全経簿記について調べているあなたへ。「全経簿記とは何か」「日商簿記とどう違うのか」という疑問は、適切な情報を得ることで解決できます。
本記事では、全経簿記の正式名称と基本情報、試験制度の詳細、日商簿記との違い、そして税理士試験の受験資格を取得できる全経簿記上級の特徴について、実際のデータを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、自分に合った簿記資格選びの実現に向けて、具体的な一歩を踏み出しましょう。
- 全経簿記の正式名称と主催団体の詳細情報
- 全経簿記上級から基礎簿記会計までの試験制度と難易度
- 日商簿記との違いと受験資格の比較
- 税理士試験の受験資格を取得できる全経簿記上級のメリット
- 全経簿記上級で税理士試験の受験資格を取得:全経簿記上級に合格すると日商簿記1級と同等に扱われ、税理士試験の受験資格を得られます。合格率は15%前後で日商簿記1級より若干高めです。
- 年4回の受験機会で計画的な学習が可能:全経簿記は年4回(5月・7月・11月・2月)実施されるため、日商簿記の年3回より受験機会が多く、短期間での再挑戦がしやすい特徴があります。
- 専門学校生以外も受験可能な公開試験:全経簿記は誰でも受験できる公開試験ですが、主に経理専門学校の学生が受験するため情報が少なく、一般的な認知度は日商簿記より低い傾向にあります。
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全経簿記(日商簿記)とは?正式名称と基本情報
全経簿記は、経理や会計の知識を証明する簿記検定試験の一つです。日商簿記と並んで日本の代表的な簿記資格として位置づけられています。このセクションでは、全経簿記の正式名称、主催団体、受験資格について詳しく解説します。簿記とは何かを基本から知りたい方は、まず簿記全般の基礎知識を確認しておくと理解が深まります。
全経簿記の正式名称は「簿記能力検定試験」
全経簿記の正式名称は「簿記能力検定試験」です。一般的には「全経簿記」「ZENKEI簿記」と呼ばれていますが、これは主催団体の略称から来ています。文部科学省の後援を受けた公的な資格試験として、長年にわたり経理・会計分野の人材育成に貢献してきました。
簿記能力検定試験は、商業簿記と工業簿記の両方を体系的に学習できる内容となっています。特に上級については、日本簿記学会との連携により、理論的な裏付けのある出題内容が特徴です。経理専門学校や商業高校での学習カリキュラムとの親和性が高く、体系的な簿記教育の到達度を測る指標として活用されています。
主催団体は全国経理教育協会(ZENKEI)
全経簿記を主催しているのは、公益社団法人全国経理教育協会(通称:ZENKEI、全経)です。全国経理教育協会は1956年に設立され、経理教育の普及と向上を目的として活動している団体です。主に経理専門学校や商業高校と連携しながら、実務に直結した簿記教育の推進に取り組んでいます。
全国経理教育協会は、簿記能力検定試験のほかにも、計算実務能力検定や社会人常識マナー検定など、経理・会計に関連する複数の検定試験を実施しています。全国に多数の試験会場を持ち、特に経理専門学校のネットワークを活用した試験運営を行っているのが特徴です。
全経簿記の受験資格と受験者層
全経簿記には受験資格の制限がなく、学歴・年齢・国籍を問わず誰でも受験できます。どの級からでも受験可能で、飛び級での受験も認められています。この点は日商簿記と同様です。
ただし、受験者層には特徴があります。全経簿記の受験者は、経理専門学校や商業高校の学生が中心です。特に上級試験については、税理士試験の受験資格を目指す専門学校生の受験が多い傾向にあります。一方で、一般の社会人や独学者の受験は日商簿記ほど多くありません。これは試験情報や教材が専門学校を中心に流通しているためと考えられます。簿記の種類と選び方を理解しておくと、自分に適した簿記資格を選択しやすくなります。
全経簿記(日商簿記)の試験制度と級の構成
全経簿記は、上級・1級・2級・3級・基礎簿記会計の5つの級で構成されています。各級には明確な難易度差があり、段階的に簿記の知識を深めていく設計になっています。このセクションでは、各級の試験制度と出題内容の特徴を詳しく解説します。
全経簿記上級:税理士試験の受験資格を取得可能
