MENU

公認会計士試験とは?試験制度・受験資格・科目を詳しく解説

公認会計士試験について知りたいあなたへ。「どんな試験制度なのか」「受験資格は必要なのか」「どんな科目があるのか」という疑問は、試験制度の全体像を理解することで解決できます。

本記事では、公認会計士試験の2段階試験制度、誰でも受験できる資格要件、短答式・論文式の科目構成について、公認会計士・監査審査会の公式データを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、公認会計士試験合格に向けて、具体的な学習計画を立てましょう。

この記事を読むとわかること
  • 公認会計士試験の2段階制度(短答式試験と論文式試験)の全体像
  • 受験資格が不要で誰でも挑戦できる試験であること
  • 短答式4科目・論文式5科目の具体的な試験内容と合格基準
  • 免除制度や科目合格制度などの活用方法
押さえておきたい3つのポイント
  1. 2段階試験制度:公認会計士試験は短答式試験(4科目)と論文式試験(5科目)の2段階で構成されており、まず短答式試験に合格しなければ論文式試験を受験できません。短答式試験の合格者には2年間の免除期間が与えられます。
  2. 受験資格は不要:公認会計士試験には学歴・年齢・国籍などの受験資格制限が一切ありません。誰でも受験できるため、大学生から社会人まで幅広い層が挑戦できる国家資格です。
  3. 厳格な合格基準:短答式試験は総点の70%以上かつ各科目の足切り点をクリアする必要があり、論文式試験は偏差値52以上が合格ラインとなります。両試験とも高い専門知識が求められます。

公認会計士で一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら

目次

公認会計士(CPA)試験とは?制度の概要

公認会計士試験は、企業の財務諸表を監査する専門家である公認会計士になるための国家試験です。金融庁の公認会計士・監査審査会が実施しており、会計・監査・税務・企業法など幅広い専門知識が問われます。

試験制度の理解は、効率的な学習計画を立てる上で欠かせません。まずは試験の目的と位置づけ、2段階試験制度の仕組み、過去の制度改革による変更点について詳しく見ていきましょう。

公認会計士試験の目的と位置づけ

公認会計士試験は、監査業務に必要な高度な専門知識と判断力を持つ人材を選抜することを目的としています。企業の財務情報の信頼性を担保する監査業務は、投資家や債権者などのステークホルダーを保護する重要な役割を果たすため、試験の合格基準は厳格に設定されています。

公認会計士は「会計監査のプロフェッショナル」として社会的信頼が高く、監査法人やコンサルティングファーム、事業会社の財務部門など幅広いフィールドで活躍できます。試験に合格することで、専門性の高いキャリアへの扉が開かれるのです。

また、公認会計士試験は税理士資格の付与にも関連しており、合格後に実務経験を積むことで税理士としての業務も行えるようになります。このように、公認会計士資格は複数の専門領域をカバーする総合的な資格と言えるでしょう。

2段階試験制度(短答式・論文式)

公認会計士試験は「短答式試験」と「論文式試験」の2段階で構成されています。この制度は、基礎的な知識の確認から応用力・実務能力の評価まで、段階的に受験者の実力を測定する仕組みです。

短答式試験は年2回(第Ⅰ回・第Ⅱ回)実施され、4科目の択一式マークシート試験で基礎的な知識が問われます。合格すると2年間の免除資格が与えられ、その期間内であれば論文式試験に何度でも挑戦できます。2023年度の短答式試験合格率は約12〜15%で推移しており、毎年1,000名前後が合格しています。

論文式試験は年1回実施され、5科目の記述式試験で専門的な応用力と論述力が試されます。偏差値52以上が合格基準となり、科目合格制度も設けられているため、一度に全科目合格できなくても段階的に合格を目指せる仕組みになっています。

この2段階制度により、受験者は短答式試験で基礎を固めた後、論文式試験で実務に必要な応用力を身につけることができます。公認会計士試験の難易度については別記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

2006年の制度改革による変更点

2006年に実施された公認会計士試験制度改革は、試験制度を大きく変える転換点となりました。この改革により、より実務に即した能力を評価できる試験制度へと進化しています。

主な変更点として、従来の「一次試験・二次試験・三次試験」の3段階制度が「短答式試験・論文式試験」の2段階制度に簡素化されました。これにより受験者の負担が軽減され、より多くの人材が公認会計士を目指せる環境が整いました。

