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簿記2級の難易度|3級との違いと合格に必要な学習レベル

簿記2級の取得を考えているあなたへ。「簿記2級は本当に難しいのか」「3級と比べてどれくらい難しいのか」という疑問は、試験の特徴と必要な学習レベルを理解することで解決できます。

本記事では、簿記2級の具体的な難易度、簿記3級との違い、合格に必要な勉強時間について、実際の合格率データや試験範囲改定の影響を交えて詳しく解説します。この情報をもとに、簿記2級合格に向けた現実的な学習計画を立て、効率的に試験対策を進めましょう。

この記事を読むとわかること
  • 簿記2級の難易度と合格率の実態
  • 簿記3級との具体的な違いと難易度の差
  • 簿記2級が難しい理由と対策方法
  • 合格に必要な勉強時間と学習スケジュール
押さえておきたい3つのポイント
  1. 合格率20%前後の難関資格:簿記2級の合格率は統一試験で10~30%、ネット試験で約40%と、簿記3級の約半分の合格率です。試験範囲改定により、以前よりも難易度が上昇しています。
  2. 工業簿記の追加が最大の壁:簿記2級では商業簿記に加えて工業簿記(原価計算)が新たに追加されます。製造業特有の原価計算は馴染みがなく、多くの受験者が苦戦するポイントです。
  3. 250~350時間の学習時間が必要:簿記3級保持者でも250~350時間、初学者の場合は400~500時間以上の勉強時間が必要です。計画的な学習スケジュールと効率的な対策が合格の鍵となります。
目次

簿記2級(日商簿記2級)の難易度は高い

簿記2級は日本商工会議所が主催する資格試験の中でも、実務レベルの知識が求められる難関資格として知られています。簿記3級が基礎的な商業簿記のみを扱うのに対し、簿記2級では商業簿記の高度化に加えて工業簿記(原価計算)が追加されるため、学習範囲が大幅に広がります。

合格率20%前後の難関資格

簿記2級の合格率は、試験形式や実施年度によって変動がありますが、統一試験(ペーパー試験)では概ね10~30%で推移しています。2023年度の統一試験における合格率は第164回が21.1%、第165回が26.5%、第166回が11.9%と、回によって大きく異なるものの、平均すると20%前後となっています。

一方、2020年12月に開始されたネット試験(CBT方式)では、合格率が約40%前後と統一試験よりも高い傾向にあります。これは受験者が自分の準備が整ったタイミングで受験できることや、問題の出題パターンに慣れやすいことが要因と考えられています。

簿記3級の約半分の合格率

簿記2級の難易度を理解する上で、簿記3級との比較は重要です。簿記3級の合格率は統一試験で約40~50%、ネット試験で約50%前後で推移しており、簿記2級の合格率は簿記3級のおよそ半分となっています。

この合格率の差は、単に試験内容が難しくなっただけでなく、出題範囲の広さ、問題の複雑さ、時間配分の難しさなど、複数の要因が重なった結果です。簿記3級で基礎を固めた受験者であっても、簿記2級では相当の学習時間と対策が必要となります。

実務レベルの知識が求められる

簿記2級は、企業の経理実務で実際に使用される会計処理を扱います。連結会計や税効果会計、リース取引など、実際の企業会計で頻繁に登場する論点が出題範囲に含まれています。これらは単なる暗記では対応できず、仕訳の仕組みや会計処理の背景にある考え方を理解する必要があります。

また、工業簿記では製造業における原価計算の流れを体系的に理解し、材料費・労務費・製造経費の配賦計算や、標準原価計算、直接原価計算などの応用的な論点にも対応しなければなりません。このように、簿記2級は実務で即戦力となるレベルの知識が求められる資格です。

簿記2級の試験内容では、試験科目の詳細や出題範囲について詳しく解説していますので、参考にしてください。

簿記2級(日商簿記2級)と3級の難易度比較

簿記2級と簿記3級の難易度差を具体的に理解することは、学習計画を立てる上で非常に重要です。試験科目の構成、合格率、必要な勉強時間、出題範囲の広さなど、様々な観点から両者の違いを見ていきましょう。