全経簿記上級は、全経簿記の最高峰に位置する試験です。最大の特徴は、合格することで税理士試験の受験資格を取得できる点にあります。この点は日商簿記1級と同等の扱いとなっており、税理士を目指す方にとって重要な選択肢の一つです。
試験科目は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目で構成されています。出題範囲は日商簿記1級とほぼ同等で、企業会計基準や連結会計、税効果会計など、高度な会計処理の知識が求められます。試験時間は合計4時間で、午前と午後に分けて実施されます。各科目とも70点以上の得点が必要となる絶対評価制度を採用しています。
全経簿記1級:商業簿記・会計学と原価計算・工業簿記
全経簿記1級は、商業簿記・会計学と原価計算・工業簿記の2科目で構成されています。上級と比較すると、やや範囲が限定されており、中小企業の経理実務に必要な知識を中心に出題されます。各科目とも試験時間は90分で、70点以上の得点で合格となります。
商業簿記・会計学では、株式会社の会計処理を中心に、決算整理や財務諸表の作成が主な出題内容です。原価計算・工業簿記では、製造業における原価計算の基礎から、CVP分析や予算管理までが出題範囲となります。日商簿記2級より難しく、日商簿記1級より易しいレベルと位置づけられています。
全経簿記2級:商業簿記または工業簿記の科目合格制
全経簿記2級の最大の特徴は、科目合格制を採用している点です。商業簿記と工業簿記の2科目があり、各科目を別々に受験して合格することができます。両科目に合格すると2級の資格を取得できる仕組みです。この制度により、得意科目から順番に学習を進めることが可能になっています。
商業簿記では、個人商店や中小企業の日常取引から決算までの一連の会計処理が出題されます。工業簿記では、製造業の原価計算の基礎が中心です。各科目の試験時間は90分で、70点以上で合格となります。科目合格には有効期限がなく、一度合格した科目は永続的に有効です。
全経簿記3級と基礎簿記会計の内容
全経簿記3級は、商業簿記の基礎を学ぶ入門レベルの試験です。個人商店の日常的な取引を記録し、決算整理を行い、財務諸表を作成するまでの基本的な流れを理解しているかが問われます。試験時間は90分で、70点以上の得点で合格です。
基礎簿記会計は、全経簿記の中で最も易しい級として位置づけられています。簿記の基本概念である借方・貸方の概念や、簡単な仕訳処理、試算表の作成などが出題範囲です。簿記学習の入り口として、商業高校1年生や専門学校の初学者が受験することが多い試験です。試験時間は90分となっています。
簿記2級の試験制度に関してもっと詳しい記事はこちら
簿記2級とは?試験内容・難易度・取得メリットを徹底解説
全経簿記(日商簿記)の試験内容と出題範囲
全経簿記の試験内容は、各級によって明確に区分されています。上級から基礎簿記会計まで、段階的に難易度が上がる設計になっており、学習の進捗に応じて適切な級を選択できます。このセクションでは、各級の出題内容と特徴について詳しく解説します。
全経簿記上級の出題内容と難易度
全経簿記上級の出題内容は、企業会計の高度な知識が求められる内容となっています。商業簿記・会計学では、連結会計、キャッシュ・フロー計算書、税効果会計、リース会計など、日本の企業会計基準に基づいた複雑な会計処理が出題されます。特に連結会計は毎回出題される重要論点です。
工業簿記・原価計算では、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算、予算管理、経営分析など、製造業における管理会計の知識が幅広く問われます。計算問題だけでなく、会計理論を問う記述問題も出題されるため、単なる計算力だけでなく、会計の本質的な理解が必要です。難易度は日商簿記1級と同等かやや易しいレベルとされています。
全経簿記1級の出題内容
全経簿記1級は、中小企業の経理実務に必要な知識を中心に出題されます。商業簿記・会計学では、株式会社の会計処理が中心となり、有価証券、固定資産、引当金、税金などの決算整理や財務諸表の作成が主な内容です。上級と比較すると、連結会計や税効果会計などの高度な論点は含まれません。
原価計算・工業簿記では、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算の基礎が出題範囲です。CVP分析や部門別計算なども含まれますが、上級ほど複雑な応用問題は出題されません。日商簿記2級と日商簿記1級の中間レベルと考えると分かりやすいでしょう。各科目とも計算問題が中心ですが、理論問題も一部含まれます。