また、短答式試験の科目が5科目から4科目に削減され、論文式試験では選択科目制度が導入されました。これにより受験者は自身の得意分野や専門性に応じた科目選択が可能になり、より柔軟な受験戦略が立てられるようになったのです。

さらに、科目合格制度の拡充により、論文式試験で一度に全科目合格できなくても、合格した科目は2年間免除される仕組みが整備されました。この制度により、働きながら受験する社会人にとっても挑戦しやすい試験になりました。

公認会計士試験の難易度に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士試験の難易度|他資格との比較と合格への道筋

公認会計士(CPA)試験の受験資格と出願方法

公認会計士試験の大きな特徴の一つが、受験資格の制限がないことです。この特性により、学歴や年齢に関係なく、誰でも公認会計士を目指すことができます。ここでは、受験資格の詳細と出願方法、試験実施地について解説します。

受験資格は不要(誰でも受験可能)

公認会計士試験には、学歴・年齢・国籍などの受験資格制限が一切ありません。これは医師や弁護士などの他の難関国家資格と比較しても特筆すべき特徴です。高校生でも社会人でも、公認会計士を目指したいと思った時点で誰でも受験できます。

実際に、大学在学中に合格する学生も多く、2023年度の論文式試験合格者のうち約30%が大学在学中の合格者でした。また、社会人として働きながら合格を目指す受験者も増えており、20代後半から30代の合格者も一定数存在します。

この「門戸の広さ」は、多様なバックグラウンドを持つ人材が公認会計士業界に参入する機会を提供しています。経済学部や商学部以外の学部出身者でも、独学や予備校を活用することで十分に合格を目指せるのです。

出願方法と受験手数料

公認会計士試験の出願は、公認会計士・監査審査会が運営する「公認会計士試験インターネット出願サイト」から行います。出願期間は試験実施日の約2〜3ヶ月前に設定されており、短答式試験の第Ⅰ回は8月下旬〜9月上旬、第Ⅱ回は2月上旬〜2月中旬が出願期間となっています。

受験手数料は19,500円(短答式試験・論文式試験共通)で、出願時にクレジットカードまたはコンビニエンスストアでの支払いが可能です。一度納付した受験手数料は、いかなる理由があっても返還されないため、出願時には慎重に確認しましょう。

出願時には、本人確認書類のアップロードや証明写真のデジタルデータ提出が必要です。また、短答式試験免除者や科目合格者は、該当する証明書類の提出も求められます。出願締切日直前は申込みが集中するため、余裕を持って手続きを完了させることをおすすめします。

令和7年からのインターネット出願

令和7年(2025年)から、公認会計士試験の出願方法が完全にインターネット出願に移行しました。従来の郵送出願は廃止され、全ての受験者がオンラインで出願手続きを行う必要があります。

インターネット出願のメリットとして、24時間いつでも出願できること、郵送による遅延リスクがないこと、出願状況をリアルタイムで確認できることなどが挙げられます。また、証明写真もデジタルデータで提出できるため、写真館で撮影する必要がなく、自宅での撮影も可能になりました(ただし、規格に準拠する必要があります)。

出願サイトでは、マイページ機能により出願状況や受験票のダウンロードが可能です。受験票は試験日の約1週間前から印刷できるようになりますので、必ず印刷して試験当日に持参しましょう。

試験実施地と受験局

公認会計士試験は、全国の主要都市で実施されています。短答式試験と論文式試験では、実施地が若干異なる点に注意が必要です。

短答式試験の実施地は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7都市です。受験者は出願時に希望する試験地を選択できますが、受験申込者数によっては希望する試験地で受験できない場合があります。

論文式試験の実施地は、札幌、仙台、東京、名古屋、金沢、大阪、広島、高松、福岡、熊本、那覇の11都市となり、短答式試験よりも実施地が拡大されています。これは、論文式試験が年1回のみの実施であることと、長期間の試験(3日間)であることを考慮したものです。

各試験実施地には、公認会計士・監査審査会の地方事務局(受験局)が設置されており、試験に関する問い合わせや相談を受け付けています。受験票の送付や合格発表も、各受験局を通じて行われます。

公認会計士(CPA)短答式試験の制度と内容

短答式試験は公認会計士試験の第一関門であり、基礎的な知識を幅広く問われる試験です。年2回実施されるため、計画的に学習を進めることで年内に複数回のチャレンジが可能です。ここでは、短答式試験の詳細な制度と内容について解説します。

