく影響する可能性があることです。例えば、択一式で7科目中4科目が基準点割れとなると、総得点が合格点に達していても不合格となってしまいます。法改正問題を落とすことで基準点割れのリスクが高まるため、確実に得点できるよう対策が必要です。
また、法改正問題は比較的取り組みやすい問題が多いという特徴もあります。新しく追加された条文や変更された数字は、受験生全員が同じスタートラインから学習するため、きちんと対策すれば得点源にできます。
年金・医療保険は毎年のように改正される
社労士試験の主要科目である年金関連科目(国民年金法、厚生年金保険法)と医療保険関連科目(健康保険法、高齢者医療確保法)は、毎年のように改正が行われます。特に年金額の改定や保険料率の変更は、ほぼ確実に出題される重要ポイントです。
例えば、2023年度には老齢基礎年金の満額が月額66,250円から67,000円へ改定されました。また、健康保険の標準報酬月額の上限が変更されたり、介護保険料率が改定されたりすることも頻繁にあります。こうした数字の変更は、選択式試験で直接問われることが多いため、最新の数値を正確に把握しておく必要があります。
また、受給開始年齢の引き上げや給付要件の変更など、制度の根幹に関わる改正も定期的に実施されます。これらの改正は択一式で出題されやすく、改正理由や経過措置なども含めて理解しておくことが求められます。
法改正対策を怠ると合否に直結する
法改正対策を十分に行わないまま試験に臨むと、合否に直結する大きなリスクを抱えることになります。実際、合格者と不合格者の差が、法改正問題への対応力にあったというケースは少なくありません。
特に注意すべきは、旧法の知識で解答してしまうミスです。過去問を繰り返し解いて基礎知識が身についていても、法改正後の新しいルールを知らなければ誤った選択肢を選んでしまいます。例えば、育児休業給付金の給付率が50%だった時期と67%に引き上げられた後では、正解が変わってしまいます。
また、法改正対策が不十分だと、基準点割れのリスクが高まります。難易度が高い年度では、基準点が通常より低く設定されることもありますが、それでも法改正問題を確実に得点できていることが前提です。合格者の多くは、法改正対策に十分な時間を割いて準備していることを忘れてはいけません。
社労士試験の勉強法では、全体的な学習戦略を解説していますが、その中でも法改正対策は特に重点を置くべき分野です。
社労士(社会保険労務士)試験の法改正対策はいつから始めるべきか
法改正対策の開始時期は、社労士試験の合否を左右する重要なポイントです。早すぎても遅すぎても効率が悪くなるため、適切なタイミングを見極める必要があります。ここでは、法改正対策を始める最適な時期とその理由を詳しく説明します。
開始時期は5月から、遅くとも6月まで
社労士試験の法改正対策は、5月から開始するのがベストタイミングです。遅くとも6月中旬までには対策を始めないと、試験直前期に十分な準備時間を確保できなくなります。
5月が最適な理由は、この時期に法改正専用のテキストや資料が出揃うことと、基礎学習が一通り終わった段階で法改正に取り組むのが効率的だからです。基礎知識がない状態で法改正を学んでも、改正前後の違いが理解できず、単なる丸暗記になってしまいます。
一方、7月以降に法改正対策を始めると、時間不足に陥りやすくなります。社労士試験は8月下旬に実施されるため、7月は過去問演習や模擬試験の受験など、総合的な実力確認に充てるべき時期です。この段階で法改正対策に追われていると、全体的な学習バランスが崩れてしまいます。
実際の学習スケジュールとしては、5月に法改正専用テキストを入手して通読し、6月に重要改正を集中的にインプットし、7月に法改正問題演習を行うという流れが理想的です。
4月中旬に試験対象の法律が確定する
社労士試験で出題される法改正の範囲は、毎年4月中旬に確定します。具体的には、試験公示日(官報で試験実施が公示される日)時点で施行されている法律が試験対象となります。
2024年度試験の場合、4月12日が試験公示日でした。つまり、4月12日時点で施行されている法改正が試験範囲となり、4月13日以降に施行される改正は出題されません。この基準日は毎年4月中旬に設定されるため、4月下旬にならないと正確な試験範囲が確定しないという事情があります。
そのため、4月の段階で法改正対策を始めても、まだ試験範囲が確定していないため、非効率になる可能性があります。範囲外の法改正を学習してしまったり、重要度の判断を誤ったりするリスクがあるのです。
試験公示後、各資格スクールや出版社は、試験対象となる法改正をまとめたテキストを作成します。このテキストが出揃うのが5月以降であるため、法改正対策は5月からスタートするのが合理的なのです。
5月以降に法改正専用テキストが発売される
4月中旬の試験公示を受けて、5月以降に各資格スクールや出版社から法改正専用テキストが続々と発売されます。これらのテキストには、試験対象となる法改正が網羅的にまとめられており、重要度のランク付けもされています。
法改正専用テキストの主な利点は、以下の3点です。第一に、試験に出る可能性が高い改正が厳選されているため、効率的に学習できます。第二に、改正前後の違いが一目で分かる比較表が掲載されており、理解しやすい構成になっています。第三に、改正理由や背景も解説されているため、単なる暗記ではなく理解に基づいた学習が可能です。
社労士の問題集・テキスト・参考書でも詳しく解説していますが、法改正専用テキストは必ず1冊は購入することをおすすめします。市販のテキストだけでなく、資格スクールが提供する法改正対策講座のテキストも高品質です。
また、全国社会保険労務士会連合会が発行する公式のリーフレットも、5月以降に入手可能になります。これは無料で配布されることが多く、補助教材として活用できます。
直前期に十分な時間を確保する重要性
法改正対策を早めに開始しておくことで、試験直前期(7月後半〜8月)に他の学習に集中できる時間的余裕が生まれます。直前期は、過去問の総復習や弱点科目の克服、模擬試験の受験など、やるべきことが山積みです。
この時期に法改正対策が終わっていないと、焦りからミスを誘発したり、他の重要な学習がおろそかになったりします。特に、初学者の場合は基礎知識の定着も不十分な状態で直前期を迎えることが多いため、法改正対策まで手が回らなくなりがちです。
直前期には、法改正の最終確認として、特に重要な改正のみをピックアップして復習する程度に留めるのが理想的です。そのためには、5月から6月にかけて法改正の基本的な内容をインプットし、7月に問題演習を通じて定着を図る必要があります。
時間管理の観点からも、法改正対策は計画的に進めることが重要です。直前期に慌てることのないよう、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
試験対象となる法改正の基準と範囲
社労士試験では、どの時点で施行されている法改正が出題されるのか、明確な基準があります。この基準を正しく理解していないと、対象外の法改正を学習したり、逆に重要な改正を見落としたりする可能性があります。ここでは、試験対象となる法改正の具体的な基準と範囲について解説します。
4月中旬時点で施行されている法律が対象
社労士試験で出題される法改正は、試験年度の4月中旬時点で施行されている法律が対象となります。「施行されている」というのがポイントで、法律が成立しただけではなく、実際に効力を持って運用されている状態のものが試験範囲です。
例えば、2023年10月に法律が成立し、2024年4月1日に施行される改正があった場合、2024年度試験では出題対象となります。一方、2024年5月1日施行の改正は、試験公示日には施行されていないため、2024年度試験では出題されません(翌年度以降の試験対象となります)。
施行日は法律によって異なり、成立から数ヶ月後、あるいは数年後に設定されることもあります。そのため、ニュースで「新しい法律が成立した」という情報を見たとき、その法律がいつから施行されるのかを確認することが重要です。
