技術士一次試験の免除制度について知りたいあなたへ。「一次試験を受けずに技術士を目指せるのか」という疑問は、適切な免除制度の理解で解決できます。本記事では、技術士一次試験の全部免除と一部免除の条件、JABEE認定プログラムや資格保有者の免除対象、免除申請の具体的な手続き方法について、最新の制度情報を交えて詳しく解説します。この情報をもとに、技術士資格取得に向けて、最短ルートを見つけましょう。
この記事を読むとわかること
- 技術士一次試験の免除制度の種類と対象者
- JABEE認定プログラム修了者や資格保有者の免除条件
- 免除申請に必要な書類と手続き方法
- 技術士補登録と免除制度の関係
押さえておきたい3つのポイント
- 全部免除と一部免除の違い:JABEE認定プログラム修了者は一次試験の全科目が免除される一方、中小企業診断士や情報処理技術者試験合格者は専門科目のみ一部免除となります。
- 免除申請の期限:技術士試験の受験申込と同時に免除申請を行う必要があり、後から遡って申請することはできません。必要書類を事前に準備しておくことが重要です。
- 免除後の受験資格:一次試験免除者は修習技術者となり、技術士二次試験の受験資格を得ますが、実務経験年数の要件は免除されません。技術士補登録をすることで実務経験期間を短縮できます。
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技術士一次試験の免除制度とは
技術士一次試験の免除制度は、特定の教育課程修了者や資格保有者に対して、一次試験の全部または一部を免除する仕組みです。この制度を活用することで、技術士資格取得までの時間と労力を大幅に削減できます。
免除制度は、技術者としての基礎的な知識や能力を別の方法で証明できる場合に適用されます。文部科学大臣が指定する教育課程を修了した方や、関連する国家資格を保有している方が対象となり、それぞれの条件によって免除される科目の範囲が異なります。
技術士試験における免除制度の位置づけ
技術士試験制度では、受験者の負担軽減と効率的な資格取得を支援するため、一次試験の免除制度が設けられています。この制度は、技術士法に基づいて運用されており、日本技術士会が免除対象者の確認と審査を行っています。
免除制度の位置づけとして重要なのは、これが単なる優遇措置ではなく、受験者がすでに一定水準の技術的知識を有していることを証明する仕組みである点です。JABEE(日本技術者教育認定機構)認定プログラムの修了や、他の国家資格の取得は、技術士一次試験で問われる内容と同等またはそれ以上の知識を習得していることを示します。
技術士一次試験は、基礎科目、適性科目、専門科目の3つで構成されていますが、免除制度を利用することで、これらの科目の全部または一部を受験せずに済みます。ただし、免除申請は受験申込時に行う必要があり、後から遡って申請することはできません。
全部免除と一部免除の違い
技術士一次試験の免除制度には「全部免除」と「一部免除」の2種類があります。全部免除は、一次試験の全科目(基礎科目・適性科目・専門科目)が免除される制度で、JABEE認定プログラム修了者やワシントン協定加盟国の認定プログラム修了者が対象です。全部免除を受けた方は、一次試験を受験することなく修習技術者(一次試験合格者)と同等の資格を得られます。
一方、一部免除は専門科目のみが免除される制度で、中小企業診断士や情報処理技術者試験の合格者などが対象となります。一部免除の場合、基礎科目と適性科目は通常通り受験する必要がありますが、専門科目については特定の部門で受験が免除されます。
全部免除を受けるか一部免除を受けるかによって、技術士資格取得までのプロセスが大きく変わります。全部免除の場合は直ちに二次試験の受験資格を得られますが、一部免除の場合は基礎科目と適性科目に合格する必要があります。自身の学歴や保有資格を確認し、最も効率的なルートを選択することが重要です。
技術士免除制度を利用するメリット
技術士一次試験の免除制度を利用する最大のメリットは、試験準備の時間と労力を大幅に削減できることです。一次試験の準備には一般的に300~500時間の勉強時間が必要とされますが、免除制度を利用すればこの時間を二次試験の準備に充てることができます。
免除制度のもう一つのメリットは、試験合格の不確実性を排除できる点です。一次試験の合格率は45~50%程度で推移しており、不合格になると翌年まで待つ必要があります。免除制度を利用すれば、この不確実性を避けて確実に次のステップに進めます。
経済的なメリットも見逃せません。一次試験の受験料(約11,000円)が不要になるだけでなく、参考書や問題集の購入費用、試験会場への交通費なども削減できます。さらに、免除制度を利用することで技術士資格取得までの期間が短縮され、早期に資格を活かしたキャリアアップが可能になります。
また、心理的な負担の軽減も重要なメリットです。一次試験の準備と二次試験の準備を同時に進める必要がなくなるため、二次試験に集中できます。特に働きながら資格取得を目指す方にとって、この集中できる環境は大きなアドバンテージとなります。
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技術士一次試験が全部免除される条件
技術士一次試験の全部免除を受けるには、文部科学大臣が指定する教育課程を修了しているか、国際的に認められた技術者教育プログラムを修了している必要があります。ここでは全部免除の対象となる条件について詳しく解説します。
全部免除の対象者は主に、大学や高等専門学校でJABEE認定プログラムを修了した方、または文部科学大臣指定の教育課程を修了した方です。これらのプログラムでは、技術士一次試験で問われる内容と同等以上の教育が行われているため、一次試験の全科目が免除されます。
JABEE認定プログラムとは
JABEE(日本技術者教育認定機構、Japan Accreditation Board for Engineering Education)は、大学などの高等教育機関における技術者教育プログラムの質を認定する第三者評価機関です。JABEEの認定を受けた教育プログラムは、国際的な技術者教育の水準を満たしていることが保証されます。
JABEE認定プログラムでは、技術者として必要な専門知識、デザイン能力、コミュニケーション能力、倫理観などを体系的に学べるカリキュラムが組まれています。認定プログラムは工学系だけでなく、農学系、理学系などの分野でも展開されており、2024年時点で全国の約250の教育プログラムがJABEEの認定を受けています。
