公認会計士論文式試験について知りたいあなたへ。「短答式試験に合格したけれど、論文式試験の対策方法が分からない」という悩みは、適切な学習計画と科目別の対策を実践することで解決できます。
本記事では、公認会計士論文式試験の制度概要、試験科目の詳細、合格基準と合格率の推移、効果的な勉強法について、最新のデータと合格者の実例を交えて詳しく解説します。この情報をもとに、公認会計士試験の最終関門となる論文式試験の合格に向けて、具体的な学習戦略を立てましょう。
- 公認会計士論文式試験の制度概要と試験スケジュール
- 5科目の試験内容と配点の詳細
- 合格基準(偏差値52以上)と科目合格制度の活用法
- 科目別の効果的な勉強法と過去問活用戦略
- 論文式試験は記述式による応用力評価:短答式試験と異なり、論文式試験では思考力・判断力・論述力が求められる記述式の試験形式です。会計学300点、監査論・企業法・租税法・選択科目各100点の合計700点満点で、3日間にわたって実施されます。
- 合格基準は偏差値による相対評価:得点比率52%以上(偏差値52程度)が合格ラインとなり、各科目で40%未満の足切りがあります。合格率は例年35%前後で推移しており、短答式試験よりも高い合格率ですが、記述式特有の難しさがあります。
- 科目合格制度で戦略的に合格を目指せる:偏差値56以上を獲得した科目は科目合格となり、2年間の免除資格を得られます。全科目一括合格が難しい場合は、科目合格を狙う戦略も有効です。
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公認会計士(CPA)論文式試験とは?試験制度の基本を解説
公認会計士論文式試験は、短答式試験に合格した受験者が受験できる試験で、公認会計士試験の最終関門となります。年1回8月に実施される3日間の試験では、記述式による思考力・判断力・応用能力が評価されます。
論文式試験の位置づけと公認会計士試験の最終関門
公認会計士試験は、短答式試験と論文式試験の2段階で構成されています。短答式試験に合格すると、その後2年間は短答式試験が免除され、論文式試験の受験資格を得られます。論文式試験に合格することで、実務補習所への入所資格が得られ、公認会計士登録への道が開けます。
短答式試験が基礎的な知識を問うマークシート形式であるのに対し、論文式試験は実務で必要となる応用力と論述力を評価する試験です。公認会計士として活躍するために必要な専門的判断力を測定する重要な試験となっています。
記述式による思考力・判断力・応用能力の評価
論文式試験の最大の特徴は、全科目が記述式で出題されることです。単なる知識の暗記だけでなく、複雑な会計問題や監査実務における判断プロセスを論理的に説明する能力が求められます。
試験では、実務で遭遇する可能性のある事例問題が多く出題され、受験者は問題文から必要な情報を読み取り、適切な会計処理や監査手続きを判断し、その理由を説得力を持って記述する必要があります。この記述式による評価方法は、公認会計士として必要な専門的判断力と説明能力を養成することを目的としています。
年1回実施(8月)される3日間の試験スケジュール
論文式試験は例年8月下旬に3日間連続で実施されます。具体的なスケジュールは以下の通りです。
1日目:監査論と租税法
- 午前:監査論(2時間)
- 午後:租税法(2時間)
2日目:会計学(午前・午後)
- 午前:会計学(管理会計論を中心とした問題:2時間)
- 午後:会計学(財務会計論を中心とした問題:3時間)
3日目:企業法と選択科目
- 午前:企業法(2時間)
- 午後:選択科目(2時間)
3日間で合計13時間の試験となり、体力面・精神面での対策も重要です。試験期間中は宿泊先の確保や体調管理にも十分な配慮が必要となります。
短答式試験との違いと論文式試験の特徴
短答式試験と論文式試験には、試験形式や評価方法に大きな違いがあります。
短答式試験の特徴
- マークシート形式(択一式)
- 4科目(財務会計論・管理会計論・監査論・企業法)
- 年2回実施(12月・5月)
- 合格基準:総点数の70%以上
- 知識の正確性が重視される
論文式試験の特徴
- 記述式(論述形式)
- 5科目(会計学・監査論・企業法・租税法・選択科目)
- 年1回実施(8月)
- 合格基準:得点比率52%以上(偏差値による相対評価)
- 思考力・判断力・論述力が重視される
論文式試験では、租税法が新たに追加され、選択科目(経営学・経済学・民法・統計学から1科目選択)も含まれます。記述式という試験形式の特性上、答案構成力や時間配分の訓練が短答式試験以上に重要となります。
公認会計士短答式試験では、短答式試験の詳細な対策方法について解説していますので、両試験の違いを理解する際の参考にしてください。
公認会計士短答式試験に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士短答式試験の科目・難易度・合格率と対策方法
公認会計士(CPA)論文式試験の試験科目
公認会計士論文式試験は、会計学・監査論・企業法・租税法・選択科目の5科目で構成され、合計700点満点の試験です。各科目の配点と内容を詳しく見ていきましょう。
会計学(財務会計論・管理会計論)配点300点
会計学は論文式試験の中で最も配点が高く、300点満点(全体の約43%)を占める重要科目です。財務会計論と管理会計論の両方が出題され、計算問題と理論問題がバランス良く含まれます。
財務会計論の出題範囲
- 個別論点(有価証券、固定資産、リース取引など)
- 連結会計(連結財務諸表の作成、企業結合、事業分離など)
- 会計基準の理論(概念フレームワーク、開示制度など)
管理会計論の出題範囲
- 原価計算(標準原価計算、直接原価計算など)
- 意思決定会計(CVP分析、設備投資の経済性計算など)
- 業績管理会計(予算管理、事業部制会計など)