また、段階的に施行される法律もあります。例えば、働き方改革関連法は、大企業と中小企業で施行時期が異なりました。こうした場合、試験公示日時点で施行されている部分のみが出題対象となります。
試験公示日(官報公示日)が基準日
試験対象となる法改正の基準日は、正確には「試験公示日」です。試験公示日とは、官報で社労士試験の実施が正式に公示される日のことで、毎年4月中旬に設定されます。
過去5年間の試験公示日を見ると、以下のようになっています。
年度 | 試験公示日 | 試験実施日 |
---|---|---|
2024年度 | 4月12日 | 8月25日 |
2023年度 | 4月14日 | 8月27日 |
2022年度 | 4月15日 | 8月28日 |
2021年度 | 4月16日 | 8月22日 |
2020年度 | 4月14日 | 8月23日 |
このように、試験公示日は毎年4月中旬の金曜日に設定されることが多いです。試験公示日は、社労士試験センターのウェブサイトや官報で確認できます。
基準日が4月中旬であることを知っておくことで、どの時期の法改正を優先的に学習すべきか判断できます。例えば、3月に施行された法改正は確実に試験範囲に含まれますが、5月以降に施行される改正は対象外となります。
4月中旬以降に施行される改正は対象外
試験公示日以降に施行される法改正は、その年度の試験では出題されません。これは、受験生に十分な準備期間を与えるためのルールです。
例えば、2024年5月1日に雇用保険法の改正が施行されたとしても、2024年8月の試験では出題対象外です。この改正が試験に出題されるのは、翌年2025年度以降となります。
ただし、注意が必要なのは「公布日」と「施行日」の違いです。法律は、まず国会で成立して公布され、その後、一定期間を経て施行されます。試験で問われるのは「施行日」が基準日前かどうかであって、公布日ではありません。
実務上、4月中旬以降に施行される改正については、法改正専用テキストにも掲載されないか、「参考情報」として扱われます。そのため、市販のテキストや資格スクールの教材に従って学習していれば、自然と試験対象の法改正に絞って学習できる仕組みになっています。
効率的な学習のためには、対象外の法改正に時間を使わないことも重要です。
過去3年間の法改正も出題される可能性
社労士試験では、当年度の法改正だけでなく、過去3年程度の法改正からも出題される可能性があります。特に、重要な制度変更や大規模な法改正は、施行後数年間にわたって繰り返し出題される傾向があります。
例えば、2020年4月に施行された同一労働同一賃金に関する法改正は、2020年度だけでなく、2021年度、2022年度の試験でも関連問題が出題されました。このように、実務上の影響が大きい改正は、受験生が確実に理解していることを確認するため、複数年度にわたって出題されます。
過去の法改正を学習する際のポイントは、以下の3点です。第一に、制度の根幹に関わる改正を優先的に復習すること。第二に、過去問を解く中で法改正関連の問題をチェックし、改正内容を確認すること。第三に、法改正専用テキストには過去数年分の重要改正もまとめられているため、それらもしっかり学習すること。
社労士の独学勉強法で解説しているように、過去問演習は合格の鍵となりますが、その際に法改正前の問題と法改正後の問題を区別して理解することが重要です。
ただし、5年以上前の法改正については、その後さらに改正されていることも多いため、最新の法律を優先して学習しましょう。
社労士試験で出題されやすい法改正の傾向
毎年多くの法改正が行われる中で、社労士試験で実際に出題される法改正には一定の傾向があります。出題されやすい法改正のパターンを把握しておくことで、効率的に学習を進めることができます。ここでは、過去の出題実績から見た、出題頻度の高い法改正のテーマを紹介します。
育児介護休業法の改正(働き方改革関連)
育児・介護休業法は、近年最も頻繁に改正されている法律の一つです。少子高齢化対策として、育児休業制度の拡充や介護離職防止のための制度改正が継続的に行われており、ほぼ毎年何らかの改正が実施されています。
特に出題されやすい改正内容としては、育児休業給付金の給付率変更、対象となる労働者の範囲拡大、男性の育児休業取得促進策(産後パパ育休の創設など)、育児休業期間の延長などがあります。2022年には、育児休業を取得しやすい環境整備の義務化や、有期雇用労働者の取得要件緩和など、大きな改正が行われました。
これらの改正は、実務上の影響が大きく、企業の人事労務担当者が必ず把握しておくべき内容であるため、試験でも重点的に出題されます。特に、改正前後の要件の違いや、適用時期、経過措置などが問われやすいポイントです。
改正理由としては、女性の継続就業支援、男性の育児参画促進、仕事と家庭の両立支援などが挙げられます。こうした政策的背景も含めて理解しておくと、択一式の問題で有利になります。
健康保険法・介護保険法の改正(料率・給付)
健康保険法と介護保険法は、保険料率の改定や給付内容の変更が頻繁に行われる法律です。特に、保険料率や標準報酬月額の上限額などの数字は、ほぼ毎年変更されるため、最新の数値を正確に把握しておく必要があります。
出題されやすい改正としては、健康保険料率の変更、介護保険料率の変更、標準報酬月額の上限額改定、高額療養費制度の見直し、後期高齢者医療制度の対象者変更などがあります。特に数字の変更は選択式で直接問われることが多いため、確実に覚えておくべきポイントです。
例えば、2023年度には協会けんぽの健康保険料率が都道府県ごとに改定されました。また、介護保険料率も定期的に見直されており、これらの最新の料率は試験で問われやすい内容です。
医療保険制度の改正は、高齢化社会における医療費抑制策として実施されることが多いため、改正の目的や背景を理解しておくと、単なる数字の暗記ではなく、理解に基づいた学習ができます。
雇用保険法の改正(給付制限期間など)
雇用保険法も、雇用情勢や経済状況の変化に応じて頻繁に改正される法律です。特に、失業給付の給付制限期間の短縮や、教育訓練給付金の拡充、雇用保険料率の変更などが出題されやすい傾向にあります。
近年の重要な改正としては、自己都合退職の給付制限期間が3ヶ月から2ヶ月に短縮されたこと、育児休業給付金の支給率や支給期間の見直し、高年齢雇用継続給付の段階的縮小などがあります。これらの改正は、失業者や育児休業取得者に直接影響するため、実務上も重要度が高く、試験でも頻出です。
また、雇用保険の適用拡大も重要なテーマです。例えば、週所定労働時間20時間未満の短時間労働者への適用拡大が段階的に進められており、こうした制度変更は択一式で問われやすいポイントです。
雇用保険料率の変更も毎年のように行われており、一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業で料率が異なることも含めて、最新の料率を把握しておく必要があります。
労災保険法の改正(給付額の改定)
労災保険法では、給付基礎日額や年金給付額の改定が定期的に行われます。これらの数字の変更は、選択式試験で直接出題される可能性が高いため、最新の金額を正確に覚えておく必要があります。
特に注意すべき改正としては、休業補償給付の給付率の見直し、障害等級の追加や変更、特別加入制度の対象拡大、労災認定基準の変更などがあります。近年では、精神障害や過労死の労災認定基準が見直されるなど、時代の変化に対応した改正が行われています。
また、通勤災害の範囲拡大や、複数事業労働者への労災給付の見直しなど、働き方の多様化に対応した改正も出題されやすいテーマです。特に、副業・兼業が増加している現代において、複数の事業場で働く労働者の労災保険の適用に関する改正は、実務上も注目度が高く、試験でも問われやすい内容です。