試験科目の違い(商業簿記のみ vs 商業簿記+工業簿記)

簿記3級は商業簿記のみで構成されており、試験時間は60分、100点満点中70点以上で合格となります。出題される内容は、仕訳、帳簿記入、試算表、精算表、財務諸表の作成など、基本的な会計処理に限定されています。

これに対して簿記2級は、商業簿記(60点)と工業簿記(40点)の2科目で構成されており、試験時間は90分です。商業簿記では簿記3級の内容をベースに、より高度な取引や会計処理が求められます。さらに、工業簿記という全く新しい科目が加わることで、学習負担が大幅に増加します。

工業簿記は製造業における原価計算を扱う科目であり、材料費・労務費・製造経費の分類や配賦、製造原価報告書の作成など、商業簿記とは異なる独特の論点を学ぶ必要があります。この2科目制が簿記2級の難易度を大きく引き上げている要因の一つです。

合格率の違い(3級40~50% vs 2級10~30%)

合格率の数値は、試験の難易度を端的に示す指標となります。簿記3級の統一試験における合格率は、近年40~50%で推移しており、2023年度は第164回が45.8%、第165回が41.2%、第166回が39.0%でした。ネット試験ではさらに高く、50%前後の合格率となっています。

一方、簿記2級の統一試験合格率は10~30%と、簿記3級の半分以下です。特に試験範囲改定後の2017年度以降は、難易度が上昇し、10%台の合格率となる回も珍しくありません。ネット試験では約40%と統一試験より高めですが、それでも簿記3級と比べると明らかに低い水準です。

この合格率の差は、出題内容の難易度だけでなく、時間内に全問を解答する難しさ、工業簿記という新科目への対応など、複合的な要因によるものです。

必要な勉強時間の違い(3級50~100時間 vs 2級250~350時間)

簿記3級の合格に必要な勉強時間は、初学者の場合で50~100時間程度が目安とされています。基本的な仕訳や帳簿記入を理解し、問題演習を重ねることで、2~3ヶ月程度の学習期間で合格レベルに達することが可能です。

これに対し、簿記2級は簿記3級保持者でも250~350時間、初学者の場合は400~500時間以上の勉強時間が必要です。工業簿記の学習に100~150時間、商業簿記の高度な論点の習得に150~200時間程度を要するため、学習期間は4~6ヶ月以上となるのが一般的です。

働きながら学習する場合、平日は1~2時間、休日は4~5時間の学習時間を確保しても、6ヶ月程度はかかります。この時間的な負担の大きさも、簿記2級の難易度を高めている要因です。

出題範囲の広さの違い

簿記3級の出題範囲は、現金・預金、商品売買、手形取引、固定資産、税金、資本など、基本的な商業簿記の論点に限定されています。学習すべき論点数は比較的少なく、各論点も基礎的な内容が中心です。

簿記2級では、これに加えて株式会社会計、連結会計、税効果会計、リース取引、外貨建取引、有価証券、固定資産の減損など、実務で使用される高度な会計処理が出題範囲に含まれます。さらに工業簿記では、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算、CVP分析など、多岐にわたる原価計算の論点を学ぶ必要があります。

2016年度からの試験範囲改定により、従来は簿記1級の範囲だった連結会計や税効果会計が簿記2級に追加されたことで、出題範囲はさらに広がりました。この出題範囲の広さが、学習時間の増加と難易度上昇につながっています。

簿記3級の試験内容と難易度では、簿記3級の詳細な試験内容を解説していますので、両者の違いをより深く理解したい方は参考にしてください。

簿記2級の難易度が高い4つの理由

簿記2級が難しいと感じる受験者が多いのには、明確な理由があります。工業簿記の追加、商業簿記の高度化、時間制限の厳しさ、試験範囲改定による難易度上昇という4つの主要因について、詳しく見ていきましょう。