JABEE認定プログラムの最大の特徴は、ワシントン協定(Washington Accord)という国際的な技術者教育の相互認証協定に基づいている点です。この協定により、JABEE認定プログラムの修了者は、国際的にも技術者としての基礎教育を修了したと認められます。
認定プログラムには厳格な修了要件があり、定められた単位数の取得、卒業研究や設計課題の完成、一定の成績基準のクリアなどが求められます。これらの要件を満たして修了した学生には、JABEE修了証明書が発行され、技術士一次試験の全部免除を受ける資格が与えられます。
技術士一次試験免除の対象となるJABEE修了者
JABEE認定プログラムの修了者が技術士一次試験の免除を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、修了したプログラムがJABEEの認定を受けている期間中に在籍していたことが必要です。認定される前や認定が失効した後の在籍期間は免除対象とならないため、注意が必要です。
免除対象となるのは、修了証明書または修了証が発行されている方です。JABEE認定プログラムに在籍しただけでは不十分で、正式にプログラムを修了し、所定の証明書を取得している必要があります。卒業証明書とは別にJABEE修了証明書が必要となる点に注意しましょう。
また、JABEE修了による免除は、修了したプログラムの専門分野に対応する技術士部門だけでなく、全21部門のいずれにおいても一次試験の全部免除が適用されます。例えば、機械工学系のJABEE認定プログラムを修了した方でも、電気電子部門や情報工学部門の二次試験を受験する際に一次試験が免除されます。
ただし、JABEE認定プログラムには複数の認定基準があり、一部の旧基準で認定されたプログラムの修了者は免除対象とならない場合があります。自身の修了したプログラムが免除対象かどうかは、在籍していた大学や日本技術士会に確認することをおすすめします。
文部科学大臣指定の教育課程一覧の確認方法
文部科学大臣が指定する教育課程とは、JABEE認定プログラム以外で技術士一次試験の免除が認められる教育課程のことです。これらの教育課程は、文部科学省が技術士法施行規則に基づいて指定しており、主に平成12年度(2000年度)以前の技術者教育制度における指定課程が該当します。
指定教育課程の一覧は、文部科学省のウェブサイトおよび日本技術士会のウェブサイトで公開されています。確認方法は、まず文部科学省の「技術士試験」のページにアクセスし、「一次試験免除対象者」または「指定された教育課程」というセクションを探します。そこに大学名、学部名、学科名、適用期間などが記載された一覧表が掲載されています。
指定教育課程の確認で重要なのは、卒業年度によって免除対象となるかどうかが変わる点です。多くの指定課程は平成12年度以前の卒業者を対象としており、それ以降の卒業者はJABEE認定プログラムの対象となります。自身の卒業年度と在籍した学科が指定期間内に該当するかを慎重に確認する必要があります。
また、大学の改組や学科名の変更により、現在の学科名と指定当時の学科名が異なる場合があります。このような場合は、出身大学の学生課や教務課に問い合わせて、自身の卒業した学科が指定教育課程に該当するかを確認することをおすすめします。日本技術士会でも個別の問い合わせに対応していますので、不明な点があれば相談しましょう。
ワシントン協定加盟国の認定プログラム修了者
ワシントン協定(Washington Accord)は、技術者教育の質保証に関する国際的な相互認証協定です。この協定に加盟している国・地域の認定機関が認めた技術者教育プログラムの修了者は、日本の技術士一次試験の全部免除を受けることができます。
ワシントン協定には、日本のJABEE以外に、アメリカ(ABET)、イギリス(Engineering Council UK)、カナダ(Engineers Canada)、オーストラリア(Engineers Australia)、ニュージーランド、韓国、シンガポール、台湾、マレーシア、トルコ、南アフリカなどの加盟国・地域があります。これらの国・地域で認定プログラムを修了した方は、日本での技術士一次試験が免除されます。
海外のプログラム修了者が免除申請を行う際は、修了証明書の原本またはコピーと、日本語訳を提出する必要があります。翻訳は公的機関によるものでなくても構いませんが、記載内容が正確であることが求められます。また、修了したプログラムがワシントン協定加盟機関による認定を受けていることを証明する書類も必要となる場合があります。
グローバル化が進む現代において、海外で技術者教育を受けた方が日本で技術士資格を取得するケースが増えています。ワシントン協定による相互認証制度は、国際的に活躍する技術者にとって重要な仕組みとなっています。ただし、加盟国の認定機関や認定プログラムの情報は更新されることがあるため、最新情報を日本技術士会に確認することをおすすめします。
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技術士試験とは?試験制度・一次試験・二次試験の全体像
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技術士一次試験が一部免除される資格保有者
技術士一次試験の一部免除制度では、特定の国家資格を保有している方が専門科目のみ免除される仕組みです。基礎科目と適性科目は通常通り受験する必要がありますが、専門科目の負担を軽減できるため、効率的に資格取得を目指せます。
一部免除の対象となる主な資格は、中小企業診断士と情報処理技術者試験です。これらの資格は、それぞれの専門分野において高度な知識と能力を証明するものであり、技術士試験の特定部門と関連性が高いことから免除対象とされています。
中小企業診断士による技術士試験の専門科目免除
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対する診断・助言を行う専門家として国が認定する資格です。中小企業診断士の資格を保有している方は、技術士一次試験の経営工学部門における専門科目が免除されます。
中小企業診断士試験では、企業経営理論、財務・会計、運営管理、経営情報システム、経済学・経済政策などの科目を学習します。これらの内容は、技術士経営工学部門で求められる知識と重複する部分が多く、特に生産管理、品質管理、経営戦略などの分野において共通性が高いため、専門科目の免除が認められています。