給付額の改定については、具体的な金額だけでなく、改定の理由(物価スライド方式など)も理解しておくと、択一式問題で有利になります。
年金制度の改正(受給開始年齢・支給額)
年金制度は、少子高齢化の進展に伴い、持続可能性を確保するための改正が継続的に行われています。特に、老齢年金の受給開始年齢の引き上げ、年金額の改定、受給資格期間の短縮などは、過去に何度も出題されている重要テーマです。
出題されやすい改正としては、老齢基礎年金の満額の金額変更、厚生年金の標準報酬月額上限の改定、在職老齢年金制度の見直し、繰り上げ・繰り下げ受給の減額率・増額率の変更などがあります。特に年金額は毎年改定されるため、最新年度の金額を確実に把握しておく必要があります。
例えば、2023年度の老齢基礎年金の満額は月額67,000円(年額804,000円)でしたが、2024年度には改定されています。こうした最新の数値は、選択式で穴埋め問題として出題される可能性が高いため、法改正専用テキストで確認しておきましょう。
また、年金制度の改正は段階的に実施されることが多く、経過措置や適用時期の理解も重要です。例えば、厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げは、生年月日によって異なるため、択一式で細かい要件が問われることがあります。
数字の変更と新しい用語の追加
法改正対策において最も得点しやすいのが、数字の変更と新しい用語の追加に関する問題です。これらは、比較的暗記しやすく、選択式試験で直接出題されることが多いため、優先的に押さえておくべきポイントです。
数字の変更としては、保険料率、給付額、標準報酬月額の上限・下限、年齢要件、期間要件などがあります。例えば、雇用保険料率が0.9%から1.0%に変更された場合、この数字は試験で問われる可能性が高くなります。数字は正確に覚える必要があるため、メイン教材に書き込んで繰り返し確認しましょう。
新しい用語の追加も重要です。法改正により新しい制度が創設されると、それに伴って新しい用語が追加されます。例えば、「産後パパ育休」「勤務間インターバル制度」「同一労働同一賃金」などの用語は、制度創設時に出題されやすくなります。
新しい用語が出題される際は、その定義や要件を問う問題が多いため、単に用語を覚えるだけでなく、内容まで理解しておくことが重要です。法改正専用テキストでは、新しい用語に「新設」などのマークが付いていることが多いので、重点的にチェックしましょう。
法改正対策の効率的な勉強法【5つのポイント】
法改正対策を効率的に進めるためには、やみくもに全ての改正を覚えようとするのではなく、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、合格者の多くが実践している、効果的な法改正対策の勉強法を5つのポイントに絞って解説します。
ポイント①広く浅く学習する(深入りしない)
法改正対策の最も重要なポイントは、広く浅く学習することです。全ての法改正を完璧に理解しようとすると、膨大な時間がかかり、他の学習がおろそかになってしまいます。
法改正問題は、基本的な改正内容を押さえておけば解答できる問題が大半です。細かい経過措置や例外規定まで深入りする必要はありません。むしろ、多くの法改正に目を通し、「こういう改正があった」という程度の理解で十分です。
具体的には、各法改正について「何が」「どのように」変わったのかを1〜2文で説明できるレベルを目指しましょう。例えば、「育児休業の対象労働者の範囲が拡大され、有期雇用労働者の取得要件が緩和された」といった程度の理解で構いません。
時間配分の目安としては、法改正対策全体で50〜70時間程度を想定し、その中で多くの改正をカバーすることを優先します。一つの改正に1時間以上かけるのではなく、10〜15分程度で次の改正に移るくらいのテンポで進めましょう。
深入りせず広くカバーすることで、試験で予想外の法改正が出題されても、ある程度対応できる応用力が身につきます。
ポイント②数字と新しい語句に着目する
法改正対策で最も効率的に得点につなげられるのが、数字の変更と新しい語句の追加に着目することです。これらは選択式試験で直接問われることが多く、比較的暗記しやすいため、コストパフォーマンスが高い学習ポイントです。
数字については、改正前と改正後の数値を比較して覚えることが効果的です。例えば、「育児休業給付金の給付率が50%から67%に引き上げ」のように、変更前後をセットで記憶すると忘れにくくなります。特に注意すべき数字は、保険料率、給付率、標準報酬月額、年齢要件、期間要件などです。
新しい語句については、その定義と要件を簡潔にまとめておきましょう。例えば、「産後パパ育休」という新しい制度が創設された場合、「子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能な、男性版の育児休業制度」といった形で要点を押さえます。
また、数字や新しい語句には、メイン教材にマーカーで印を付けたり、付箋を貼ったりして、一目で分かるようにしておくと、直前期の復習が効率的になります。
ポイント③改正理由を理解する(丸暗記しない)
法改正を単純に丸暗記するのではなく、なぜその改正が行われたのか、改正理由を理解することが重要です。改正理由を理解していると、記憶に定着しやすくなるだけでなく、択一式試験で応用問題が出題された際にも対応しやすくなります。
例えば、育児休業制度の拡充が行われる理由は、少子化対策や女性の継続就業支援、男性の育児参画促進などです。こうした政策的背景を理解していると、「なぜこの要件が追加されたのか」「どのような労働者を救済するための改正なのか」といった出題意図を推測できるようになります。
改正理由を理解するためには、法改正専用テキストの「改正の背景」や「改正のポイント」といったコラムをしっかり読むことが効果的です。また、厚生労働省のウェブサイトで公開されている改正法の概要資料を見ると、改正の目的や期待される効果が分かりやすく説明されています。
単なる丸暗記では、試験本番で少し違う角度から問われると対応できなくなりますが、改正理由を理解していれば、初見の問題でも正解にたどり着ける可能性が高まります。
ポイント④メイン教材に法改正内容を書き込む(一元化)
法改正対策で最も効果的な方法の一つが、法改正専用テキストで学習した内容を、メイン教材(基本テキストや過去問集など)に書き込んで一元化することです。これにより、直前期の復習効率が格段に向上します。
法改正内容を別のテキストで管理していると、メイン教材で学習する際に「これは改正されているのか」「最新の法律ではどうなっているのか」と、いちいち法改正テキストを確認しなければなりません。これは非常に非効率で、時間のロスにつながります。
一元化の具体的な方法としては、メイン教材の該当箇所に、赤ペンや青ペンで法改正内容を書き込みます。例えば、「育児休業給付金の給付率」の記載箇所に、「2022年4月改正:67%(当初6ヶ月)」と書き込みます。また、付箋を使って「法改正」と目印を付けておくと、後から見返す際に便利です。
デジタル教材を使用している場合は、ハイライト機能やメモ機能を活用して、法改正内容を追記しましょう。PDFの場合は、注釈機能を使って書き込むことができます。
一元化により、メイン教材を見るだけで最新の法律を確認できるようになり、学習効率が大幅に向上します。
ポイント⑤旧法と混同しないよう整理する
法改正対策で最も注意すべきなのが、旧法(改正前の法律)と新法(改正後の法律)を混同してしまうミスです。過去問を解いていると、改正前の法律に基づいた問題も出てくるため、「どちらが現在の法律なのか」を常に意識する必要があります。
混同を防ぐためには、改正前後を比較する表を作成することが効果的です。例えば、以下のような表を作成します。
項目 | 改正前 | 改正後 | 改正年月 |
---|---|---|---|
育児休業給付金の給付率 | 50% | 67%(当初6ヶ月) | 2022年4月 |
