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電験1種とは?第一種電気主任技術者が扱える範囲と最高峰資格の全容

電験1種について調べているあなたへ。「電験1種とはどのような資格なのか」「どこまで扱えるのか」という疑問は、資格の全容を正しく理解することで解決できます。本記事では、電験1種が管理できる設備の範囲、仕事内容の実態、取得するメリットについて、実際のデータを交えて解説します。この情報をもとに、電気技術者としての最高峰を目指すかどうか、具体的な判断ができるようになるでしょう。

この記事を読むとわかること

  • 電験1種の正式名称と最高峰資格としての位置づけ
  • すべての事業用電気工作物を扱える法的根拠と対象設備
  • 電験1種保有者の年収・待遇と将来性
  • 試験制度・合格率・取得方法の全体像

押さえておきたい3つのポイント

  1. 電圧制限なしの最高峰資格:電験1種は、すべての事業用電気工作物を扱える唯一の資格です。大型発電所や超高圧変電所(275kV以上)の保安監督業務を担当できる、電気主任技術者の最上位資格として位置づけられています。
  2. 極めて高い希少価値:電験1種保有者は全国に約9,000人のみ。総合合格率は5~8%という国内最難関レベルの試験であり、電力会社や大手企業で高い評価を受ける人材として扱われます。
  3. 安定した需要と高待遇:電力インフラを支える専門家として、平均年収500~800万円以上、資格手当は月額50,000~80,000円が相場です。経験と役職によっては年収1,000万円を超えるケースもあり、長期的なキャリア形成に有利な資格です。

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目次

電験1種とは?第一種電気主任技術者の基本概要

電験1種は、電気主任技術者資格の最上位に位置する国家資格です。正式名称を「第一種電気主任技術者」といい、電気事業法に基づいてすべての事業用電気工作物の保安監督業務を行えます。電気業界において「神」とも称される最高峰の資格として、高い専門性と希少価値を持っています。

電験1種の正式名称と最高峰資格としての位置づけ

電験1種の正式名称は「第一種電気主任技術者」です。電気主任技術者には第三種・第二種・第一種の3つの種別があり、電験1種はその頂点に立つ資格として位置づけられています。

電気主任技術者の種別による違いを見てみましょう。電験3種は電圧5万ボルト未満の設備を扱え、電験2種は電圧17万ボルト未満の設備まで対応できます。一方、電験1種にはこうした電圧制限が一切なく、日本国内のあらゆる電気設備の保安監督が可能です。

大型発電所、超高圧送電線、原子力発電所など、電力インフラの根幹を支える設備を管理できる唯一の資格が電験1種です。経済産業省が定める電気事業法において、電気工作物の保安を確保する最高責任者として法的に認められています。

電験1種が「神」と称される理由

電気業界で電験1種保有者が「神」と呼ばれる理由は、その圧倒的な希少性と専門性の高さにあります。全国で約9,000人しか保有者がおらず、電気技術者全体から見ても極めて限られた人材です。

試験の難易度は国内最高峰レベルで、総合合格率は5~8%程度。一次試験の合格率が25~31%、二次試験の合格率が10~20%という数字からも、突破の困難さが分かります。受験者の多くは電験2種や電験3種の合格者であり、すでに高い専門知識を持つ人材です。それでもこの合格率の低さは、電験1種の要求する知識レベルの高さを物語っています。

電力会社の技術部門や大規模プラントの現場では、電験1種保有者は別格の扱いを受けます。技術的な判断において最終的な権限を持ち、重大事故を防ぐ責任を担う立場です。この専門性と責任の重さが「神」という呼称につながっています。

電気事業法における電験1種の法的根拠

電験1種の法的根拠は、電気事業法第43条に定められています。同法では、事業用電気工作物を設置する者は、電気主任技術者を選任しなければならないと規定されています。

電気主任技術者の選任において、電圧や設備規模による制限がないのが電験1種です。電気事業法施行規則第52条では、電圧17万ボルト以上の設備については第一種または第二種電気主任技術者の選任が必要とされていますが、実務上は電験1種保有者が優先的に選任されるケースが多くなっています。

原子力発電所や超高圧変電所など、社会インフラとして極めて重要な施設では、電験1種保有者の配置が事実上必須です。電気事業法に基づく保安規程の作成や届出、定期検査の実施において、電験1種保有者は中心的な役割を果たします。

電験全体の制度について詳しく知りたい方は、電験とはの記事も参考にしてください。

電験1種で扱える電圧範囲と対象設備

電験1種の最大の特徴は、電圧制限がないことです。日本国内のすべての事業用電気工作物を扱える権限を持ち、他の種別では管理できない超大規模施設の保安監督も担当できます。ここでは、電験1種が具体的にどのような設備を管理できるのかを見ていきましょう。

すべての事業用電気工作物に対応可能

電験1種は、電気事業法で定められたすべての事業用電気工作物の保安監督が可能です。事業用電気工作物とは、発電所、変電所、送配電線など、電気事業のために用いる電気工作物を指します。

具体的な対象範囲は以下の通りです。電圧5万ボルト未満の設備(電験3種の範囲)、電圧17万ボルト未満の設備(電験2種の範囲)はもちろん、電圧50万ボルルを超える超高圧設備まで、あらゆる電圧の設備を扱えます。

出力規模についても制限はありません。小規模な自家用電気工作物から、出力100万キロワットを超える大型発電所まで、すべての規模の施設で電気主任技術者として選任される資格を持っています。この包括的な権限が、電験1種を最高峰資格たらしめる要因です。

電験1種が管理できる超大規模施設(大型発電所・超高圧変電所)

電験1種保有者が活躍する代表的な場所が、大型発電所と超高圧変電所です。これらの施設は電力供給の根幹を担い、一つのトラブルが広域停電につながる可能性があるため、最高レベルの専門知識が求められます。

大型火力発電所では、出力50万~100万キロワット級のタービン発電機を管理します。高温高圧の蒸気タービン、発電機、ボイラー設備の電気系統全体を監督し、24時間365日の安定稼働を支える責任を負います。

超高圧変電所は、50万ボルトや27万5千ボルトといった超高電圧を扱う施設です。広域の電力系統を制御し、需要と供給のバランスを保つ重要な役割を果たします。こうした設備の保安監督には、電験1種レベルの専門性が不可欠とされています。

超高圧設備(275kV以上)の保安監督

超高圧設備とは、通常275kV(27万5千ボルト)以上の電圧を扱う設備を指します。日本の電力系統では、500kV送電線が最高電圧として運用されており、これらの設備を扱えるのは電験1種保有者のみです。

