行政書士試験の難易度を徹底分析｜偏差値・合格率・勉強時間から見る本当の難しさ

行政書士試験を受験しようと考えている方の多くが「本当に合格できるのだろうか」「どれくらい難しい試験なのか」と不安を感じているのではないでしょうか。インターネット上には「難易度が高い」「独学では無理」といった情報もあれば、「適切な対策をすれば合格できる」という意見も見られ、どの情報を信じればよいか迷ってしまいます。

行政書士試験の難易度を正しく理解することは、効率的な学習計画を立てる上で非常に重要です。難易度を過小評価すれば不十分な準備で試験に臨むことになり、逆に過大評価すれば必要以上に時間を浪費してしまう可能性があります。本記事では、偏差値・合格率・勉強時間といった客観的なデータに基づき、行政書士試験の難易度を多角的に分析します。

本記事と類似記事の違い

一般的な難易度解説記事では「合格率が低いから難しい」といった表面的な分析にとどまりがちですが、本記事では偏差値・合格率・勉強時間・科目別難易度・受験者層といった複数の客観的指標を用いて多角的に分析しています。さらに、法学部出身者・社会人・初学者など属性別の難易度感の違いや、具体的な難易度低減戦略まで詳しく解説しており、これから受験を検討している方が現実的な学習計画を立てられる内容となっています。

行政書士試験の難易度とは｜客観的な指標で測る試験の難しさ

行政書士試験の難易度を正確に把握するためには、主観的な印象ではなく客観的なデータに基づいて評価することが重要です。試験の難易度は、偏差値・合格率・必要勉強時間・科目の範囲と深さ・受験者層という5つの指標から総合的に判断できます。

行政書士試験の難易度を判断する5つの基準

行政書士試験の難易度を測る主な指標は以下の5つです。第一に「偏差値」は他の資格試験との相対的な位置づけを示し、行政書士試験は偏差値62前後に位置します。第二に「合格率」は試験の選抜度を表し、例年10-15%程度で推移しています。第三に「必要勉強時間」は試験範囲の広さと深さを反映し、法律初学者で600-800時間が目安です。

第四に「試験範囲と科目数」では、行政書士試験は行政法・民法・憲法・商法・基礎法学・一般知識という6つの科目分野から出題され、範囲が非常に広範囲です。第五に「受験者層のレベル」も重要で、法学部出身者や他の法律資格保持者も多く受験するため、競争相手のレベルが高い傾向にあります。これら5つの指標を総合的に見ることで、行政書士試験の真の難易度が見えてきます。

行政書士試験難易度の偏差値は62前後

資格試験の難易度を示す偏差値において、行政書士試験は62前後とされています。この数値は、大学受験でいえばMARCH（明治・青山学院・立教・中央・法政）レベルの難関私立大学に相当します。国家資格全体で見ると中堅からやや上位に位置し、簡単ではないものの超難関というわけでもない、現実的に目指せる難易度といえます。

法律系資格の中での位置づけを見ると、宅建士（偏差値57）よりは明確に難しく、社会保険労務士（偏差値65）とほぼ同等かやや易しい程度です。一方で、司法書士（偏差値77）や弁護士（偏差値78）と比較すると大きな差があり、これらの超難関資格とは一線を画します。偏差値62という数値は「誰でも簡単に合格できる試験ではないが、適切な学習方法と十分な勉強時間を確保すれば、法律初学者でも十分に合格可能な難易度」を意味しています。

行政書士試験の合格率から見る難易度の実態

行政書士試験の合格率は例年10-15%程度で推移しており、直近の令和5年度（2023年度）試験では13.98%でした。10人に1人から1.5人程度しか合格できない計算になるため、数字だけを見ると非常に難関に感じられます。しかし、この合格率には記念受験者や準備不足の受験者も含まれているため、真剣に準備した受験者の実質的な合格率はこれより高いと考えられます。

重要なのは、行政書士試験の合格基準が相対評価ではなく絶対評価である点です。300点満点中180点以上（得点率60%以上）という明確な基準があり、さらに法令科目で122点以上、一般知識科目で24点以上という科目別の足切り基準も設けられています。これは「上位何%」といった相対的な順位ではなく、一定の実力をつければ誰でも合格できることを意味します。受験者全員が基準点を超えれば全員合格することも理論上は可能であり、競争試験ではないという点で、実質的な難易度は合格率の数字ほど高くないといえます。

行政書士試験難易度の推移｜年々難しくなっているのか

過去10年間の合格率推移を見ると、平成26年（2014年）の8.27%を底に、近年は10-15%の範囲で比較的安定しています。令和3年（2021年）には11.18%、令和4年（2022年）には12.13%、令和5年（2023年）には13.98%と、むしろやや上昇傾向が見られます。「行政書士試験が年々難化している」という声も聞かれますが、統計的には一概に難化傾向とは言えません。

ただし、出題形式や問題の質には変化が見られます。特に記述式問題では、単純な条文知識だけでなく、判例の理解や事例への応用力を問う問題が増えています。また、一般知識分野では時事問題の出題が増え、法律科目の知識だけでは対応できない範囲が広がっています。このため、体感的な難易度は上がっていると感じる受験者もいますが、適切な対策を講じれば合格は十分可能な水準を維持しています。行政書士試験の詳細情報では、最新の試験傾向について詳しく解説しています。

行政書士試験難易度を偏差値で比較｜他の法律系資格との位置づけ

行政書士試験の難易度を正確に把握するには、他の法律系資格との比較が有効です。偏差値という共通の指標を用いることで、各資格の相対的な難易度が明確になり、自分の目標設定や学習計画の立案に役立ちます。

行政書士試験の偏差値62の意味を解説

偏差値62という数値が実際にどの程度の難易度を意味するのか、具体的に理解しておくことが重要です。統計学的に見ると、偏差値62は全体の上位約10%に相当します。つまり、100人が受験すれば上位10人程度が合格できる水準です。大学受験で偏差値62の大学を例に挙げると、明治大学・立教大学・中央大学・法政大学といったMARCHレベルの難関私立大学が該当します。

この難易度は「誰でも簡単に合格できるわけではないが、適切な学習方法と十分な準備期間があれば現実的に合格を狙える」レベルといえます。偏差値70を超える超難関試験（司法試験・公認会計士試験など）と比較すると、働きながらでも合格を目指せる現実的な難易度です。一方で、偏差値50前後の入門的な資格（簿記3級・ITパスポートなど）よりは明確に難しく、相応の覚悟と学習時間の確保が必要です。