全経簿記2級・3級の出題内容
全経簿記2級の商業簿記では、商品売買、手形取引、固定資産、決算整理など、中小企業の日常的な取引と決算処理が出題されます。工業簿記では、製造業における原価計算の基礎的な内容が中心です。個別原価計算と総合原価計算の基本的な計算方法を理解していることが求められます。
全経簿記3級は、個人商店レベルの簿記が出題範囲です。現金・預金取引、商品売買、手形取引、固定資産などの基本的な仕訳と、試算表の作成、精算表の作成、財務諸表の作成が主な内容となります。基礎簿記会計では、さらに基本的な借方・貸方の概念、簡単な仕訳、試算表の読み方などが出題されます。
記述式問題が多い全経簿記の特徴
全経簿記の大きな特徴の一つは、記述式問題が多く出題される点です。特に上級と1級では、計算問題だけでなく、会計理論を説明する記述問題が一定の割合で含まれています。これは日本簿記学会の監修を受けているためで、単なる計算技術だけでなく、会計の理論的な理解を重視する姿勢の表れです。
記述問題では、会計処理の根拠や、特定の会計基準の内容、財務諸表の読み方などが問われます。例えば「繰延税金資産とは何か説明しなさい」「連結会計の必要性について述べなさい」といった出題があります。このため、テキストを読んで理論を理解し、自分の言葉で説明できる力を養うことが重要です。一方で、2級以下は計算問題が中心となり、記述問題の比重は低くなります。
全経簿記の試験内容に関してもっと詳しい記事はこちら
簿記3級とは?試験内容・難易度・取得メリットを徹底解説
全経簿記(日商簿記)の合格率と難易度
全経簿記の合格率は級によって大きく異なります。上級は15%前後と難関資格の水準ですが、下位級になるほど合格率は高くなる傾向にあります。このセクションでは、各級の合格率データと難易度について詳しく解説します。
全経簿記上級の合格率は15%前後
全経簿記上級の合格率は、年度によって変動がありますが、概ね15%前後で推移しています。2022年度は14.8%、2023年度は16.2%という実績があります。日商簿記1級の合格率が10%前後であることを考えると、全経簿記上級の方がやや合格しやすい傾向にあると言えます。
ただし、受験者層を考慮する必要があります。全経簿記上級の受験者は、経理専門学校で体系的に学習した学生が中心です。一定の学習期間を経て受験する準備の整った受験者が多いため、合格率がやや高めになっている可能性があります。試験の絶対的な難易度としては、日商簿記1級と同等かやや易しいレベルと考えられています。
全経簿記1級の合格率は30~60%
全経簿記1級の合格率は、科目によって大きく異なります。商業簿記・会計学は30~40%程度、原価計算・工業簿記は50~60%程度の合格率となっています。工業簿記の方が合格率が高い傾向にあります。これは、工業簿記の出題パターンがある程度決まっており、対策を立てやすいためと考えられます。
両科目とも70点以上で合格という絶対評価制度のため、しっかりと学習すれば合格可能な試験です。日商簿記2級と比較すると難しいですが、日商簿記1級と比較すると明らかに易しいレベルとなっています。経理実務に必要な中級レベルの知識を証明する資格として、適切な難易度設定がなされています。
全経簿記2級・3級・基礎簿記会計の合格率
全経簿記2級の合格率は、商業簿記が50~60%、工業簿記が60~70%程度です。科目合格制を採用しているため、1科目ずつ集中して学習できることが合格率の高さにつながっています。また、得意な科目から受験できるため、計画的な資格取得が可能です。
全経簿記3級の合格率は60~70%程度で推移しています。基礎的な内容が中心のため、しっかりと学習すれば合格は十分可能なレベルです。基礎簿記会計の合格率はさらに高く、70~80%程度となっています。簿記学習の入門として適切な難易度設定がなされており、初学者でも取り組みやすい試験と言えます。
各級の難易度と対象レベル
全経簿記の各級は、学習段階に応じた明確な難易度設定がなされています。基礎簿記会計は簿記学習の入門レベルで、商業高校や専門学校の1年生が対象です。全経簿記3級は、個人商店レベルの簿記が理解できるレベルで、日商簿記3級とほぼ同等の難易度となっています。
