技術士一次試験の合格に向けて準備を進めているあなたへ。「合格率はどれくらいなのか」「合格発表はいつで、どうやって確認するのか」という疑問は、正確な情報を知ることで不安を解消できます。本記事では、技術士一次試験の合格基準と足切り制度、近年の合格率推移と部門別の傾向、合格発表日程と結果確認の具体的な方法について、公式データを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、技術士一次試験合格に向けて、明確な目標設定と効果的な準備を進めましょう。
この記事を読むとわかること
- 技術士一次試験の合格基準と足切り制度の詳細
- 近年の合格率推移と部門別の合格率データ
- 合格発表の日程と3つの確認方法
- 合格後に取り組むべき具体的なアクションプラン
押さえておきたい3つのポイント
- 全科目50%以上が必須条件:技術士一次試験では基礎科目・適性科目・専門科目のすべてで50%以上の得点が必要です。1科目でも基準を下回ると不合格となる足切り制度があり、高得点科目で低得点科目を補うことはできません。
- 合格率は30~50%で推移:技術士一次試験の合格率は近年30~50%で推移しており、2023年度は39.7%でした。部門によって合格率に大きな差があり、受験者数や問題の難易度によって年度ごとの変動も見られます。
- 合格発表は翌年2月下旬:技術士一次試験の合格発表は受験した翌年の2月下旬に行われます。日本技術士会のホームページでの受験番号確認、文部科学省ホームページでの確認、本人への成績通知書の郵送という3つの方法で結果を知ることができます。
技術士で一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら
技術士一次試験の合格基準を詳しく解説
技術士一次試験に合格するためには、明確な基準を理解し、すべての科目で確実に得点を重ねることが重要です。このセクションでは、合格に必要な得点基準と、多くの受験者が注意すべき足切り制度について詳しく解説します。技術士一次試験の試験制度を把握することで、より効果的な学習計画を立てることができます。
全科目50%以上の得点が必須条件
技術士一次試験では、基礎科目・適性科目・専門科目の3科目すべてにおいて、50%以上の得点が合格の必須条件となっています。基礎科目は15問中6問の選択解答で50%以上、適性科目は15問すべて解答で50%以上、専門科目は35問中25問の選択解答で50%以上の正解が必要です。
この基準は一見シンプルに見えますが、実際には3科目すべてで基準を満たす必要があるため、バランスの取れた学習が求められます。特に苦手科目がある場合は、早めに対策を講じることが合格への近道となります。得意科目だけに注力するのではなく、全科目で確実に50%以上を取る戦略が重要です。
科目ごとの足切り制度に注意
技術士一次試験には科目ごとの足切り制度が設けられており、1科目でも50%未満の得点だった場合は、他の科目でどれだけ高得点を取っていても不合格となります。例えば、基礎科目で80%、専門科目で90%の得点を取っていても、適性科目が45%であれば不合格です。
この制度により、苦手科目を放置することはできません。多くの受験者が基礎科目や適性科目を軽視しがちですが、これらの科目も専門科目と同じ重みで合否を左右します。過去の受験データでは、専門科目は高得点だったものの適性科目で足切りにかかるケースが少なくありません。
足切りを避けるためには、全科目をバランスよく学習し、苦手分野を早期に特定して重点的に対策することが必要です。特に時間が限られている場合は、最低ラインの50%を確実に超えることを優先しましょう。
高得点科目で低得点科目を補えない仕組み
技術士一次試験の合格判定では、各科目の得点を合算して平均を出すのではなく、科目ごとに独立して50%以上の基準を満たしているかを判定します。そのため、得意科目で高得点を取って苦手科目の低得点をカバーするという戦略は通用しません。
例えば、専門科目で100%の正解率を達成しても、基礎科目が40%であれば不合格となります。この仕組みは、技術士として必要な幅広い知識をバランスよく持っていることを確認するために設けられています。実際の技術業務では、専門知識だけでなく基礎的な工学知識や技術者倫理も求められるためです。
したがって、学習計画を立てる際は、得意科目を伸ばすことよりも、すべての科目で確実に50%以上を取ることを目標にしましょう。特に苦手科目については、最低ラインをクリアすることに集中し、時間配分を工夫することが合格への鍵となります。