超高圧送電線は、発電所から需要地へ大容量の電力を効率的に送るために使われます。一つの送電線で数十万キロワットから数百万キロワットの電力を送電できるため、その保安管理には高度な専門知識が必要です。絶縁協調、系統安定度、雷害対策など、多岐にわたる技術的課題に対応しなければなりません。

超高圧変電所では、異なる電圧レベル間の変換を行います。500kVから275kV、275kVから154kVへと段階的に降圧し、最終的には配電用の6.6kVまで下げていきます。この一連のプロセスを安全に管理できる資格が電験1種です。

原子力発電所・大規模プラントでの活躍

原子力発電所は、電気設備の中でも最高レベルの安全性が求められる施設です。電験1種保有者は、原子炉を動かすための補機設備、発電機、送電設備など、原子力発電所の電気系統全体を管理します。

原子力発電所では、万が一の事故に備えた非常用電源設備も重要です。ディーゼル発電機や蓄電池設備など、複数の安全系統を持ち、常に動作可能な状態に保つ必要があります。こうした高度な保安管理を担える資格として、電験1種が求められています。

大規模化学プラントや製鉄所などでも、電験1種保有者は重要な役割を果たします。自家用発電設備を持つ大規模工場では、数万キロワット規模の発電機を運用し、工場全体への安定した電力供給を確保します。プラント全体の電気設備を統括する立場として、電験1種の専門性が活かされています。

電験1種の仕事内容|最高レベルの電気設備保安監督

電験1種保有者の仕事は、単なる設備管理にとどまりません。電力インフラの安定運用を支える技術責任者として、設計から運用、保守まで幅広い業務を担当します。ここでは、実際の職場でどのような仕事を行うのかを具体的に見ていきましょう。

大手電力会社での発電所・変電所管理

大手電力会社において、電験1種保有者は発電所や変電所の技術責任者として配置されます。発電所長や変電所長を補佐し、電気設備全体の保安を統括する立場です。

火力発電所では、発電機や変圧器、配電盤などの主要設備の点検計画を立案します。年次点検や定期検査のスケジュールを組み、設備の健全性を維持するための判断を行います。トラブル発生時には、原因究明と復旧作業の指揮を執り、再発防止策の立案も担当します。

水力発電所や風力発電所でも、電験1種保有者の役割は重要です。水力発電所では、ダムゲートの制御システムや発電機の励磁装置など、水力特有の電気設備を管理します。再生可能エネルギーの拡大に伴い、太陽光発電や風力発電の大規模施設でも、電験1種保有者の需要が高まっています。

超高圧送配電設備の運用・監督業務

送配電部門では、広域の電力系統を監視し、需給バランスを保つ業務を担当します。電験1種保有者は、中央給電指令所や地域の変電所で、系統運用の技術的判断を行います。

超高圧送電線の運用では、電力潮流の管理が重要です。需要の変動に応じて、どの発電所からどれだけの電力を送るかを決定し、送電線の過負荷を防ぎます。落雷や台風などの自然災害時には、系統の切り替えや復旧作業の指揮を執り、停電エリアを最小限に抑える判断が求められます。

変電所の保安監督では、定期的な絶縁試験や保護継電器の動作試験を実施します。設備の経年劣化を見極め、更新時期の判断や予算計画の立案も行います。こうした技術的判断において、電験1種レベルの専門知識が不可欠とされています。

電気設備の設計・施工・保守の総括業務

電験1種保有者は、新設や増設プロジェクトにおいて、電気設備の設計審査や施工監理を担当します。設計図面のチェック、使用機器の選定、工事計画の承認など、プロジェクト全体の電気技術面を統括します。

大規模な設備更新では、数億円から数十億円の予算を扱います。既存設備を運転しながら新設備を構築する「活線工事」の計画では、安全性と経済性を両立させる高度な判断が必要です。電験1種保有者は、工事業者との技術協議や安全管理の監督を通じて、プロジェクトの成功に貢献します。

保守業務では、予防保全の計画立案が重要な役割です。設備の劣化診断技術を活用し、故障の予兆を早期に発見します。熱画像診断や部分放電測定など、最新の診断技術を駆使して、設備の健全性を評価し、最適な保全計画を策定します。

電験1種でできることの具体例

電験1種保有者が実際に行う具体的な業務例を見てみましょう。以下は、日常的に担当する代表的な仕事です。

技術的判断を要する業務

  • 新設発電所の電気設備設計の最終承認
  • 系統連系時の保護協調の検討と承認
  • 大規模工事における活線作業の可否判断
  • 重大事故時の原因究明と再発防止策の立案
  • 電気設備の更新計画と予算の策定

法令に基づく業務

  • 保安規程の作成と経済産業省への届出
  • 電気工作物の定期検査の実施と報告
  • 事故報告書の作成と提出
  • 電気主任技術者としての選任届の提出

これらの業務は、電気事業法に基づく責任を伴うものであり、電験1種保有者だからこそ担える重要な仕事です。技術的な専門性だけでなく、法令遵守と安全管理の意識も求められます。

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電験1種と電験2種・3種の違い

電気主任技術者には3つの種別がありますが、それぞれ扱える設備や試験難易度が大きく異なります。電験1種を目指すかどうか判断するには、各種別の違いを正しく理解することが重要です。ここでは、電験1種と他の種別との具体的な違いを見ていきましょう。

対応電圧と管理対象設備の違い(電圧制限なし)

電気主任技術者の最も重要な違いは、扱える電圧の範囲です。電験3種は電圧5万ボルト未満、電験2種は電圧17万ボルト未満の設備を扱えます。一方、電験1種にはこうした電圧制限が一切ありません。

資格種別扱える電圧主な管理対象設備
電験3種5万V未満一般ビル、工場、太陽光発電所(小規模)
電験2種17万V未満大規模工場、中規模発電所、154kV変電所
電験1種制限なし大型発電所、超高圧変電所、原子力発電所

この違いは、キャリアの選択肢にも直結します。電験3種保有者は、ビルメンテナンス会社や製造業の工場が主な職場です。電験2種になると、大規模工場や地域の変電所での仕事が可能になります。電験1種は、電力会社の基幹設備や国家的インフラの管理という、最上位の職場で活躍できます。

実務上の違いとして、電験1種保有者は電験2種や電験3種の業務もすべて担当できます。つまり、電験1種を取得すれば、あらゆる電気設備の保安監督業務に対応可能です。この包括性が、電験1種を最高峰資格たらしめる理由の一つとなっています。