理由①:工業簿記(原価計算)が追加される

簿記2級で最も大きな壁となるのが、工業簿記という新しい科目の登場です。商業簿記が商品の売買を扱うのに対し、工業簿記は製造業における製品の製造過程を会計的に記録する分野です。材料を仕入れて製品を作り、それを販売するまでの一連の流れを、原価という観点から把握する必要があります。

工業簿記では、材料費・労務費・製造経費という3つの原価要素の分類と集計、製造間接費の配賦計算、仕掛品勘定の処理、製造原価報告書の作成など、商業簿記とは全く異なる概念と計算方法を学びます。特に製造間接費の配賦や、標準原価計算における差異分析など、初めて学ぶ人には理解しにくい論点が多く含まれています。

工業簿記は試験全体の40点分を占めるため、この科目を苦手にすると合格が難しくなります。商業簿記で高得点を取っても、工業簿記で大きく失点すると70点に届かないケースが多いのです。

理由②:商業簿記の内容も高度化する

簿記2級の商業簿記は、簿記3級の内容をベースとしながらも、より実務的で複雑な会計処理が求められます。株式会社の設立、増資、剰余金の配当、株式の発行といった株式会社特有の会計処理、連結会計における資本連結や成果連結、税効果会計の計算など、実務で頻繁に使用される高度な論点が出題されます。

特に連結会計は、親会社と子会社の財務諸表を合算し、連結財務諸表を作成する過程で、投資と資本の相殺消去、未実現利益の消去などの連結修正仕訳を行う必要があります。この連結会計は、2016年度の試験範囲改定で簿記1級から移管された論点であり、簿記2級受験者にとって大きな負担となっています。

また、リース取引や外貨建取引、有価証券の評価、固定資産の減損処理など、多様な取引形態への対応も求められます。これらは単なる暗記では対応できず、会計基準の考え方や仕訳の理論的背景を理解する必要があります。

理由③:問題数が多く時間が足りない

簿記2級の試験時間は90分ですが、この時間内に商業簿記と工業簿記の問題を全て解答するには、相当なスピードと正確性が求められます。特に近年の試験では、問題文が長く、計算量も多い傾向にあり、時間内に全問を解き終えることができない受験者も少なくありません。

統一試験では、第1問が仕訳問題(20点)、第2問と第3問が商業簿記の個別問題(各20点)、第4問と第5問が工業簿記の問題(各20点)という構成が一般的です。各問題には複数の小問が含まれており、計算ミスが連鎖的に影響することもあります。

時間配分を誤ると、得意な問題に十分な時間を使えず、結果として得点できない事態に陥ります。商業簿記に時間をかけすぎて工業簿記が解けなかった、または逆のパターンで失敗する受験者が多いのです。試験対策では、時間管理のスキルを身につけることも重要な要素となります。

理由④:試験範囲改定で難易度が上昇

2016年度から2018年度にかけて、日本商工会議所は簿記2級の試験範囲を段階的に改定しました。この改定により、従来は簿記1級の範囲だった連結会計、税効果会計、リース取引などの高度な論点が、簿記2級に追加されることになりました。

改定の背景には、企業の会計実務が高度化・複雑化し、実務で必要とされる会計知識のレベルが上がったことがあります。簿記2級を実務で即戦力となるレベルに設定するため、より実践的な内容を取り入れたのです。

この試験範囲改定により、簿記2級の難易度は明確に上昇しました。改定前の2015年度までは合格率が30~40%で推移していましたが、改定後の2017年度以降は20%前後、時には10%台にまで低下する回も出てきました。改定前の教材や過去問だけで対策すると、新しい論点に対応できず不合格となるリスクがあります。

簿記2級の工業簿記が難しい理由

工業簿記は多くの簿記2級受験者が苦手とする科目です。商業簿記とは全く異なる考え方や計算方法が求められるため、初めて学ぶ際には戸惑う人が多いのが実情です。工業簿記の何が難しいのか、その理由を詳しく見ていきましょう。