公認会計士で一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら

短答式試験の目的と位置づけ

短答式試験は、公認会計士として必要な基礎的知識を有しているかを判定する試験です。択一式マークシート形式で出題されるため、正確な知識の定着度が問われます。論文式試験に進むための登竜門として、確実に合格する必要があります。

この試験の特徴は、幅広い分野から基礎的な知識が問われることです。簿記や会計理論、監査論、企業法など、公認会計士業務の土台となる知識を網羅的に学習する必要があります。応用力よりも正確な知識の習得が重視されるため、反復学習と過去問演習が効果的です。

短答式試験に合格すると、2年間の免除資格が与えられます。この期間内であれば、論文式試験に何度でも挑戦できるため、短答式合格後は論文式試験の対策に専念できます。この免除制度は、受験者の負担を軽減し、効率的な学習を可能にする重要な仕組みです。

短答式試験の4科目と配点

短答式試験は、財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目で構成されています。各科目の配点と出題形式は以下の通りです。

財務会計論(配点200点)は、簿記と会計理論の2つの分野から出題されます。簿記分野では仕訳や財務諸表作成、会計理論分野では会計基準や概念フレームワークなどが問われます。配点が最も高く、合格を左右する重要科目です。

管理会計論(配点100点)は、原価計算や管理会計の理論が出題されます。工業簿記の知識をベースに、経営管理に必要な会計情報の作成と分析能力が問われます。

監査論(配点100点)は、監査基準や監査実務に関する知識が問われます。公認会計士の主要業務である監査について、理論と実務の両面から出題されます。

企業法(配点100点)は、会社法を中心に商法や金融商品取引法が出題されます。企業活動に関連する法律知識が問われ、条文の正確な理解が求められます。

合計500点満点の試験で、各科目の重要度に応じた配点設定となっています。特に財務会計論は200点と配点が高いため、この科目での得点が合否に大きく影響します。

短答式試験の合格基準(70%と足切り)

短答式試験の合格基準は、総点数の70%以上(500点満点中350点以上)を獲得し、かつ各科目の得点が一定の基準(足切り点)を満たすことです。この2つの条件を同時に満たす必要があるため、苦手科目を作らないバランスの取れた学習が重要です。

足切り制度は、特定の科目だけ極端に低い点数だった場合、総得点が70%以上でも不合格になる仕組みです。具体的には、各科目の得点が満点の40%未満の場合、その時点で不合格となります。例えば、財務会計論で200点満点中80点未満、その他の科目で100点満点中40点未満が足切りラインです。

この基準により、全科目をまんべんなく学習することが求められます。得意科目で高得点を取っても、苦手科目で足切りに引っかかると不合格になるため、科目間のバランスを意識した学習計画が必要です。

2023年度の短答式試験では、第Ⅰ回の合格率が13.5%、第Ⅱ回が11.8%でした。合格者数は各回700〜900名程度で推移しており、合格基準点は年度によって若干変動しますが、概ね70%前後で安定しています。

短答式試験の2年間免除制度

短答式試験に合格すると、2年間の免除資格が与えられます。この免除期間中は、短答式試験を再度受験することなく、論文式試験に挑戦できます。この制度は、受験者が論文式試験の対策に専念できるように設計された重要な仕組みです。

免除期間は、合格した年度の翌年と翌々年の2年間です。例えば、2024年の短答式試験に合格した場合、2025年と2026年の論文式試験に免除資格で受験できます。この2年間で論文式試験に合格できなかった場合は、免除資格が失効し、再度短答式試験から受験する必要があります。

この免除制度を最大限活用するためには、短答式試験合格後すぐに論文式試験の対策を開始することが重要です。多くの合格者は、短答式試験合格後の約4〜6ヶ月で論文式試験の対策を集中的に行い、同年または翌年の論文式試験で合格を目指しています。

公認会計士短答式試験の科目・難易度・合格率と対策方法では、短答式試験の詳細な対策方法を解説していますので、併せてご覧ください。

公認会計士短答式試験に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士短答式試験の科目・難易度・合格率と対策方法

公認会計士論文式試験の制度と内容

論文式試験は、公認会計士試験の最終関門であり、実務に必要な応用力と論述力が問われます。短答式試験とは異なり、記述式の試験形式で専門的な思考力と表現力が求められます。ここでは、論文式試験の詳細な制度と内容について解説します。

論文式試験の目的と位置づけ

論文式試験は、公認会計士として実務を行うために必要な応用能力、思考力、判断力を有しているかを判定する試験です。記述式で出題されるため、単なる知識の暗記ではなく、問題を分析し、論理的に解答を構築する能力が問われます。