全経簿記2級は、中小企業の経理担当者として必要な基礎知識を持つレベルです。日商簿記2級より若干易しいとされています。全経簿記1級は、中小企業の経理責任者として必要な知識レベルで、日商簿記2級と日商簿記1級の中間に位置します。全経簿記上級は、大企業の経理担当者や税理士を目指す方に求められる高度な会計知識が必要なレベルです。
簿記1級の難易度に関してもっと詳しい記事はこちら
簿記1級の難易度|他資格との比較と合格への道筋
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全経簿記上級と税理士試験の受験資格
全経簿記上級の最大のメリットは、合格することで税理士試験の受験資格を取得できる点です。このセクションでは、税理士試験の受験資格制度と、全経簿記上級がどのように評価されているかを詳しく解説します。
全経簿記上級合格で税理士試験の受験資格を取得
税理士試験を受験するには、一定の受験資格を満たす必要があります。その受験資格の一つが「日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者または全国経理教育協会主催簿記能力検定試験上級合格者」です。つまり、全経簿記上級に合格すると、日商簿記1級と同等の扱いを受け、税理士試験の受験が可能になります。
この制度により、高校卒業後すぐに税理士を目指す方や、大学で会計学を専攻していない方でも、税理士試験に挑戦する道が開かれています。特に経理専門学校では、全経簿記上級を取得してから税理士試験に進むカリキュラムを組んでいることが多く、実績のある学習ルートとなっています。
日商簿記1級と同等と認められる理由
全経簿記上級が日商簿記1級と同等に扱われる理由は、その出題範囲と難易度にあります。全経簿記上級の試験範囲は、企業会計基準に基づいた高度な会計処理を網羅しており、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目すべてで70点以上を取る必要があります。
また、全経簿記上級は日本簿記学会の協力を得て作成されており、会計理論の理解も重視されています。記述式問題が多く含まれることも、単なる計算技術だけでなく、会計の本質的な理解を求める姿勢の表れです。こうした試験内容が評価され、税理士試験の受験資格として認められています。
税理士を目指す方に全経簿記上級がおすすめの理由
税理士を目指す方にとって、全経簿記上級には複数のメリットがあります。第一に、年4回の試験実施により、短期間での再挑戦が可能です。日商簿記1級は年2回のため、不合格の場合は半年待つ必要がありますが、全経簿記上級なら最短3ヶ月で再受験できます。
第二に、合格率が日商簿記1級よりやや高い傾向にあります。前述のとおり、全経簿記上級は15%前後、日商簿記1級は10%前後の合格率です。特に経理専門学校で体系的に学習している方にとっては、全経簿記上級の方が合格しやすい可能性があります。第三に、専門学校のカリキュラムと連動しているため、効率的な学習が可能です。
全経簿記と日商簿記の違いを徹底比較
全経簿記と日商簿記は、どちらも日本を代表する簿記検定試験ですが、いくつかの重要な違いがあります。このセクションでは、主催団体、試験回数、難易度、認知度の観点から両者を比較します。自分に合った簿記資格を選ぶ際の参考にしてください。
主催団体と対象受験者の違い
日商簿記は、日本商工会議所および各地商工会議所が主催する試験です。日本商工会議所は、全国の商工業者を会員とする経済団体で、ビジネス実務に即した検定試験を多数実施しています。一方、全経簿記は、公益社団法人全国経理教育協会が主催しており、主に経理教育の推進を目的としています。
この主催団体の違いは、対象受験者の違いにも表れています。日商簿記は、社会人、大学生、高校生など幅広い層が受験する一般的な試験です。一方、全経簿記は、経理専門学校や商業高校の学生が中心となっています。そのため、教材や試験対策情報も、日商簿記の方が一般向けに広く流通しています。簿記1級(日商簿記1級)の詳細を確認すると、日商簿記の特徴がよく分かります。
試験回数と実施時期の違い(年4回 vs 年3回)
試験実施回数も大きな違いの一つです。全経簿記は年4回(5月・7月・11月・2月)実施されます。一方、日商簿記の統一試験は年3回(6月・11月・2月)です。日商簿記にはネット試験(CBT方式)もあり、2級と3級は随時受験可能ですが、1級は統一試験のみとなっています。