自己都合退職の給付制限期間 | 3ヶ月 | 2ヶ月 | 2020年10月 |
また、過去問を解く際には、問題文に記載されている施行日を必ず確認しましょう。「平成30年4月1日現在施行されている法令に基づいて」という記載があれば、その時点での法律で解答する必要があります。
メイン教材に法改正内容を書き込む際は、改正年月も併記しておくと、新旧の区別がつきやすくなります。例えば、「67%(2022改正)」といった形で記載します。
社労士の通信講座を利用している場合は、講義動画で改正前後の違いを丁寧に解説してくれるため、混同を防ぎやすくなります。
独学での法改正対策|おすすめ教材と活用法
独学で社労士試験に挑戦する場合でも、適切な教材を選べば十分に法改正対策が可能です。ここでは、独学者におすすめの法改正対策教材と、その効果的な活用方法を紹介します。
法改正専用テキストを1冊購入する
独学で法改正対策を行う場合、まず法改正専用テキストを1冊購入することを強くおすすめします。市販されている法改正専用テキストには、試験対象となる法改正が網羅的にまとめられており、重要度のランク付けもされているため、効率的に学習できます。
おすすめの法改正専用テキストとしては、TAC出版の「社労士 法改正と完全無欠の直前対策」や、日本マンパワーの「社労士試験 法改正と白書対策」などがあります。これらのテキストは、毎年5月頃に最新版が発売され、過去3年分の重要法改正も含めて解説されています。
法改正専用テキストを選ぶ際のポイントは、以下の3点です。第一に、重要度のランク付けがされていること(A・B・Cランクなど)。第二に、改正前後の比較表が充実していること。第三に、改正理由や背景の解説があること。
テキストは1冊に絞り、それを繰り返し読み込むことが重要です。複数のテキストに手を出すと、かえって混乱を招く可能性があります。まずは通読して全体像を把握し、その後、重要度の高い改正を重点的に復習するという流れで進めましょう。
価格は2,000〜3,000円程度ですが、この投資により法改正対策が大幅に効率化されるため、必ず購入することをおすすめします。
全国社会保険労務士会連合会の公式リーフレット
全国社会保険労務士会連合会(通称:社労士会連合会)が発行する公式のリーフレットやパンフレットも、法改正対策の教材として活用できます。これらの資料は、社労士会のウェブサイトで無料でダウンロードできる場合が多く、最新の法改正情報を手軽に入手できます。
公式リーフレットの利点は、情報の正確性が保証されていることと、実務的な観点から重要な改正が厳選されていることです。試験対策専用の教材ではありませんが、実務家向けの資料であるため、試験で出題されやすい重要な改正が分かりやすくまとめられています。
活用方法としては、法改正専用テキストで学習した内容の補足資料として使用するのがおすすめです。特に、改正の背景や実務上の注意点など、テキストには載っていない詳細情報を確認する際に役立ちます。
ただし、公式リーフレットは試験対策用に編集されていないため、これだけで法改正対策を完結させることは難しいです。あくまで補助教材として位置づけ、メイン教材は市販の法改正専用テキストを使用しましょう。
社労士会連合会のウェブサイトでは、定期的に最新の法改正情報が更新されるため、試験直前期にも確認しておくと良いでしょう。
資格スクールの法改正講座(単科受講可能)
独学者でも、資格スクールが提供する法改正対策講座を単科で受講することが可能です。多くの資格スクールでは、法改正対策講座を単独で販売しており、完全な独学者でも利用できます。
資格スクールの法改正講座のメリットは、以下の4点です。第一に、講師が重要度を明確に示してくれるため、メリハリのある学習ができること。第二に、改正理由や背景を分かりやすく解説してくれること。第三に、過去の出題傾向を踏まえた予想問題が提供されること。第四に、質問サポートがある場合、疑問点を解消できること。
主要な資格スクールの法改正講座としては、TACの「法改正対策講座」、資格の大原の「法改正・白書対策講座」、LEC東京リーガルマインドの「法改正ファイナルチェック講座」などがあります。これらは、通学講座だけでなく、Web通信講座としても提供されているため、独学者でも自宅で受講できます。
価格は1万円〜3万円程度で、講義時間は6〜12時間程度が一般的です。予算に余裕がある場合は、独学と併用することで、より確実な法改正対策が可能になります。
単科講座は、5月〜6月頃に開講されることが多いため、早めに各スクールのウェブサイトで情報を確認しておきましょう。
オンライン情報の活用(公式サイト・ブログ)
インターネット上には、法改正に関する情報が多数公開されています。特に、厚生労働省の公式サイトや社労士試験関連のブログなどは、無料で有益な情報を入手できる貴重な情報源です。
厚生労働省のウェブサイトでは、法改正の概要をまとめたリーフレットやパンフレットがPDFで公開されています。これらの資料は、改正の目的や主要なポイントが図解入りで分かりやすく説明されているため、理解を深めるのに役立ちます。
また、社労士受験生向けのブログやウェブサイトでは、法改正のポイント解説や予想問題などが無料で公開されていることがあります。これらの情報を活用することで、市販のテキストでは得られない視点や情報を得ることができます。
ただし、インターネット上の情報には注意も必要です。情報の正確性や信頼性を必ず確認し、公式情報源(厚生労働省、社労士会連合会など)や、信頼できる資格スクールの情報を優先的に参照しましょう。個人ブログの情報は、あくまで参考程度に留め、必ず複数の情報源で確認することが重要です。
また、オンライン情報だけで法改正対策を完結させることはおすすめしません。体系的にまとめられた市販のテキストを1冊は購入し、オンライン情報は補足として活用するのが賢明です。
法改正と白書対策がセットのテキストを選ぶ
法改正対策のテキストを選ぶ際は、白書対策もセットになっている教材を選ぶと効率的です。社労士試験では、法改正問題と並んで、労働経済白書や厚生労働白書からの出題も毎年あるため、これらを一緒に対策できるテキストがおすすめです。
「法改正と白書対策」がセットになったテキストは、多くの出版社から発売されており、1冊で両方の対策ができるため、コストパフォーマンスが高いです。例えば、TAC出版の「社労士 法改正と完全無欠の直前対策」や、ネットスクールの「社労士 法改正と白書対策」などがあります。
これらのテキストでは、前半部分で法改正がまとめられ、後半部分で白書対策が解説されているという構成が一般的です。学習時期としては、法改正対策を5月〜6月に行い、白書対策を6月〜7月に行うという流れで進められます。
白書対策も法改正対策と同様に、広く浅く学習することがポイントです。細かい数字まで全て覚えようとせず、重要なトピックと大きな数字の傾向(増加・減少など)を押さえる程度で十分です。
セット教材を1冊購入することで、直前期対策を効率的に進められるため、独学者には特におすすめです。
通信講座・予備校での法改正対策
通信講座や予備校を利用している受験生は、カリキュラムに組み込まれた法改正対策講座を最大限活用しましょう。ここでは、通信講座・予備校での法改正対策の特徴とメリットを解説します。
カリキュラムに法改正講座が含まれる
多くの通信講座や予備校では、本科コースのカリキュラムに法改正対策講座が標準で含まれています。そのため、追加費用なしで法改正対策を受講できるのが大きなメリットです。
法改正講座は、通常5月〜6月頃に実施されることが多く、基本講義が一通り終わった後のタイミングで組み込まれています。講義時間は6〜12時間程度で、試験対象となる主要な法改正を体系的に学習できます。
通信講座の場合、Web配信やDVDで講義を視聴できるため、自分のペースで学習を進められます。また、倍速再生機能を活用すれば、短時間で効率的に講義を受講することも可能です。