司法書士試験（偏差値77）との難易度差

司法書士試験の偏差値は77とされており、行政書士試験との差は15ポイントあります。この差は非常に大きく、司法書士試験は法律系資格の中でも最難関の一つに位置づけられます。必要な勉強時間を比較すると、行政書士試験が600-800時間であるのに対し、司法書士試験は3,000-5,000時間と約5倍の学習量が必要です。

試験内容の違いも顕著で、司法書士試験は不動産登記法・商業登記法という専門性の高い科目に加え、民法・商法の出題範囲と深さが行政書士試験とは比較にならないほど広範囲です。さらに、午前の部と午後の部に分かれた長時間試験で、記述式問題も行政書士試験より遥かに高度です。司法書士試験に合格すれば行政書士登録も可能ですが、難易度は別次元であり、まずは行政書士試験から挑戦する方が現実的な選択といえます。行政書士と司法書士の違いでは、両資格の詳細な比較を行っています。

社労士試験（偏差値65）との難易度比較

社会保険労務士（社労士）試験の偏差値は65とされており、行政書士試験より3ポイント高い水準です。この差は比較的小さく、難易度としてはほぼ同等かやや社労士の方が難しい程度といえます。必要な勉強時間も社労士試験が800-1,000時間とされており、行政書士試験の600-800時間と大きな差はありません。

試験内容の違いとしては、社労士試験は労働法・社会保険法という実務に直結した科目が中心で、法律の深い理解よりも正確な知識の暗記が重要になります。一方、行政書士試験は民法・行政法という基本法を中心に、論理的思考力と応用力が求められます。どちらが難しいかは個人の適性によりますが、数学的思考が苦手な方は行政書士、暗記が苦手な方は社労士の方が相対的に難しく感じる傾向があります。両資格のダブルライセンスを目指す方も多く、相乗効果が期待できます。

宅建士試験（偏差値57）との難易度比較

宅地建物取引士（宅建士）試験の偏差値は57とされており、行政書士試験より5ポイント低い水準です。この差は明確で、宅建士試験の方が合格しやすい試験といえます。必要な勉強時間は宅建士が300-400時間、行政書士が600-800時間と約2倍の差があり、学習範囲の広さと深さの違いが表れています。

宅建士試験は不動産取引に特化した内容で、民法も不動産関連の範囲に限定されます。合格率も15-17%程度と行政書士試験より高く、初学者でも比較的短期間での合格が狙えます。行政書士試験は宅建士試験の内容を含みつつ、行政法・憲法・商法といった幅広い法律知識が求められるため、明確に難易度が高くなります。ただし、宅建士試験合格者が行政書士試験に挑戦する場合、民法の基礎知識があるため学習がスムーズに進む利点があります。

税理士試験・公認会計士試験との難易度差

税理士試験と公認会計士試験は、行政書士試験とは別次元の超難関試験です。公認会計士試験の偏差値は77、税理士試験は科目によりますが平均で68-72程度とされており、いずれも行政書士試験より大幅に難易度が高くなります。必要な勉強時間も公認会計士が3,500-5,000時間、税理士が5科目合格まで2,500-4,000時間と、行政書士試験の数倍の学習量が必要です。

これらの会計系資格は数学的・会計学的思考が求められる点で、法律系の行政書士試験とは性質が大きく異なります。しかし、税理士や公認会計士の業務には許認可申請など行政書士業務と重なる部分もあるため、ダブルライセンスを目指す価値は高いといえます。難易度の観点からは、まず行政書士資格を取得してから税理士・会計士を目指すルートも現実的な選択肢です。

法律系資格難易度ランキング（偏差値順）

資格名	偏差値	合格率	必要勉強時間	難易度評価
司法試験（弁護士）	78	20-40%	6,000-10,000時間	最難関
司法書士	77	4-5%	3,000-5,000時間	最難関
公認会計士	77	7-10%	3,500-5,000時間	最難関
税理士（5科目）	70	10-15%	2,500-4,000時間	超難関
社会保険労務士	65	5-7%	800-1,000時間	難関
行政書士	62	10-15%	600-800時間	中堅上位
宅建士	57	15-17%	300-400時間	中堅

行政書士試験の合格率から見る難易度｜10%前後の狭き門

合格率は試験の難易度を示す最も分かりやすい指標の一つですが、数字の背景にある実態を理解することが重要です。行政書士試験の合格率10-15%という数字が何を意味するのか、詳しく分析していきます。

行政書士試験の合格率は例年10-15%

行政書士試験の合格率は、過去10年間で10-15%の範囲で推移しています。令和5年度（2023年度）は13.98%、令和4年度（2022年度）は12.13%、令和3年度（2021年度）は11.18%と、近年はやや上昇傾向が見られます。受験者数は例年4万人から5万人程度で、そのうち合格者は5,000人から7,000人程度です。

この合格率を他の国家資格と比較すると、司法書士試験（4-5%）や社会保険労務士試験（5-7%）よりは高く、宅建士試験（15-17%）よりは低い水準です。10-15%という数字は「誰でも合格できる試験ではないが、適切な準備をすれば現実的に合格を狙える」範囲といえます。ただし、この合格率には記念受験者や準備不足の受験者も含まれているため、真剣に学習した受験者の実質的な合格率はこれより高いと推測されます。

行政書士試験の合格率が低い3つの理由

行政書士試験の合格率が10-15%に留まる理由は大きく3つあります。第一に「受験資格の制限がない」ことです。行政書士試験は年齢・学歴・国籍を問わず誰でも受験できるため、十分な準備ができていない受験者や記念受験者も多く含まれます。これにより見かけ上の合格率が低下しています。

第二に「絶対評価による明確な合格基準」があります。300点満点中180点以上（得点率60%以上）という基準に加え、法令科目で122点以上、一般知識科目で24点以上という科目別の足切り基準があります。特に一般知識の足切りは、法律科目で高得点を取っても一般知識で基準点に達しなければ不合格となるため、合格率を下げる要因となっています。

第三に「試験範囲の広範囲さと記述式問題の存在」です。行政法・民法・憲法・商法・基礎法学・一般知識という6つの分野を学習する必要があり、さらに記述式問題では部分点がつきにくく、完全な理解が求められます。これらの要因が複合的に作用し、合格率が10-15%程度に収束しているのです。