全経簿記の年4回実施は、受験機会が多いというメリットがあります。特に税理士試験の受験資格を目指す方にとって、3ヶ月ごとに受験機会があることは大きな利点です。不合格の場合でも短期間で再挑戦でき、学習のモチベーション維持にもつながります。ただし、試験会場は主に経理専門学校などに限られるため、日商簿記ほど全国的に受験しやすいわけではありません。
難易度の違い(全経簿記上級≒日商簿記1級)
各級の難易度を比較すると、以下のような対応関係があります。全経簿記上級は日商簿記1級とほぼ同等の難易度です。出題範囲もほぼ同じで、高度な会計知識が求められます。合格率を見ると、全経簿記上級が15%前後、日商簿記1級が10%前後と、全経簿記上級の方がやや合格しやすい傾向にあります。
全経簿記1級は、日商簿記2級と日商簿記1級の中間レベルです。全経簿記2級は、日商簿記2級よりやや易しいレベルとされています。全経簿記3級は、日商簿記3級とほぼ同等の難易度です。このように、同じ級数でも必ずしも同じ難易度ではない点に注意が必要です。全商簿記の詳細も参考にすると、簿記検定全体の難易度感がつかめます。
認知度と就職・転職での評価の違い
就職・転職市場での認知度と評価には明確な違いがあります。日商簿記は、企業の人事担当者の間で広く認知されており、求人票にも「日商簿記2級以上」といった条件が頻繁に記載されています。一方、全経簿記は、経理専門学校や一部の業界関係者には認知されていますが、一般企業での認知度は日商簿記に及びません。
ただし、全経簿記上級については、税理士試験の受験資格として認められているため、会計事務所や税理士法人では適切に評価されます。また、経理専門学校出身者を積極的に採用する企業では、全経簿記の価値を理解している場合もあります。履歴書には「全経簿記上級合格(税理士試験受験資格)」と記載することで、その価値をアピールできます。
全経簿記と日商簿記の違いに関してもっと詳しい記事はこちら
簿記の種類とは?日商・全商・全経の違いと選び方を解説
全経簿記上級と日商簿記1級はどちらが合格しやすい?
税理士試験の受験資格を目指す方にとって、全経簿記上級と日商簿記1級のどちらを選ぶかは重要な選択です。このセクションでは、合格率、出題傾向、勘定科目の違いなど、複数の観点から両者を比較します。
合格率の比較(全経簿記上級15% vs 日商簿記1級10%)
データ上の合格率を見ると、全経簿記上級が15%前後、日商簿記1級が10%前後と、全経簿記上級の方が約1.5倍高い合格率となっています。この数字だけを見ると、全経簿記上級の方が合格しやすいように思えます。実際、多くの経理専門学校では、全経簿記上級の方が合格しやすいという指導をしています。
ただし、受験者層の違いを考慮する必要があります。全経簿記上級の受験者は、経理専門学校で体系的に学習した準備の整った受験者が中心です。一方、日商簿記1級は、独学者や社会人も多く受験するため、準備不足の受験者も含まれる可能性があります。こうした背景を考慮すると、単純に合格率だけで判断することは難しい面もあります。
出題傾向の違い(論点分割 vs 総合問題)
出題傾向にも特徴的な違いがあります。全経簿記上級は、各論点を比較的独立した問題として出題する傾向があります。例えば、連結会計、キャッシュ・フロー計算書、税効果会計などが個別の大問として出題されることが多く、一つの論点に集中して取り組めます。
一方、日商簿記1級は、複数の論点を組み合わせた総合問題が出題される傾向にあります。一つの大問の中で、固定資産、リース取引、退職給付会計など、複数の論点が絡み合った問題が出ることがあります。このため、各論点を個別に理解するだけでなく、複合的に処理する能力が求められます。全経簿記上級の方が、学習した論点がそのまま得点に結びつきやすいと言えるでしょう。
勘定科目の違いと対策の必要性
全経簿記と日商簿記では、使用する勘定科目に若干の違いがあります。例えば、日商簿記では「売掛金」と表記するものを、全経簿記では「得意先」と表記することがあります。また、「買掛金」を「仕入先」、「貸倒引当金」を「貸倒損失引当金」と表記するケースもあります。