財務会計論では複雑な連結会計の計算問題が頻出し、管理会計論では事例問題に基づく意思決定の論述が求められます。会計学の得点が合否を大きく左右するため、最も学習時間を配分すべき科目と言えます。
監査論(配点100点)
監査論は100点満点の科目で、監査の理論と実務の両方が出題されます。記述式の特性上、監査基準や実務指針の内容を正確に理解し、論理的に説明する能力が求められます。
監査論の主要な出題テーマ
- 監査の基本的概念(監査の目的、監査リスク、重要性など)
- 監査基準(一般基準、実施基準、報告基準)
- 監査手続き(リスク評価、内部統制の評価、実証手続きなど)
- 監査報告書(監査意見の種類、除外事項など)
- 職業倫理と品質管理
監査論は理論問題が中心ですが、実務で遭遇する具体的な事例に基づいて適切な監査手続きを判断し、その理由を説明する問題が多く出題されます。監査基準や実務指針の条文を丸暗記するのではなく、その背景にある考え方を理解することが重要です。
企業法(配点100点)
企業法は100点満点の科目で、主に会社法を中心とした出題となります。法律の条文や判例を正確に理解し、具体的な事例に適用して論述する能力が評価されます。
企業法の主要な出題範囲
- 会社法総論(会社の種類、機関設計など)
- 株式会社の機関(株主総会、取締役会、監査役など)
- 株式と新株予約権
- 計算(資本金、剰余金の配当など)
- 組織再編(合併、会社分割、株式交換など)
- 金融商品取引法(開示制度、不公正取引規制など)
企業法では、論証例と呼ばれる定型的な論述パターンを覚えることが重要です。ただし、単なる丸暗記ではなく、法律の趣旨を理解した上で、事例問題の事実関係を的確に法律要件に当てはめる能力が求められます。
租税法(配点100点・論文式のみの新規科目)
租税法は100点満点の科目で、論文式試験から新たに加わる科目です。短答式試験では出題されないため、短答式合格後から本格的に学習を始める受験者が多い科目となります。
租税法の出題範囲
- 法人税法(所得計算、税額計算、別表作成など)
- 所得税法(所得の種類、所得計算など)
- 消費税法(課税対象、納税義務者、仕入税額控除など)
- 理論問題(税法の趣旨、各種制度の説明など)
租税法は計算問題が約60-70%、理論問題が約30-40%の配分で出題されます。計算問題では法人税法の別表作成や所得税の所得計算が頻出し、正確な計算能力と時間管理が重要です。理論問題では税法の趣旨や制度の内容を説明する記述問題が出題されます。
租税法は短答式試験にない新規科目のため、学習の開始時期と時間配分に注意が必要です。計算問題は繰り返し練習することで得点源にできるため、早めの対策開始が推奨されます。
選択科目(配点100点)の4科目から1科目を選択
選択科目は、経営学・経済学・民法・統計学の4科目から1科目を選択して受験します。配点は100点満点です。選択科目の選び方は合格戦略に大きく影響するため、自分の得意分野や学習背景を考慮して慎重に選択しましょう。
選択科目の選択割合(2023年度実績)
- 経営学:約60%(最も選択者が多い)
- 経済学:約25%
- 民法:約10%
- 統計学:約5%
選択科目の詳しい特徴と選び方については、後のセクションで詳しく解説します。多くの受験者は短答式試験の学習段階から選択科目を決めており、早めの科目選択が効率的な学習につながります。
公認会計士試験の科目全体に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士試験の科目一覧|短答式・論文式の試験科目と免除制度
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公認会計士(CPA)論文式試験の合格基準と合格率
公認会計士論文式試験の合格基準は、単純な点数ではなく偏差値による相対評価で決定されます。合格率の推移と科目合格制度について理解することで、効果的な受験戦略を立てることができます。
合格基準は得点比率52%以上(偏差値による相対評価)
論文式試験の合格基準は「得点比率52%以上」と定められていますが、この得点比率は素点ではなく偏差値による相対評価で計算されます。具体的には、各科目の得点を偏差値に換算した後、配点に応じて加重平均した値が得点比率となります。
得点比率の計算方法
- 各科目の得点を偏差値(平均50、標準偏差10)に変換
- 偏差値を配点に応じて加重平均
- 総合得点比率が52以上で合格
この相対評価方式により、試験の難易度が年度によって変動しても、一定の基準で合格者が選抜されます。実務的には、偏差値52程度が合格ラインとなり、全科目で平均的な成績を取れば合格できる水準です。
ただし、後述する足切り制度があるため、苦手科目を作らないバランスの取れた学習が重要となります。
各科目40%未満で足切りとなる不合格ライン
論文式試験には足切り制度があり、1科目でも得点比率が40%未満(偏差値40未満)の科目があると、総合得点比率が52%以上でも不合格となります。
足切り制度の重要ポイント
- 各科目で最低40%以上の得点が必要
- 1科目でも40%未満があれば即不合格
- 総合得点が高くても足切りされる可能性がある
- 苦手科目の克服が合格の必須条件
この足切り制度により、得意科目で高得点を取っても、苦手科目があると合格できません。例えば、会計学と監査論で高得点を取り総合得点比率が55%でも、租税法で39%を取ってしまうと不合格となってしまいます。
したがって、論文式試験の対策では「得意科目を極める」よりも「苦手科目を作らない」ことが重要な戦略となります。全科目で平均点以上を安定して取れる実力を養成することが、合格への最も確実な道です。
論文式試験の合格率推移(35%前後で推移)
公認会計士論文式試験の合格率は、例年35%前後で推移しています。短答式試験の合格率が10-15%程度であることと比較すると、論文式試験の合格率は高く見えますが、これは短答式試験を突破した優秀な受験者の中での競争であることを意味します。