技術士一次試験の合格率推移(近年データ)
技術士一次試験の合格率は、受験を検討する際の重要な判断材料となります。このセクションでは、近年の合格率データをもとに、試験の難易度と合格の可能性について詳しく解説します。合格率の推移を知ることで、現実的な学習計画を立てることができます。
全体の合格率は30~50%で推移
技術士一次試験の全体的な合格率は、過去10年間で30~50%の範囲で推移しています。この数値は、国家資格試験の中では比較的高めの合格率と言えます。2019年度は45.2%、2020年度は44.8%、2021年度は42.3%という結果でした。
合格率が比較的高い理由として、一次試験が択一式試験であることが挙げられます。記述式や論文形式ではないため、基礎的な知識があれば正解を選べる問題が多く、計画的に学習すれば十分に合格を目指せる試験です。ただし、前述の足切り制度があるため、全科目をバランスよく学習することが前提となります。
また、技術士一次試験は年に1回しか実施されないため、一度の受験機会を確実に活かすことが重要です。合格率のデータを参考にしつつ、自分の学習進度と照らし合わせて計画を立てましょう。
2023年度は合格率39.7%(約2.5人に1人)
2023年度の技術士一次試験では、合格率が39.7%となり、約2.5人に1人が合格しました(日本技術士会発表データ)。この年度は前年度と比較してやや合格率が低下しましたが、依然として3人に1人以上が合格する水準を維持しています。
2023年度の受験者数は約17,000人、合格者数は約6,700人でした。この数字から見ても、適切な準備をすれば十分に合格を狙える試験であることが分かります。特に、基礎科目と適性科目は標準的な難易度で出題されており、専門科目についても過去問を繰り返し解くことで対策が可能です。
ただし、合格率が約40%ということは、約60%の受験者が不合格となっているという事実も忘れてはいけません。合格率に惑わされず、全科目で50%以上を確実に取るための十分な準備期間を確保することが大切です。
年度による合格率の変動要因
技術士一次試験の合格率は年度によって変動しますが、その主な要因は問題の難易度、受験者層の質、部門ごとの受験者数の変化などです。例えば、ある年度で特定の科目が難化すると、全体の合格率が下がる傾向にあります。
また、近年では情報工学部門や電気電子部門の受験者が増加しており、これらの部門の問題難易度が全体の合格率に影響を与えています。さらに、大学や専門学校での技術士対策講座の普及により、準備が整った受験者が増えていることも、合格率の安定につながっています。
受験者層の変化も見逃せない要因です。実務経験が豊富な社会人受験者が増加する一方で、大学在学中や卒業直後の若年層受験者も増えています。こうした受験者層の多様化が、年度ごとの合格率の変動に影響を与えているのです。技術士試験の難易度詳細では、他資格との比較も含めて詳しく解説しています。
技術士一次試験の難易度に関してもっと詳しい記事はこちら
技術士試験の難易度|他資格との比較と合格への道筋
技術士で一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら
技術士一次試験の部門別合格率を比較
技術士一次試験は21の技術部門に分かれており、部門ごとに合格率が大きく異なります。このセクションでは、部門別の合格率データを詳しく分析し、受験部門選択の参考となる情報を提供します。
最も合格率が高い部門と低い部門
2023年度のデータでは、最も合格率が高い部門は上下水道部門で54.8%、次いで農業部門が52.3%でした。一方、合格率が低い部門は経営工学部門の28.5%、次いで総合技術監理部門の31.2%となっています。
合格率が高い部門の特徴として、出題範囲が比較的明確で、実務経験と試験内容が直結しやすい点が挙げられます。上下水道部門や農業部門は、実務で扱う技術と試験問題の関連性が高く、現場経験がそのまま試験対策になるケースが多いのです。
逆に合格率が低い部門は、出題範囲が広く抽象的な問題が多い傾向にあります。経営工学部門は経営管理から生産システムまで幅広い知識が求められ、総合技術監理部門は他部門の技術士が受験する最上位資格であるため、難易度が高く設定されています。
部門による合格率の差が大きい理由
部門ごとの合格率の差は、主に出題範囲の広さ、問題の抽象度、受験者の実務経験との関連性によって生じます。例えば、機械部門や電気電子部門のように受験者数が多い部門では、問題の難易度が標準化されやすく、合格率も比較的安定しています。