免除申請を行う際は、中小企業診断士の登録証のコピーを提出する必要があります。ただし、中小企業診断士の資格を保有していても、技術士一次試験の基礎科目と適性科目は受験する必要があります。これらの科目は、技術者としての基礎的な数学・物理・化学の知識や、技術士としての倫理観を問うものであり、中小企業診断士の試験範囲とは異なるためです。
中小企業診断士の資格を活かして技術士経営工学部門を取得することで、経営コンサルタントとしての専門性をさらに高めることができます。両方の資格を持つことで、技術と経営の両面から企業支援ができる専門家として、より広範なキャリアの可能性が広がります。
情報処理技術者試験合格による専門科目免除
情報処理技術者試験は、IT技術者としての知識と技能を評価する国家試験です。このうち、特定の試験に合格した方は、技術士一次試験の情報工学部門における専門科目が免除されます。免除対象となる情報処理技術者試験は以下の通りです。
応用情報技術者試験に合格した方は、技術士一次試験の情報工学部門専門科目が免除されます。応用情報技術者試験は、IT技術者としての応用的知識と技能を評価する試験で、プログラミング、システム開発、データベース、ネットワーク、セキュリティなど幅広い分野を扱います。
さらに、高度情報処理技術者試験の各区分(ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャ、システム監査技術者、情報処理安全確保支援士)に合格した方も、情報工学部門の専門科目が免除されます。
情報処理技術者試験による免除を受ける際は、合格証書のコピーを提出します。ただし、基本情報技術者試験やITパスポート試験の合格では免除は受けられません。また、中小企業診断士の場合と同様に、基礎科目と適性科目の受験は必要です。
情報処理技術者試験の合格を活かして技術士資格を取得することで、IT技術者としての専門性を対外的に証明できます。特に、システム開発やIT戦略の立案において、技術士の称号は大きな信頼性をもたらします。
各資格で免除される技術士の部門と科目
一部免除の対象となる資格と免除される部門・科目の関係を整理すると、以下のようになります。まず、中小企業診断士の資格保有者は、技術士一次試験の経営工学部門において専門科目のみが免除されます。基礎科目と適性科目は受験が必要です。
情報処理技術者試験(応用情報技術者試験および高度情報処理技術者試験の各区分)の合格者は、技術士一次試験の情報工学部門において専門科目のみが免除されます。こちらも基礎科目と適性科目は受験が必要です。
重要なポイントは、一部免除を受ける場合、免除されるのはあくまで特定部門の専門科目のみという点です。例えば、中小企業診断士の資格を持っている方が機械部門や電気電子部門の技術士を目指す場合、専門科目の免除は適用されず、一次試験の全科目を受験する必要があります。
また、複数の免除対象資格を保有している場合でも、一度に複数部門の専門科目免除を受けることはできません。受験申込時にどの部門で免除申請を行うかを選択する必要があります。ただし、基礎科目と適性科目に合格すれば、その合格は全部門で有効となるため、後から別の部門の専門科目を受験することも可能です。
資格保有による一部免除は、すでに専門知識を有している方が効率的に技術士資格を取得するための有効な手段です。自身の保有資格と目指す技術士部門を照らし合わせて、最適な受験戦略を立てることが重要です。
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技術士試験の受験資格|一次試験・二次試験の要件を解説
技術士一次試験の旧制度合格者の免除措置
技術士試験制度は平成14年度(2002年度)に大きく改正され、それ以前に技術士試験に合格した方に対しては特別な免除措置が設けられています。旧制度と新制度では試験の仕組みが異なるため、旧制度での合格がどのように扱われるかを理解することが重要です。
旧制度では、技術士試験は一次試験と二次試験に分かれておらず、直接技術士試験(現在の二次試験に相当)を受験する仕組みでした。また、部門ごとに独立した試験として実施されていたため、複数部門の技術士を目指す場合の扱いも現在とは異なります。
平成14年度以前の技術士二次試験合格者の扱い
平成14年度(2002年度)以前に技術士試験(当時は二次試験という区分はなく、現在の二次試験に相当する試験)に合格して技術士となった方は、その後別の部門の技術士を目指す際に一次試験が免除されます。これは、一度技術士資格を取得した方は、技術者としての基礎的な知識と能力を既に証明しているとみなされるためです。
旧制度の技術士合格者が新たな部門で技術士を目指す場合、一次試験の全科目(基礎科目、適性科目、専門科目)が免除され、直接二次試験を受験できます。この免除は、旧制度で取得した技術士の部門に関係なく、全ての部門において適用されます。
ただし、この免除措置を受けるためには、技術士登録が完了していることが前提となります。二次試験に合格しただけで登録を済ませていない場合は、免除対象とならない可能性があるため、注意が必要です。免除申請の際は、技術士登録証のコピーを提出することで、免除資格を証明します。
旧制度の技術士合格者は、長年にわたり技術者として活躍してきた方が多く、複数部門での技術士取得を目指すケースが増えています。一次試験の免除により、二次試験の準備に集中できるため、効率的に複数部門の技術士資格を取得できます。
同一部門受験時の技術士試験免除科目
すでに技術士資格を保有している方が、同じ部門で別の選択科目の技術士を目指す場合にも、一次試験の免除が適用されます。技術士二次試験では、各部門の中に複数の選択科目が設定されており、それぞれ独立した技術士として登録できる仕組みになっています。
例えば、機械部門には機械設計、材料力学、機構ダイナミクス・制御、熱・動力エネルギー機器などの選択科目があり、電気電子部門には電力・エネルギーシステム、電気応用、電子応用、情報通信、電気設備などの選択科目があります。同一部門内で別の選択科目の技術士を目指す場合、一次試験は当然免除されます。
同一部門での複数選択科目取得は、専門性の幅を広げたい技術者にとって有効な選択肢です。一つの部門で複数の選択科目の技術士資格を持つことで、その部門における総合的な専門家としての地位を確立できます。また、プロジェクトの規模や内容に応じて、最適な選択科目の技術士として業務を遂行できる利点もあります。