こうした勘定科目の違いは、過去問演習をしっかり行えば対応可能です。特に専門学校で学習している場合は、使用するテキストが全経簿記に対応しているため問題ありません。独学で日商簿記の教材を使用して全経簿記上級を目指す場合は、全経簿記の過去問を入手して、勘定科目の違いを確認しておくことをおすすめします。
全経簿記上級の合格に関してもっと詳しい記事はこちら
簿記1級とは?試験内容・難易度・取得メリットを徹底解説
全経簿記を取得するメリット
全経簿記には、日商簿記にはない独自のメリットがあります。特に税理士を目指す方や、短期間での資格取得を目指す方にとって、検討する価値のある選択肢です。このセクションでは、全経簿記を取得する4つの主要なメリットを解説します。
上級取得で税理士試験の受験資格を取得できる
最大のメリットは、全経簿記上級に合格することで税理士試験の受験資格を得られる点です。大学で会計学を専攻していない方や、高校卒業後すぐに税理士を目指す方にとって、これは非常に重要な選択肢となります。税理士試験の受験資格は、学歴要件、職歴要件、資格要件のいずれかを満たす必要がありますが、全経簿記上級はこの資格要件に該当します。
経理専門学校では、高校卒業後に入学し、2年間で全経簿記上級を取得して税理士試験に進むカリキュラムが一般的です。この学習ルートは、実績のある確立されたキャリアパスとなっています。また、社会人でも、仕事をしながら全経簿記上級を取得することで、税理士へのキャリアチェンジが可能になります。
日商簿記1級より合格しやすい
前述のとおり、合格率のデータでは全経簿記上級の方が日商簿記1級より高い傾向にあります。これは、出題傾向が論点ごとに分かれており対策しやすいこと、経理専門学校のカリキュラムと連動していることなどが理由として考えられます。
特に経理専門学校で学習している方にとっては、授業内容と試験内容の親和性が高いため、効率的な学習が可能です。また、専門学校には過去の受験データや合格ノウハウが蓄積されているため、的を絞った対策ができます。税理士試験の受験資格を取得する手段として、日商簿記1級より全経簿記上級を選択する合理性があると言えます。
年4回実施で受験機会が多い
全経簿記は年4回(5月・7月・11月・2月)実施されるため、日商簿記1級の年2回(6月・11月)と比較して、受験機会が2倍あります。これは、短期間での資格取得を目指す方にとって大きなメリットです。もし5月に不合格だった場合、7月に再受験できるため、最短2ヶ月での再挑戦が可能です。
受験機会が多いことは、学習のモチベーション維持にもつながります。次の試験までの期間が短いため、不合格のショックから早く立ち直り、次回に向けて学習を継続しやすくなります。また、学習内容を忘れないうちに再受験できるため、知識の定着にも有利です。税理士試験が毎年8月に実施されることを考えると、7月や5月の全経簿記上級に合格すれば、翌年の税理士試験に向けて十分な準備期間を確保できます。
履歴書に記載でき経理職で評価される
全経簿記の資格は履歴書に記載できる正式な資格です。特に全経簿記上級は、会計事務所や税理士法人などの専門職では適切に評価されます。履歴書には「全国経理教育協会主催 簿記能力検定試験上級合格」と正式名称で記載します。括弧書きで「税理士試験受験資格取得」と付記すると、その価値がより明確に伝わります。
経理専門学校出身者を積極的に採用する企業では、全経簿記の価値を理解している場合も多くあります。また、1級や2級については、中小企業の経理職への就職・転職において評価される場合があります。ただし、認知度の面では日商簿記に劣るため、就職・転職の主目的で簿記資格を取得する場合は、日商簿記も併せて取得することをおすすめします。
全経簿記のデメリットと注意点
全経簿記にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。資格選びの際には、これらのマイナス面も理解した上で判断することが重要です。このセクションでは、全経簿記の3つの主要なデメリットを解説します。
日商簿記より認知度が低い
全経簿記の最大のデメリットは、一般企業における認知度の低さです。日商簿記は、「簿記といえば日商簿記」と言えるほど広く認知されており、企業の人事担当者のほとんどが理解している資格です。一方、全経簿記は、経理専門学校や一部の業界関係者には知られていますが、一般企業での認知度は限定的です。