近年の論文式試験合格率推移
- 2019年度:35.7%
- 2020年度:36.8%
- 2021年度:36.3%
- 2022年度:37.6%
- 2023年度:35.2%
合格率が比較的安定しているのは、偏差値による相対評価方式を採用しているためです。受験者のレベルや試験問題の難易度が変動しても、一定の割合で合格者が選抜される仕組みとなっています。
ただし、合格率35%という数字は「3人に1人が合格」という意味であり、決して簡単な試験ではありません。短答式試験を突破した実力者の中での競争であることを理解し、十分な準備をして臨む必要があります。
科目合格制度(偏差値56以上で科目免除資格)
論文式試験には科目合格制度があり、総合得点比率が52%に満たなくても、特定の科目で高得点を獲得した場合、その科目について2年間の免除資格を得られます。
科目合格の基準
- 科目別の得点比率が56%以上(偏差値56以上)
- 免除期間は科目合格した年を含めて2年間
- 複数科目での科目合格も可能
- 免除期間中は当該科目の受験が不要
科目合格制度を活用すれば、全科目一括合格が難しい場合でも、2回に分けて合格を目指す戦略が取れます。例えば、1年目に得意な会計学で科目合格を取り、2年目に残りの科目で総合52%以上を目指すといった戦略が可能です。
科目合格を狙うメリット
- 学習負担を分散できる
- 得意科目から確実に合格を積み重ねられる
- 2回目の受験で苦手科目に集中できる
- 心理的プレッシャーが軽減される
一方で、科目合格に頼りすぎると学習期間が長期化するリスクもあります。基本的には一括合格を目指しつつ、万が一の場合の保険として科目合格制度を理解しておくことをおすすめします。
公認会計士試験の合格率に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士試験の合格率推移と短答式・論文式の傾向分析
公認会計士論文式試験の選択科目の選び方
選択科目の選択は、論文式試験の合格戦略に大きく影響します。経営学・経済学・民法・統計学の4科目それぞれの特徴を理解し、自分に最適な科目を選びましょう。
経営学の特徴と選択するメリット
経営学は論文式試験で最も多くの受験者に選択されている科目で、選択者の約60%を占めています。公認会計士として実務で役立つ知識が多く、学習しやすい科目として人気があります。
経営学の出題範囲
- 経営管理論(経営戦略、組織論、マーケティングなど)
- ファイナンス理論(資本コスト、企業価値評価、ポートフォリオ理論など)
経営学を選択するメリット
- 予備校の教材やサポートが充実している
- 計算問題(ファイナンス)で得点を稼ぎやすい
- 会計学の知識と関連性が高く、相乗効果がある
- 実務で役立つ知識が身につく
- 選択者が多いため、相対評価で極端に不利になりにくい
経営学が向いている人
- 特別な科目選択の理由がない人
- 計算問題が得意な人
- 実務で活かせる知識を習得したい人
- 安定した得点を目指したい人
経営学は「迷ったら経営学」と言われるほど無難な選択であり、特別な理由がなければ経営学を選択することをおすすめします。
経済学の特徴と選択するメリット
経済学は選択者の約25%が選んでいる科目で、経済学部出身者や数学が得意な受験者に選ばれる傾向があります。
経済学の出題範囲
- ミクロ経済学(消費者理論、企業理論、市場理論など)
- マクロ経済学(国民所得決定理論、貨幣理論、国際経済など)
経済学を選択するメリット
- 大学で経済学を学んだ人は学習時間を短縮できる
- 論理的思考力が身につく
- 解答が明確で採点基準がはっきりしている
- 数学が得意なら高得点を狙える
経済学が向いている人
- 経済学部出身で基礎知識がある人
- 数学が得意で数式による分析が苦にならない人
- 理論的な学習が好きな人
経済学の注意点
- 初学者には学習負担が大きい
- 計算問題の難易度が高い年もある
- 予備校の教材が経営学ほど充実していない
経済学部出身で経済学の基礎がある人には最適な選択ですが、初学者には学習負担が大きいため慎重に判断しましょう。
民法の特徴と選択するメリット
民法は選択者の約10%が選んでいる科目で、法学部出身者や司法試験の学習経験がある人に選ばれています。
民法の出題範囲
- 民法総則(法律行為、代理、時効など)
- 物権法(所有権、担保物権など)
- 債権法(契約法、不法行為など)
- 親族・相続法
民法を選択するメリット
- 法学部出身者は既習知識を活用できる
- 企業法と関連性があり、相乗効果が期待できる
- 実務(特に相続・事業承継分野)で役立つ知識が身につく
- 記述問題に慣れている人には取り組みやすい
民法が向いている人
- 法学部出身で民法の基礎がある人
- 司法試験の学習経験がある人
- 法律科目が得意な人
- 暗記力と論理的思考力に自信がある人
民法の注意点
- 学習範囲が広く、学習時間が多く必要
- 初学者には用語理解から始める必要がある
- 予備校の教材やサポートが限定的
民法は法学部出身者には有利な選択ですが、初学者には学習負担が非常に大きいため、慎重に検討する必要があります。
統計学の特徴と選択するメリット
統計学は選択者が最も少ない科目で、約5%の受験者しか選択していません。数学や統計学の専門知識がある人に限定される科目です。
統計学の出題範囲
- 記述統計学(平均、分散、相関など)
- 確率論(確率分布、確率変数など)
- 推測統計学(推定、検定など)
- 多変量解析(回帰分析、因子分析など)
統計学を選択するメリット
- 理系出身者や数学が得意な人は高得点を狙える
- 競争相手が少なく、相対評価で有利になる可能性がある
- データ分析のスキルが身につく
- 解答が明確で採点基準がはっきりしている
統計学が向いている人