行政書士試験の合格率推移と難易度の変化

過去10年間の合格率推移を詳しく見ると、平成26年（2014年）の8.27%を底に、全体としては緩やかな上昇傾向が見られます。平成27年（2015年）は13.10%、平成28年（2016年）は9.95%と乱高下していましたが、近年は10-13%程度で安定しています。この変動は試験問題の難易度調整によるもので、意図的に合格率を極端に下げたり上げたりしているわけではありません。

重要なのは、合格基準が相対評価ではなく絶対評価である点です。上位何%という相対的な順位で合否が決まるのではなく、180点以上という明確な基準があるため、問題が難しい年は合格率が下がり、易しい年は上がります。つまり、「年々難化している」というよりも、「年度によって難易度にバラつきがある」というのが正確な表現です。受験者としては、どの年度に受験しても同じ実力があれば合格できる仕組みになっているため、過度に合格率の変動を気にする必要はありません。

行政書士試験の実質的な競争率と受験者層の分析

行政書士試験の受験者層を分析すると、真剣に準備している受験者の実質的な合格率は統計上の数字より高いことが分かります。受験者の約20-30%は記念受験や準備不足の受験者と推測され、真剣に学習した受験者に限定すれば合格率は15-20%程度になると考えられます。

受験者の属性を見ると、会社員が最も多く全体の約40%、次いで学生が約15%、自営業・自由業が約10%、公務員が約5%となっています。年齢層は30代・40代が中心で、法律初学者も多数含まれます。一方で、法学部出身者や他の法律資格保持者も一定数受験しており、競争相手のレベルは決して低くありません。

ただし、行政書士試験は相対評価ではないため、他の受験者と競争する必要はなく、自分が基準点を超えれば合格できます。この点で、実質的な競争率は見かけ上の数字ほど厳しくないといえます。重要なのは他者との比較ではなく、自分自身が180点以上を確実に取れる実力をつけることです。行政書士試験合格率の推移では、過去のデータをさらに詳しく分析しています。

行政書士試験の科目別難易度｜どの科目が最も難しいのか

行政書士試験は複数の科目から構成されており、科目ごとに難易度や重要度が異なります。効率的な学習計画を立てるには、各科目の特性を正確に把握することが不可欠です。

行政書士試験の行政法の難易度｜最重要科目の攻略法

行政法は行政書士試験における最重要科目であり、全体の配点の約40%（択一式76点+記述式20点=96点）を占めます。出題範囲は行政法総論・行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法・地方自治法という6つの分野にわたります。難易度としては中程度で、条文と判例を正確に理解すれば確実に得点できる科目です。

行政法の特徴は「理解すべき概念は多いが、民法ほど複雑ではない」点です。行政行為の種類・行政手続の流れ・不服申立と訴訟の違いなど、体系的に理解すれば混乱しにくい構造になっています。記述式問題も行政法から1問出題されますが、基本的な条文知識と事例への応用力があれば対応可能です。最重要科目であるため、行政法で確実に得点できるかどうかが合否を大きく左右します。学習初期から十分な時間を配分し、過去問演習を繰り返すことが攻略の鍵です。

行政書士試験の民法の難易度｜範囲の広さが難関

民法は行政書士試験の中で最も難易度が高い科目とされています。配点は択一式76点+記述式20点=96点と行政法と同じですが、出題範囲が総則・物権・債権・親族・相続という5編すべてにわたり、条文数も1,000条を超える膨大さです。さらに判例も数多く存在し、それらを理解した上で事例問題に応用する必要があります。

民法の難しさは「範囲の広さ」と「概念の抽象性」にあります。例えば、意思表示・代理・時効・物権変動・契約各論・不法行為・相続など、それぞれが独立した論点を持ち、すべてを網羅的に学習するには相当な時間が必要です。記述式問題も民法から1問出題され、40字程度で法律関係や結論を説明する高度な能力が求められます。

民法攻略のポイントは「基本概念の徹底理解」と「重要判例の暗記」です。すべての範囲を完璧にするのは非常に困難なため、頻出分野（債権・物権・相続）に重点を置き、マイナー論点は捨てる勇気も必要です。過去問分析から出題傾向を把握し、効率的に学習することが重要です。

行政書士試験の憲法の難易度｜基礎から判例まで

憲法は配点28点（択一式のみ）と比較的ウエイトは低いものの、人権論・統治機構・憲法訴訟という3つの柱を理解する必要があります。難易度は中程度で、条文数が少ない（103条）ため民法や行政法より学習しやすい反面、判例の理解が非常に重要です。

憲法の特徴は「理論と判例のバランス」です。人権の分類・違憲審査基準・三権分立の仕組みなど理論的理解が求められる一方、判例問題が多く出題されるため判例の事案・争点・結論を正確に暗記する必要があります。特に人権分野は判例が非常に多く、マイナーな判例からの出題もあるため、どこまで深く学習するかの判断が難しい科目です。

憲法攻略のポイントは「重要判例の徹底暗記」です。すべての判例を覚えるのは現実的ではないため、最高裁判所の重要判例（百選掲載レベル）に絞って学習するのが効率的です。また、統治機構は比較的平易なため確実に得点し、難解な人権論は頻出論点に絞る戦略が有効です。

行政書士試験の商法・会社法の難易度｜短期集中が鍵

商法・会社法は配点20点（択一式のみ）と最も配点が低い科目です。難易度は中程度ですが、出題範囲が限定的なため短期集中で対策できる科目といえます。主な出題分野は会社法の機関設計（株主総会・取締役・監査役など）、株式・社債、企業の設立・合併・解散などです。

商法・会社法の特徴は「実務的な知識が問われる」点です。会社の意思決定プロセスや株式の仕組みなど、実際のビジネスと結びつけて理解すると覚えやすくなります。また、平成18年の会社法制定以降、比較的新しい法律であるため、過去問の蓄積が他科目より少ないという特徴もあります。

商法・会社法の攻略ポイントは「頻出分野に絞った効率学習」です。配点が20点と少ないため、深入りせずに基本的な条文知識と頻出論点（機関設計・株式・設立）を押さえれば十分です。学習時間の配分としては、全体の10-15%程度に抑え、行政法・民法により多くの時間を割くのが合理的です。

行政書士試験の一般知識の難易度｜足切りの壁

一般知識は配点56点（択一式のみ）で、政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解という3つの分野から出題されます。最大の特徴は「足切り制度」があることで、56点中24点以上を取らなければ、法令科目でどれだけ高得点を取っても不合格となります。この足切り制度により、多くの受験者が涙を飲んできました。