また、受験者の学習環境も合格率に影響します。機械部門や土木部門のように参考書や過去問解説が充実している部門では、独学でも対策がしやすく、合格率が維持されやすい傾向にあります。一方、受験者数が少ない部門では、学習教材が限られるため、独学での対策が難しくなることがあります。
さらに、各部門の専門科目の出題形式も合格率に影響します。計算問題が多い部門では正解か不正解かが明確ですが、知識問題や応用問題が多い部門では、幅広い知識と深い理解が求められるため、合格のハードルが高くなります。
受験者数と合格率の関係性
受験者数が多い部門ほど合格率が安定する傾向があります。2023年度のデータでは、機械部門(受験者約2,800人、合格率41.2%)、電気電子部門(受験者約2,300人、合格率38.9%)、建設部門(受験者約3,200人、合格率43.5%)といった主要部門は、合格率が全体平均に近い水準で推移しています。
受験者数が多い部門では、過去問の蓄積が豊富で、出題傾向も把握しやすいため、効果的な対策が可能です。また、受験予備校や通信講座でも主要部門の対策講座が充実しており、学習環境が整っています。これらの要因が、合格率の安定につながっているのです。
一方、受験者数が少ない部門(例:繊維部門、森林部門など)では、年度によって合格率が大きく変動することがあります。受験者数が100人未満の部門では、問題の難易度や受験者層の偏りが合格率に大きく影響するため、統計的な安定性が低くなります。
合格率だけで部門を選ばない重要性
部門選択において、合格率の高さだけを基準にすることは避けるべきです。技術士の資格は、自分の専門分野や実務経験と密接に関連しているため、合格しやすい部門を選んでも、その後のキャリアに活かせなければ意味がありません。
例えば、上下水道部門の合格率が高いからといって、機械設計を専門とする技術者がその部門を選択しても、実務経験との乖離が大きく、二次試験での合格が困難になります。また、資格取得後も専門外の分野で技術士として活動することになり、キャリア形成において不利になる可能性があります。
部門選択の際は、自分の実務経験、今後のキャリアプラン、興味のある技術分野を総合的に考慮することが重要です。技術士の部門選びでは、21部門の特徴と選択基準について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
技術士の部門選択に関してもっと詳しい記事はこちら
技術士の部門一覧と選び方|21部門の特徴と選択基準
技術士一次試験の合格発表日程とスケジュール
技術士一次試験の受験後、合格発表まで長い期間を待つことになります。このセクションでは、合格発表の日程と試験から発表までのスケジュールについて詳しく解説します。
合格発表は受験翌年の2月下旬
技術士一次試験の合格発表は、試験を受けた年の翌年2月下旬に行われます。例えば、2024年11月に受験した場合、合格発表は2025年2月下旬となります。この日程は毎年ほぼ固定されており、日本技術士会のホームページで事前に告知されます。
合格発表日には、午前10時から日本技術士会のホームページに合格者の受験番号が掲載されます。同時に、文部科学省のホームページにも情報が公開され、複数の方法で結果を確認できるようになっています。また、合格者には後日、文部科学省から成績通知書が郵送されます。
合格発表日は年度によって若干前後することがありますが、例年2月20日前後に設定されることが多いです。受験票や日本技術士会のホームページで正確な日時を確認しておくことをおすすめします。
試験実施から合格発表までの期間
技術士一次試験は毎年11月下旬に実施され、合格発表までの期間は約3か月です。この期間は試験問題の採点、合格基準の確認、合格者の決定などの事務手続きに充てられます。特に、約17,000人の受験者の答案を採点し、部門ごとの合格率を分析する作業には相応の時間が必要です。
この約3か月の待機期間中に、多くの受験者は次のステップに向けた準備を開始します。合格の可能性が高いと感じた場合は、技術士二次試験の情報収集や実務経験の整理を始めることができます。一方、手応えが不十分だった場合は、次年度の再受験に向けた学習計画の見直しを行うことができます。
ただし、自己採点と実際の結果が異なるケースもあるため、公式発表までは確定的な判断を避けることが賢明です。特に、マークミスや記入ミスの可能性もあるため、正式な結果を待つことが重要です。