- 数学や統計学を専門的に学んだ人
- 理系学部出身で数式に抵抗がない人
- データ分析に強い関心がある人
統計学の注意点
- 予備校の教材がほとんどない
- 独学が中心となる可能性が高い
- 情報交換できる仲間が少ない
- 初学者には極めて困難
統計学は専門的な数学知識がある人には有利な選択ですが、初学者にはおすすめできません。確実に高得点を取れる自信がある場合のみ選択を検討しましょう。
公認会計士論文式試験に必要な勉強時間
公認会計士論文式試験の合格には、短答式試験合格後さらに1,200〜2,000時間程度の学習が必要です。効率的な時間配分と学習計画が合格の鍵となります。
合格までに必要な総勉強時間は1,200〜2,000時間
公認会計士試験全体で必要な勉強時間は3,000〜5,000時間と言われており、そのうち論文式試験に特化した学習時間は1,200〜2,000時間程度が目安となります。
学習時間の内訳
- 短答式試験:1,500〜2,500時間
- 論文式試験:1,200〜2,000時間
- 合計:3,000〜5,000時間
論文式試験の学習時間が短答式試験より少なく見えますが、これは短答式試験で学習した基礎知識が論文式試験でも活用できるためです。ただし、租税法は論文式試験で初めて学習する科目のため、特に時間を確保する必要があります。
学習時間に影響する要因
- 短答式試験の成績(基礎力の定着度)
- 学習の効率性(予備校の活用、学習方法など)
- 1日の学習時間(専念か社会人か)
- 基礎学力(会計学や法律の予備知識)
専念受験生の場合は1日8-10時間の学習で6-10ヶ月程度、働きながらの場合は1日3-4時間の学習で1.5-2年程度が標準的な学習期間となります。
短答式合格後の学習期間(最短2ヶ月〜)
短答式試験の合格発表から論文式試験までの学習期間は、短答式試験の実施時期によって大きく異なります。
5月短答式合格の場合
- 合格発表:6月中旬
- 論文式試験:8月下旬
- 学習期間:約2-3ヶ月
5月の短答式試験に合格した場合、論文式試験までの期間は非常に短く、効率的な学習計画が必須となります。短答式試験の受験前から論文式試験の学習を並行して進めておくことが理想的です。
12月短答式合格の場合
- 合格発表:1月中旬
- 論文式試験:8月下旬
- 学習期間:約7-8ヶ月
12月の短答式試験に合格した場合、論文式試験まで十分な学習期間があります。租税法の基礎から丁寧に学習し、全科目のバランスを取りながら実力を養成できます。
学習期間別の対策ポイント
- 2-3ヶ月:租税法を最優先、既習科目は答案練習中心
- 4-6ヶ月:租税法と選択科目を固め、会計学の応用力を強化
- 7-8ヶ月:全科目を体系的に学習し、弱点克服に時間を使える
多くの受験者は12月の短答式試験を目標とし、合格後の十分な期間を活用して論文式試験対策を進めています。
科目別の推奨勉強時間配分
論文式試験の各科目に推奨される学習時間の配分を理解し、効率的な学習計画を立てましょう。
科目別推奨学習時間
- 会計学(財務会計論・管理会計論):500-700時間(40-45%)
- 監査論:150-250時間(12-15%)
- 企業法:150-250時間(12-15%)
- 租税法:300-400時間(20-25%)
- 選択科目:150-250時間(10-15%)
会計学に最も時間を配分する理由
- 配点が最も高い(300点/700点)
- 計算問題と理論問題の両方があり学習範囲が広い
- 短答式試験から出題範囲が大幅に拡大する
- 得点が合否を大きく左右する
租税法に多くの時間が必要な理由
- 短答式試験にない新規科目で初学者がほとんど
- 計算問題の正確性向上に反復練習が必要
- 法人税法の別表作成など複雑な計算が多い
- 理論問題でも税法の体系的理解が求められる
効率的な時間配分のコツ
- 配点の高い会計学を最優先
- 新規科目の租税法を早期に開始
- 得意科目より苦手科目に時間を使う
- 直前期は答案練習で実戦力を養成
科目別の学習時間は個人の得意不得意によって調整が必要ですが、上記の配分を基本として、自分の弱点に応じてカスタマイズしましょう。
公認会計士試験の勉強時間に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士試験に必要な勉強時間|合格までのスケジュール
公認会計士論文式試験の科目別対策方法
論文式試験では科目ごとに効果的な勉強法が異なります。各科目の特性を理解し、適切な対策を実践することが合格への近道です。
会計学(財務会計論・管理会計論)の効果的な勉強法
会計学は配点が最も高く、合否を左右する最重要科目です。財務会計論と管理会計論では学習アプローチが異なるため、それぞれに適した対策が必要です。
財務会計論の勉強法
- 基礎概念の徹底理解
- 会計基準や概念フレームワークを理解する
- 各論点の会計処理の根拠を説明できるようにする
- 単なる暗記ではなく「なぜそうなるのか」を重視
- 計算問題の反復練習
- 連結会計を中心に計算問題を繰り返す
- 時間を計りながら実戦形式で解く
- 間違えた問題は理解するまで復習する
- 理論問題の答案作成練習
- 会計基準の趣旨を自分の言葉で説明する練習
- 制度の背景や目的を理解する
- 論理的な文章構成を意識する
管理会計論の勉強法
- 基本公式の完全マスター
- CVP分析、差額原価分析などの基本公式を覚える
- 公式の導出過程を理解する
- 様々な応用問題に対応できるようにする
- 事例問題への対応力強化
- 問題文から必要な情報を抽出する訓練
- 意思決定のプロセスを論理的に説明する
- 計算結果をどう解釈するかを重視する
- 時間配分の訓練
- 計算問題と理論問題のバランスを意識
- 解ける問題から確実に解答する
- 時間内に答案を完成させる訓練を重ねる
会計学全体の学習ポイント
- 短答式試験で学んだ基礎を論文式に応用する