一般知識の難易度は「対策のしにくさ」にあります。出題範囲が非常に広く、時事問題も多く含まれるため、過去問演習だけでは対応できません。特に政治・経済・社会分野は、その年の重要ニュースやトレンドから出題されることが多く、日頃からの新聞購読やニュースチェックが重要です。一方で、情報通信・個人情報保護分野は出題範囲が比較的限定的で、条文知識で対応できるため得点源にしやすいです。

一般知識の攻略ポイントは「足切りクリアを最低限の目標とし、深入りしない」ことです。56点中24点（約43%）を取れば良いため、確実に得点できる情報通信分野と文章理解で点数を稼ぎ、政治・経済・社会は常識的な範囲で対応するのが現実的です。学習時間の配分も全体の15-20%程度に抑え、法令科目を優先するのが賢明な戦略です。

科目別難易度と配点の比較表

科目	配点	難易度	学習時間配分	特徴
行政法	96点	★★★☆☆	30%	最重要・記述あり
民法	96点	★★★★★	35%	最難関・範囲広い
憲法	28点	★★★☆☆	10%	判例重視
商法・会社法	20点	★★☆☆☆	10%	配点低い
基礎法学	8点	★★☆☆☆	5%	対策不要
一般知識	56点	★★★★☆	15%	足切りあり

行政書士試験難易度を勉強時間で測る｜合格までに必要な学習量

試験の難易度を測る最も実感しやすい指標が「必要な勉強時間」です。行政書士試験に合格するためにどの程度の学習時間が必要なのか、受験者の属性別に詳しく見ていきます。

行政書士試験の平均的な勉強時間は600-800時間

行政書士試験に合格するために必要な勉強時間は、法律初学者で600-800時間が目安とされています。1日3時間の学習で約7-9ヶ月、1日2時間なら10-13ヶ月の期間に相当します。これは働きながらでも十分に確保可能な時間であり、現実的に目指せる難易度といえます。

600-800時間という数字は、各科目の学習と過去問演習に必要な時間を積み上げた目安です。内訳としては、行政法に200-250時間、民法に200-250時間、憲法に80-100時間、商法・会社法に60-80時間、一般知識に60-80時間、過去問演習と模試に100-140時間程度が標準的な配分です。この時間を確保し、効率的な学習計画を実行すれば、法律初学者でも十分に合格可能です。

ただし、この時間はあくまで目安であり、個人の理解力・学習効率・1日の学習時間によって変動します。すでに法律知識がある方や、集中的に学習できる環境の方は、これより短い時間で合格できる可能性があります。逆に、仕事が忙しく学習時間が限られる方や、法律に苦手意識がある方は、より多くの時間が必要になるかもしれません。

法律初学者が行政書士試験に合格するための勉強時間

法律を全く学習したことがない初学者の場合、800-1,000時間程度の勉強時間が必要とされています。これは平均的な600-800時間より200-300時間多く、その理由は法律特有の用語・概念・思考法を一から学ぶ必要があるためです。「善意・悪意」「瑕疵」「遡及効」といった法律用語は日常語とは異なる意味を持ち、これらの理解に時間がかかります。

法律初学者が効率的に学習するポイントは「基礎の徹底」です。最初の2-3ヶ月は基本テキストの通読に時間をかけ、法律の全体像と基本概念をしっかり理解することが重要です。焦って過去問に取り組むのではなく、まずは「法律とは何か」「法律文書の読み方」から丁寧に学ぶことで、後半の学習効率が大きく向上します。

また、初学者は通信講座や予備校の活用が特に有効です。独学では理解に時間がかかる部分も、講義動画で講師の説明を聞けば短時間で理解できることが多いです。特に民法や行政法の難解な部分は、プロの解説があるかないかで学習効率が大きく変わります。行政書士の勉強時間では、効率的な時間配分について詳しく解説しています。

法学部出身者・法律実務経験者の勉強時間

法学部出身者や法律実務経験者の場合、必要な勉強時間は400-600時間程度と、初学者より200-400時間短縮できます。これは、民法・憲法などの基礎科目をすでに学習しており、法律用語や基本概念の理解に時間を取られないためです。また、法的思考力（リーガルマインド）が既に身についているため、新しい法律分野の習得も早い傾向があります。

ただし、「法学部出身だから簡単」というわけではありません。大学で学んだ内容と試験で問われる内容には差があり、特に行政法は大学のカリキュラムで十分に学習していない場合も多いです。また、大学卒業から時間が経っている場合、知識が抜け落ちているため復習に時間がかかります。過信せず、しっかりと試験対策用の学習を行うことが重要です。

法学部出身者の学習戦略としては、既習の民法・憲法は復習程度に抑え、行政法に重点的に時間を配分するのが効率的です。また、一般知識は法学部のカリキュラムでカバーされないため、初学者と同様にしっかり対策する必要があります。自分の既習範囲を正確に把握し、得意科目と苦手科目のメリハリをつけた学習計画が合格への近道です。

行政書士試験の勉強時間と難易度の関係性

行政書士試験の勉強時間600-800時間という数字を他の資格と比較すると、試験の難易度が明確になります。例えば宅建士試験は300-400時間、司法書士試験は3,000-5,000時間、公認会計士試験は3,500-5,000時間とされています。行政書士試験はこれらの中間に位置し、「短期間で取れる簡単な資格ではないが、数年がかりの超難関でもない」という絶妙なバランスの難易度です。

勉強時間と合格率の関係を見ると、600時間未満の学習では合格が難しく、800時間以上しっかり学習すれば合格可能性が大きく高まるというデータがあります。つまり、行政書士試験は「十分な学習時間を確保できるかどうか」が合否の分かれ目となる試験です。天才的な才能は不要ですが、コツコツと継続的に学習する忍耐力と計画性が求められます。

働きながら受験する社会人の場合、1日2-3時間の学習時間を確保し、8ヶ月から1年かけて合格を目指すのが現実的です。平日は2時間、休日は5-6時間といった配分で、週に15-20時間程度の学習を継続できれば、600-800時間の目安に到達します。重要なのは短期間の詰め込みではなく、長期間にわたって継続的に学習する習慣を確立することです。