合格発表の具体的な時期(例年の傾向)
過去5年間のデータを見ると、技術士一次試験の合格発表日は以下のような傾向があります。2019年度は2月28日、2020年度は2月26日、2021年度は2月25日、2022年度は2月24日、2023年度は2月22日と、年々若干早まる傾向が見られます。
この傾向から、2024年度試験の合格発表は2025年2月20日前後になると予想されます。ただし、正確な日時は試験実施年の12月頃に日本技術士会のホームページで発表されるため、定期的にチェックすることをおすすめします。
また、合格発表日が週末や祝日に重なる場合は、直前の平日に繰り上げられることがあります。例年、平日の午前10時に発表されることが多いため、会社勤めの受験者はスマートフォンなどで確認できるよう準備しておくとよいでしょう。
技術士一次試験の合格発表を確認する3つの方法
技術士一次試験の合格発表は、複数の方法で確認することができます。このセクションでは、それぞれの確認方法の詳細と注意点について解説します。
日本技術士会ホームページでの受験番号確認
最も一般的な確認方法は、日本技術士会の公式ホームページで受験番号を検索することです。合格発表日の午前10時になると、ホームページに合格者の受験番号一覧が掲載されます。受験票に記載されている自分の受験番号を確認し、一覧の中に含まれているかどうかをチェックします。
ホームページでの確認は、発表日当日にすぐに結果を知ることができる最速の方法です。ただし、発表直後はアクセスが集中してページが開きにくくなることがあるため、時間をずらして確認することも考慮しましょう。合格者の受験番号は部門別に掲載されており、自分が受験した部門のページを確認します。
また、ホームページでは合格者の受験番号のみが掲載され、氏名は公開されません。プライバシー保護の観点から、受験番号による確認のみとなっています。受験番号は必ず受験票に記載されているため、合格発表日までしっかり保管しておきましょう。
文部科学省ホームページでの確認
日本技術士会のホームページと並行して、文部科学省の公式ホームページでも合格発表情報を確認できます。文部科学省のサイトでは、技術士試験を管轄する部署のページに合格者の受験番号一覧が掲載されます。
文部科学省での確認方法も、日本技術士会と同様に受験番号を検索する形式です。どちらのホームページで確認しても同じ結果が得られますが、アクセスの混雑状況によって使い分けることができます。日本技術士会のサイトが混雑している場合は、文部科学省のサイトを利用するとスムーズに確認できることがあります。
また、文部科学省のホームページでは、合格者数や合格率などの統計情報も同時に公開されます。自分の結果だけでなく、全体の傾向を知りたい場合は、文部科学省のサイトで詳細なデータを確認することができます。
本人への成績通知書の郵送
合格発表日から約1週間後、合格者・不合格者を問わず、すべての受験者に成績通知書が郵送されます。この成績通知書には、各科目の得点率と合否の結果が記載されており、自分の試験結果を詳細に確認することができます。
成績通知書は、受験申込時に登録した住所に送付されます。引っ越しをした場合は、事前に郵便局に転送届を出しておくか、試験申込時に正しい住所を登録することが重要です。もし成績通知書が届かない場合は、日本技術士会に問い合わせることができます。
特に不合格だった場合、成績通知書は次回の受験に向けて非常に重要な資料となります。各科目の得点率を分析することで、どの科目が不十分だったのかを把握し、次回の学習計画を効果的に立てることができます。合格者の場合も、二次試験に向けた参考資料として保管しておくことをおすすめします。
技術士一次試験の合格証と官報公告について
技術士一次試験に合格すると、合格証が交付され、官報にも氏名が掲載されます。このセクションでは、合格後の手続きと証明書類について詳しく解説します。
合格者に送付される合格証
技術士一次試験に合格すると、文部科学省から合格証が発行され、登録住所に郵送されます。合格証は、技術士一次試験に合格したことを証明する公式文書であり、修習技術者(一次試験合格者)としての資格を示すものです。
合格証には、受験者の氏名、生年月日、受験した技術部門、合格年月日などが記載されています。この合格証は、技術士二次試験を受験する際の資格証明として使用されるため、大切に保管する必要があります。また、就職活動や転職活動で資格保有を証明する際にも、合格証のコピーを提出することがあります。