この試験の特徴は、実務を想定した応用問題が多く出題されることです。企業の財務諸表分析、監査計画の立案、税務処理の判断など、公認会計士が実際の業務で直面する課題を題材にした問題が出題されます。そのため、理論だけでなく実務的な視点も必要とされます。

論文式試験は年1回のみ実施され、試験期間は3日間に及びます。長時間にわたる試験のため、体力面も含めた総合的な準備が必要です。合格すると、実務補習と修了考査を経て公認会計士登録への道が開かれます。

論文式試験の5科目と選択科目

論文式試験は、必須4科目と選択1科目の合計5科目で構成されています。短答式試験の4科目に加えて、租税法が必須科目となり、さらに選択科目が追加されます。

必須科目は以下の4科目です:

会計学(配点300点)は、財務会計論、管理会計論、監査論の3つの分野を統合した科目です。短答式試験で学んだ知識をベースに、より高度な応用問題が出題されます。配点が最も高く、論文式試験の合否を大きく左右する科目です。

企業法(配点100点)は、会社法を中心とした法律知識が記述式で問われます。条文の正確な理解に加えて、法的な論理展開能力も必要です。

租税法(配点100点)は、法人税法、所得税法、消費税法などが出題されます。短答式試験にはない科目のため、論文式試験対策として新たに学習する必要があります。

選択科目(配点100点)は、以下の4科目から1科目を選択します:

  • 経営学
  • 経済学
  • 民法
  • 統計学

選択科目は受験者の得意分野や専門性に応じて選べます。経営学を選択する受験者が最も多く、全体の約70%を占めています。大学で学んだ知識を活かせる科目を選択すると、効率的な学習が可能です。

論文式試験の合格基準(偏差値52)

論文式試験の合格基準は、52%の得点比率を基準として、公認会計士・監査審査会が相当と認めた得点比率以上であることです。この「得点比率」は偏差値に基づいて算出されるため、実質的に偏差値52以上が合格ラインとなります。

この相対評価方式により、受験者全体の中での相対的な位置づけが合否を決定します。絶対評価の短答式試験とは異なり、他の受験者との比較で合否が決まるため、平均点を大きく上回る必要があります。

また、各科目の得点比率が一定の基準に満たない場合、総得点が合格基準を満たしていても不合格となる足切り制度があります。具体的には、各科目の得点比率が40%未満の場合、足切りとなります。

2023年度の論文式試験合格率は約10%で、合格者数は1,400名程度でした。合格基準となる偏差値52は、受験者全体の上位約40%に相当するため、短答式試験よりもさらに高いレベルの学習が求められます。

論文式試験の科目合格制度

論文式試験には、科目合格制度が設けられています。これは、一度に全科目合格できなくても、偏差値56以上を獲得した科目については「科目合格」として認定され、その後2年間は当該科目が免除される制度です。

科目合格制度の具体的な仕組みは以下の通りです。例えば、2024年の論文式試験で会計学と企業法で偏差値56以上を獲得した場合、その2科目は科目合格となります。2025年と2026年の論文式試験では、残りの科目(租税法と選択科目)だけを受験すれば良いことになります。

この制度により、働きながら受験する社会人や、特定の科目に苦手意識がある受験者でも、段階的に合格を目指すことができます。ただし、科目合格の免除期間は2年間のため、その期間内に全科目合格する必要があります。

科目合格制度を活用する場合、得意科目で確実に偏差値56以上を獲得する戦略的な学習が重要です。全科目を平均的に学習するのではなく、まず得意科目を重点的に対策し、科目合格を積み重ねていくアプローチも有効です。

公認会計士論文式試験に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士論文式試験の内容・対策・合格率を詳しく解説

公認会計士試験の科目別内容と学習ポイント

公認会計士試験の各科目には、それぞれ独自の特徴と学習ポイントがあります。効率的に合格を目指すためには、各科目の出題傾向と重要分野を理解し、適切な学習戦略を立てることが重要です。ここでは、試験科目ごとの内容と学習のポイントを解説します。

財務会計論(簿記)の出題内容

財務会計論は、公認会計士試験の中で最も配点が高く、合否を左右する最重要科目です。簿記分野と会計理論分野に分かれており、両方をバランス良く学習する必要があります。

簿記分野では、個別論点と連結会計が主要な出題範囲です。個別論点としては、有価証券、固定資産、引当金、退職給付会計、税効果会計などが頻出テーマです。特に連結会計は、親会社・子会社間の取引消去、のれんの償却、持分法など複雑な処理が多く、十分な演習が必要です。