- 予備校の答案練習(答練)を積極的に活用する
- 答案の書き方(構成、字数配分)を早めに習得する
- 苦手論点を作らないように全範囲を網羅する
監査論の勉強法(理論の暗記と理解)
監査論は全て記述式の理論問題で、監査基準や実務指針の内容を論理的に説明する能力が求められます。
監査論の効果的な学習手順
- 監査基準の体系的理解
- 監査基準の構造(一般基準・実施基準・報告基準)を把握
- 各基準の趣旨と目的を理解する
- 基準間の関連性を意識する
- 重要論点の論証パターン習得
- 頻出論点の論述パターンを覚える
- キーワードを押さえて簡潔に説明する
- 結論→理由→具体例の流れで書く練習
- 実務事例への対応
- 事例問題で求められている監査手続きを判断
- 監査基準を具体的な状況に適用する
- リスクアプローチの考え方を活用する
監査論学習の重要ポイント
- 監査基準の条文を丸暗記するのではなく、趣旨を理解する
- 「なぜそのような監査手続きが必要か」を説明できるようにする
- 実務感覚を養うため、監査実務の流れをイメージする
- 答案練習で論述力と時間配分を鍛える
よくある失敗パターンと対策
- 条文の丸写しばかりで論点がずれる → 問われている内容に焦点を当てる
- 説明が抽象的すぎる → 具体的な監査手続きを示す
- 時間が足りず答案が未完成 → 重要な論点から優先的に記述する
企業法の勉強法(論証例の暗記)
企業法は法律科目特有の学習方法が求められ、論証例の暗記と事例への適用が中心となります。
企業法の学習手順
- 基本的な法律知識の習得
- 会社法の全体構造を理解する
- 重要条文の内容を把握する
- 制度の趣旨・目的を理解する
- 論証例の暗記
- 頻出論点の論証パターンを覚える
- 要件→効果の形式で整理する
- キーワードを押さえて簡潔に記述する
- 事例問題への適用練習
- 事実関係から法律上の問題点を発見する
- 適切な論証例を選択する
- 事実を法律要件に当てはめる
論証例暗記のコツ
- 完全な一字一句暗記は不要
- 論理の流れとキーワードを押さえる
- 繰り返し書いて手に覚えさせる
- 理解した上で暗記する(丸暗記は避ける)
企業法で高得点を取るポイント
- 問題文の事実関係を丁寧に読む
- 論点を正確に把握する
- 条文番号は分かる範囲で示す
- 結論を明確に示す
頻出論点の例
- 取締役の責任と株主代表訴訟
- 株主総会決議の瑕疵
- 株式の譲渡制限
- 組織再編と株主保護
- 金融商品取引法の開示規制
租税法の勉強法(計算と理論のバランス)
租税法は論文式試験から新たに加わる科目で、計算問題と理論問題のバランスが重要です。
租税法の学習手順
- 法人税法の基礎固め
- 所得計算の基本的な流れを理解する
- 別表作成の手順を覚える
- 繰り返し計算問題を解く
- 所得税法・消費税法の学習
- 各税法の基本的な仕組みを理解する
- 計算問題を中心に学習する
- 法人税法との違いを意識する
- 理論問題への対応
- 税法の趣旨や制度の内容を理解する
- 簡潔に説明する練習をする
- 税法特有の用語を正確に使う
計算問題の対策
- 法人税法の別表作成を最優先で練習
- 時間を計りながら解く訓練を重ねる
- 計算の精度を高めることを重視
- よくあるミスのパターンを把握する
理論問題の対策
- 制度の趣旨を簡潔に説明できるようにする
- 各種制度の要件や効果を整理する
- 暗記よりも理解を重視する
租税法学習のポイント
- 短答式試験にない新規科目なので早めに着手
- 計算問題で確実に得点を稼ぐことを目指す
- 予備校の答案練習を活用して実戦力を養う
- 直前期には過去問で出題傾向を把握する
選択科目の勉強法(科目別の攻略ポイント)
選択科目は選んだ科目によって学習方法が大きく異なります。自分が選択した科目に応じた効果的な対策を実践しましょう。
経営学の勉強法
- 経営管理論:基本概念を理解し、事例に適用する練習
- ファイナンス:計算公式を完全にマスターし、正確に計算する
- 時間配分:計算問題を先に解き、確実に得点を稼ぐ
経済学の勉強法
- ミクロ経済学・マクロ経済学の基本理論を理解
- グラフを正確に描き、数式で説明する練習
- 計算問題の解法パターンを習得
- 理論の応用力を養う
民法の勉強法
- 基本的な法律知識を体系的に学習
- 論証例を覚える(企業法と同様のアプローチ)
- 事例問題で法律の適用を練習
- 六法を引く練習をする
統計学の勉強法
- 基本的な統計理論を理解
- 計算問題を繰り返し練習
- 公式の導出過程を理解する
- 過去問で出題パターンを把握
選択科目共通のポイント
- 短答式試験の受験前から学習を開始
- 予備校の教材を中心に学習を進める
- 得意科目として点数を稼ぐよりも、足切りを避けることを優先
- 過去問分析で出題傾向を把握する
公認会計士試験の勉強法に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士の効果的な勉強法|科目別対策と時間管理術
公認会計士論文式試験の過去問活用法
過去問の活用は論文式試験対策の中核となります。出題傾向の把握、答案構成力の養成、時間配分の訓練に過去問を効果的に使いましょう。
過去問分析による出題傾向の把握
過去問を分析することで、各科目の出題傾向や重要論点を把握できます。効率的な学習につなげるため、まずは過去問の傾向分析から始めましょう。
過去問分析の手順
- 直近5年分の過去問を入手する
- 科目ごとに出題テーマを分類する
- 頻出論点とその出題パターンを把握する
- 出題形式(計算・理論の比率)を確認する
過去問分析で分かること
- 毎年出題される頻出論点
- 数年周期で出題される重要論点
- 出題形式の傾向(計算重視か理論重視か)
- 時間配分の目安(各問題の配点と分量)
- 近年の出題傾向の変化
科目別の出題傾向
- 会計学:連結会計、企業結合、リース取引などが頻出