合格証は再発行も可能ですが、手数料がかかるため、紛失しないよう注意しましょう。合格証は原本を保管し、必要な場合はコピーを使用することをおすすめします。また、合格証はA4サイズの厚紙で発行されるため、クリアファイルなどに入れて保管すると良いでしょう。
官報での氏名公告の仕組み
技術士一次試験の合格者は、官報(政府が発行する機関紙)に氏名が掲載されます。官報公告は、国家資格の合格者を公式に周知するための制度であり、技術士試験を含む多くの国家資格で実施されています。
官報への掲載は、合格発表から数週間後に行われます。掲載される情報は、合格者の氏名と受験した技術部門です。官報はインターネット版でも閲覧できるため、誰でも合格者の情報を確認することができます。ただし、官報に掲載されることを望まない場合でも、国家資格の性質上、掲載を拒否することはできません。
官報公告は、資格保有者の信頼性を担保するための重要な制度です。企業が採用や人事評価の際に、応募者や従業員の資格保有状況を確認する際、官報の記録が証拠として利用されることもあります。
合格証の受け取り時期
技術士一次試験の合格証は、合格発表から約2週間後に郵送されます。例えば、2月下旬に合格発表があった場合、3月上旬には合格証が手元に届く計算です。ただし、郵送状況や住所によっては、到着が前後することがあります。
合格証が届かない場合は、まず郵便物の転送状況を確認しましょう。引っ越しをしている場合は、郵便局の転送サービスが正しく機能しているか確認します。それでも届かない場合は、日本技術士会に問い合わせることができます。
合格証は重要書類であるため、受け取り後は安全な場所に保管しましょう。特に、技術士二次試験を受験する予定がある場合は、受験申込時に合格証の情報が必要になるため、すぐに取り出せる場所に保管しておくことをおすすめします。
技術士で一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら
技術士一次試験合格後の2つの選択肢
技術士一次試験に合格すると、次のステップとして2つの主要な選択肢があります。このセクションでは、それぞれの選択肢のメリットと進め方について詳しく解説します。
修習技術者としての位置づけ
技術士一次試験に合格すると、自動的に「修習技術者」という称号が与えられます。修習技術者とは、技術士になるための修習期間にある技術者を指し、一次試験合格から二次試験合格までの期間、この立場に位置づけられます。
修習技術者の期間中は、実務経験を積みながら技術士二次試験の準備を進めることが一般的です。この期間は最短でも4年以上必要とされており(大卒の場合)、実務を通じて専門知識を深め、技術的な判断力を養う重要な時期となります。
修習技術者という立場は、履歴書や名刺に記載することができ、技術者としてのキャリアを証明する資格の一つとなります。ただし、技術士補に登録しない限り、法的に特別な業務ができるわけではありませんが、自己の技術レベルを示す指標として活用できます。
技術士補に登録するメリット
技術士一次試験に合格した後、任意で「技術士補」に登録することができます。技術士補への登録には、日本技術士会への登録申請と登録手数料が必要ですが、登録することで正式に「技術士補」という称号を使用できるようになります。
技術士補に登録するメリットとして、まず名刺や履歴書に「技術士補」という明確な資格名を記載できる点が挙げられます。これは就職活動や転職活動において、自己のスキルレベルを客観的に示す強力な武器となります。また、企業によっては技術士補の資格保有者に対して資格手当を支給するケースもあります。
さらに、技術士補として登録すると、技術士の指導の下で業務を行うことが技術士法で認められており、より高度な技術業務に携わる機会が増える可能性があります。ただし、登録には費用がかかるため、自分のキャリアプランと照らし合わせて判断することが重要です。
二次試験の準備を始める最適なタイミング
技術士二次試験の準備を始めるタイミングは、実務経験の年数と自己の学習進度によって異なります。一般的には、一次試験合格後すぐに二次試験の情報収集を始め、必要な実務経験年数(大卒の場合4年以上)に達する1年前から本格的な学習を開始することが推奨されます。
技術士二次試験の詳細を理解することで、どのような準備が必要かが明確になります。二次試験は筆記試験と口頭試験で構成されており、一次試験とは大きく異なる対策が必要です。特に、必須科目と選択科目で問われる論文作成能力は、短期間で習得できるものではないため、早めの準備が重要です。