会計理論分野では、企業会計原則、会計基準、概念フレームワークなどが出題されます。収益認識、金融商品、リース会計、減損会計など、最近の会計基準の改正内容も重要な出題範囲です。理論問題では、会計処理の根拠を論理的に説明する能力が問われます。

学習のポイントは、基礎的な仕訳から始めて段階的にレベルアップすることです。日商簿記1級レベルの知識を確実に身につけた上で、公認会計士試験特有の難易度の高い論点に取り組みましょう。過去問演習を通じて、出題パターンを把握することも効果的です。

管理会計論(原価計算)の出題内容

管理会計論は、企業の経営管理に必要な会計情報の作成と分析を学ぶ科目です。短答式試験では計算問題中心ですが、論文式試験では理論問題の比重が高まります。

原価計算分野では、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算などが出題されます。特に、仕損・減損の処理、等価係数法、工程別総合原価計算など、複雑な計算処理が頻出です。

管理会計分野では、CVP分析、予算管理、業績評価、ABC(活動基準原価計算)、意思決定会計などが出題されます。論文式試験では、経営判断に役立つ会計情報の提供方法や、管理会計システムの設計に関する問題が出題されます。

学習のポイントは、計算の正確性とスピードを高めることです。管理会計論は時間との戦いになることが多いため、反復演習で計算スピードを向上させることが重要です。また、理論問題では、計算結果の経営上の意味を説明する能力も求められます。

監査論の出題内容

監査論は、公認会計士の中核業務である監査について学ぶ科目です。監査基準や監査実務に関する理論的知識が問われます。

監査基準分野では、一般基準、実施基準、報告基準の3つの基準が主要な出題範囲です。監査の目的、監査人の独立性、リスク・アプローチ、監査証拠、監査報告書など、監査の理論的枠組みが出題されます。

監査実務分野では、内部統制の評価、リスク評価手続、実証手続、監査調書の作成、監査報告書の記載内容などが出題されます。実際の監査業務を想定した実務的な問題が多く、監査手続の適切性を判断する能力が問われます。

学習のポイントは、監査基準の正確な理解と、実務的な視点を養うことです。監査基準の条文は暗記するだけでなく、その趣旨と背景を理解することが重要です。また、実務的な問題では、リスクに応じた適切な監査手続を選択する判断力が求められます。

企業法の出題内容

企業法は、会社法を中心に企業活動に関連する法律知識を学ぶ科目です。条文の正確な理解と、法的な論理展開能力が問われます。

会社法分野では、株式、機関設計、資金調達、組織再編、持分会社などが主要な出題範囲です。特に、株主総会・取締役会の決議要件、取締役の責任、配当規制、合併・分割などは頻出テーマです。論文式試験では、具体的な事例を分析し、法的な問題点を指摘して解決策を論述する能力が求められます。

金融商品取引法分野では、開示規制、不公正取引の規制、内部統制報告制度などが出題されます。公認会計士業務と密接に関連する分野のため、実務的な視点も重要です。

学習のポイントは、条文の正確な理解と、法的な論理構成力を養うことです。会社法は条文数が多いため、まず主要条文を確実に押さえ、その後細かい論点に進むことが効率的です。また、論文式試験では、事例問題に対して法的な分析と結論を論理的に展開する練習が必要です。

租税法と選択科目の出題内容

租税法は論文式試験の必須科目で、短答式試験にはない科目です。法人税法、所得税法、消費税法が主要な出題範囲となります。

法人税法では、所得金額の計算、益金・損金の範囲、減価償却、グループ法人税制などが出題されます。企業の税務処理に関する知識が問われ、会計と税務の違いを理解することが重要です。

所得税法では、10種類の所得区分、所得控除、税額計算などが出題されます。個人の税務処理に関する知識が求められます。

消費税法では、課税対象、納税義務者、仕入税額控除などが出題されます。取引ごとの課税区分を正確に判断する能力が必要です。

選択科目では、経営学が最も人気があり、約70%の受験者が選択しています。経営戦略、組織論、マーケティング、ファイナンスなどが出題範囲です。大学で学んだ知識を活かせる科目を選択すると、効率的な学習が可能です。

公認会計士試験の科目一覧に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士試験の科目一覧|短答式・論文式の試験科目と免除制度

公認会計士試験の免除制度

公認会計士試験には、様々な免除制度が設けられています。これらの制度を活用することで、受験者の負担を軽減し、効率的に合格を目指すことができます。ここでは、短答式試験と論文式試験の免除要件について解説します。