行政書士試験が難しいと言われる5つの理由

行政書士試験は「難関資格」と評されることが多いですが、その難しさには具体的な理由があります。ここでは、受験者が実際に直面する5つの困難について詳しく解説します。

理由①試験範囲が広範囲で科目数が多い

行政書士試験が難しいと言われる第一の理由は、試験範囲の広範囲さです。法令科目だけでも行政法・民法・憲法・商法・会社法・基礎法学という6分野があり、さらに一般知識として政治・経済・社会・情報通信・個人情報保護・文章理解が加わります。実質的には10以上の科目を同時並行で学習する必要があり、この範囲の広さが大きな負担となります。

特に民法は1,000条を超える条文があり、判例も膨大です。行政法も行政法総論・行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法・地方自治法と多岐にわたります。これらすべてを網羅的に学習するには相当な時間と労力が必要で、「どこまで深く学習すればよいのか」の判断も難しいです。

また、科目間の関連性が薄い部分もあるため、ある科目の知識が他の科目に直接役立たないケースもあります。例えば、民法と一般知識の政治・経済分野は全く別の知識体系であり、それぞれを独立して学習する必要があります。この「広く浅く」ではなく「広く深く」求められる点が、行政書士試験の難しさの根源です。

理由②記述式問題の採点基準が厳しい

行政書士試験には、行政法と民法でそれぞれ1問ずつ、計2問の記述式問題が出題されます。配点は各20点、合計40点と全体の13%を占めており、この記述式問題が合否を大きく左右します。記述式の難しさは「部分点が取りにくい」点にあります。40字程度で法律関係や結論を正確に説明する必要があり、少しでも論点がズレていたり、法律用語の使い方が不正確だと大幅な減点となります。

記述式問題は択一式と異なり、「なんとなく」の理解では対応できません。条文の正確な文言、判例の規範、事例への当てはめという一連の法的思考プロセスを、限られた字数で過不足なく表現する高度な能力が求められます。さらに採点基準が公表されておらず、自己採点が難しいため、受験者は本試験まで自分の記述力を正確に把握できないという不安があります。

記述式対策には択一式以上の時間をかける必要があります。過去問の模範解答を分析し、解答の型を身につけ、自分で実際に書く練習を繰り返すことが不可欠です。通信講座や予備校の添削サービスを活用し、第三者の評価を受けることも有効な対策です。記述式で確実に得点できるかどうかが、合格の鍵を握っています。

理由③一般知識の足切り制度がある

行政書士試験の最大の難関とも言えるのが、一般知識科目の足切り制度です。56点満点中24点以上を取らなければ、法令科目でどれだけ高得点を取っても不合格となります。この足切り制度により、法律科目は得意だが一般知識で基準点に届かず不合格になる受験者が毎年多数います。合格率10-15%のうち、一般知識の足切りで不合格になる受験者は相当数いると推測されます。

一般知識の難しさは「対策のしにくさ」にあります。出題範囲が政治・経済・社会・情報通信・個人情報保護・文章理解と非常に広く、特に政治・経済・社会分野は時事問題が多く含まれるため、過去問だけでは対応できません。その年の重要ニュースやトレンドから出題されることが多く、日頃からの新聞購読やニュース番組の視聴が重要になります。

足切り制度の存在により、受験者は法令科目だけでなく一般知識にも相応の時間を割かなければならず、学習計画が複雑になります。「法律の勉強に集中したい」という受験者にとって、法律とは直接関係ない一般知識の学習は負担に感じられます。しかし、足切りである以上、避けて通ることはできません。確実に24点以上を取れる対策を立てることが、合格への必須条件です。

理由④合格基準が絶対評価（180点以上）

行政書士試験の合格基準は300点満点中180点以上（得点率60%以上）という絶対評価です。さらに法令科目で244点中122点以上、一般知識科目で56点中24点以上という科目別の基準もあります。この絶対評価制度は、一見すると「60%取れば合格」というシンプルな基準に見えますが、実際には厳しい条件です。

絶対評価の難しさは「問題の難易度に関わらず一定の点数が必要」という点です。その年の問題が難しくても易しくても、常に180点以上を取らなければなりません。相対評価（上位何%が合格）であれば、問題が難しい年は合格ラインが下がりますが、絶対評価ではそのような調整がありません。つまり、受験者は問題の難易度に左右されない確実な実力をつける必要があります。

また、3つの基準すべてをクリアする必要があるため、得意科目で高得点を取っても、苦手科目で足を引っ張られると不合格になります。例えば、法令科目で150点取っても一般知識で23点なら不合格です。バランスの良い学習が求められ、「得意科目だけを伸ばす」という戦略が通用しない点が、合格を難しくしています。180点という明確な目標があることは良い面もありますが、それを確実に達成する実力をつけることは決して容易ではありません。

理由⑤独学での合格が難しい試験特性

行政書士試験は独学での合格も可能ですが、他の資格と比較すると独学の難易度が高い試験です。その理由は、試験範囲の広さ、法律特有の難解な概念、記述式問題への対応という3つの要素があるためです。特に法律初学者の場合、基本的な法律用語や思考法を独学で習得するのは非常に困難です。

独学の最大の課題は「理解度の確認が難しい」点です。択一式問題は過去問演習で自己採点できますが、記述式問題は自分では正確な評価ができません。また、自分の理解が正しいのか、どこまで深く学習すればよいのかといった判断も、独学では難しいです。間違った方向に学習を進めてしまい、試験直前になって気づくというリスクもあります。

予備校や通信講座を利用すれば、カリキュラムに沿って効率的に学習でき、記述式の添削指導も受けられます。質問サービスも活用できるため、疑問点をすぐに解消できます。費用はかかりますが、合格までの時間を大幅に短縮できる可能性があります。特に法律初学者や、確実に一発合格を目指したい方には、予備校や通信講座の活用が強く推奨されます。行政書士のおすすめ通信講座では、各講座の特徴を詳しく比較しています。

行政書士試験難易度の属性別分析｜こんな人は難しい・こんな人は有利

行政書士試験の難易度は、受験者の属性によって大きく変わります。どのような人が有利で、どのような人が苦戦しやすいのか、具体的に見ていきます。

行政書士試験が難しいと感じる人の特徴5つ

行政書士試験を特に難しく感じる人には、いくつかの共通する特徴があります。第一に「法律を全く学習したことがない初学者」です。法律特有の用語・概念・思考法を一から学ぶ必要があり、最初の数ヶ月は理解に苦しむことが多いです。「善意・悪意」「無効・取消」「瑕疵」といった法律用語は日常語とは異なる意味を持ち、この言語の壁を越えるのに時間がかかります。