実務経験を積みながら、専門分野の最新技術動向を追い、業務上の課題解決事例をまとめておくことも有効です。二次試験では実務に基づいた応用力が問われるため、日々の業務を技術士としての視点で捉える習慣をつけることが、長期的な準備として効果的です。
技術士二次試験に関してもっと詳しい記事はこちら
技術士二次試験とは?試験制度・受験資格・日程を詳しく解説
技術士一次試験合格後すぐに取り組むべきこと
技術士一次試験に合格したら、次のステップに向けて具体的な行動を起こすことが重要です。このセクションでは、合格後すぐに取り組むべき3つの重要事項について解説します。
実務経験の蓄積を意識した業務遂行
技術士二次試験を受験するためには、一定の実務経験年数が必要です(大卒の場合4年以上、高専卒の場合5年以上)。そのため、一次試験合格後は、日々の業務を技術士二次試験の実務経験として蓄積することを意識して取り組むことが重要です。
実務経験の質を高めるためには、単に業務をこなすだけでなく、技術的な課題に対して主体的に解決策を考え、実行する姿勢が求められます。例えば、設計業務では単に図面を描くだけでなく、設計思想や技術的判断の根拠を明確にし、記録として残すことが有効です。
また、業務日誌や技術ノートを作成し、日々の業務内容と技術的な判断、得られた知見を記録しておくことをおすすめします。これらの記録は、二次試験の業務経歴票作成や口頭試験での説明に直接役立ちます。技術士一次試験の勉強法で培った学習習慣を、実務での継続的な学習に活かしましょう。
二次試験の出題傾向の把握
技術士二次試験は一次試験とは大きく異なる形式で実施されるため、早い段階で出題傾向を把握しておくことが重要です。二次試験では、必須科目と選択科目で記述式の問題が出題され、専門知識だけでなく、技術的な応用力や論理的思考力が問われます。
過去問を入手して実際の問題形式を確認し、どのような知識や能力が求められているかを理解しましょう。日本技術士会のホームページでは、過去5年分の二次試験問題が公開されており、無料でダウンロードできます。これらの問題を分析することで、自分が今後学習すべき分野や強化すべきスキルが明確になります。
また、技術士会が主催する講習会や説明会に参加することも有効です。二次試験の評価基準や採点のポイントについて、実際の試験官や合格者から直接情報を得ることができるため、効率的な準備が可能になります。
専門知識の継続的な学習
技術士二次試験では、一次試験よりも深い専門知識と、最新の技術動向に関する理解が求められます。そのため、一次試験合格後も専門分野の学習を継続し、知識をアップデートし続けることが重要です。
専門知識の継続的な学習方法として、学会誌や技術論文を定期的に読むことが挙げられます。自分の専門分野に関連する学会に入会し、最新の研究動向や技術革新の情報を収集しましょう。また、業界の技術セミナーや研修会に参加することで、実務に直結する知識を効率的に習得できます。
さらに、関連する国家資格や民間資格の取得を目指すことも、専門知識の向上に役立ちます。例えば、電気電子部門の技術者であれば電気主任技術者、建設部門であれば施工管理技士など、関連資格の学習を通じて知識の幅を広げることができます。
技術士一次試験の勉強法に関してもっと詳しい記事はこちら
技術士一次試験の勉強法|勉強時間・参考書・科目別対策
技術士一次試験に関連するよくある質問(FAQ)
技術士一次試験の合格に関して、多くの受験者が抱く疑問について、具体的に回答します。これらの情報を参考に、試験準備や合格後の行動計画を立ててください。
Q. 技術士一次試験の合格率は何%ですか?
技術士一次試験の合格率は、近年30~50%の範囲で推移しています。2023年度の全体合格率は39.7%でした(日本技術士会発表データ)。部門によって合格率に差があり、上下水道部門や農業部門は50%を超える高い合格率を示す一方、経営工学部門や総合技術監理部門は30%前後と低めの傾向にあります。合格率は年度や部門によって変動しますが、適切な準備をすれば十分に合格を目指せる水準です。
Q. 技術士一次試験の合格発表はいつですか?
技術士一次試験の合格発表は、受験した翌年の2月下旬に行われます。試験は毎年11月下旬に実施されるため、合格発表まで約3か月の期間があります。例えば、2024年11月に受験した場合、合格発表は2025年2月下旬となります。具体的な発表日時は試験実施年の12月頃に日本技術士会のホームページで公表されます。発表日当日は午前10時からホームページで合格者の受験番号が公開されます。