短答式試験の免除要件

短答式試験の免除を受けられる主な要件は以下の通りです。

短答式試験合格による免除は、最も一般的な免除です。短答式試験に合格すると、合格した年度の翌年と翌々年の2年間、短答式試験が免除され、論文式試験から受験できます。この免除期間を有効活用することが、効率的な合格への鍵となります。

旧第二次試験合格による免除は、2006年の制度改革前に実施されていた旧第二次試験に合格している場合、短答式試験が免除されます。ただし、この免除に期限はなく、何年経過しても有効です。

会計専門職大学院修了による免除は、金融庁長官が認定した会計専門職大学院(アカウンティングスクール)を修了し、所定の科目を履修した場合、短答式試験が免除されます。この免除資格は、大学院修了後2年間有効です。

司法試験合格による免除は、司法試験に合格している場合、短答式試験の企業法が免除されます。ただし、完全免除ではなく、他の3科目(財務会計論、管理会計論、監査論)は受験する必要があります。

免除制度を活用する際は、免除期間や条件を正確に把握し、計画的に学習を進めることが重要です。特に、2年間の免除期間は限られているため、期間内に論文式試験に合格できるよう集中的な学習が求められます。

論文式試験の免除要件

論文式試験にも、科目合格制度をはじめとする免除制度があります。

科目合格による免除は、論文式試験で偏差値56以上を獲得した科目について、その科目が2年間免除される制度です。例えば、2024年の論文式試験で会計学と企業法で科目合格した場合、2025年と2026年の論文式試験では、残りの3科目(租税法と選択科目)だけを受験すれば良いことになります。

この制度により、働きながら受験する社会人や、特定科目に苦手意識がある受験者でも、段階的に合格を目指すことができます。ただし、科目合格の免除期間は2年間のため、計画的な学習が必要です。

税理士資格による免除は、税理士となる資格を有する者または税理士試験に合格した者は、論文式試験の租税法が免除されます。税理士として実務経験がある場合、その知識を活かして公認会計士試験に挑戦できる利点があります。

不動産鑑定士資格による免除は、不動産鑑定士となる資格を有する者は、論文式試験の選択科目(経済学または民法)が免除されます。ただし、どちらか一方の科目のみの免除となります。

学歴・資格による科目免除

学歴や他の資格保有による科目免除制度も存在します。

会計専門職大学院修了による免除は、会計専門職大学院を修了し、所定の科目を履修した場合、短答式試験だけでなく、論文式試験の一部科目も免除される場合があります。具体的には、財務会計論と管理会計論の一部が免除対象となることがあります。

司法試験合格による免除は、司法試験に合格している場合、短答式試験の企業法に加えて、論文式試験の企業法も免除されます。法律知識を活かして効率的に合格を目指すことができます。

大学などでの単位取得による免除は、一定の要件を満たす大学や大学院で所定の単位を取得した場合、短答式試験の一部科目が免除されることがあります。ただし、具体的な要件は金融庁の公示で確認する必要があります。

免除制度は、受験者の負担を軽減する重要な仕組みですが、免除を受けられる期間や条件には制限があります。自身が免除対象に該当するかを公認会計士・監査審査会のホームページで確認し、適切に活用しましょう。

公認会計士試験の年間スケジュールと日程

公認会計士試験は年間を通じて計画的に実施されています。短答式試験が年2回、論文式試験が年1回実施され、それぞれに出願期間、試験日、合格発表日が設定されています。ここでは、試験の年間スケジュールと日程について詳しく解説します。

短答式試験の日程(第Ⅰ回・第Ⅱ回)

短答式試験は年2回実施されており、第Ⅰ回と第Ⅱ回があります。それぞれの実施時期と特徴を理解し、自身の学習計画に合わせて受験時期を選択しましょう。

第Ⅰ回短答式試験は、例年12月上旬に実施されます。出願期間は8月下旬から9月上旬で、合格発表は翌年1月中旬です。この回は、大学3年生が初めて受験するケースが多く、また社会人受験者も年末の時期に合わせて受験する傾向があります。

第Ⅰ回の特徴は、論文式試験の翌年に実施されるため、前年の論文式試験不合格者が短答式免除期間の切れ目で再受験する場合も多いことです。そのため、受験者のレベルが比較的高い傾向にあります。