免除申請の際は、既に取得している技術士の登録証を提示することで、同一部門内での免除資格を証明します。二次試験の準備に専念できるため、比較的短期間で追加の技術士資格を取得することが可能です。
異なる部門受験時の免除科目
技術士資格を保有している方が、別の部門で新たに技術士を目指す場合も、一次試験の全科目が免除されます。この免除措置は、技術士という国家資格を保有していることが、技術者としての基礎的な知識と能力を十分に証明しているという考え方に基づいています。
異なる部門での技術士取得は、キャリアの多様化や専門領域の拡大を目指す技術者にとって重要な選択肢です。例えば、機械部門の技術士が電気電子部門の技術士も取得することで、メカトロニクスやロボット工学などの融合領域での活躍が可能になります。また、情報工学部門と経営工学部門の両方の技術士資格を持つことで、ITと経営の両面からコンサルティング業務を行えます。
複数部門の技術士資格を持つことのメリットは、技術的な信頼性の向上だけでなく、ビジネスチャンスの拡大にもつながります。公共工事の入札や企業のコンサルティング業務において、複数部門の技術士がいることが評価される場合があり、組織全体の競争力向上にも寄与します。
異なる部門で技術士を目指す際は、一次試験が免除されるため、二次試験の筆記試験と口頭試験に集中できます。ただし、二次試験の難易度は部門によって異なり、専門性の違いも大きいため、新しい部門の専門知識を体系的に学習する必要があります。実務経験の要件も満たす必要があるため、計画的にキャリアを構築することが重要です。
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技術士一次試験免除の申請手続き
技術士一次試験の免除を受けるには、受験申込時に所定の書類を提出して申請する必要があります。免除申請の手続きは複雑ではありませんが、必要書類の準備や提出期限に注意が必要です。ここでは、免除申請の具体的な手続き方法について解説します。
免除申請は、技術士一次試験の受験申込と同時に行います。後から遡って免除申請をすることはできないため、申込期間内に必ず手続きを完了させる必要があります。申請には免除資格を証明する書類の提出が必須となります。
技術士試験免除申請に必要な書類
技術士一次試験の免除申請に必要な書類は、免除の種類によって異なります。JABEE認定プログラム修了者の場合、JABEE修了証明書または修了証の原本またはコピーが必要です。修了証明書は、在籍していた大学や高等専門学校の事務窓口で発行してもらえます。発行には数日から数週間かかる場合があるため、早めに準備を始めましょう。
文部科学大臣指定の教育課程修了者の場合、卒業証明書に加えて、指定教育課程を修了したことを証明する書類が必要となることがあります。大学によっては、技術士一次試験免除対象者であることを明記した特別な証明書を発行してくれる場合もあるため、出身校の学生課や教務課に問い合わせることをおすすめします。
資格保有による一部免除を申請する場合、中小企業診断士の登録証または合格証明書のコピー、情報処理技術者試験の合格証書のコピーなどが必要です。これらの書類は、資格を取得した際に受け取っているはずですが、紛失した場合は再発行の手続きが必要となります。
旧制度の技術士合格者が免除申請を行う場合は、技術士登録証のコピーを提出します。登録証には登録番号と取得した部門が記載されており、これにより一次試験免除の資格を証明できます。
申請書類は、日本技術士会のウェブサイトからダウンロードできる申請書に必要事項を記入し、証明書類とともに郵送または持参で提出します。書類に不備があると免除が認められない場合があるため、提出前に必ず内容を確認しましょう。
JABEE修了証明書の取得方法
JABEE修了証明書は、JABEE認定プログラムを修了したことを証明する公式な書類です。この証明書は、在籍していた大学や高等専門学校が発行するもので、技術士一次試験の免除申請に必須の書類となります。
JABEE修了証明書の取得方法は、まず出身校の学生課、教務課、または就職支援課などの窓口に連絡することから始めます。多くの大学では、「JABEE修了証明書発行申請書」などの専用の申請書類が用意されています。申請書に必要事項を記入し、本人確認書類(免許証のコピーなど)とともに提出します。
証明書の発行には手数料がかかる場合が多く、金額は大学によって異なりますが、一般的に300円~500円程度です。発行までの期間は、即日発行してくれる大学もあれば、1週間~2週間程度かかる場合もあります。郵送での受け取りを希望する場合は、さらに時間がかかることがあるため、余裕を持って申請しましょう。
卒業後しばらく経ってから申請する場合、在籍時の学科名や学部名が変更されていることがあります。このような場合でも、卒業時にJABEE認定プログラムに在籍していたことが確認できれば証明書を発行してもらえます。不明な点がある場合は、出身校の事務局に相談してください。
JABEE修了証明書には、修了したプログラム名、修了年月、認定期間などが記載されています。これらの情報が技術士一次試験の免除申請時に確認されるため、記載内容に誤りがないかを確認することが重要です。万が一記載に誤りがある場合は、発行元の大学に連絡して訂正してもらいましょう。
技術士試験免除申請の提出期限と方法
技術士一次試験の免除申請は、一次試験の受験申込期間内に行う必要があります。一次試験は例年10月中旬に実施され、受験申込期間は6月中旬から7月上旬頃に設定されることが多いです。この期間内に受験申込と免除申請の両方を完了させなければなりません。
申請方法は、インターネット出願と郵送出願の2種類があります。インターネット出願の場合、日本技術士会のウェブサイトから専用の出願システムにアクセスし、必要事項を入力します。免除申請を行う場合は、申請画面で免除の種類を選択し、後日免除を証明する書類を郵送で提出します。
郵送出願の場合は、願書と免除申請書、免除を証明する書類をすべて同封して日本技術士会に郵送します。書類は簡易書留など配達記録が残る方法で送ることをおすすめします。提出期限は消印有効ではなく必着であることが多いため、期限の数日前には発送するよう心がけましょう。
免除申請の審査には通常1~2週間程度かかります。申請が認められた場合、受験票には免除科目が明記され、免除された科目は受験する必要がなくなります。万が一、免除申請が認められなかった場合は、日本技術士会から通知が届き、その理由が説明されます。