- 監査論:リスクアプローチ、内部統制、監査報告が中心
- 企業法:機関設計、株主総会、組織再編が重要テーマ
- 租税法:法人税の別表作成が最重要
- 選択科目:科目により傾向が大きく異なる
過去問分析により、限られた時間で優先的に学習すべき論点が明確になります。ただし、過去問に出ていない論点も本試験で出題される可能性があるため、基本的には全範囲を学習することが前提です。
答案構成力を養う実践演習
論文式試験では、限られた時間内に論理的な答案を作成する力が求められます。過去問を使った答案作成の実践演習が必須です。
答案構成力養成の手順
- 問題文を読み、何が問われているかを把握
- 答案の構成(何をどの順序で書くか)を考える
- 時間配分を決める
- 実際に答案を書く
- 模範解答と比較し、改善点を見つける
良い答案の条件
- 問いに対する結論が明確
- 論理の流れが一貫している
- 必要なキーワードが含まれている
- 字数配分が適切
- 読みやすい文章と構成
答案作成の練習方法
- 初期段階:時間無制限で丁寧に書く
- 中期段階:時間を1.5倍に設定して書く
- 直前期:本番と同じ時間で完成させる
答案構成のテクニック
- 結論を先に示す(結論先行型)
- 見出しやナンバリングで構造を明確にする
- 一文を短くし、読みやすくする
- 専門用語を正確に使う
- 具体例や数値を示して説得力を高める
よくある失敗例と改善策
- 問いと答えがずれている → 問題文を丁寧に読む
- 論理が飛躍している → 理由を丁寧に説明する
- 時間が足りず未完成 → 答案構成の時間を短縮する
- 字数が極端に少ない → 必要な説明を追加する
模試・答練を活用した実力養成
予備校が実施する答案練習(答練)や模擬試験(模試)は、実戦力を養成する最も効果的な方法です。過去問演習に加えて、答練・模試を積極的に活用しましょう。
答練の活用方法
- 週1-2回のペースで継続的に受講する
- 本番と同じ緊張感で臨む
- 復習に答案作成時間の2-3倍の時間をかける
- 採点者のコメントを真摯に受け止める
- 間違えた問題は必ず解き直す
模試の活用方法
- 本番の3-4ヶ月前から定期的に受験する
- 3日間通しで受験し、体力面も確認する
- 時間配分や科目間の得点バランスを検証する
- 弱点科目を発見し、重点的に対策する
- 模試の結果に一喜一憂せず、課題発見のツールと捉える
答練・模試で身につく力
- 時間内に答案を完成させる実戦力
- 問題の取捨選択の判断力
- 3日間の試験を乗り切る体力・集中力
- 本番での緊張に対応するメンタル
- 自分の現在の実力の客観的な把握
答練・模試の復習ポイント
- 間違えた理由を分析する
- 正解に至るプロセスを確認する
- 模範解答の答案構成を学ぶ
- 時間配分の反省をする
- 弱点を次の学習計画に反映する
答練・模試は「受けること」よりも「復習すること」が重要です。復習に十分な時間を確保し、答練・模試を最大限に活用しましょう。
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公認会計士試験の過去問活用法|入手方法と効果的な解き方
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公認会計士論文式試験の科目免除制度
論文式試験には、一定の条件を満たすことで科目の一部が免除される制度があります。科目免除制度を理解し、該当する場合は有効に活用しましょう。
科目合格による一部免除制度
論文式試験で科目合格(得点比率56%以上)を獲得すると、その科目について2年間(科目合格した年を含む)の免除資格が得られます。
科目合格制度の詳細
- 免除期間:科目合格した年を含めて2年間
- 免除可能科目:全5科目(会計学・監査論・企業法・租税法・選択科目)
- 複数科目の科目合格も可能
- 総合得点が52%未満でも科目合格は認められる
科目合格制度の活用例
- 初年度の受験で会計学(偏差値58)と監査論(偏差値57)で科目合格
- 他3科目は平均偏差値48で総合52%未満のため最終合格には至らず
- 翌年は企業法・租税法・選択科目のみ受験
- 残り3科目で偏差値52以上を取れば最終合格
科目合格を狙う戦略のメリット
- 学習負担を2年間に分散できる
- 得意科目から確実に合格を積み重ねられる
- 2年目は苦手科目に集中して対策できる
- 心理的プレッシャーが軽減される
科目合格を狙う戦略のデメリット
- 学習期間が長期化する
- 免除期間(2年)を過ぎると再受験が必要
- 1科目でも足切り(40%未満)があると科目合格も認められない
基本的には一括合格を目指すべきですが、初年度の結果が芳しくなかった場合、科目合格を次年度に活かす戦略も有効です。
司法試験合格者の企業法免除
司法試験合格者(司法試験予備試験合格者を含む)は、申請により論文式試験の企業法が免除されます。
企業法免除の条件
- 司法試験に合格していること
- 司法試験予備試験に合格していること
- 免除申請を行うこと
企業法免除のメリット
- 論文式試験が実質4科目になる
- 企業法の学習時間を他科目に振り分けられる
- 3日間の試験スケジュールが軽減される
注意点
- 総合得点の計算では企業法を平均点とみなして計算される
- 高得点を取って総合得点を上げる戦略が取れない
- 会社法の知識は会計学でも必要なため、基礎は学習すべき
司法試験合格者で公認会計士を目指す方は、企業法免除を活用することで効率的に合格を目指せます。
税理士資格保有者の租税法免除
税理士資格(税理士試験合格または税理士資格取得)を有する者は、申請により論文式試験の租税法が免除されます。
租税法免除の条件
- 税理士資格を有すること
- 税理士試験に合格していること(一部科目免除での税理士資格取得も含む)
- 免除申請を行うこと
租税法免除のメリット
- 論文式試験が実質4科目になる