第Ⅱ回短答式試験は、例年5月下旬に実施されます。出願期間は2月上旬から2月中旬で、合格発表は6月下旬です。この回は、大学4年生が就職活動前に受験するケースや、第Ⅰ回で惜しくも不合格だった受験者が再挑戦するケースが多くなります。

第Ⅱ回の特徴は、合格すると同年8月の論文式試験を受験できることです。つまり、5月に短答式試験に合格し、3ヶ月後の8月に論文式試験に挑戦できる可能性があります。ただし、3ヶ月という短期間で論文式試験の対策を行うのは非常に困難なため、多くの受験者は翌年の論文式試験を目指します。

試験当日は、午前と午後の2部構成で実施されます。午前の部(9時30分〜12時30分)で財務会計論と管理会計論、午後の部(14時30分〜17時30分)で監査論と企業法が出題されます。試験時間は合計6時間に及ぶため、体力面の準備も重要です。

論文式試験の日程

論文式試験は年1回のみ実施され、例年8月下旬の金曜日から日曜日にかけての3日間で行われます。出願期間は4月中旬から5月上旬で、合格発表は11月中旬です。

試験日程は3日間に分かれており、各日の試験科目と時間は以下の通りです:

1日目(金曜日):監査論(午前・午後)
午前の部(10時30分〜12時30分)で監査論の前半、午後の部(14時30分〜16時30分)で監査論の後半が実施されます。

2日目(土曜日):租税法(午前)、会計学(午後)
午前の部(10時30分〜12時30分)で租税法、午後の部(14時30分〜18時30分)で会計学が実施されます。会計学は4時間の長時間試験となります。

3日目(日曜日):企業法(午前)、選択科目(午後)
午前の部(10時30分〜12時30分)で企業法、午後の部(14時30分〜16時30分)で選択科目が実施されます。

論文式試験は3日間連続で実施されるため、体力と集中力の維持が重要です。特に2日目の会計学は4時間の長時間試験となるため、事前に時間配分の練習を十分に行う必要があります。

また、論文式試験は記述式のため、論述力と表現力も求められます。試験対策としては、過去問を実際に時間を測って解く練習を繰り返し、論述の型を身につけることが効果的です。

合格発表日と結果確認方法

試験結果の合格発表は、公認会計士・監査審査会のホームページで行われます。合格者の受験番号が掲載されるとともに、合格証書が郵送されます。

短答式試験の合格発表は、第Ⅰ回が翌年1月中旬、第Ⅱ回が6月下旬に行われます。合格発表日の正午頃に公認会計士・監査審査会のホームページに合格者の受験番号が掲載されます。

合格者には、合格通知書が郵送されるとともに、短答式試験合格証明書の交付申請が可能になります。この証明書は、論文式試験の出願時に必要となる場合があります。

論文式試験の合格発表は、11月中旬に行われます。合格発表日の正午頃に公認会計士・監査審査会のホームページに合格者の受験番号が掲載され、同時に合格者の氏名も公表されます。

論文式試験の合格者には、合格証書が郵送されます。この合格証書は、実務補習の受講申込みや実務経験の証明申請時に必要となる重要な書類です。

結果通知書の郵送も行われます。不合格者にも結果通知書が郵送され、科目別の得点状況が記載されています。この通知書は、次回の試験対策を立てる上で重要な情報源となります。科目合格した科目がある場合は、科目合格証明書の交付申請も可能です。

合格発表後は、公認会計士・監査審査会のホームページで統計資料も公開されます。受験者数、合格者数、合格率、合格者の属性(年齢、学歴など)などのデータが確認でき、試験の傾向分析に役立ちます。

公認会計士試験の合格発表に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士試験の合格発表日程と確認方法を解説

公認会計士の試験に関連するよくある質問(FAQ)

公認会計士試験に関する疑問や不安を解消するため、よくある質問とその回答をまとめました。受験を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

Q. 公認会計士試験に受験資格はありますか?

公認会計士試験には、学歴・年齢・国籍などの受験資格制限は一切ありません。誰でも受験できる開かれた試験です。高校生でも大学生でも社会人でも、公認会計士を目指したいと思った時点で受験可能です。実際に、大学在学中に合格する学生も多く、2023年度の論文式試験合格者のうち約30%が大学在学中の合格者でした。この門戸の広さは、多様なバックグラウンドを持つ人材が公認会計士業界に参入する機会を提供しています。