カリキュラムに組み込まれているため、「いつ法改正対策を始めるべきか」と迷うこともなく、スケジュール通りに学習を進めれば自然と適切な時期に対策ができます。
また、法改正講座とセットで、法改正対策専用のテキストや問題集も配布されるため、教材選びに悩む必要もありません。
動画解説で理解しやすい
通信講座や予備校の法改正対策講座では、講師が動画で丁寧に解説してくれるため、独学でテキストを読むよりも理解しやすいのが大きな利点です。特に、複雑な法改正や制度変更については、講師の説明を聞くことで理解が深まります。
動画講義のメリットは、以下の4点です。第一に、改正前後の違いを図解やスライドで視覚的に説明してくれること。第二に、改正理由や背景を詳しく解説してくれること。第三に、過去の出題傾向と今年度の予想を教えてくれること。第四に、覚え方のコツや語呂合わせなども紹介してくれること。
特に、初学者や法律学習に不慣れな受験生にとっては、講師の解説があることで学習のハードルが大きく下がります。独学でテキストを読んでいて理解できなかった部分も、講義を聞くことで腑に落ちることが多いです。
また、質問サポートがある通信講座であれば、疑問点をメールや質問フォームで講師に直接質問できます。法改正で分からない点があった場合、すぐに解決できるのは大きなアドバンテージです。
講義動画は繰り返し視聴できるため、理解が不十分な部分は何度も見直して定着を図りましょう。
重要度ランク付けでメリハリをつける
通信講座や予備校の法改正対策講座では、講師が各法改正の重要度をランク付けして教えてくれます。これにより、限られた学習時間の中で、どの法改正を優先的に学習すべきかが明確になり、効率的な学習が可能になります。
一般的な重要度のランク付けとしては、以下のような分類がされます。Aランク(最重要)は、ほぼ確実に出題される法改正で、絶対に覚えるべき内容。Bランク(重要)は、出題可能性が高く、時間があれば必ず学習すべき内容。Cランク(参考)は、出題可能性は低いが、知っておくと有利になる内容。
このランク付けがあることで、時間が限られている受験生でも、Aランクの法改正だけは確実に押さえるといった優先順位をつけた学習ができます。特に、直前期に時間がなくなった場合でも、Aランクだけは最終確認できるため、最低限の得点を確保できます。
また、講師の長年の経験に基づいた予想が反映されているため、独学で判断するよりも精度の高い重要度判定ができます。過去の出題傾向や、今年度の法改正の社会的注目度などを総合的に考慮してランク付けされているため、信頼性が高いです。
最新情報をタイムリーに入手できる
通信講座や予備校を利用する最大のメリットの一つが、試験直前まで最新の法改正情報をタイムリーに入手できることです。法改正は試験公示日まで確定しないため、独学の場合は情報収集に苦労することがあります。
通信講座や予備校では、試験公示後すぐに試験対象となる法改正を分析し、受講生に情報を提供してくれます。また、直前期に追加の法改正情報が判明した場合も、Web配信や受講生向けメールで速やかに連絡してくれます。
さらに、重要な法改正については、補講や追加講義が実施されることもあります。特に、試験直前に大きな法改正が判明した場合、緊急の対策講座が開講されることもあるため、独学よりも安心して試験に臨めます。
また、受講生向けの専用サイトやアプリで、法改正に関する最新情報や訂正情報が随時更新されるため、常に最新の情報にアクセスできる環境が整っています。
こうしたサポート体制があることで、「自分が学習している内容が最新かどうか」という不安から解放され、学習に集中できます。
法改正対策の学習スケジュール
法改正対策を効果的に進めるためには、時期に応じた適切な学習スケジュールを立てることが重要です。ここでは、5月から試験直前の8月までの、月別の学習計画を具体的に解説します。
5月:法改正専用テキスト入手・通読
5月は、法改正対策の開始月です。まず、法改正専用テキストを入手し、全体を通読して、今年度どのような法改正があるのかを把握しましょう。
この時期の学習目標は、「全ての法改正に一度は目を通す」ことです。細かい内容まで覚えようとせず、「こういう改正があった」という程度の理解で十分です。通読の際は、重要度の高い改正にマーカーで印を付けておくと、後の学習が効率的になります。
5月中には、テキストを最低2回は通読することをおすすめします。1回目は全体の流れを掴むため、2回目は重要度の高い改正を意識しながら読み進めます。
また、通読と並行して、各法改正の改正理由や背景にも目を通しておきましょう。改正理由を理解することで、記憶に定着しやすくなります。
5月の学習時間の目安は、15〜20時間程度です。1日30分〜1時間程度を法改正対策に充てることで、無理なく通読を完了できます。
この時期に焦って全てを覚えようとする必要はありません。まずは全体像を把握することに集中しましょう。
6月:重要改正のインプット・メイン教材への書き込み
6月は、法改正対策の本格的なインプット期です。5月に通読した内容の中から、重要度の高い改正を中心に、詳しく学習していきます。
この時期の学習目標は、「Aランク・Bランクの法改正を確実に理解する」ことです。特に、数字の変更や新しい用語については、正確に記憶する必要があります。暗記カードやノートにまとめるなど、自分に合った方法で定着を図りましょう。
また、6月中に必ず行うべきなのが、メイン教材への法改正内容の書き込みです。基本テキストや過去問集の該当箇所に、法改正内容を赤ペンなどで追記し、情報を一元化します。これにより、7月以降の復習効率が格段に向上します。
書き込みの際は、改正年月も併記しておくと、新旧の区別がつきやすくなります。また、付箋を貼って「法改正」と目印を付けておくのも効果的です。
6月の学習時間の目安は、20〜30時間程度です。1日1〜1.5時間程度を法改正対策に充てることで、重要改正のインプットと一元化作業を完了できます。
この時期に、法改正の基本的な内容を頭に入れておくことで、7月の問題演習がスムーズに進められます。
7月:法改正問題演習・過去問との連動
7月は、法改正対策のアウトプット期です。6月までにインプットした内容を、問題演習を通じて定着させます。
この時期の学習目標は、「法改正問題を実際に解いて、理解度を確認する」ことです。法改正専用テキストに付属している問題や、予想問題集などを活用して、実践的な演習を行いましょう。
また、過去問を解く際には、法改正に関連する問題に特に注意を払います。過去の法改正が、どのような形で出題されているのかを確認し、出題パターンを把握しましょう。ただし、過去問は改正前の法律に基づいている場合があるため、現在の法律では答えが異なることがあります。その場合は、「現在の法律ではどうなるか」を考える練習として活用しましょう。
7月中旬から下旬にかけては、模擬試験を受験する時期でもあります。模試では、法改正問題が必ず出題されるため、自分の理解度を客観的に評価できます。模試で間違えた法改正問題は、重点的に復習しておきましょう。
7月の学習時間の目安は、15〜25時間程度です。この時期は、法改正対策だけでなく、全科目の総復習も並行して行う必要があるため、バランスを考えながら時間配分しましょう。
問題演習を通じて、自分が苦手な法改正分野を明確にし、8月の最終確認に備えます。
8月(試験直前):最重要改正の最終確認
8月は、試験直前期です。この時期の法改正対策は、最重要改正の最終確認に絞ります。
この時期の学習目標は、「Aランクの法改正を完璧にする」ことです。全ての法改正を再度復習する時間はないため、出題可能性が最も高い改正に絞って、集中的に確認します。
具体的には、メイン教材に書き込んだ法改正内容を見返したり、暗記カードで数字や新しい用語を最終チェックしたりします。また、予想問題や模試で間違えた法改正問題も、必ず再確認しておきましょう。