試験難易度の違い(合格率の比較)

試験の難易度は、種別によって大きく異なります。合格率を比較すると、その差は明白です。

電験3種の合格率は8~10%程度で、国家資格の中では中~高難易度に分類されます。初学者でも1~2年の学習で合格を目指せるレベルです。電験2種になると、一次試験の合格率が20~30%、二次試験が10~15%程度となり、総合合格率は約5%前後まで下がります。

電験1種は、一次試験の合格率が25~31%、二次試験が10~20%で、総合合格率は5~8%程度です。数字だけ見ると電験2種と似ていますが、受験者層が大きく異なります。電験1種の受験者は、すでに電験2種や電験3種を保有している技術者がほとんどです。高い専門知識を持つ人材が挑戦しても、この合格率の低さという事実が、電験1種の難易度を物語っています。

二次試験は記述式で、計算問題だけでなく論述問題も出題されます。単なる知識の暗記ではなく、実務経験に基づいた深い理解と、それを的確に表現する能力が求められます。この点が、電験1種を国内最難関資格の一つとしている要因です。

必要な勉強時間の違い(2,000時間以上)

各種別で必要な勉強時間の目安は、以下の通りです。

電験3種: 800~1,000時間

  • 理系大卒者: 600~800時間
  • 文系・初学者: 1,000~1,500時間

電験2種: 1,200~1,500時間(電験3種取得者の場合)

  • 一次試験対策: 600~800時間
  • 二次試験対策: 600~800時間

電験1種: 2,000~3,000時間以上(電験2種取得者の場合)

  • 一次試験対策: 1,000~1,500時間
  • 二次試験対策: 1,000~1,500時間

電験1種の場合、電験2種からさらに2,000時間以上の学習が必要です。つまり、電験3種から通算すると、4,000~5,000時間という膨大な学習時間を要します。働きながら取得を目指す場合、5年~10年という長期的な計画が現実的です。

試験範囲も広く、発電・送電・配電・変電のすべての分野で、大学院レベルの専門知識が求められます。過去問だけでは対応できず、専門書や論文を読み込む必要があります。この学習量の多さが、電験1種取得を困難にする大きな要因となっています。

年収・待遇の違い

資格の種別によって、年収や待遇も大きく変わります。企業規模や経験年数にもよりますが、一般的な傾向は以下の通りです。

電験3種保有者

  • 平均年収: 400~600万円
  • 資格手当: 5,000~15,000円/月
  • 主な就職先: ビルメンテナンス、製造業の工場

電験2種保有者

  • 平均年収: 500~700万円
  • 資格手当: 20,000~40,000円/月
  • 主な就職先: 大規模工場、電気工事会社、地方電力会社

電験1種保有者

  • 平均年収: 500~800万円以上
  • 資格手当: 50,000~80,000円/月
  • 主な就職先: 大手電力会社、重電メーカー、原子力関連企業

電験1種保有者は、資格手当だけでも年間60万~96万円の収入増となります。管理職に就けば、年収1,000万円を超えるケースも珍しくありません。電力会社では、電験1種保有者は幹部候補として扱われることが多く、キャリアアップの面でも有利です。

転職市場でも、電験1種保有者は引く手あまたです。求人倍率は高く、50代や60代でも好条件での転職が可能です。定年後の再雇用でも高待遇が期待でき、生涯賃金で見れば、電験3種や電験2種との差はさらに広がります。

電験2種について詳しく知りたい方は、電験2種とはの記事をご覧ください。また、電験3種とはの記事でも、各種別の違いを詳しく解説しています。

電験1種試験の制度と試験科目

電験1種試験は、一次試験と二次試験の2段階で構成されています。科目合格制度や免除制度も活用でき、長期的な計画で合格を目指せる仕組みです。ここでは、試験制度の詳細と各科目の特徴を見ていきましょう。

一次試験の4科目(理論・電力・機械・法規)

一次試験は、電験2種・3種と同じ4科目で構成されています。すべてマークシート方式(多肢選択式)ですが、出題レベルは電験2種よりもはるかに高く、大学院レベルの専門知識が必要です。

理論: 電磁気学、電気回路、電子回路などの基礎理論を扱います。マクスウェル方程式を用いた電磁界解析、過渡現象の詳細計算、半導体デバイスの動作原理など、理論の深い理解が求められます。計算問題が中心で、数学的な処理能力も必要です。

電力: 発電、送電、配電、変電に関する専門知識を問われます。大容量送電線の電力円線図、系統安定度計算、短絡電流計算、電力系統の保護協調など、実務に直結する高度な内容が出題されます。電力システム全体を理解する必要があります。

機械: 発電機、電動機、変圧器、パワーエレクトロニクスなど、電気機器に関する問題です。同期機の詳細な特性計算、誘導機のベクトル制御、インバータの高調波解析など、機器の内部動作まで理解する必要があります。制御理論の知識も求められます。

法規: 電気事業法、電気設備技術基準、その他関連法令の知識を問われます。法令の条文を暗記するだけでなく、実務での適用方法や技術基準の根拠となる技術的背景まで理解する必要があります。計算問題も含まれ、単なる暗記科目ではありません。

二次試験の2科目(電力・管理、機械・制御)

二次試験は記述式で、実務能力を問う高度な試験です。計算問題に加えて論述問題も出題され、深い理解と実務経験が必要とされます。

電力・管理: 発電所や変電所の運用管理、系統運用、保護協調、事故解析などが出題範囲です。大規模な電力システムの事故を想定した問題が多く、原因究明や対策の立案能力が試されます。実務経験がないと解答が難しい問題も含まれており、単なる知識だけでは合格できません。

計算問題では、数ページにわたる複雑な計算を要求されることもあります。短絡容量計算、電圧降下計算、無効電力補償など、実際の設計業務で行う計算を、限られた時間内で正確に処理する必要があります。

機械・制御: 電気機器の特性計算、制御システムの設計、自動化技術などが出題されます。発電機の並行運転、電動機の速度制御、自動電圧調整器の動作など、実際の機器を扱う業務に直結した問題が中心です。

論述問題では、技術的な課題に対する解決策を論理的に記述する能力が求められます。「○○の問題点を3つ挙げ、それぞれの対策を述べよ」といった形式の問題では、実務経験に基づいた現実的な解答が評価されます。理論だけでなく、実践的な技術者としての視点が必要です。