第二に「暗記が苦手な人」です。行政書士試験は膨大な条文・判例・制度を正確に覚える必要があり、暗記力が試される試験です。理解だけでなく正確な暗記が求められる点で、暗記が苦手な人には厳しい試験といえます。第三に「時事問題に関心が薄い人」です。一般知識の政治・経済・社会分野は時事問題が多く、日頃からニュースをチェックしていない人は苦戦します。

第四に「継続的な学習習慣がない人」です。行政書士試験は600-800時間という長期的な学習が必要で、数週間の詰め込みでは合格できません。計画的に毎日コツコツと学習を続ける習慣がない人は、モチベーション維持が難しく挫折しやすいです。第五に「記述式の文章作成が苦手な人」です。40字程度で法律関係を説明する記述式問題は、論理的な文章作成能力が求められ、この能力が低い人は大きく苦戦します。

行政書士試験が比較的易しいと感じる人の特徴

逆に、行政書士試験を比較的易しいと感じる人もいます。第一に「法学部出身者や法律実務経験者」です。民法・憲法などの基礎科目をすでに学習しており、法律用語や基本概念の理解に時間を取られないため、初学者より200-400時間程度学習時間を短縮できます。法的思考力（リーガルマインド）が既に身についている点も大きなアドバンテージです。

第二に「他の法律資格（宅建士・社労士など）を既に取得している人」です。宅建士合格者は民法の基礎知識があり、社労士合格者は行政法の考え方に親しんでいます。一つの法律資格を取得した経験があると、学習方法や試験対策のコツを掴んでいるため、スムーズに学習を進められます。第三に「公務員経験者」です。行政の仕組みや手続きに実務レベルで精通しており、特に行政法の理解が早い傾向があります。

第四に「論理的思考力が高い人」です。法律は論理的に構築された体系であり、数学的な思考力や論理パズルが得意な人は、法律の理解も早い傾向があります。暗記だけでなく理解に基づいた学習ができるため、応用問題にも対応しやすいです。第五に「時事問題に日常的に関心がある人」です。新聞を毎日読む習慣がある人や、政治・経済に興味がある人は、一般知識で苦戦しにくく、足切りのリスクが低くなります。

文系・理系による行政書士試験難易度の違い

文系・理系による難易度の違いは、それほど明確ではありません。一般的には「法律は文系科目だから理系は不利」と思われがちですが、実際には理系出身の合格者も多数います。法律は論理的な思考体系であり、数学的な論理力が活きる部分も多いためです。特に行政法の体系的な理解や、民法の要件・効果の関係性を把握する際には、理系的な思考力が役立ちます。

ただし、理系の人が苦戦しやすい部分もあります。第一に「判例の暗記」です。判例は論理だけでは導けず、結論を暗記する必要があります。理系的な「理解すれば覚えられる」という発想が通用しない部分で苦戦することがあります。第二に「一般知識の政治・経済・社会分野」です。理系出身者は文系科目に苦手意識を持つ場合が多く、特に時事問題への関心が薄い傾向があります。

逆に理系の強みもあります。情報通信・個人情報保護分野では、技術的な内容の理解が早く、確実に得点できます。また、理系は暗記よりも理解を重視する学習スタイルを取る人が多く、基本をしっかり理解すれば応用が効くという利点があります。結論として、文系・理系による有利不利は限定的で、むしろ個人の学習スタイルや得意不得意の方が重要といえます。

年齢・社会人経験による難易度の差

年齢や社会人経験も、行政書士試験の難易度に一定の影響を与えます。若い学生や20代の受験者は、記憶力や学習体力があり、短期間で大量の知識を吸収できる利点があります。また、受験勉強の感覚が残っているため、試験対策の立て方や暗記のコツを掴んでいる点も有利です。一方で、社会経験が少ないため、実務的な法律知識のイメージが湧きにくいという面もあります。

30代・40代の社会人受験者は、仕事の経験から行政手続きや契約の実務を知っており、法律の実践的な意義を理解しやすい利点があります。特に会社で法務や総務に携わった経験がある人は、行政書士の業務内容がイメージしやすく、学習のモチベーションも維持しやすいです。一方で、記憶力の低下や、仕事と勉強の両立の難しさという課題があります。

50代以上の受験者は、豊富な人生経験と社会経験を持ち、行政書士として開業後のクライアント対応に有利な面があります。ただし、学習面では記憶力や集中力の面で若い世代より不利な面は否めません。しかし、行政書士試験は相対評価ではなく絶対評価であり、年齢に関わらず180点以上取れば合格できます。実際に50代・60代で合格する方も多数おり、年齢は決定的な障壁ではありません。重要なのは自分の強みを活かし、弱みを補う学習戦略を立てることです。

行政書士試験の難易度を下げる5つの戦略

行政書士試験は確かに難関試験ですが、適切な戦略を立てることで合格可能性を大きく高めることができます。ここでは、難易度を下げるための具体的な5つの戦略を紹介します。

戦略①科目の優先順位を明確にする（行政法・民法重視）

行政書士試験の最も重要な戦略は、科目の優先順位を明確にし、配点の高い科目に学習時間を集中させることです。行政法と民法はそれぞれ96点（記述含む）と配点が最も高く、合計で192点と全体の64%を占めます。この2科目で高得点を取れれば、合格がぐっと近づきます。

具体的な時間配分としては、全学習時間の65%程度を行政法と民法に充てるのが理想です。600時間学習する場合、行政法に200時間、民法に200時間、合計400時間を投入します。憲法は28点、商法・会社法は20点と配点が低いため、深入りせずに基本事項に絞って学習します。一般知識も足切りクリアを最低限の目標とし、情報通信分野と文章理解で確実に得点する戦略が効率的です。

この戦略のポイントは「完璧主義を捨てる」ことです。すべての科目を完璧にするのは時間的に不可能であり、むしろメリハリをつけて重要科目に集中する方が合格率が高まります。特に独学の場合、時間が限られているため、科目の優先順位を明確にすることが合格への最短ルートです。

戦略②記述式対策に十分な時間を確保する

記述式問題は配点40点と全体の13%を占め、合否を左右する重要な要素です。しかし、多くの受験者は択一式問題の対策に時間を取られ、記述式対策が不十分なまま本試験を迎えてしまいます。記述式対策には、全学習時間の15-20%程度を充てることが推奨されます。