申請書類に不備があった場合、補正を求められることがあります。補正期限内に対応しないと免除が認められない可能性があるため、日本技術士会からの連絡には速やかに対応しましょう。また、申請期限を過ぎてからの免除申請は受け付けられないため、計画的に準備を進めることが重要です。
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技術士補登録と一次試験免除の関係
技術士一次試験に合格または免除された方は、修習技術者となり、技術士補として登録することができます。技術士補の登録は任意ですが、登録することで技術士二次試験の受験に必要な実務経験年数を短縮できるメリットがあります。
技術士補制度は、一次試験を通過した技術者が、指導技術士の下で実務経験を積みながら技術士を目指すための制度です。一次試験免除者も同様に技術士補登録の資格を有しており、この制度を活用することで効率的に技術士資格を取得できます。
技術士一次試験免除後の修習技術者資格
技術士一次試験の免除を受けた方は、一次試験合格者と同様に修習技術者としての資格を得ます。修習技術者とは、技術士法に定められた技術者の区分の一つで、技術士一次試験に合格した方、または免除を受けた方に与えられる称号です。
修習技術者は、技術士補として登録していなくても使用できる称号ですが、技術士補として登録することで、より明確に自身の資格を証明できます。また、名刺や履歴書に「修習技術者」または「技術士補」と記載することで、技術者としての専門性をアピールできます。
修習技術者の資格は、一度取得すれば生涯有効です。一次試験免除によって修習技術者となった後、すぐに二次試験を受験する必要はなく、自身のキャリアプランに合わせて適切なタイミングで二次試験に挑戦できます。また、修習技術者であることは、技術者としての一定の知識と能力を有していることの証明となります。
JABEE認定プログラムの修了による免除の場合、修了した時点で自動的に修習技術者の資格を得ます。資格保有による一部免除の場合は、基礎科目と適性科目に合格した時点で修習技術者となります。いずれの場合も、二次試験を受験するためには、この修習技術者としての資格が前提となります。
技術士補として登録するメリット
技術士補として登録する最大のメリットは、技術士二次試験の受験に必要な実務経験年数を短縮できることです。技術士二次試験を受験するには、原則として修習技術者となってから4年以上の実務経験が必要ですが、技術士補として登録し、指導技術士の下で実務経験を積んだ場合は4年間に短縮できます(技術士補登録をしていない場合も4年ですが、技術士補として指導を受けることで質の高い経験を積めます)。
技術士補登録のもう一つの重要なメリットは、技術士法に基づいて技術士補としての名称を使用できることです。名刺や署名に「技術士補」と記載することで、技術者としての専門性と信頼性を対外的にアピールできます。特に、建設業界や製造業界では、技術士補の肩書が評価される場面が多くあります。
技術士補として登録することで、日本技術士会の会員となり、各種研修会や講演会に参加できます。これらの活動を通じて、技術士や他の技術士補との交流が深まり、専門知識の向上や人脈の構築に役立ちます。また、技術士会が発行する会報や専門誌を通じて、最新の技術動向や業界情報を得ることができます。
技術士補登録は、キャリア形成においても重要な意味を持ちます。技術士補として登録し、指導技術士の指導を受けながら実務を行うことで、技術士として必要な実践的な能力を体系的に身につけることができます。また、指導技術士からの推薦状は、二次試験の受験申請時に有利に働く場合があります。
技術士二次試験受験資格と実務経験年数
技術士二次試験を受験するには、修習技術者(一次試験合格者または免除者)となってから一定期間の実務経験が必要です。標準的な受験資格は、修習技術者となってから4年以上の実務経験を有することです。この実務経験には、技術士補として登録して指導技術士の指導を受けた経験も含まれます。
一次試験免除者の実務経験年数のカウント開始時期は、免除の種類によって異なります。JABEE認定プログラム修了者の場合、プログラムを修了した日(卒業日)から実務経験をカウントできます。つまり、大学や高専を卒業後すぐに就職して実務に就いた場合、その期間が実務経験として認められます。
資格保有による一部免除の場合、基礎科目と適性科目に合格して修習技術者となった日から実務経験をカウントします。したがって、資格を取得した時点ではなく、一次試験の基礎科目と適性科目に合格した時点が起点となる点に注意が必要です。
実務経験として認められる業務は、技術士法施行規則で定められており、「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」です。単なる定型的な作業や事務作業は実務経験として認められないため、業務内容を明確に説明できることが重要です。
二次試験の受験申請時には、実務経験の内容を詳細に記述した「業務経歴票」を提出する必要があります。この業務経歴票では、どのような技術的な業務に携わり、どのような成果を上げたかを具体的に説明することが求められます。一次試験免除から二次試験受験までの期間を有効に活用し、質の高い実務経験を積むことが技術士資格取得への近道となります。
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技術士二次試験とは?試験制度・受験資格・日程を詳しく解説
技術士一次試験免除制度の注意点
技術士一次試験の免除制度は便利な仕組みですが、利用する際にはいくつかの注意点があります。免除制度の特性を正しく理解し、自身のキャリアプランに合わせて活用することが重要です。
免除制度を利用する際の注意点として、免除申請の期限、免除後の選択肢、他の制度との関係などがあります。これらの点を理解せずに免除申請を行うと、後から不利益を被る可能性があるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
技術士免除対象でも二次試験の部門は自由選択
技術士一次試験の免除を受けた後、二次試験を受験する際の部門選択は自由です。これは多くの方が誤解しやすいポイントですが、一次試験で免除を受けた部門と、二次試験で受験する部門は必ずしも一致させる必要はありません。
例えば、機械工学系のJABEE認定プログラムを修了して一次試験の全部免除を受けた方でも、二次試験では電気電子部門や情報工学部門を選択することができます。JABEE認定プログラムによる免除は全21部門に対して有効であり、専門分野の制限はありません。