記述式試験の高度な専門性

二次試験の記述式問題は、電験1種の最大の難関です。マークシート方式と異なり、自分の言葉で技術的内容を説明する能力が求められます。

採点基準は厳格で、計算過程の論理性、数値の正確性、論述の明確性がすべて評価されます。答えが合っていても、計算過程に誤りがあれば減点されます。逆に、最終的な数値が間違っていても、考え方が正しければ部分点がもらえることもあります。

論述問題では、単に知識を羅列するだけでは高得点を得られません。技術的課題を正しく理解し、問題点を明確に指摘し、実現可能な対策を論理的に述べる必要があります。文章表現力も重要で、読み手(採点者)に分かりやすく伝える技術が求められます。

過去問を解く際も、単に答えを覚えるのではなく、模範解答がなぜその構成になっているのかを理解することが重要です。論述の型を身につけ、どのような問題にも対応できる応用力を養う必要があります。

科目合格制度と一次試験免除制度

電験1種試験には、科目合格制度があります。一次試験の4科目のうち、一部の科目に合格すれば、その科目は3年間免除されます。つまり、最大で4年かけて4科目すべてに合格すれば、一次試験突破となります。

科目合格制度の活用例を見てみましょう。1年目に理論と法規に合格したら、2年目は電力と機械だけを受験できます。もし2年目に電力だけ合格したとしても、3年目に機械だけを受験すれば一次試験完了です。働きながら学習する人にとって、この制度は非常に有効です。

一次試験免除制度もあります。電験2種の一次試験合格者は、申請により電験1種の一次試験が免除されます。つまり、電験2種から段階的にステップアップする場合、電験1種では二次試験だけに集中できます。

また、認定校(電気工学系の大学・高専)を卒業し、一定の実務経験を積むと、一次試験が免除される場合があります。条件は厳しいですが、実務経験を活かして二次試験から挑戦できる道も用意されています。

電験1種の試験スケジュールについて詳しく知りたい方は、電験1種の試験日程の記事をご覧ください。

電験1種の合格率と難易度

電験1種は、国内最難関の国家資格の一つとして知られています。合格率の推移を見ると、その難しさが数字で明確に分かります。ここでは、具体的な合格率データと、難関とされる理由を詳しく見ていきましょう。

一次試験の合格率(25~31%)

電験1種の一次試験合格率は、年度によって変動しますが、おおむね25~31%の範囲で推移しています。この数字だけ見ると、電験2種(20~30%程度)と大差ないように思えるかもしれません。

しかし、受験者層を考慮すると、実際の難易度はかなり高いことが分かります。電験1種の受験者は、すでに電験2種や電験3種を保有している人が大半です。つまり、高い専門知識を持った技術者が挑戦しても、70~75%は不合格になるということです。

科目別の合格率を見ると、理論が最も低く15~20%程度、法規が最も高く30~35%程度となっています。理論は計算問題が多く、数学的な処理能力と深い理解が必要なため、合格率が低くなる傾向があります。

一次試験の合格基準は、各科目60点以上です。1科目でも60点未満があると不合格となり、科目合格制度を活用して次回以降に再挑戦することになります。満点を取る必要はありませんが、すべての科目でバランス良く得点する必要があります。

二次試験の合格率(10~20%)

二次試験の合格率は、10~20%程度とさらに低くなります。一次試験を突破した優秀な受験者が挑んでも、80~90%は不合格という厳しい現実です。

二次試験が難しい理由は、記述式という形式にあります。計算問題では、複雑な計算を正確に処理し、その過程を分かりやすく記述する必要があります。時間配分も重要で、1問に時間をかけすぎると、他の問題に手が回らなくなります。

論述問題の採点は、特に厳格です。技術的に正しい内容であっても、論理的な構成がなければ高得点は得られません。実務経験に基づいた現実的な解答が求められ、机上の空論では評価されません。

近年の傾向として、二次試験の難易度は上昇傾向にあります。新しい技術や規制の変更に対応した問題が増え、常に最新の知識をアップデートする必要があります。単に過去問を繰り返すだけでは、合格が難しくなっています。

電験1種の総合合格率(5~8%)

一次試験と二次試験を合わせた総合合格率は、5~8%程度です。つまり、受験者100人のうち、最終的に合格できるのは5~8人程度という計算になります。

この数字を具体的に見てみましょう。2022年度の受験者数は約1,200人、合格者数は約80人で、合格率は約6.7%でした。2021年度は受験者数約1,150人、合格者数約70人で、合格率約6.1%。年度による大きな変動はなく、安定して低い合格率が続いています。

総合合格率が低い理由は、一次試験と二次試験の両方をクリアする必要があることに加え、受験者層のレベルが高いことにあります。電験1種に挑戦する人は、すでに電験2種以上の資格を持ち、実務経験も豊富な技術者です。それでもこの合格率の低さは、電験1種が要求する知識レベルの高さを示しています。

初回受験での合格は極めて困難で、複数回の受験を経て合格するケースが一般的です。科目合格制度を活用し、3~5年かけて段階的に合格を目指す人も多くいます。長期的な計画と、継続的な学習が合格への鍵となります。

電験1種が国内最難関資格と言われる理由

電験1種が国内最難関資格と言われる理由は、合格率の低さだけではありません。以下の要因が複合的に作用しています。

試験範囲の広さ: 発電・送電・配電・変電のすべての分野で、大学院レベルの専門知識が必要です。範囲が広く、すべてを網羅的に学習するには膨大な時間がかかります。

実務経験の必要性: 二次試験の論述問題は、実務経験がなければ解答が困難です。単に教科書を読むだけでなく、実際の設備を扱った経験が求められます。若手技術者にとっては、この点が大きなハードルとなります。

継続的な学習の必要性: 電気技術は常に進化しており、新しい技術や規制の変更に対応する必要があります。一度学んだ知識も、数年後には古くなることがあります。試験合格後も、継続的な学習が求められる点で、他の資格とは異なります。

競争相手のレベル: 電験1種の受験者は、電験2種保有者や大手電力会社の技術者など、高いレベルの人材です。彼らと競争して合格するには、並大抵の努力では不十分です。

こうした要因が重なり、電験1種は国内最難関資格の一つとして認識されています。弁護士や公認会計士、技術士といった他の最難関資格と比較しても、決して見劣りしない難易度です。

電験1種の難易度についてさらに詳しく知りたい方は、電験1種の難易度の記事で、合格者の特徴や具体的な対策方法を解説しています。

電験を一発合格するための通信講座

電験1種を取得するメリット

電験1種の取得には膨大な時間と努力が必要ですが、それに見合うだけのメリットがあります。資格の希少性、専門性の高さ、待遇の良さなど、多面的な価値を持つ資格です。ここでは、電験1種を取得することで得られる具体的なメリットを見ていきましょう。