記述式対策の具体的な方法は、まず過去問の模範解答を徹底的に分析することです。どのような構成で、どのような法律用語を使い、どの程度の詳しさで説明しているかを研究します。次に、自分で実際に書く練習を繰り返します。最初は時間無制限で丁寧に書き、慣れてきたら時間を計って本番と同じ条件で演習します。

可能であれば、通信講座や予備校の添削サービスを活用することを強く推奨します。自分の解答を第三者の専門家に評価してもらうことで、自分では気づかない弱点や、改善すべきポイントが明確になります。記述式は自己流の対策だけでは限界があり、プロのフィードバックを受けることで飛躍的に実力が向上します。

戦略③一般知識は効率的に足切りクリアを狙う

一般知識の足切り（56点中24点以上）は多くの受験者を苦しめますが、逆に言えば24点取れば良いのです。56点満点を目指す必要はなく、効率的に足切りラインをクリアする戦略が重要です。最も効率的なアプローチは、「確実に得点できる分野」に絞って対策することです。

具体的には、情報通信・個人情報保護分野（16点程度）と文章理解（12点程度）で合計28点を目指します。この2分野は対策がしやすく、過去問演習で確実に得点できるようになります。特に個人情報保護法は条文知識で対応でき、法律科目の延長として学習できます。文章理解も国語力の問題であり、安定して得点できます。

政治・経済・社会分野（28点程度）は範囲が広すぎるため、深入りしません。日頃から新聞を読み、その年の重要ニュースを把握しておく程度で十分です。完璧を目指さず、「情報通信と文章理解で確実に点を取り、政治・経済・社会で数問正解すれば足切りクリア」という割り切った戦略が、学習時間を節約し、法令科目に集中できる賢い選択です。

戦略④過去問演習で出題傾向を完全把握する

行政書士試験は毎年同じような形式で出題されるため、過去問演習が最も効果的な対策です。過去問を10年分（できれば15年分）繰り返し解くことで、出題傾向・頻出論点・問題の難易度感を体得できます。過去問演習は、最低でも3回転、理想的には5回転以上行うことが推奨されます。

過去問演習の効果的な進め方は、まず1回目は時間無制限で丁寧に解き、解説をしっかり読んで理解を深めます。2回目は時間を計って本番と同じ条件で解き、自分の実力を客観的に測定します。3回目以降は、間違えた問題や曖昧な問題に絞って復習し、弱点を潰していきます。重要なのは「正解した問題も理解を確認する」ことで、偶然の正解と確実な理解を区別します。

過去問演習の時期は、基本的なインプット学習が一通り終わった段階（学習開始から3-4ヶ月後）から始めるのが理想的です。あまり早く始めると知識が不足していて効果が薄く、逆に遅すぎると演習時間が不足します。過去問演習と並行して、模試を受験することも重要です。本番と同じ時間配分・緊張感の中で問題を解く経験が、本試験での実力発揮に直結します。行政書士過去問の活用方法では、より詳しい過去問活用法を解説しています。

戦略⑤予備校・通信講座の活用で学習効率を上げる

独学でも合格は可能ですが、予備校や通信講座を活用することで学習効率を大幅に向上させることができます。特に法律初学者や、確実に短期間での合格を目指す方には、プロの指導を受けることを強く推奨します。予備校・通信講座のメリットは、体系的なカリキュラム・分かりやすい講義・記述式の添削指導・質問サービス・学習スケジュール管理という5つの点にあります。

体系的なカリキュラムに従うことで、「何を・どの順番で・どの程度学習すればよいか」という悩みから解放されます。独学では判断が難しい学習の優先順位も、プロが設計したカリキュラムなら迷うことがありません。講義動画では、講師が重要ポイントを強調し、理解しにくい部分を分かりやすく説明してくれるため、テキストを読むだけより遥かに効率的です。

記述式の添削指導は、独学では得られない最大のメリットです。自分の解答を専門家が評価し、改善点を具体的に指摘してくれることで、記述力が飛躍的に向上します。質問サービスも重要で、疑問点をすぐに解消できるため、間違った理解のまま学習を進めるリスクを避けられます。費用は10-20万円程度かかりますが、合格までの時間短縮と合格率向上を考えれば、十分に投資価値があります。

【FAQ】行政書士試験難易度に関するよくある質問

行政書士試験の難易度について、受験者から多く寄せられる質問に回答します。これらの疑問を解消し、正確な情報に基づいて学習計画を立てましょう。

行政書士試験の偏差値はどれくらい？

行政書士試験の偏差値は62前後とされています。これは大学受験でいうとMARCH（明治・青山学院・立教・中央・法政）レベルの難関私立大学に相当し、国家資格全体では中堅からやや上位に位置します。法律系資格の中では、宅建士（偏差値57）より難しく、司法書士（偏差値77）よりは易しいという位置づけです。

偏差値62という数値は、統計学的には全体の上位約10%に相当します。つまり「誰でも簡単に合格できるわけではないが、適切な学習方法と十分な準備期間があれば現実的に合格を狙える」レベルといえます。超難関試験ではありませんが、相応の努力と学習時間の確保が必要です。

行政書士試験は独学では難しい？

行政書士試験は独学でも合格可能ですが、独学の難易度は高いといえます。特に法律初学者の場合、基本的な法律用語や思考法を独学で習得するのは困難で、予備校や通信講座を利用した方が効率的です。独学で合格するためには、優れた教材選び・自己管理能力・強い意志力が必要です。

独学の最大の課題は記述式問題への対応です。自分の解答を客観的に評価することが難しく、間違った方向に学習を進めてしまうリスクがあります。可能であれば、少なくとも記述式の添削指導だけでも受けることを推奨します。行政書士独学での合格方法では、独学の具体的なノウハウを詳しく解説しています。

行政書士試験の一番難しい科目は？

行政書士試験で最も難しいとされる科目は民法です。出題範囲が総則・物権・債権・親族・相続という5編すべてにわたり、条文数も1,000条を超える膨大さです。判例も多数あり、それらを理解した上で事例問題に応用する必要があります。記述式問題も民法から1問出題され、40字程度で法律関係を説明する高度な能力が求められます。

民法の次に難しいのが一般知識です。範囲が非常に広く、特に政治・経済・社会分野は時事問題が多く含まれるため過去問だけでは対応できません。さらに足切り制度があるため、法令科目でどれだけ高得点を取っても一般知識で基準点に届かなければ不合格となります。この2科目が行政書士試験の二大難関といえます。