試験前日には、法改正の重要ポイントをまとめたノートやテキストをざっと見返すだけにとどめます。この段階で新しいことを覚えようとすると、かえって混乱を招く可能性があるためです。
8月の法改正対策の学習時間の目安は、5〜10時間程度です。1日30分〜1時間程度の確認で十分です。この時期は、法改正対策よりも、全体的なバランスや基礎知識の最終確認を優先しましょう。
また、試験当日は、会場に法改正のまとめ資料を持参し、試験開始直前に重要な数字や用語を最終確認することをおすすめします。
法改正対策でよくある失敗と注意点
法改正対策では、多くの受験生が同じような失敗を繰り返しています。ここでは、よくある失敗パターンとその対策を解説し、効率的な学習を実現するためのポイントを紹介します。
失敗①直前期まで法改正対策を後回しにする
最も多い失敗パターンが、「法改正対策は直前期にまとめてやればいい」と考えて、後回しにしてしまうことです。しかし、試験直前の7月〜8月は、過去問の総復習や弱点科目の克服、模擬試験の受験など、やるべきことが山積みです。
この時期に法改正対策を一から始めようとすると、時間が足りなくなり、中途半端な状態で試験に臨むことになります。特に、法改正の内容は量が多いため、短期間で全てを覚えることは非常に困難です。
対策としては、5月から計画的に法改正対策を開始し、6月までに基本的なインプットを完了させることが重要です。直前期は、最終確認に留めることで、他の学習とのバランスを保てます。
「基礎学習が終わってから法改正に取り組もう」と考える受験生もいますが、基礎学習は試験直前まで続くものです。完璧を目指さず、5月の段階で法改正対策を並行して始めることをおすすめします。
後回しにした結果、法改正問題で得点できず、基準点割れや不合格につながったという事例は少なくありません。計画的な学習スケジュールを立てることが合格への鍵です。
失敗②全ての法改正を完璧に覚えようとする
完璧主義の受験生に多い失敗が、全ての法改正を細部まで完璧に覚えようとすることです。しかし、毎年多数の法改正が行われており、全てを完璧に理解するには膨大な時間が必要です。
法改正対策の基本は「広く浅く」です。重要度の低い法改正については、「こういう改正があった」という程度の理解で十分です。深入りしすぎると、他の重要な学習がおろそかになり、全体的な学習バランスが崩れてしまいます。
対策としては、重要度のランク付けに従って、メリハリをつけた学習を行うことが重要です。Aランクの法改正は確実に覚え、Bランクは理解する程度、Cランクは目を通す程度という形で、優先順位をつけましょう。
また、経過措置や細かい例外規定まで覚える必要はありません。試験で問われるのは、改正の主要なポイントであり、マニアックな部分までは出題されません。
完璧を目指すあまり、法改正対策だけに時間を費やし、他の科目がおろそかになってしまっては本末転倒です。全体のバランスを考えながら、効率的に学習を進めましょう。
失敗③改正理由を理解せず丸暗記する
法改正の内容を、改正理由や背景を理解せずに丸暗記しようとするのも、よくある失敗パターンです。単純な丸暗記では、記憶に定着しにくく、試験本番で思い出せなくなる可能性があります。
また、択一式試験では、法改正の内容を少し変えた応用問題が出題されることがあります。丸暗記だけでは、こうした応用問題に対応できません。改正理由を理解していれば、「この改正は〇〇を目的としているから、こういう取扱いになるはずだ」と推測できるようになります。
対策としては、法改正専用テキストの「改正の背景」や「改正の趣旨」といった部分をしっかり読み、なぜその改正が必要だったのかを理解することが重要です。政策的な背景や社会的な課題を知ることで、改正内容が腑に落ちやすくなります。
例えば、育児休業制度の拡充が行われる理由は、少子化対策や女性の継続就業支援です。こうした背景を理解していれば、「男性も育児休業を取得しやすくするための改正だから、取得要件が緩和されるはずだ」と推測できます。
理解に基づいた学習は、単なる暗記よりも記憶に定着しやすく、応用力も身につきます。
失敗④旧法の知識と混同してしまう
過去問を繰り返し解いていると、改正前の旧法の知識が強く記憶に残ってしまい、新法と混同してしまうという失敗もよくあります。試験本番で、うっかり旧法の知識で解答してしまうと、確実に得点を落とします。
特に、数字が変更された場合は要注意です。例えば、「育児休業給付金の給付率は50%」という旧法の知識が強く残っていると、新法の「67%」という正しい答えを選べなくなります。
対策としては、改正前後を比較する表を作成し、常に「現在の法律ではどうなっているか」を意識することが重要です。メイン教材に法改正内容を書き込む際は、改正年月も併記しておくと、新旧の区別がつきやすくなります。
また、過去問を解く際には、問題文の施行日を必ず確認しましょう。「平成30年4月1日現在施行されている法令に基づいて」という記載があれば、その時点での法律で解答する必要があります。一方、「令和6年4月1日現在施行されている法令に基づいて」であれば、最新の法律で解答します。
通信講座や予備校の講義では、改正前後の違いを明確に説明してくれるため、混同を防ぎやすくなります。
失敗⑤インターネット情報だけで対策する
「無料で情報が手に入るから」という理由で、インターネット上の情報だけで法改正対策をしようとするのも、失敗につながりやすいパターンです。インターネット上の情報は、断片的であったり、情報の正確性が保証されていなかったりすることがあります。
また、ネット上の情報だけでは、重要度の判断が難しく、どの法改正を優先的に学習すべきかが分かりにくいです。さらに、情報が点在しているため、体系的な理解が難しく、学習効率が悪くなります。
対策としては、必ず法改正専用テキストを1冊購入し、それをメイン教材として使用することが重要です。市販のテキストは、試験に出る可能性の高い法改正が厳選されており、重要度のランク付けもされているため、効率的に学習できます。
インターネット上の情報は、あくまで補助的な情報源として活用し、公式サイト(厚生労働省、社労士会連合会など)や信頼できる資格スクールの情報のみを参照しましょう。個人ブログの情報は、必ず複数の情報源で確認することが重要です。
教材への投資を惜しんだ結果、不正確な情報で学習し、試験で失敗するリスクを考えれば、2,000〜3,000円程度のテキスト代は十分にペイする投資です。
昨年度のテキストでも大丈夫?法改正の一元化方法
受験生から多い質問の一つが、「昨年度のテキストを使っても大丈夫か」というものです。ここでは、昨年度教材の活用方法と、法改正内容を効率的に一元化する具体的なテクニックを解説します。
法改正内容を書き込めば昨年度教材も使える
結論から言えば、昨年度のテキストでも、法改正内容を適切に書き込めば十分に使用可能です。社労士試験の基本的な法律知識は、毎年大きく変わるわけではありません。変更されるのは、法改正部分や白書のデータなど、一部の内容だけです。
昨年度のテキストを使用するメリットは、費用を抑えられることと、使い慣れた教材で学習を継続できることです。特に、複数年かけて合格を目指す場合、毎年全てのテキストを買い替えるのは経済的な負担が大きくなります。
ただし、注意点もあります。法改正が多い年度の場合、書き込む内容が多くなり、テキストが見にくくなる可能性があります。また、制度の根幹に関わる大規模な改正があった場合は、新しいテキストの方が理解しやすいこともあります。
判断基準としては、法改正専用テキストを確認し、今年度の法改正の量を見て決めるのが良いでしょう。法改正が少なければ昨年度教材でも問題ありませんが、大きな制度変更があった場合は、新しいテキストの購入を検討すべきです。
どちらにしても、法改正専用テキストは必ず最新版を購入し、その内容をメイン教材に反映させることが重要です。
メイン教材への書き込み方法
法改正内容をメイン教材に書き込む際は、効率的かつ見やすい方法で行うことが重要です。ここでは、具体的な書き込みテクニックを紹介します。