このため、就職・転職の際に「全経簿記2級」と履歴書に記載しても、その価値が正しく理解されない可能性があります。面接で説明を求められる場合もあり、日商簿記と比較して手間がかかります。認知度の低さは、せっかく取得した資格の価値が十分に評価されないというリスクにつながります。
求人票では「日商簿記2級」が条件になることが多い
企業の求人票を見ると、経理職の応募条件として「日商簿記2級以上」と明記されているケースが非常に多く見られます。一方、「全経簿記2級以上」という条件で募集している求人は極めて少ないのが現状です。これは、前述の認知度の低さに起因しています。
このため、就職・転職を主目的として簿記資格を取得する場合は、全経簿記だけでなく日商簿記も併せて取得することをおすすめします。全経簿記上級については、税理士試験の受験資格として認められているため、会計事務所や税理士法人では適切に評価されますが、一般企業への就職・転職では「日商簿記1級」の方が有利な場合が多いでしょう。
受験者数が少なく情報が限られる
全経簿記は、日商簿記と比較して受験者数が少ないため、市販の教材や受験情報が限られています。日商簿記には多数のテキスト、問題集、参考書が書店に並んでいますが、全経簿記専用の市販教材は非常に少ないのが現状です。また、インターネット上の受験体験記や合格体験談も日商簿記ほど多くありません。
この情報の少なさは、独学での合格を難しくする要因となっています。過去問の入手も、日商簿記ほど容易ではありません。全経簿記を受験する場合は、経理専門学校に通うか、専門学校が発行している教材を入手するなどの対策が必要です。また、受験会場も主に経理専門学校などに限られるため、地域によっては受験しにくい場合があります。
全経簿記のデメリットに関してもっと詳しい記事はこちら
簿記の種類とは?日商・全商・全経の違いと選び方を解説
全経簿記の試験制度とCBT試験
全経簿記の試験は、年4回の定期試験に加えて、一部の級ではCBT試験も実施されています。このセクションでは、試験実施時期、CBT試験の対応級、申込方法について詳しく解説します。
試験実施時期(年4回:5月・7月・11月・2月)
全経簿記の定期試験は、年4回実施されます。具体的には、5月下旬、7月中旬、11月下旬、2月下旬の日曜日に実施されることが多いです。試験時間は級によって異なりますが、上級は午前と午後に分かれて実施され、1級以下は午前または午後の実施となります。
年4回の試験実施により、受験計画を立てやすいというメリットがあります。例えば、5月に受験して不合格だった場合、2ヶ月後の7月に再受験できます。また、経理専門学校の授業進度に合わせた受験が可能で、5月は1年生、11月は2年生といった形で、学習の区切りとして活用できます。試験日程の詳細は、全国経理教育協会のウェブサイトで毎年公表されます。
CBT試験の対応級(2級・3級)
全経簿記では、2級と3級についてCBT試験(Computer Based Testing)を実施しています。CBT試験は、テストセンターのパソコンを使用して受験する方式で、年間を通じて随時受験が可能です。自分の都合に合わせて受験日を選択できるため、学習が仕上がったタイミングで受験できます。
CBT試験の内容は、定期試験と同等の難易度です。出題範囲も同じで、合格基準も70点以上と変わりません。ただし、上級と1級はCBT試験に対応しておらず、定期試験のみの実施となっています。CBT試験を受験する場合は、全国経理教育協会が指定するテストセンターで受験します。受験料は定期試験と同額です。
インターネット申込とマイページ登録
全経簿記の申込方法は、受験方法によって異なります。定期試験の場合は、試験会場となる経理専門学校や商業高校に直接申し込む方法が一般的です。各試験会場が独自に受付を行うため、申込期間や方法は会場によって異なります。全国経理教育協会のウェブサイトで、最寄りの試験会場を検索できます。
CBT試験の場合は、全国経理教育協会のCBT試験専用サイトからインターネット申込を行います。まず、マイページを登録し、希望する受験日と試験会場を選択します。受験料の支払いはクレジットカードやコンビニ決済が利用できます。申込完了後、受験票が発行されるので、それを持参して受験します。受験結果は、試験終了後すぐに確認できる即時採点方式です。
全経簿記のCBT試験に関してもっと詳しい記事はこちら
簿記ネット試験(CBT)とは?統一試験との違い・申込方法を解説
全経簿記に関連するよくある質問(FAQ)