行政書士試験と司法書士試験どちらが難しい？

司法書士試験の方が圧倒的に難易度が高いです。偏差値で比較すると、行政書士試験が62に対し司法書士試験は77と、15ポイントもの大きな差があります。必要な勉強時間も行政書士が600-800時間に対し、司法書士は3,000-5,000時間と約5倍です。合格率も行政書士が10-15%に対し、司法書士は4-5%と半分以下です。

試験内容も大きく異なり、司法書士試験は不動産登記法・商業登記法という専門性の高い科目に加え、民法・商法の出題範囲と深さが行政書士試験とは比較にならないほど広範囲です。行政書士試験に合格できる実力があっても、司法書士試験には追加で数年の学習が必要です。まずは行政書士試験から挑戦し、将来的に司法書士を目指すというステップアップが現実的な選択といえます。

行政書士試験は年々難しくなっている？

統計的には「年々難化している」とは言えません。過去10年間の合格率は10-15%の範囲で比較的安定しており、むしろ近年はやや上昇傾向が見られます。令和3年（2021年）11.18%、令和4年（2022年）12.13%、令和5年（2023年）13.98%と推移しています。

ただし、出題形式や問題の質には変化が見られます。記述式問題では判例の理解や事例への応用力を問う問題が増え、一般知識では時事問題の出題が増えています。このため体感的には「難しくなった」と感じる受験者もいますが、適切な対策を講じれば合格は十分可能な水準を維持しています。重要なのは、最新の出題傾向を把握し、それに対応した学習を行うことです。

行政書士試験に一発合格できる確率は？

公式の統計はありませんが、真剣に準備した受験者の一発合格率は20-30%程度と推測されます。全体の合格率が10-15%ですが、この中には複数回受験者も含まれており、初回受験者に限定すれば合格率はやや高くなります。ただし、これは十分な準備をした受験者の数字で、記念受験や準備不足の受験者を含めると一発合格率はさらに低くなります。

一発合格の可能性を高めるには、十分な学習時間の確保（800-1,000時間）、効率的な学習計画、予備校や通信講座の活用が重要です。特に法律初学者は、独学ではなくプロの指導を受けることで一発合格の可能性が大きく高まります。行政書士試験は絶対評価であり、実力をつければ初回受験でも十分に合格可能な試験です。

法律初学者でも行政書士試験に合格できる？

はい、法律初学者でも十分に合格可能です。実際に合格者の多くは法律初学者であり、法学部出身でなくても合格している人は多数います。ただし、初学者の場合は法学部出身者より多くの学習時間（800-1,000時間程度）が必要で、基礎からしっかり学ぶ姿勢が重要です。

法律初学者が効率的に学習するポイントは、最初の数ヶ月を基礎固めに充てることです。法律用語や基本概念を丁寧に学び、法律の全体像を把握してから個別論点の学習に入ります。予備校や通信講座を活用することで、初学者でも体系的かつ効率的に学習できます。焦らず着実に実力をつければ、初学者でも一発合格は十分可能です。

行政書士試験の難易度ランキングは何位？

国家資格全体の難易度ランキングでは、行政書士試験は上位30%程度に位置します。最難関の司法試験・公認会計士・司法書士などと比較すれば易しいですが、宅建士・FP2級などの入門的資格よりは明確に難易度が高いです。法律系資格に絞ったランキングでは、弁護士・司法書士の次に位置し、中堅上位の難易度といえます。

ただし、難易度ランキングはあくまで一つの目安であり、個人の適性や学習環境によって体感的な難易度は大きく変わります。重要なのはランキングを気にすることではなく、自分に合った学習方法を見つけ、必要な勉強時間を確保することです。行政書士試験は適切な対策を講じれば現実的に合格を狙える難易度であり、挑戦する価値のある資格といえます。

まとめ｜行政書士試験難易度を正しく理解して効率的な学習を

行政書士試験は難しいが合格可能な試験

本記事で詳しく分析してきたように、行政書士試験は決して簡単な試験ではありません。偏差値62、合格率10-15%、必要勉強時間600-800時間という客観的指標は、相応の努力が必要であることを示しています。試験範囲の広さ、記述式問題の存在、一般知識の足切り制度といった要素が、難易度を高めています。

しかし同時に、行政書士試験は「現実的に合格を狙える難易度」でもあります。司法書士や公認会計士のような超難関試験とは異なり、適切な学習方法と十分な勉強時間を確保すれば、法律初学者でも合格は十分可能です。絶対評価制度により、他の受験者と競争する必要がなく、自分が基準点を超えれば合格できる点も心強い要素です。

重要なのは、試験の難易度を正確に理解し、過小評価も過大評価もせずに、現実的な学習計画を立てることです。「簡単に合格できる」という甘い考えは禁物ですが、「自分には無理」という過度な萎縮も不要です。正しい情報に基づいて準備すれば、合格は十分に手の届く目標といえます。

難易度を下げるための学習戦略の重要性

行政書士試験の難易度は固定されたものではなく、学習戦略次第で体感的な難易度を大きく下げることができます。本記事で紹介した5つの戦略、すなわち「科目の優先順位を明確にする」「記述式対策に十分な時間を確保する」「一般知識は効率的に足切りクリアを狙う」「過去問演習で出題傾向を完全把握する」「予備校・通信講座の活用で学習効率を上げる」は、いずれも合格率を高める実践的な方法です。

特に重要なのは、限られた時間の中で「何に集中し、何を捨てるか」を明確にすることです。すべての科目を完璧にしようとするのではなく、配点の高い行政法・民法に重点を置き、配点の低い科目は基本事項に絞る。一般知識は満点を目指さず足切りクリアを目標とする。このようなメリハリのある戦略が、効率的な合格への近道です。

また、独学か予備校・通信講座かの選択も重要です。費用を抑えたい方は独学を選択するかもしれませんが、特に法律初学者の場合、プロの指導を受けることで学習効率が飛躍的に向上し、結果的に短期間での合格が可能になります。投資対効果を考えれば、予備校・通信講座の利用は決して高い買い物ではありません。

行政書士試験の合格は、あなたのキャリアに新たな可能性を開きます。独立開業・転職・副業・スキルアップなど、様々な活用方法がある価値ある資格です。本記事で紹介した難易度分析と学習戦略を参考に、ぜひ合格を勝ち取ってください。次のステップとして、行政書士の勉強法で具体的な学習方法を確認し、行政書士のおすすめ通信講座で自分に合った講座を選びましょう。あなたの合格を心から応援しています。