Q. 技術士一次試験の合格基準は何点ですか?
技術士一次試験の合格基準は、基礎科目・適性科目・専門科目のすべてで50%以上の得点が必要です。具体的には、基礎科目は15問中6問を選択し50%以上、適性科目は15問すべて解答で50%以上、専門科目は35問中25問を選択し50%以上の正解が求められます。重要なのは、1科目でも50%未満の得点があると不合格となる足切り制度があることです。高得点科目で低得点科目を補うことはできないため、全科目で確実に50%以上を取る戦略が必要です。
Q. 技術士一次試験に不合格だった場合、科目合格は認められますか?
技術士一次試験では、科目合格制度は設けられていません。そのため、基礎科目・適性科目・専門科目のうち一部の科目で合格基準を満たしていても、他の科目が基準を下回っていれば全体として不合格となり、次回受験時に改めて全科目を受験する必要があります。ただし、一次試験免除制度があり、指定された大学の課程を修了した場合や、技術士補として一定期間従事した場合は、一次試験そのものが免除されます。
Q. 技術士一次試験の合格証はいつ届きますか?
技術士一次試験の合格証は、合格発表から約2週間後に郵送されます。例えば、2月下旬に合格発表があった場合、3月上旬には合格証が手元に届く計算です。合格証は文部科学省から発行され、受験申込時に登録した住所に送付されます。合格証には受験者の氏名、生年月日、受験した技術部門、合格年月日が記載されており、技術士二次試験を受験する際の資格証明として使用されます。合格証が届かない場合は、日本技術士会に問い合わせることができます。
Q. 技術士一次試験合格後、技術士補の登録は必須ですか?
技術士一次試験に合格した後、技術士補への登録は任意です。一次試験に合格すると自動的に「修習技術者」という立場になりますが、「技術士補」として正式に名乗るためには、日本技術士会への登録申請と登録手数料の支払いが必要です。技術士補に登録するメリットとして、名刺や履歴書に正式な資格名を記載できることや、企業によっては資格手当が支給される可能性があることが挙げられます。ただし、二次試験の受験資格には技術士補登録は必須ではないため、自分のキャリアプランに応じて判断しましょう。
Q. 技術士一次試験に合格すれば、すぐに二次試験を受験できますか?
技術士二次試験を受験するためには、一次試験合格に加えて、一定の実務経験年数が必要です。大学卒業者の場合は合格後4年以上、高専卒業者の場合は5年以上の実務経験が求められます。そのため、一次試験に合格してもすぐには二次試験を受験できません。ただし、技術士補として登録し、指導技術士の下で業務に従事した場合は、実務経験年数が短縮される場合があります。実務経験の期間中は、専門知識を深め、実務能力を高めることに専念し、二次試験に向けた準備を計画的に進めましょう。
まとめ:技術士一次試験は合格率30~50%の重要な登竜門
本記事では、技術士一次試験の合格率推移と合格発表・結果確認方法について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 全科目50%以上の得点が必須:技術士一次試験では、基礎科目・適性科目・専門科目のすべてで50%以上の得点が必要です。1科目でも基準を下回ると不合格となる足切り制度があり、高得点科目で低得点科目を補うことはできません。全科目をバランスよく学習することが合格への鍵です。
- 合格率は部門により変動:全体の合格率は30~50%で推移しており、2023年度は39.7%でした。部門によって合格率に大きな差があり、上下水道部門や農業部門は50%を超える一方、経営工学部門は30%未満です。ただし、合格率だけで部門を選ぶのではなく、自分の専門分野と実務経験を重視して選択することが重要です。
- 合格発表は翌年2月下旬:試験は11月下旬に実施され、合格発表は翌年2月下旬に行われます。日本技術士会のホームページでの受験番号確認、文部科学省ホームページでの確認、本人への成績通知書の郵送という3つの方法で結果を知ることができます。
技術士一次試験の合格を理解できたら、次は技術士二次試験の詳細と技術士一次試験の勉強法を参考に、計画的に進めることをおすすめします。
本記事を通じて、技術士一次試験の合格基準、合格率の推移、合格発表の方法、合格後の選択肢について理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、技術士資格取得に向けて着実に一歩を踏み出しましょう。
技術士で一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら
技術士の関連記事
コメント