ただし、二次試験では選択した部門の専門知識が深く問われるため、免除を受けた専門分野と異なる部門を選択する場合は、新たにその部門の専門知識を習得する必要があります。また、実務経験の要件として、受験する部門に関連する業務経験が必要となるため、キャリアプランを慎重に検討することが重要です。
資格保有による一部免除の場合も、基礎科目と適性科目に合格すれば、その後の専門科目や二次試験では自由に部門を選択できます。例えば、情報処理技術者試験の合格により情報工学部門の専門科目免除を受けた方でも、基礎科目と適性科目に合格後は、機械部門や電気電子部門の専門科目を受験することができます。
部門選択の自由度は、技術士資格の魅力の一つです。自身のキャリアの方向性が変わった場合でも、一次試験の免除は有効に活用できるため、長期的な視点でキャリアプランを考えることができます。ただし、二次試験の難易度は部門によって異なるため、合格しやすい部門を選ぶのではなく、自身の専門性とキャリア目標に合った部門を選択することをおすすめします。
技術士一次試験免除と科目合格制度の違い
技術士一次試験には、免除制度とは別に科目合格制度があります。この二つの制度は混同されやすいですが、まったく異なる仕組みです。科目合格制度とは、一次試験の基礎科目、適性科目、専門科目のうち、いずれかの科目に合格した場合、その合格が一定期間有効となる制度です。
科目合格の有効期間は、合格した年を含めて3年間です。例えば、2023年度に基礎科目に合格した場合、2023年度、2024年度、2025年度の3年間は基礎科目の受験が免除されます。この期間内に残りの科目に合格すれば、一次試験全体の合格となります。
免除制度と科目合格制度の大きな違いは、有効期間と適用範囲です。免除制度は一度認められれば生涯有効であり、追加の手続きは不要です。一方、科目合格制度には3年間という期限があり、期限内に全科目に合格しなければ、再度不合格科目を受験する必要があります。
また、免除制度は受験申込時に証明書類を提出して申請する必要がありますが、科目合格は試験の結果として自動的に認定されます。科目合格を利用する場合、次回の受験申込時に前回の受験番号を記入することで、合格済み科目の受験が免除されます。
科目合格制度は、一度の試験で全科目に合格できなかった方のための救済措置ですが、免除制度は事前の教育や資格取得によって一次試験そのものをスキップする仕組みです。両方の制度を理解し、自身の状況に応じて適切に活用することが重要です。
免除制度を利用しない選択肢もある理由
技術士一次試験の免除資格があっても、あえて免除を利用せず、一次試験を受験するという選択肢もあります。一見すると非効率に思えますが、いくつかの合理的な理由からこの選択をする方もいます。
まず、一次試験を受験することで、技術者としての基礎知識を体系的に復習できるというメリットがあります。特に、大学卒業から時間が経っている方や、日常業務で使わない分野の知識を再確認したい方にとって、一次試験の準備は有効な学習機会となります。基礎科目では数学、物理、化学などの基礎的な理論を扱うため、これらを学び直すことで技術者としての基盤を強化できます。
二つ目の理由は、一次試験の受験経験が二次試験の準備に役立つという点です。一次試験は択一式ですが、二次試験は記述式であり、出題形式が大きく異なります。しかし、一次試験で問われる内容は二次試験の基礎となるため、一次試験の学習を通じて専門分野の知識を整理しておくことは、二次試験対策として有効です。
三つ目の理由は、一次試験合格という実績が自信につながるという心理的な効果です。免除制度を利用した場合、一次試験を経験せずに二次試験に進むことになりますが、一次試験に合格することで、技術士試験に対する自信とモチベーションを高めることができます。
ただし、免除を利用しない選択をする場合は、一次試験の受験料(約11,000円)や準備時間が必要となります。また、一次試験に不合格となった場合は、翌年まで二次試験に進めなくなるリスクもあります。これらの点を考慮した上で、自身のキャリアプランや学習スタイルに合わせて、免除を利用するかどうかを判断することが重要です。
技術士一次試験免除に関する大学・高専の確認方法
技術士一次試験の免除を受けるためには、自身の出身校や修了したプログラムが免除対象となっているかを確認する必要があります。特に、卒業後しばらく経ってから技術士を目指す場合、当時の制度や認定状況を正確に把握することが重要です。
免除対象の確認方法は複数ありますが、最も確実なのは公式な情報源を参照することです。ここでは、大学や高専が免除対象となっているかを確認する具体的な方法について解説します。
文部科学省の技術士指定教育課程リスト
文部科学省のウェブサイトには、技術士一次試験の免除対象となる指定教育課程の一覧が公開されています。このリストは、文部科学大臣が技術士法施行規則に基づいて指定した教育課程を網羅しており、免除対象の確認において最も信頼できる情報源です。
指定教育課程リストへのアクセス方法は、まず文部科学省のホームページにアクセスし、検索窓に「技術士 指定教育課程」または「技術士一次試験 免除」と入力します。検索結果から該当するページを開くと、PDFファイルまたはExcelファイル形式でリストがダウンロードできます。
リストには、大学名、学部名、学科名、指定期間、対応する技術士部門などが記載されています。指定期間は「平成〇年〇月〇日から平成△年△月△日まで」という形式で示されており、自身の在籍期間がこの指定期間内に含まれているかを確認する必要があります。
注意すべき点は、大学の改組や学科名の変更により、現在の学科名と指定当時の学科名が異なる場合があることです。このような場合、リストに記載されている旧学科名で自身の学科を探す必要があります。また、同じ大学内でも、学科やコースによって指定されている場合とされていない場合があるため、詳細な確認が重要です。
文部科学省のリストは定期的に更新されますが、最新情報を確認するためには、日本技術士会のウェブサイトも併せて参照することをおすすめします。日本技術士会では、免除対象に関する最新の通知や変更情報を掲載しており、文部科学省のリストを補完する情報源となります。
自分の出身校が技術士免除対象かの確認手順
自身の出身校が技術士一次試験の免除対象となっているかを確認する手順は、以下のステップで進めます。まず、自分の卒業年度、在籍していた学部・学科名、専攻やコース名を正確に把握します。大学の改組により現在の名称と異なる場合があるため、卒業証書や卒業証明書で正確な名称を確認しましょう。