電気系資格の最高峰としてのブランド価値

電験1種は、電気系資格の頂点に位置する国家資格です。この資格を持っているだけで、電気技術者として最高レベルの知識と能力を証明できます。

電力業界では、電験1種保有者は別格の扱いを受けます。技術的な議論において、電験1種保有者の意見は重視され、最終的な判断を任されることが多くあります。社内での発言力が増し、技術面でのリーダーシップを発揮できる立場になります。

名刺に「第一種電気主任技術者」と記載できることも、大きなアドバンテージです。初対面の取引先や協力会社に対して、高い専門性を一瞬で伝えられます。信頼関係の構築がスムーズになり、ビジネスの場面でも有利に働きます。

転職市場でも、電験1種のブランド価値は絶大です。求人情報に「電験1種保有者優遇」「電験1種必須」といった条件が記載されることも多く、一般の求職者とは異なる特別な扱いを受けられます。

すべての電気設備を扱える専門性

電験1種の最大のメリットは、電圧制限なくすべての電気設備を扱える点です。この包括的な権限により、キャリアの選択肢が大きく広がります。

小規模なビル設備から、大型発電所まで、あらゆる職場で電気主任技術者として選任されます。転職や異動の際も、業種や設備規模に制約を受けません。電力会社、重電メーカー、プラントエンジニアリング会社など、様々な業界で活躍できます。

独立開業の道も開けます。電気保安法人を設立し、複数の事業所の電気主任技術者を兼任する形で、高収入を得ている電験1種保有者もいます。定年後のセカンドキャリアとしても、電験1種の専門性は大きな武器となります。

技術的な対応範囲の広さも重要です。電験3種では対応できない高電圧の問題や、電験2種では経験が浅い超大規模システムの課題にも、電験1種保有者なら対応できます。この万能性が、様々な場面で頼られる存在となる理由です。

電力会社や大手企業での高待遇

電験1種保有者は、電力会社や大手企業で高い待遇を受けます。給与面だけでなく、キャリアパスの面でも優遇されるケースが多く見られます。

大手電力会社では、電験1種保有者は幹部候補として扱われます。発電所長や変電所長といった管理職への昇進が早く、将来的には本社の技術部門の責任者になる可能性もあります。通常の昇進ルートとは別に、技術者としての専門職コースも用意されており、管理業務を担当せずに技術一筋で高収入を得る道もあります。

重電メーカーでは、電験1種保有者は設計部門や技術営業部門で重宝されます。顧客(電力会社)との技術協議で専門的な内容を理解でき、適切な提案ができる人材として評価されます。海外プロジェクトへの参画機会も多く、国際的なキャリアを築くことも可能です。

プラントエンジニアリング会社では、大規模プロジェクトの電気設計責任者として活躍できます。数十億円規模のプロジェクトを統括し、若手技術者を指導する立場になります。プロジェクトマネージャーとして、技術面だけでなくマネジメント能力も磨けます。

希少価値の高い人材としての評価

電験1種保有者は全国に約9,000人しかおらず、極めて希少な人材です。この希少性が、様々な場面で有利に働きます。

求人市場では、電験1種保有者は常に売り手市場です。景気の良し悪しに関わらず、安定して求人があり、条件交渉も有利に進められます。50代や60代でも、電験1種を持っていれば転職先は容易に見つかります。

社内での評価も高く、リストラの対象になりにくい傾向があります。電験1種保有者は代替が効かない人材として認識されており、会社としても手放したくない存在です。この安定性は、長期的なキャリア形成において大きな安心材料となります。

業界内でのネットワーク構築も容易です。電験1種保有者同士のつながりは強く、勉強会や技術交流会を通じて人脈を広げられます。この人脈が、キャリアアップや問題解決の場面で役立つことも多くあります。

電験1種の需要と将来性

電験1種の需要は、電力インフラの維持に不可欠であるため、長期的に安定しています。むしろ、高齢化による人材不足が懸念されており、将来的には需要がさらに高まる可能性があります。ここでは、電験1種の需要動向と将来性について見ていきましょう。

電験1種有資格者は全国に約9,000人のみ

電験1種の免状交付者数は、全国で約9,000人程度です。この数は、電験2種の約3万人、電験3種の約10万人と比較すると、圧倒的に少ない人数です。

この9,000人のうち、実際に電気主任技術者として働いているのは一部です。すでに引退した人、別の職業に就いている人、免状は持っているが実務経験がない人なども含まれています。現役で活躍している電験1種保有者は、おそらく5,000~6,000人程度と推定されます。

地域別に見ると、東京や大阪などの大都市圏に集中しており、地方では電験1種保有者の確保が困難な状況です。特に、原子力発電所や大型火力発電所がある地域では、慢性的な人材不足に悩まされています。

この希少性が、電験1種の価値を高めています。需要に対して供給が明らかに不足しており、今後もこの傾向は続くと予想されます。若手技術者にとって、電験1種の取得は確実にキャリアアップにつながる投資といえるでしょう。

電力会社での安定した需要

電力会社における電験1種保有者の需要は、非常に安定しています。電力インフラは社会の基盤であり、その保安監督を担える人材は常に必要とされるからです。

大手電力会社では、各発電所や主要変電所に電験1種保有者を配置することが標準となっています。新規採用においても、電験1種保有者は優遇され、初任給から高い水準が設定されることが多くあります。中途採用でも、電験1種を持っていれば年齢に関わらず歓迎されます。

再生可能エネルギーの拡大も、電験1種の需要を後押ししています。大規模太陽光発電所や洋上風力発電など、新しいタイプの発電所が次々と建設されており、その保安監督を担える人材が求められています。こうした新規プロジェクトでは、従来の火力発電や水力発電とは異なる技術的課題があり、高度な専門知識を持つ電験1種保有者の役割が重要になっています。

電力システムの高度化・複雑化も、電験1種保有者の必要性を高めています。スマートグリッド、蓄電池システム、直流送電など、新しい技術が導入される中で、これらを安全に運用できる技術者が不可欠です。電験1種レベルの専門知識がなければ、対応が困難な課題が増えています。

高齢化による将来的な人材減少

電験1種保有者の高齢化は、業界全体の課題となっています。現在活躍している電験1種保有者の多くは、50代~60代です。今後10年間で、大量の退職者が出ることが予想されています。

新規の電験1種合格者は、年間70~100人程度です。一方、退職や他業種への転職などで減少する人数を考えると、全体としては減少傾向にあります。この需給ギャップが、今後さらに拡大する可能性が高いです。