Q. 公認会計士試験の短答式と論文式の違いは何ですか?

公認会計士試験の短答式試験と論文式試験には、大きな違いがあります。短答式試験は年2回実施される択一式マークシート試験で、4科目の基礎的知識が問われます。合格率は約12〜15%で、合格すると2年間の免除資格が与えられます。一方、論文式試験は年1回実施される記述式試験で、5科目の応用力と論述力が問われます。合格率は約10%で、試験期間は3日間に及びます。短答式試験は知識の正確性、論文式試験は応用力と表現力が重視される点が最大の違いです。公認会計士論文式試験の対策では、論文式試験の詳細を解説しています。

Q. 公認会計士試験の受験料はいくらですか?

公認会計士試験の受験手数料は19,500円です。この金額は、短答式試験・論文式試験ともに共通です。出願時にクレジットカードまたはコンビニエンスストアでの支払いが可能です。一度納付した受験手数料は、いかなる理由があっても返還されません。短答式試験は年2回実施されるため、両方受験する場合は年間39,000円の受験料がかかります。これに加えて、予備校や教材の費用も必要となるため、受験準備には計画的な資金管理が重要です。

Q. 公認会計士試験の免除制度はどのような内容ですか?

公認会計士試験の免除制度は、受験者の負担を軽減する重要な仕組みです。最も一般的な免除は、短答式試験合格による2年間の免除です。短答式試験に合格すると、合格した年度の翌年と翌々年の2年間、短答式試験が免除され論文式試験から受験できます。また、論文式試験には科目合格制度があり、偏差値56以上を獲得した科目は2年間免除されます。その他、会計専門職大学院修了者、司法試験合格者、税理士資格保有者などにも、一定の科目免除が認められています。免除制度を活用することで、効率的に合格を目指すことができます。

Q. 公認会計士試験に合格したらすぐに公認会計士になれますか?

公認会計士試験に合格しただけでは、すぐに公認会計士として業務を行うことはできません。試験合格後、実務補習所で3年間の実務補習を受講し、実務経験2年以上を積んだ上で、修了考査(最終試験)に合格する必要があります。修了考査に合格して初めて、公認会計士として登録できます。つまり、試験合格から公認会計士登録までには、通常3〜4年程度かかります。ただし、試験合格後は監査法人などに就職し、実務経験と実務補習を並行して進めることができます。公認会計士になるにはで、資格取得までの詳細な流れを解説しています。

Q. 公認会計士試験の過去問はどこで入手できますか?

公認会計士試験の過去問は、公認会計士・監査審査会の公式ホームページで無料で入手できます。同ホームページでは、過去数年分の試験問題と正解が公開されており、PDFファイルでダウンロード可能です。短答式試験は問題と正解が、論文式試験は問題と出題の趣旨、答案用紙が公開されています。また、大手予備校(CPA会計学院、TAC、大原など)でも、過去問題集や解説付きの問題集を販売しています。過去問演習は試験対策の基本となるため、積極的に活用しましょう。公認会計士試験の過去問活用法では、効果的な過去問の使い方を詳しく解説しています。

まとめ:公認会計士試験の制度と受験準備

本記事では、公認会計士試験の制度、受験資格、科目構成について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. 2段階試験制度の理解:公認会計士試験は短答式試験(4科目・年2回実施)と論文式試験(5科目・年1回実施)の2段階で構成されています。短答式試験に合格すると2年間の免除資格が与えられ、その期間内に論文式試験に合格する必要があります。各試験の特徴を理解し、段階的な学習計画を立てることが合格への近道です。
  2. 受験資格は不要:公認会計士試験には学歴・年齢・国籍などの受験資格制限がなく、誰でも挑戦できます。大学生から社会人まで幅広い層が受験しており、自身のライフステージに合わせて学習計画を立てられます。受験手数料は19,500円で、インターネット出願により全国どこからでも申込みが可能です。
  3. 各科目の重要性:短答式試験の財務会計論(200点)は配点が最も高く、論文式試験では会計学(300点)が合否を大きく左右します。各科目の特徴と出題傾向を把握し、苦手科目を作らないバランスの取れた学習が重要です。免除制度や科目合格制度を活用することで、効率的に合格を目指せます。

公認会計士試験の制度を理解できたら、次は公認会計士試験に必要な勉強時間公認会計士の効果的な勉強法を参考に、具体的な学習計画を立てましょう。計画的な準備で、公認会計士試験合格を実現してください。

本記事を通じて、公認会計士試験の全体像と受験に必要な情報を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、公認会計士資格取得という目標の実現に向けて一歩を踏み出しましょう。

公認会計士で一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら

公認会計士の関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次