次に、文部科学省の指定教育課程リストまたは日本技術士会のウェブサイトで、自身の出身校の情報を検索します。リストは大学名のアルファベット順または五十音順で整理されていることが多いため、該当する大学を探します。大学名が見つかったら、学部・学科名と指定期間を確認します。
自身の卒業年度が指定期間内に含まれているかを確認します。例えば、指定期間が「平成5年4月1日から平成12年3月31日まで」となっている場合、平成12年3月に卒業した方は免除対象となりますが、平成12年4月以降に入学した方は対象外となります。
リストで自身の学科が見つからない場合や、学科名が一致しない場合は、出身大学の学生課や教務課に問い合わせることをおすすめします。大学側では卒業生の免除資格について詳しい情報を持っており、個別の質問に対応してくれます。また、大学によっては、免除対象であることを証明する特別な証明書を発行してくれる場合もあります。
JABEE認定プログラムを修了した方の場合、JABEEのウェブサイトでも認定プログラムの一覧を確認できます。JABEEのサイトでは、認定プログラムの名称、認定期間、認定基準などが詳しく掲載されており、自身のプログラムが現在も認定されているか、認定当時の基準などを確認できます。
卒業年度による技術士免除適用の違い
技術士一次試験の免除制度は、卒業年度によって適用される制度が異なります。これは、技術士試験制度や技術者教育認定制度が時代とともに変化してきたためです。卒業年度による違いを理解することで、自身が免除対象となるかを正確に判断できます。
平成11年度(1999年度)以前の卒業者は、主に文部科学大臣指定の教育課程による免除対象となります。この時期は、JABEE制度がまだ導入されておらず、文部科学省が直接指定する教育課程のみが免除対象でした。指定されていた学科は主に工学系の伝統的な学科(機械工学科、電気工学科、土木工学科など)が中心でした。
平成12年度(2000年度)から平成17年度(2005年度)頃にかけては、過渡期となります。この期間は、JABEE制度が導入され始めた時期で、一部の大学ではJABEE認定プログラムが開始されていましたが、多くの大学ではまだ従来の指定教育課程が継続していました。この時期の卒業者は、自身の学科がJABEE認定を受けていたか、文部科学大臣指定の教育課程だったかを個別に確認する必要があります。
平成18年度(2006年度)以降の卒業者は、主にJABEE認定プログラムによる免除が主流となります。多くの大学でJABEE認定プログラムが整備され、従来の文部科学大臣指定教育課程は段階的に終了していきました。この時期以降の卒業者で免除を受ける場合、JABEE修了証明書の取得が必要となるケースがほとんどです。
また、高等専門学校(高専)の卒業者の場合、専攻科を修了してJABEE認定を受けている場合は一次試験の全部免除対象となります。一方、本科のみの卒業では免除対象とならないため、一次試験を受験する必要があります。高専専攻科は、本科5年間に加えてさらに2年間の教育を受けるもので、JABEE認定を受けている専攻科を修了することで免除資格を得られます。
卒業年度による免除適用の違いは複雑であり、個別のケースによって判断が必要な場合も多くあります。不明な点がある場合は、日本技術士会に直接問い合わせることで、確実な情報を得ることができます。日本技術士会では、免除資格に関する個別相談にも対応しており、書類の確認なども行ってくれます。
技術士一次試験免除に関連するよくある質問(FAQ)
技術士一次試験の免除制度について、多くの方が同じような疑問を持たれます。ここでは、免除制度に関連するよくある質問とその回答をまとめました。
Q. 技術士一次試験はJABEE修了で必ず免除されますか?
JABEE認定プログラムを修了すれば、原則として技術士一次試験の全科目が免除されます。ただし、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、修了したプログラムがJABEEの認定を受けている期間中に在籍していたことが必要です。認定期間外の在籍者は免除対象となりません。
また、正式にプログラムを修了し、JABEE修了証明書が発行されていることが条件となります。単にJABEE認定プログラムのある学科に在籍していただけでは不十分で、所定の要件を満たして修了していることが求められます。さらに、免除を受けるには受験申込時にJABEE修了証明書を提出する必要があります。
一部の旧基準で認定されたプログラムの修了者については、免除が認められない場合があります。不安な場合は、出身大学または日本技術士会に確認することをおすすめします。
Q. 技術士一次試験免除の申請を忘れた場合はどうなりますか?
技術士一次試験の免除申請は、受験申込期間内に行う必要があります。申請を忘れた場合、その年の試験では免除を受けることができず、通常通り一次試験の全科目または一部科目を受験する必要があります。
免除申請は、受験申込後に遡って行うことができません。つまり、申込時に免除申請を忘れた場合、その年は免除を受けられないということです。ただし、翌年以降の試験では改めて免除申請を行うことができます。免除資格は一度取得すれば生涯有効なため、次回の受験時に申請すれば問題ありません。
万が一、申請を忘れてしまった場合でも、一次試験を受験して合格すれば同じ結果となります。免除を利用できなかったからといって、技術士への道が閉ざされるわけではありません。次回以降の受験では必ず免除申請を行うよう、スケジュールをしっかり管理しましょう。
Q. 技術士の複数部門で一次試験免除は適用されますか?
技術士一次試験の免除は、全ての技術士部門に対して有効です。例えば、JABEE認定プログラムを修了して一次試験の全部免除を受けた場合、機械部門、電気電子部門、情報工学部門など、21部門のいずれにおいても一次試験が免除されます。
また、すでに一つの部門で技術士資格を取得している方が、別の部門の技術士を目指す場合も、一次試験は免除されます。技術士登録証を提示することで、どの部門においても一次試験免除を受けることができます。
ただし、資格保有による一部免除の場合は注意が必要です。例えば、情報処理技術者試験の合格により情報工学部門の専門科目免除を受けても、他の部門(機械部門や電気電子部門など)では専門科目の免除は適用されません。この場合、基礎科目と適性科目に合格していれば、他の部門の専門科目を受験することで一次試験全体に合格できます。