まず、書き込みに使用するペンは、赤ペンまたは青ペンがおすすめです。黒ペンで書き込むと、元の印刷と区別がつきにくくなります。赤ペンは特に重要な法改正、青ペンは通常の法改正というように、色を使い分けるとさらに効果的です。
書き込みの内容は、簡潔にまとめることが重要です。長々と書き込むと読みにくくなるため、ポイントだけを箇条書きで記載します。例えば、「2022.4改正:給付率67%(当初6ヶ月)」といった形で、改正年月と変更内容を短く記載します。
書き込むスペースが足りない場合は、付箋を使用します。大きめの付箋に法改正内容を書き、該当箇所に貼り付けます。付箋の色も使い分けると、視認性が向上します。
また、法改正箇所には、ページの端に目印(インデックス)を付けておくと、後から見返す際に便利です。色付きの付箋を少しはみ出すように貼ることで、パラパラとページをめくるだけで法改正箇所を見つけられます。
付箋・マーカーを活用した一元化テクニック
付箋とマーカーを効果的に活用することで、法改正内容の一元化がさらに効率的になります。ここでは、具体的な活用テクニックを紹介します。
付箋の活用方法
大きめの付箋(75mm×75mm程度)を使用し、法改正内容を書き込んで該当箇所に貼り付けます。付箋を使うメリットは、書き込みスペースが広く取れることと、後から貼り替えられることです。
付箋の色は、重要度によって使い分けます。例えば、赤色の付箋は最重要法改正(Aランク)、黄色の付箋は重要法改正(Bランク)、青色の付箋は参考法改正(Cランク)といった形で分類します。
また、ページの端から少しはみ出すように貼ることで、インデックスとしても機能します。複数の法改正がある場合は、付箋を少しずつずらして貼ることで、どのページに何があるかが一目で分かります。
マーカーの活用方法
法改正により変更された数字や語句には、マーカーで印を付けます。マーカーの色も、重要度によって使い分けると効果的です。例えば、オレンジ色のマーカーは数字の変更、緑色のマーカーは新しい用語の追加といった形で分類します。
ただし、マーカーを引きすぎると、かえって重要箇所が分かりにくくなるため、本当に重要な部分にのみ使用しましょう。マーカーは「後から見返す際に目立たせる」ことが目的であり、装飾が目的ではありません。
また、改正前の記載には取り消し線を引き、その横に改正後の内容を書き込むという方法も効果的です。これにより、改正前後の違いが一目で分かるようになります。
デジタル教材での法改正対応
最近では、タブレットやPCで学習できるデジタル教材も普及しています。デジタル教材で法改正対応を行う場合は、以下の方法が効果的です。
PDFの教材を使用している場合は、PDF編集ソフトの注釈機能を活用します。Adobe Acrobat ReaderやGoodNotesなどのアプリでは、ハイライト、テキストボックス、付箋メモなどの機能が使えます。
テキストボックス機能を使って、法改正内容を該当箇所に追記します。フォントの色や背景色を変えることで、視認性を高められます。また、ハイライト機能で重要箇所をマークし、付箋メモ機能で詳細な説明を追加することも可能です。
電子書籍の場合は、ハイライトやメモ機能を活用します。ただし、電子書籍の種類によっては、書き込み機能が制限されていることもあるため、事前に確認が必要です。
デジタル教材のメリットは、検索機能が使えることと、複数のデバイスで同期できることです。スマートフォンやタブレットを使えば、通勤時間などのスキマ時間にも法改正内容を確認できます。
ただし、デジタル教材だけでなく、紙の教材も併用することをおすすめします。試験本番は紙ベースであるため、普段から紙の教材に慣れておくことも重要です。
主要科目別の法改正対策ポイント
社労士試験の主要科目ごとに、法改正の傾向と対策のポイントが異なります。ここでは、科目別の法改正対策の重点ポイントを解説します。
労働基準法の法改正(働き方改革関連)
労働基準法は、働き方改革関連法の施行により、近年大きな改正が続いています。特に、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金などは、実務上も重要度が高く、試験でも頻出のテーマです。
出題されやすいポイントとしては、時間外労働の上限時間(原則月45時間・年360時間、特別条項付き協定の場合の上限など)、年次有給休暇の年5日取得義務、中小企業への適用時期などがあります。これらは数字の変更が多いため、正確に覚える必要があります。
また、労働時間の把握義務や勤務間インターバル制度の努力義務化など、新しく追加された規定も要注意です。これらは択一式で「正しいものはどれか」という形で出題されやすいテーマです。
対策としては、働き方改革関連法の改正項目を一覧表にまとめ、改正年月と内容を整理しておくことが効果的です。また、大企業と中小企業で施行時期が異なる改正については、それぞれの適用時期を正確に把握しておきましょう。
労働基準法の法改正は、労働者の権利保護と企業の柔軟な働き方の両立を目指すものが多いため、改正の趣旨を理解しておくと、応用問題にも対応しやすくなります。
労災保険法の法改正(給付額・対象範囲)
労災保険法では、給付基礎日額や年金給付額の改定、特別加入制度の対象拡大、複数事業労働者への給付の見直しなどが、近年の主要な法改正テーマです。
出題されやすいポイントとしては、休業補償給付の給付基礎日額の最低保障額と最高限度額、障害補償年金の年金額、遺族補償年金の額などの数字があります。これらは毎年改定される可能性があるため、最新の金額を確認しておく必要があります。
また、特別加入制度の対象拡大は、近年注目されているテーマです。例えば、フリーランスや芸能関係者などへの適用拡大が段階的に進められており、どの業種がいつから特別加入の対象になったかが問われることがあります。
複数事業労働者への労災給付の見直しも重要なテーマです。副業・兼業が増加する中で、複数の事業場で働く労働者の賃金を合算して労災給付を行う制度が導入されており、その要件や計算方法が出題されやすいポイントです。
対策としては、給付額の数字は暗記カードにまとめて繰り返し確認することが効果的です。また、特別加入制度については、対象となる業種を表にまとめ、追加された時期とともに整理しておきましょう。
雇用保険法の法改正(失業給付・育児休業給付)
雇用保険法は、雇用情勢や経済状況の変化に応じて、失業給付や育児休業給付の内容が頻繁に見直されます。特に、給付制限期間の短縮、育児休業給付金の給付率変更、雇用保険料率の改定などが出題されやすいテーマです。
出題されやすいポイントとしては、自己都合退職の給付制限期間(現在は原則2ヶ月)、育児休業給付金の給付率(当初6ヶ月は67%、それ以降は50%)、雇用保険料率(一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業で異なる)などがあります。
また、高年齢雇用継続給付の段階的縮小や、教育訓練給付金の拡充なども重要なテーマです。これらは、高齢者雇用の促進やリスキリング支援といった政策的背景があるため、改正理由とともに理解しておくと記憶に定着しやすくなります。
雇用保険の適用拡大も注目されています。週所定労働時間20時間未満の短時間労働者への適用拡大が段階的に進められており、適用時期や対象となる労働者の要件が出題される可能性があります。
対策としては、給付制限期間や給付率などの数字は、改正前後を比較する表を作成して整理しましょう。また、雇用保険料率は毎年変更される可能性があるため、最新の料率を必ず確認しておくことが重要です。
健康保険法の法改正(保険料率・給付内容)
健康保険法では、保険料率の改定、標準報酬月額の上限額変更、高額療養費制度の見直しなどが、ほぼ毎年のように行われています。これらの数字は選択式で直接出題される可能性が高いため、最新の数値を正確に把握しておく必要があります。