- 租税法の学習時間(300-400時間)を他科目に使える
- 論文式試験で初学の科目が減る
注意点
- 総合得点の計算では租税法を平均点とみなして計算される
- 税理士試験の税法科目と公認会計士試験の租税法は範囲が一部異なる
- 免除申請の手続きが必要
税理士資格を持つ方が公認会計士を目指す場合、租税法免除により大幅に学習負担を軽減できます。
その他の科目免除制度
- 修士・博士の学位による免除(大学院での研究内容により一部科目が免除される場合がある)
- 会計専門職大学院(アカウンティングスクール)修了者の免除
科目免除制度は該当する方にとって大きなアドバンテージとなります。自分が免除の対象になるか確認し、活用できる制度は積極的に利用しましょう。
公認会計士論文式試験合格後の流れ
論文式試験に合格しても、すぐに公認会計士として登録できるわけではありません。実務補習所での学習と実務経験を経て、修了考査に合格する必要があります。
実務補習所への入所と実務経験の開始
論文式試験合格後は、実務補習所への入所と実務経験の開始という2つのステップを同時に進めます。
実務補習所とは
- 日本公認会計士協会が運営する教育機関
- 論文式試験合格者が入所する
- 3年間の実務補習プログラムを受講
- 実務に必要な知識とスキルを習得
実務補習の内容
- 講義・演習(会計、監査、税務、経営など)
- 課題研究(グループでのテーマ研究)
- ディスカッション・ケーススタディ
- 最終レポートの作成
実務経験の要件
- 2年以上の実務経験が必要
- 監査業務または会計業務に従事
- 多くの合格者は監査法人に就職
- 実務補習と並行して経験を積む
実務経験の開始方法
- 監査法人への就職(最も一般的)
- 事業会社の経理部門への就職
- 会計事務所・税理士法人への就職
大多数の合格者は、論文式試験合格後にBig4監査法人(EY新日本有限責任監査法人、PwCあらた有限責任監査法人、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ)をはじめとする監査法人に就職し、実務経験を積みながら実務補習所に通います。
修了考査の受験資格と準備
実務補習所での3年間の課程を修了し、2年以上の実務経験を満たすと、修了考査の受験資格が得られます。
修了考査とは
- 実務補習修了者が受験する最終試験
- 年1回(12月)実施
- 筆記試験(2日間)
- 合格率は例年70%前後
修了考査の試験科目
- 会計に関する理論及び実務
- 監査に関する理論及び実務
- 税に関する理論及び実務
- 経営に関する理論及び実務
- 公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理
修了考査の特徴
- 実務に即した総合的な出題
- 論文式試験より実務的な内容
- 合格率が高く、実務補習を真面目に受けていれば合格可能
- 不合格でも翌年以降再受験が可能
修了考査の準備
- 実務補習の講義を真面目に受講する
- 課題研究やレポートに真剣に取り組む
- 直前期に集中的に対策する
- 予備校の修了考査対策講座を活用する受験者も多い
公認会計士登録までのステップ
修了考査に合格すると、いよいよ公認会計士として登録する資格を得られます。
公認会計士登録の要件
- 論文式試験に合格していること
- 実務補習所の課程を修了していること(3年間)
- 2年以上の実務経験を有すること
- 修了考査に合格していること
登録手続きの流れ
- 日本公認会計士協会に登録申請書を提出
- 必要書類(卒業証明書、実務経験証明書など)を添付
- 登録料を納付
- 審査を経て登録
- 公認会計士として業務開始可能
公認会計士登録後のキャリア
- 監査法人で監査業務を継続
- 事業会社でCFO(最高財務責任者)として活躍
- 独立開業して会計事務所を運営
- コンサルティング会社で経営コンサルタントとして活動
- 金融機関でアナリストとして勤務
論文式試験合格から公認会計士登録までは、最短で3年程度かかります。長い道のりですが、実務経験を通じて専門家としての実力を高める重要な期間となります。
公認会計士修了考査に関してもっと詳しい記事はこちら
公認会計士修了考査とは?試験内容・合格率・対策方法を解説
公認会計士論文式試験に関連するよくある質問(FAQ)
公認会計士論文式試験について、受験者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q. 公認会計士論文式試験は短答式合格後すぐに受験すべきですか?
短答式試験に合格したタイミングによって戦略が変わります。5月の短答式試験に合格した場合、同年8月の論文式試験までの期間は約2-3ヶ月と非常に短いため、受験するか翌年に延期するかは慎重に判断すべきです。
12月の短答式試験に合格した場合は、翌年8月まで約7-8ヶ月の準備期間があるため、多くの受験者がその年に論文式試験を受験します。ただし、租税法は論文式試験で初めて学習する科目のため、早期に学習を開始することが重要です。
短答式試験の合格は2年間有効なので、学習の進捗状況や生活環境を考慮して、最適なタイミングで論文式試験に挑戦しましょう。無理に急いで不十分な準備で臨むよりも、十分に準備した上で合格を目指すことをおすすめします。
Q. 公認会計士論文式試験の選択科目はどれがおすすめですか?
選択科目は個人の学習背景や得意分野によって最適な選択が異なりますが、特別な理由がない場合は経営学をおすすめします。経営学は選択者が最も多く(約60%)、予備校の教材やサポートが充実しているため、学習しやすい環境が整っています。
経済学部出身で経済学の基礎がある方は経済学、法学部出身で民法の学習経験がある方は民法を選択することで、学習時間を短縮できます。統計学は専門的な数学知識が必要なため、理系出身で統計学を専門的に学んだ方以外にはおすすめできません。