若手技術者の電験1種取得率が低いことも問題です。試験の難しさと、学習に必要な時間の長さから、若いうちに電験1種まで到達できる人は限られています。多くは、電験3種や電験2種で止まってしまい、電験1種への挑戦を諦めるか、先延ばしにしています。

この人材不足は、電験1種保有者にとってはチャンスです。希少価値がさらに高まり、待遇の改善や転職市場での優位性が増すことが期待できます。定年延長や再雇用の需要も高まっており、長く活躍できる環境が整いつつあります。

電験1種が求められる職場と業界

電験1種保有者が活躍できる職場は、多岐にわたります。以下は、代表的な就職先と求められる役割です。

電力会社

  • 発電所(火力・水力・原子力・再生可能エネルギー)
  • 超高圧変電所・基幹変電所
  • 系統運用部門・中央給電指令所
  • 技術開発部門・設備計画部門

重電メーカー

  • 発電機・変圧器の設計開発
  • 電力系統機器の技術営業
  • プロジェクトエンジニアリング
  • 海外プロジェクトの技術支援

プラントエンジニアリング会社

  • 大規模工場の電気設備設計
  • 発電所の建設プロジェクト管理
  • 設備更新工事の技術監督
  • 海外プラント建設の技術者派遣

製造業(大規模工場)

  • 自家用発電設備の運用管理
  • 工場全体の電気設備保守
  • 省エネルギー対策の企画立案
  • 設備投資計画の技術評価

コンサルティング会社

  • 電力システムの技術コンサルティング
  • 再生可能エネルギー事業の技術評価
  • 電気設備の診断・評価業務
  • 規制対応の技術支援

これらの職場では、電験1種保有者は技術的な中核を担う人材として期待されています。単なる保安監督だけでなく、技術開発、プロジェクト管理、人材育成など、幅広い役割を担うことになります。

電験1種取得者の年収と待遇

電験1種を取得すると、年収や待遇は大きく向上します。資格手当だけでも年間数十万円の収入増となり、キャリア全体で見れば数千万円の差が生まれることもあります。ここでは、具体的な年収データと待遇の実態を見ていきましょう。

電験1種の平均年収(500~800万円以上)

電験1種保有者の平均年収は、500~800万円以上が一般的です。ただし、これは勤務先の業種や企業規模、年齢、役職によって大きく変動します。

勤務先別の年収例

  • 大手電力会社: 600~900万円(管理職では1,000万円超)
  • 重電メーカー: 550~850万円
  • プラントエンジニアリング会社: 500~750万円
  • 大規模工場(製造業): 500~700万円
  • 電気保安法人(独立系): 600~1,000万円以上

年齢別に見ると、30代で550~700万円、40代で650~850万円、50代で750~950万円が目安です。管理職に就けば、これにさらに上乗せされます。

転職市場でも、電験1種保有者は高待遇が期待できます。ヘッドハンティングによる転職では、前職より100~200万円の年収アップを実現するケースも珍しくありません。特に、原子力発電関連や海外プロジェクトでは、高額な報酬が提示されることがあります。

資格手当の相場(50,000~80,000円/月)

電験1種の資格手当は、月額50,000~80,000円が相場です。年間では60万~96万円となり、これだけでも大きな収入増となります。

企業別の資格手当の例を見てみましょう。大手電力会社では、月額60,000~80,000円が標準的です。重電メーカーでは月額50,000~70,000円、プラントエンジニアリング会社では月額40,000~60,000円程度となっています。

資格手当に加えて、電気主任技術者として選任された場合には、選任手当が別途支給されることもあります。選任手当は月額20,000~50,000円程度で、資格手当と合わせると月額70,000~130,000円の追加収入となります。

企業によっては、電験1種取得時に一時金を支給するケースもあります。金額は10万~50万円程度で、取得の労をねぎらう意味合いがあります。また、試験の受験料や参考書代を会社が負担する制度も一般的です。

電力会社や大手企業での高収入

大手電力会社や重電メーカーでは、電験1種保有者は特別な待遇を受けます。年収だけでなく、福利厚生や昇進機会の面でも優遇されています。

大手電力会社の場合、電験1種保有者は入社時から技術職の上位等級に位置づけられます。通常の大卒入社よりも高い初任給が設定され、昇給カーブも急です。30代前半で年収700万円、40代前半で年収850万円に到達することも珍しくありません。

管理職への昇進も早く、発電所の課長や部長といったポストに就くチャンスが多くあります。発電所長クラスになれば、年収1,200万円以上も可能です。技術系の専門職コースを選べば、管理業務を担当せずに高収入を得ることもできます。

重電メーカーでは、電験1種保有者は技術営業や設計部門のエース級として扱われます。大型プロジェクトのプロジェクトマネージャーに抜擢されることも多く、プロジェクト成功時にはボーナスが大幅に増額されます。海外赴任の機会も多く、海外手当を含めると年収1,000万円を超えるケースもあります。

経験と役職による年収1,000万円超えの可能性

電験1種保有者は、経験を積み、役職に就くことで年収1,000万円超えも十分に可能です。特に、以下のようなキャリアパスでは、高収入が期待できます。

電力会社の管理職コース
発電所長や変電所長に就任すれば、年収1,200万~1,500万円が一般的です。本社の技術部門の部長クラスでは、年収1,500万~2,000万円に達することもあります。電力会社は安定した経営基盤を持ち、長期的なキャリア形成が可能です。

独立開業・電気保安法人
複数の事業所と保安管理契約を結び、電気主任技術者を兼任する形で独立すれば、年収1,000万円以上を稼ぐことも可能です。10~15箇所の事業所を担当すれば、契約料だけで年間1,200万~1,800万円の収入が得られます。定年後のセカンドキャリアとして、この道を選ぶ人も増えています。

海外プロジェクト
発展途上国の電力インフラ整備プロジェクトでは、日本の電験1種保有者が技術顧問として招かれることがあります。報酬は年間1,500万~2,500万円程度で、数年間の契約で数千万円を稼ぐことも可能です。語学力と国際経験があれば、こうした機会を得やすくなります。

コンサルタント・技術顧問
大手企業や自治体の技術顧問として契約すれば、高額な報酬が得られます。月額50万~100万円の顧問料で、年間600万~1,200万円の収入となります。複数社と契約すれば、さらに高収入が可能です。定年後も長く活躍できる道として注目されています。