出題されやすいポイントとしては、協会けんぽの健康保険料率(都道府県別)、介護保険料率、標準報酬月額の上限額(現在は1,390,000円)、高額療養費の自己負担限度額などがあります。特に、標準報酬月額の上限額は頻繁に改定されるため、要注意です。
また、出産育児一時金の額の引き上げや、傷病手当金の支給期間の見直しなども、近年の重要な改正テーマです。これらは択一式で具体的な金額や期間が問われることが多いため、正確に覚えておく必要があります。
後期高齢者医療制度の対象年齢や保険料の変更も、高齢化社会において重要なテーマです。特に、一定以上の所得がある後期高齢者の窓口負担割合の見直しなどは、社会的にも注目された改正であり、出題される可能性があります。
対策としては、保険料率や標準報酬月額などの数字は、最新年度のデータをまとめた一覧表を作成し、繰り返し確認することが効果的です。また、改定の理由(医療費抑制、制度の持続可能性確保など)も理解しておきましょう。
厚生年金・国民年金の法改正(年金額・受給要件)
年金制度は、少子高齢化に対応するため、継続的に改正が行われています。特に、老齢年金の額の改定、在職老齢年金制度の見直し、繰り上げ・繰り下げ受給の減額率・増額率の変更などが出題されやすいテーマです。
出題されやすいポイントとしては、老齢基礎年金の満額(2024年度は月額68,000円)、厚生年金の標準報酬月額の上限額(650,000円)、在職老齢年金の支給停止基準額(現在は48万円)、繰り下げ受給の上限年齢(75歳まで可能、増額率は84%)などがあります。
年金額は毎年改定されるため、必ず最新年度の金額を確認する必要があります。また、マクロ経済スライドによる調整の仕組みや、物価スライド・賃金スライドの考え方なども、択一式で出題される可能性があります。
在職老齢年金制度の見直しは、近年の重要な改正テーマです。支給停止基準額の引き上げや、60歳台前半と後半の基準統一など、高齢者の就労促進を目的とした改正が行われており、その内容と適用時期を正確に把握しておく必要があります。
また、受給資格期間の短縮(25年から10年へ)や、短時間労働者への厚生年金適用拡大なども、過去に大きな制度変更として実施されており、引き続き出題される可能性があります。
対策としては、年金額の数字は毎年更新されるため、最新年度のデータを確実に覚えることが最優先です。また、制度改正については、改正の時系列を整理し、「いつから」「何が」変わったのかを明確にしておきましょう。
社労士の勉強時間とスケジュールでも解説していますが、年金科目は学習時間の配分が大きい科目であるため、法改正対策も十分な時間を確保することが重要です。
社労士試験の法改正に関連するよくある質問(FAQ)
社労士試験の法改正対策について、受験生からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。法改正対策を進める際の参考にしてください。
Q. 法改正対策はいつから始めるべきですか?
法改正対策は5月から始めるのがベストタイミングです。4月中旬に試験公示日があり、そこで試験対象となる法改正の範囲が確定します。その後、5月以降に法改正専用テキストが発売されるため、5月から対策を開始すれば十分な準備期間を確保できます。遅くとも6月中旬までには対策を始めないと、試験直前期に時間が不足する可能性があります。基礎学習と並行して進めることで、効率的に学習できます。
Q. どの法改正が試験に出題されますか?
試験公示日(毎年4月中旬)時点で施行されている法律が出題対象となります。それ以降に施行される法改正は、その年度の試験では出題されません。また、過去3年程度の重要な法改正も出題される可能性があります。出題されやすい法改正としては、育児介護休業法、健康保険法、雇用保険法、労災保険法、年金制度に関する改正が挙げられます。特に、数字の変更や新しい用語の追加は、選択式で直接問われることが多いため要注意です。
Q. 独学でも法改正対策は可能ですか?
独学でも十分に法改正対策は可能です。法改正専用テキストを1冊購入し、それをメイン教材に書き込んで一元化することで、効率的に学習できます。また、全国社会保険労務士会連合会の公式リーフレットや、厚生労働省のウェブサイトで公開されている資料も活用できます。ただし、インターネット上の情報だけに頼るのではなく、必ず市販のテキストを購入することをおすすめします。予算に余裕がある場合は、資格スクールの法改正対策講座を単科で受講するのも効果的です。
Q. 昨年度のテキストでも合格できますか?
昨年度のテキストでも、法改正内容を適切に書き込めば合格は十分可能です。社労士試験の基本的な法律知識は毎年大きく変わらないため、変更部分のみを更新すれば問題ありません。ただし、法改正専用テキストは必ず最新版を購入し、その内容をメイン教材に反映させることが重要です。また、大規模な制度変更があった年度の場合は、新しいテキストの方が理解しやすいこともあります。法改正の量を確認してから判断するのがよいでしょう。
Q. 法改正対策にどのくらい時間をかけるべきですか?
法改正対策全体で50〜70時間程度を目安にすると良いでしょう。5月に15〜20時間(通読と全体把握)、6月に20〜30時間(重要改正のインプットと一元化)、7月に15〜25時間(問題演習)、8月に5〜10時間(最終確認)という配分が理想的です。ただし、全ての法改正を完璧に覚えようとする必要はありません。広く浅く学習し、重要度の高い改正に時間を集中させることで、効率的に得点につなげられます。
Q. 過去何年分の法改正が出題されますか?
当年度の法改正だけでなく、過去3年程度の重要な法改正も出題される可能性があります。特に、制度の根幹に関わる大きな改正や、実務上の影響が大きい改正は、施行後数年間にわたって繰り返し出題される傾向があります。例えば、働き方改革関連法や育児介護休業法の大規模改正などは、複数年度にわたって出題されています。法改正専用テキストには過去数年分の重要改正もまとめられているため、それらもしっかり学習しておきましょう。
まとめ:法改正対策は5月開始で広く浅く学習しよう
本記事では、社労士試験の法改正対策について、開始時期、試験対象となる基準、効率的な勉強法、おすすめ教材まで詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 開始時期は5月、遅くとも6月まで:試験公示日(4月中旬)に試験対象の法改正が確定し、5月以降に法改正専用テキストが発売されます。5月から対策を開始することで、直前期に十分な時間を確保できます。後回しにすると時間不足に陥りやすいため、計画的に進めることが重要です。
- 広く浅く・数字と新語句に着目:全ての法改正を完璧に覚えようとせず、広く浅く学習することが効率的です。特に、数字の変更と新しい用語の追加は選択式で出題されやすいため、優先的に押さえましょう。改正理由を理解することで、単なる暗記ではなく応用力も身につきます。
- メイン教材に一元化して効率的に学習:法改正内容をメイン教材に書き込んで一元化することで、直前期の復習効率が格段に向上します。付箋やマーカーを活用し、視認性を高める工夫も効果的です。旧法と新法を混同しないよう、改正年月も併記して整理しましょう。
法改正対策を理解できたら、次は社労士試験の勉強法と社労士の勉強時間とスケジュールを参考に、全体的な学習計画を立てることをおすすめします。また、独学で進めるか通信講座を利用するかは、社労士の独学勉強法と社労士の通信講座比較を参考に検討してみてください。
本記事を通じて、社労士試験の法改正対策の全体像と具体的な方法を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、5月から計画的に法改正対策を開始し、社労士試験合格に向けて着実に準備を進めましょう。法改正対策は得点源にできる分野ですので、適切な方法で取り組めば確実に合格に近づきます。
コメント