選択科目は短答式試験の学習段階から決めておくことが理想的です。公認会計士の勉強法では、効率的な科目選択と学習計画について詳しく解説しています。
Q. 公認会計士論文式試験で科目合格を狙う戦略は有効ですか?
科目合格制度は、全科目一括合格が難しい場合の有効な戦略となります。特に得意科目がある場合、その科目で偏差値56以上を狙い科目合格を取ることで、翌年の学習負担を軽減できます。
ただし、基本的には一括合格を目指すべきです。科目合格に頼りすぎると学習期間が長期化し、モチベーション維持が難しくなるリスクがあります。科目合格は「万が一の保険」と考え、最初から科目合格狙いの戦略を取ることはおすすめしません。
初年度で残念ながら最終合格に至らなかった場合、取得した科目合格を活かして翌年再チャレンジするという使い方が理想的です。科目合格の有効期間は2年間(科目合格した年を含む)ですので、計画的に活用しましょう。
Q. 公認会計士論文式試験に働きながら合格することは可能ですか?
働きながら公認会計士論文式試験に合格することは可能ですが、十分な学習時間の確保が課題となります。論文式試験には1,200〜2,000時間程度の学習が必要で、1日3-4時間の学習時間を確保できれば1.5-2年程度での合格が目標となります。
社会人受験生の場合、朝の出勤前1-2時間と帰宅後1-2時間、週末は8-10時間程度の学習時間を確保する必要があります。仕事の繁忙期や残業が多い時期は学習時間の確保が難しくなるため、長期的な視点で学習計画を立てることが重要です。
働きながらの合格者も多く存在しますので、効率的な時間管理と継続的な努力により、合格は十分に可能です。公認会計士試験の勉強時間では、社会人向けの学習スケジュールについても詳しく解説しています。
Q. 公認会計士論文式試験の租税法は初学者でも対応できますか?
租税法は論文式試験で初めて学習する科目のため、ほぼ全員が初学者の状態から始めます。したがって、初学者でも十分に対応可能な科目です。
租税法の学習では、計算問題(特に法人税法の別表作成)を繰り返し練習することで、確実に得点できるようになります。理論問題は範囲が広いため、基本的な制度の趣旨を理解することを優先しましょう。
租税法の学習開始時期は、短答式試験合格後すぐに始めることをおすすめします。特に5月短答式合格の場合は学習時間が限られるため、短答式試験の受験前から租税法の学習を少しずつ進めておくことも有効です。予備校の講座を利用すれば、体系的に学習を進められます。
Q. 公認会計士論文式試験の過去問はどこで入手できますか?
公認会計士論文式試験の過去問は、公認会計士・監査審査会の公式ウェブサイトで無料で入手できます。直近の試験問題と論文式試験の出題趣旨・講評が公開されています。
また、予備校(CPA会計学院、TAC、大原など)では、過去問集や模範解答を掲載した教材を販売しています。予備校の教材には、単なる問題と解答だけでなく、詳しい解説や答案の書き方のポイントが含まれているため、効率的な学習に役立ちます。
過去問の活用方法については、公認会計士試験の過去問活用法で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。過去問は出題傾向の把握だけでなく、答案作成の実践練習にも最適です。
Q. 公認会計士論文式試験の合格発表はいつですか?
公認会計士論文式試験の合格発表は、例年11月中旬頃に行われます。試験実施が8月下旬のため、合格発表までは約2.5ヶ月程度の期間があります。
合格発表は公認会計士・監査審査会の公式ウェブサイトで行われ、合格者の受験番号が掲載されます。また、受験者には郵送で合否通知が送付されます。合格者には論文式試験合格証書が交付され、これにより実務補習所への入所資格と実務経験の開始資格が得られます。
合格発表後は、監査法人の就職活動が本格化します。多くの合格者は合格発表前から監査法人の説明会や面接に参加しており、合格発表後すぐに内定を得られるよう準備しています。詳しい日程や手続きについては、公認会計士試験の合格発表で解説しています。
まとめ:公認会計士論文式試験の攻略と合格への道筋
本記事では、公認会計士論文式試験の制度概要、試験科目、合格基準、効果的な勉強法について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 論文式試験は記述式による総合的な応用力評価:短答式試験の基礎知識を土台として、実務で必要となる思考力・判断力・論述力が評価されます。会計学300点、監査論・企業法・租税法・選択科目各100点の合計700点満点で、年1回8月に3日間にわたって実施される試験です。合格基準は得点比率52%以上(偏差値52程度)の相対評価で、各科目40%未満の足切りがあるため、苦手科目を作らないバランスの取れた学習が重要です。
- 科目別の効果的な対策と十分な学習時間の確保:論文式試験には1,200〜2,000時間程度の学習が必要で、配点の高い会計学(500-700時間)と新規科目の租税法(300-400時間)に重点的に時間を配分しましょう。各科目の特性に応じた学習方法を実践し、過去問や答案練習を通じて記述式の答案作成力を養成することが合格への近道です。
- 戦略的な科目選択と科目合格制度の理解:選択科目は自分の得意分野や学習背景を考慮して選択し、特別な理由がなければ経営学がおすすめです。科目合格制度(偏差値56以上で2年間免除)を理解し、一括合格を基本としつつ、万が一の際の保険として活用できる知識を持っておきましょう。
公認会計士論文式試験を理解できたら、次は具体的な学習計画の策定と実行を始めましょう。公認会計士の勉強法と公認会計士試験の勉強時間を参考に、自分に最適な学習スケジュールを立てることをおすすめします。
本記事を通じて、公認会計士論文式試験の全体像と効果的な対策方法を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、公認会計士試験の最終関門である論文式試験の合格に向けて、着実に準備を進めましょう。計画的な学習と継続的な努力により、必ず合格を勝ち取ることができます。
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