電験1種の取得方法

電験1種を取得する方法は、主に2つあります。試験に合格する方法と、認定により取得する方法です。それぞれに特徴があり、自分の状況に応じて選択できます。ここでは、各取得方法の詳細と、効果的な学習計画について見ていきましょう。

試験による取得(一次試験・二次試験)

最も一般的な取得方法は、国家試験に合格することです。電験1種試験は、一次試験と二次試験の2段階で構成されています。

一次試験は毎年8月下旬~9月上旬に実施され、理論・電力・機械・法規の4科目をマークシート方式で解答します。試験時間は各科目90分で、合格基準は各科目60点以上です。科目合格制度があり、合格した科目は3年間有効です。

二次試験は毎年11月中旬に実施され、電力・管理と機械・制御の2科目を記述式で解答します。試験時間は各科目2時間30分で、計算問題と論述問題が出題されます。合格基準は、各科目で一定の得点を満たすことですが、明確な合格点は公表されていません。

受験資格に制限はなく、学歴や実務経験に関わらず誰でも受験できます。高校生や大学生でも受験可能で、実際に20代前半で合格する人もいます。ただし、実務経験がないと二次試験の論述問題が難しく、合格率は低くなります。

認定による取得(実務経験ルート)

認定による取得は、学歴と実務経験を満たした場合に申請できる方法です。試験を受けずに免状を取得できるため、実務経験が豊富な技術者には有利な方法です。

認定取得には、経済産業大臣の認定が必要です。認定基準は厳格で、電気工学系の学歴と、電気設備の工事・維持・運用に関する実務経験が求められます。認定校(大学・高専)を卒業していることが前提となります。

認定のメリットは、試験勉強の負担を軽減できる点です。仕事が忙しく、まとまった学習時間が取れない人には適した方法といえます。ただし、実務経験年数が長く必要なため、若いうちに取得するのは困難です。

認定取得を目指す場合、早い段階から計画的にキャリアを積む必要があります。どのような実務経験が認定に有効かを理解し、適切な職場や業務を選ぶことが重要です。会社の人事部門や電気主任技術者の先輩に相談し、認定取得に向けたキャリアプランを立てましょう。

認定取得に必要な学歴と実務経験年数

認定取得の要件は、学歴によって異なります。以下は、主なケースの実務経験年数の目安です。

大学の電気工学系学科卒業

  • 電験1種の認定: 実務経験5年以上
  • 電験2種の免状保有者: 実務経験3年以上

短期大学・高等専門学校の電気工学系学科卒業

  • 電験1種の認定: 実務経験7年以上
  • 電験2種の免状保有者: 実務経験5年以上

電験2種の免状保有者(認定校卒業以外)

  • 実務経験5年以上(電圧17万ボルト以上の設備での経験を含む)

実務経験として認められるのは、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する業務です。具体的には、発電所や変電所での運転・保守業務、電気設備の設計・施工業務、電気主任技術者としての保安監督業務などが該当します。

重要なのは、電圧の高い設備での実務経験です。電験1種の認定には、高電圧設備(通常は17万ボルト以上)での実務経験が一定期間必要とされます。この要件を満たすために、大手電力会社や重電メーカーでのキャリアを積む人が多くいます。

認定申請には、実務経験を証明する書類の提出が必要です。勤務先の証明書や業務内容の詳細な記録を準備し、経済産業省に申請します。審査には数ヶ月かかることもあり、計画的に進める必要があります。

電験1種取得までの長期的な学習計画

電験1種の取得には、長期的な計画が必要です。多くの合格者は、電験3種から段階的にステップアップしています。

ステップ1: 電験3種の取得(学習期間1~2年)
まずは電験3種を目指します。理論・電力・機械・法規の基礎をしっかり固め、電気工学の土台を作ります。働きながらであれば、1日2~3時間の学習を1~2年間継続すれば、合格が見えてきます。

ステップ2: 電験2種の取得(学習期間2~3年)
電験3種取得後、実務経験を積みながら電験2種を目指します。一次試験は電験3種の延長線上にあるため、比較的取り組みやすいでしょう。二次試験の記述式対策が大きな壁となりますが、実務経験があれば有利です。

ステップ3: 電験1種の取得(学習期間3~5年)
電験2種取得後、数年間の実務経験を積んでから電験1種に挑戦するのが一般的です。電験2種の一次試験合格により、電験1種の一次試験が免除される場合があるため、確認してから受験計画を立てましょう。

時間配分の目安

  • 平日: 1日2~3時間の学習
  • 休日: 1日5~6時間の学習
  • 試験前3ヶ月: 学習時間を1.5倍に増やす
  • 二次試験前1ヶ月: 過去問演習を集中的に実施

学習計画を立てる際は、無理のないペースを心がけましょう。仕事や家庭との両立を考え、継続可能な計画を立てることが成功の鍵です。挫折しそうになったら、合格後のメリットを思い出し、モチベーションを維持しましょう。

電験1種に関連するよくある質問(FAQ)

電験1種について、多くの方が共通して抱く疑問があります。ここでは、受験を検討している方や、学習を始めたばかりの方からよく寄せられる質問に答えていきます。

Q. 電験1種の受験資格はありますか?

いいえ、電験1種の受験に特別な資格は必要ありません。学歴、年齢、実務経験に関わらず、誰でも受験できます。

高校生や大学生でも受験可能で、実際に20代前半で合格する人もいます。ただし、二次試験の論述問題は実務経験がないと解答が難しいため、若年での合格は困難です。多くの合格者は、30代~40代で実務経験を積んだ後に取得しています。

電験2種や電験3種を先に取得する必要もありません。いきなり電験1種に挑戦することも可能です。ただし、電験3種→電験2種→電験1種と段階的にステップアップする方が、学習効率は良いでしょう。各段階で基礎を固めながら進むことで、確実な知識が身につきます。

Q. 電験1種は独学で合格できますか?

電験1種の独学合格は、極めて困難ですが不可能ではありません。試験範囲が広く、専門性が高いため、計画的な学習と強い意志が必要です。

独学で合格するには、以下の条件が重要です。第一に、電験2種レベルの知識をすでに持っていること。第二に、実務経験があり、実際の設備に触れたことがあること。第三に、1日3時間以上の学習時間を3年以上継続できること。第四に、二次試験の記述式対策を独力で進められる能力があること。

これらの条件を満たせば、独学でも合格の可能性はあります。ただし、通信講座やセミナーを活用した方が、効率的に学習できるでしょう。特に二次試験の論述対策では、添削指導を受けることが有効です。独学の場合も、勉強仲間を見つけて情報交換することをおすすめします。