Q. 技術士一次試験免除者は二次試験をすぐ受験できますか?
技術士一次試験の免除を受けても、二次試験をすぐに受験できるわけではありません。二次試験を受験するには、修習技術者となってから一定期間の実務経験が必要です。標準的な受験資格は、修習技術者となってから4年以上の実務経験を有することです。
JABEE認定プログラムを修了した方の場合、修了日(卒業日)から実務経験のカウントが始まります。したがって、大学卒業後すぐに就職して実務に就いた場合、卒業から4年後に二次試験の受験資格を得ることになります。例えば、2020年3月に卒業した方は、2024年度の二次試験から受験可能となります。
技術士補として登録し、指導技術士の下で実務経験を積んだ場合も、基本的には4年間の実務経験が必要です。ただし、技術士補として質の高い実務経験を積むことで、二次試験の準備がより効果的に進められます。
実務経験の内容も重要です。単に4年間働いていればよいのではなく、「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」に従事していることが求められます。
Q. 技術士一次試験の一部免除で合格率は上がりますか?
技術士一次試験の一部免除(専門科目のみ免除)を受けた場合、基礎科目と適性科目のみを受験することになります。受験科目が減ることで、準備する範囲が狭くなり、学習効率は確実に向上します。
基礎科目と適性科目の合格率は、専門科目と比較して高い傾向にあります。基礎科目の合格率は例年50~60%程度、適性科目は70~80%程度で推移しており、専門科目の合格率(40~50%程度)よりも高くなっています。したがって、専門科目が免除されることで、全体としての合格可能性は高まると言えます。
ただし、基礎科目では数学、物理、化学などの基礎的な理論問題が出題されるため、大学での学習から時間が経っている方は、しっかりとした復習が必要です。適性科目は技術士法や倫理に関する問題が中心で、比較的短期間の準備で対応できますが、油断は禁物です。
一部免除を受ける場合でも、基礎科目と適性科目の両方に合格する必要があります。どちらか一方だけに合格した場合は科目合格となり、翌年以降にもう一方の科目を受験する必要があります。免除を活かすためには、両科目ともしっかりと準備することが重要です。
Q. 技術士一次試験免除制度は今後変更される可能性はありますか?
技術士一次試験の免除制度は、技術士法および技術士法施行規則に基づいて運用されています。制度の大きな変更には法改正または施行規則の改正が必要となるため、頻繁に変更されることはありません。
ただし、過去には平成14年度(2002年度)に技術士試験制度の大幅な改正が行われ、試験が一次試験と二次試験に分離されるとともに、JABEE認定プログラムによる免除制度が導入されました。このような大規模な制度改正は、技術者を取り巻く環境の変化や国際的な技術者資格制度の動向を踏まえて行われます。
今後、ワシントン協定の加盟国が増加したり、新たな技術者教育認定制度が導入されたりした場合、免除制度にも変更が加えられる可能性があります。また、一部免除の対象となる資格の範囲が拡大される可能性もあります。
制度変更の情報は、文部科学省や日本技術士会のウェブサイトで公表されます。特に、受験を検討している方は、定期的に最新情報を確認することをおすすめします。ただし、既得権は保護されることが一般的なため、過去に取得した免除資格が遡って無効になることはほとんどありません。
Q. 技術士一次試験免除者も技術士補登録が必要ですか?
技術士一次試験の免除を受けた方が技術士補として登録するかどうかは任意です。必ずしも登録する必要はありませんが、登録することで様々なメリットがあります。
技術士補に登録しなくても、一次試験免除により修習技術者としての資格は得られます。この資格があれば、4年間の実務経験を経て二次試験を受験できます。つまり、技術士補登録をしなくても技術士への道は開かれています。
しかし、技術士補として登録することで、「技術士補」という名称を公式に使用できるようになります。名刺や履歴書に記載することで、技術者としての専門性をアピールできます。また、日本技術士会の会員となり、研修会や講演会に参加して専門知識を深めたり、人脈を広げたりすることができます。
技術士補登録には登録免許税(約15,000円)と登録手数料(約6,500円)が必要です。また、3年ごとに登録更新手続き(約3,000円)を行う必要があります。これらの費用とメリットを比較して、登録するかどうかを判断しましょう。
特に、指導技術士の下で実務経験を積みたい方や、技術士としてのネットワークを早期に構築したい方には、技術士補登録をおすすめします。登録することで、技術士としてのキャリア形成がより明確になり、モチベーションの維持にもつながります。
技術士資格に関してもっと詳しい記事はこちら
技術士資格とは?種類・取得メリット・活用場面を解説
まとめ:技術士一次試験の免除制度を活用して効率的に資格取得を目指す
本記事では、技術士一次試験の免除制度について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 免除制度の種類と対象者:JABEE認定プログラム修了者や文部科学大臣指定教育課程修了者は一次試験の全部免除、中小企業診断士や情報処理技術者試験合格者は特定部門の専門科目のみ一部免除となります。また、既存の技術士資格保有者も一次試験が全部免除されます。
- 免除申請の重要性:免除を受けるには受験申込期間内に必ず申請を行う必要があり、JABEE修了証明書や資格の合格証明書などの書類を提出します。申請を忘れると免除を受けられないため、期限管理が重要です。
- 免除後のキャリアパス:一次試験免除後は修習技術者となり、4年間の実務経験を経て二次試験の受験資格を得ます。技術士補として登録することで、指導技術士の下で質の高い実務経験を積むことができ、技術士資格取得への道がより明確になります。
技術士一次試験の免除制度を理解できたら、次は自身の免除資格を確認し、申請準備を始めましょう。技術士一次試験の基本情報と技術士になるまでの流れを参考に、計画的に進めることをおすすめします。
本記事を通じて、技術士一次試験の免除制度の全体像と具体的な申請方法、免除後のキャリアパスを理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、技術士資格取得に向けて効率的かつ確実に一歩を踏み出しましょう。免除制度は技術士への最短ルートを提供してくれる重要な仕組みです。自身の学歴や資格を最大限に活かし、技術士としてのキャリアを実現してください。
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