全経簿記について、受験を検討している方からよく寄せられる質問をまとめました。受験資格、難易度、認知度など、気になるポイントについて分かりやすく回答します。
Q. 全経簿記は専門学校生以外でも受験できますか?
全経簿記には受験資格の制限がなく、専門学校生以外の方も受験できます。社会人、大学生、高校生など、誰でも受験可能です。ただし、試験会場が経理専門学校などに限られるため、受験には事前に試験会場を確認する必要があります。独学で学習している方も受験できますが、教材や情報が日商簿記ほど豊富ではない点に注意が必要です。
Q. 全経簿記上級の難易度は日商簿記1級と同じですか?
全経簿記上級と日商簿記1級は、出題範囲と求められる知識レベルがほぼ同等です。ただし、合格率を見ると、全経簿記上級が15%前後、日商簿記1級が10%前後と、全経簿記上級の方がやや合格しやすい傾向にあります。これは出題傾向の違いや受験者層の違いによるもので、絶対的な難易度としては同等と考えてよいでしょう。
Q. 全経簿記上級で税理士試験の受験資格は取得できますか?
はい、全経簿記上級に合格すると、税理士試験の受験資格を取得できます。この点は日商簿記1級と同等の扱いです。税理士試験の受験資格として正式に認められているため、全経簿記上級合格後は税理士試験に挑戦できます。経理専門学校では、この学習ルートが一般的なカリキュラムとなっています。
Q. 全経簿記と日商簿記はどちらを受験すべきですか?
目的によって選択が異なります。税理士を目指す方で、短期間での受験資格取得を重視する場合は、年4回実施され合格率も若干高い全経簿記上級がおすすめです。一方、一般企業への就職・転職を主目的とする場合は、認知度の高い日商簿記の方が有利です。可能であれば、両方の資格を取得することで選択肢が広がります。
Q. 全経簿記2級の科目合格制とは何ですか?
全経簿記2級は、商業簿記と工業簿記の2科目で構成されており、各科目を別々に受験して合格できる制度です。一度に両科目を受験する必要はなく、得意な科目から順番に受験できます。両科目に合格すると2級の資格を取得できます。科目合格には有効期限がないため、自分のペースで学習を進められる点がメリットです。
Q. 全経簿記のCBT試験はいつから始まりましたか?
全経簿記のCBT試験は、2級と3級を対象に実施されています。CBT試験では、テストセンターのパソコンを使用して受験し、年間を通じて随時受験が可能です。自分の都合に合わせて受験日を選択できるため、学習が仕上がったタイミングで受験できます。ただし、上級と1級はCBT試験に対応しておらず、年4回の定期試験のみの実施です。
Q. 全経簿記は就職・転職に役立ちますか?
全経簿記は履歴書に記載できる正式な資格です。特に全経簿記上級は、会計事務所や税理士法人では税理士試験の受験資格として適切に評価されます。ただし、一般企業における認知度は日商簿記より低いため、就職・転職を主目的とする場合は日商簿記も併せて取得することをおすすめします。経理専門学校出身者を採用する企業では、全経簿記の価値を理解している場合もあります。
まとめ:全経簿記上級は税理士を目指す方に最適な簿記資格
本記事では、全経簿記の試験制度、日商簿記との違い、取得メリット・デメリットについて詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 税理士試験の受験資格を取得できる:全経簿記上級に合格すると、日商簿記1級と同等に扱われ、税理士試験の受験資格を得られます。合格率は15%前後で、年4回の受験機会があるため、短期間での資格取得を目指せます。
- 日商簿記との明確な違いがある:全経簿記は全国経理教育協会が主催し、主に経理専門学校の学生が受験します。試験回数は年4回と日商簿記より多いですが、一般企業での認知度は日商簿記より低い傾向にあります。
- 目的に応じた資格選択が重要:税理士を目指す方には全経簿記上級、一般企業への就職・転職を目指す方には日商簿記がおすすめです。それぞれの特徴を理解して、自分の目標に合った資格を選択しましょう。
税理士試験の受験資格取得を目指すなら、全経簿記上級に挑戦してみましょう。簿記1級の勉強時間と簿記専門学校の選び方を参考に、計画的に進めることをおすすめします。
本記事を通じて、全経簿記の特徴と活用方法を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、自分に最適な簿記資格の取得に向けて一歩を踏み出しましょう。
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