参考書選びも重要です。電験1種は専門書が少ないため、大学の教科書や技術論文も活用する必要があります。過去問は最低でも10年分は解き、出題傾向を把握しましょう。

Q. 電験1種の最年少合格者は何歳ですか?

電験1種の最年少合格記録は公式には発表されていませんが、20代前半での合格例が報告されています。ただし、これは極めて稀なケースです。

若年での合格が難しい理由は、二次試験の論述問題にあります。実務経験に基づいた解答が求められるため、現場での経験がないと適切な解答ができません。理論的な知識だけでは、実践的な問題に対処できないのです。

一般的な合格者の年齢層は、30代後半~50代前半です。電験2種を取得してから数年間の実務経験を積み、その後電験1種に挑戦するパターンが多く見られます。この年齢層は、知識と経験のバランスが取れており、二次試験の論述問題にも適切に対応できます。

若いうちから電験1種を目指すなら、電験3種や電験2種を先に取得し、実務経験を積みながら段階的にステップアップする戦略が現実的です。焦らず、着実に力をつけていくことが大切です。

Q. 電験1種を取得すれば電気工事士も取得しやすくなりますか?

電験1種と電気工事士は、試験内容や求められる知識が異なるため、直接的な関係はありません。ただし、電気工学の基礎知識という点では共通する部分もあります。

電験1種は、電気設備の保安監督を行う資格です。理論的な知識や計算能力、電力系統全体の理解が求められます。一方、電気工事士は、電気工事の施工を行う資格です。配線図の読み方、工具の使い方、実際の施工技術が重要です。

電験1種保有者が電気工事士試験を受ける場合、筆記試験では有利に働くでしょう。電気理論や関連法令の知識があるため、学習時間を短縮できます。ただし、技能試験(実技試験)は別です。実際の配線作業や器具の取り付けは、練習が必要です。

資格の使い分けとして、電験1種は設備の管理・監督に、電気工事士は工事の施工に使います。両方を取得すれば、設計から施工、保守まで一貫して対応できる技術者になれます。キャリアの幅が広がり、独立開業などの選択肢も増えるでしょう。

Q. 電験1種の科目合格は何年間有効ですか?

電験1種の科目合格は、3年間有効です。つまり、合格した年を含めて3回の試験で、残りの科目に合格すれば一次試験突破となります。

具体例で説明しましょう。2024年に理論と法規に合格したとします。この場合、2024年・2025年・2026年の3年間、理論と法規は免除されます。2026年までに電力と機械に合格すれば、一次試験完了です。

科目合格制度を有効に活用するには、計画的な受験が重要です。一度に4科目すべてを受験するよりも、2科目ずつに絞って集中的に学習する方が、合格率は高くなります。特に、働きながら学習する場合には、この戦略が効果的です。

科目の組み合わせも考慮しましょう。理論と法規は比較的独立しているため、同時に学習しやすい組み合わせです。電力と機械は関連性が高いため、セットで学習すると理解が深まります。自分の得意分野や学習時間を考慮して、最適な戦略を立てましょう。

Q. 電験1種と電験2種の需要の違いは何ですか?

電験1種と電験2種では、需要の質と量が異なります。電験2種の方が求人数は多いですが、電験1種の方が専門性が高く、待遇も良い傾向があります。

電験2種は、大規模工場や地域の変電所など、幅広い職場で需要があります。求人数が多く、転職しやすい資格です。年収は500~700万円程度が一般的で、安定したキャリアを築けます。

電験1種は、大手電力会社や超大規模施設に特化した需要です。求人数は電験2種より少ないですが、一つ一つの求人の待遇が良く、年収600~900万円以上が期待できます。希少価値が高く、長期的な雇用の安定性も優れています。

地域による違いも重要です。大都市圏では電験1種の需要が高く、地方では電験2種の需要が中心です。自分がどこで働きたいかを考慮して、目指す資格を選ぶのも一つの方法です。

ただし、将来的なキャリアを考えれば、電験1種まで取得する価値は十分にあります。たとえ現時点で電験1種が必要ない職場でも、持っていれば将来の選択肢が広がります。転職や昇進の際に、大きなアドバンテージとなるでしょう。

Q. 電験1種は本当に必要な資格ですか?

電験1種が必要かどうかは、目指すキャリアによって異なります。以下のような目標がある場合、電験1種の取得は大きな意味を持ちます。

電験1種が必要な人

  • 大手電力会社で幹部を目指す人
  • 大型発電所や超高圧変電所で働きたい人
  • 電気技術者として最高峰を極めたい人
  • 高収入と安定したキャリアを求める人
  • 定年後も技術者として活躍したい人

一方、中小規模の施設での仕事が中心で、管理職を目指さないのであれば、電験2種で十分なケースもあります。自分のキャリアビジョンを明確にし、それに応じた資格取得を目指しましょう。

ただし、時間と労力をかけても取得する価値は十分にあります。電気業界の最高峰資格として、一生使える専門性とステータスを得られます。取得の過程で身につく知識も、実務に直結する貴重なものです。

迷っているなら、まずは電験3種や電験2種から始めて、段階的にステップアップする道を検討してください。実務経験を積みながら、自分に電験1種が必要かどうかを見極めることができます。

まとめ:電験1種は電気業界の最高峰を目指す価値ある資格

電験1種について、資格の全容から取得方法まで解説してきました。重要なポイントを振り返りましょう。

本記事の要点:

  • 電験1種は電圧制限なくすべての事業用電気工作物を扱える最高峰資格で、大型発電所や超高圧変電所の保安監督を担当できます
  • 総合合格率5~8%という国内最難関レベルの試験で、保有者は全国に約9,000人のみという希少な資格です
  • 平均年収500~800万円以上、資格手当月額50,000~80,000円が相場で、経験と役職により年収1,000万円超えも可能です
  • 試験による取得には2,000時間以上の学習が必要で、一次試験4科目と二次試験2科目(記述式)の突破が求められます
  • 電力インフラの維持に不可欠な資格として安定した需要があり、高齢化による人材不足で将来性も高い資格です

電験1種は、取得に膨大な時間と努力を要しますが、それに見合うだけの価値を持つ資格です。電気業界の最高峰として認められ、キャリアの選択肢を大きく広げます。待遇面でも優れており、長期的なキャリア形成において強力な武器となります。

電気技術者として最高レベルを目指すなら、電験1種の取得は間違いなく価値ある挑戦です。まずは電験3種や電験2種から段階的にステップアップし、実務経験を積みながら着実に力をつけていきましょう。

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