製造業の原価計算という馴染みのない分野

工業簿記は製造業における原価計算を扱う分野です。商業簿記が商品の売買という日常的にイメージしやすい取引を対象とするのに対し、工業簿記では材料を仕入れて製品を製造する過程の原価を計算します。製造業での勤務経験がない人にとっては、製造プロセス自体がイメージしにくく、原価という概念も馴染みが薄いものです。

例えば、直接材料費と間接材料費、直接労務費と間接労務費という分類は、実際の製造現場をイメージできないと理解が難しくなります。製品を直接作るための材料費と、工場全体で使用される消耗品の違い、製品製造に直接関わる作業員の給料と、工場管理部門の給料の違いなど、製造業特有の原価の分類方法を習得する必要があります。

また、製造間接費の配賦という概念も、初学者には理解しにくいポイントです。工場の光熱費や減価償却費などを、どのように各製品に配分するかという計算は、実務経験がないと「なぜこんな計算をするのか」という疑問を持ちやすい論点です。

全体の流れを把握する必要がある

工業簿記では、材料の購入から製品の完成、そして販売に至るまでの一連の流れを、原価という観点から体系的に理解する必要があります。材料勘定、仕掛品勘定、製品勘定という3つの勘定科目を使って、製造プロセスにおける原価の流れを記録していきます。

この原価の流れは、個別原価計算と総合原価計算で異なります。個別原価計算は受注生産型の製造業で使用され、製造指図書ごとに原価を集計します。一方、総合原価計算は大量生産型の製造業で使用され、一定期間の製造活動全体で原価を集計し、製品1個あたりの原価を計算します。

さらに、標準原価計算では標準原価と実際原価の差異を分析し、直接原価計算では固定費と変動費を区別して利益計算を行うなど、原価計算の方法によって計算の流れが大きく異なります。これらの全体像を把握せずに個別の計算方法だけを暗記しようとすると、応用問題に対応できなくなります。

イメージしにくく苦手意識を持ちやすい

工業簿記が苦手とされる最大の理由は、計算過程や概念を視覚的にイメージしにくいことです。商業簿記の仕訳は「現金が増えた」「売掛金が減った」といったように、資産の増減として直感的に理解できますが、工業簿記の「仕掛品勘定から製品勘定への振替」などは、何が起きているのかをイメージしにくいのです。

また、製造間接費の配賦計算や、標準原価計算の差異分析など、複数の計算ステップを経る論点が多く、「なぜこの計算をするのか」という理論的背景が分からないまま公式を暗記しようとすると、少し問題形式が変わっただけで対応できなくなります。

工業簿記に苦手意識を持つと、勉強のモチベーションが下がり、結果として試験全体の得点力が低下します。工業簿記は40点分を占める重要科目であるため、この科目を克服できるかどうかが簿記2級合格の大きな分かれ道となります。図やフローチャートを活用し、原価の流れを視覚的に理解する学習方法が効果的です。

簿記2級の試験範囲改定と難易度上昇(2016年度以降)

簿記2級の難易度が近年上昇している大きな要因は、2016年度から実施された試験範囲改定です。この改定により、実務で求められる会計知識の水準に合わせて、より高度な論点が出題されるようになりました。

2016年度から3年かけて段階的に改定

日本商工会議所は、企業の会計実務の高度化に対応するため、2016年度(第143回試験)から2018年度にかけて、簿記検定の出題区分表を段階的に改定しました。この改定は一度に全ての変更を実施するのではなく、3年間かけて段階的に新しい論点を追加する方式で行われました。

改定のスケジュールは以下の通りです。2016年度第143回試験(6月実施)から、クレジット売掛金、電子記録債権・債務、役務収益・役務原価などが追加されました。2017年度第146回試験(6月実施)からは、連結会計の基礎的な内容が追加され、2018年度からは税効果会計やリース取引の詳細な内容が出題範囲に含まれることになりました。

この段階的な改定により、受験者は新しい論点に徐々に対応する必要が生じました。特に独学者にとっては、どの教材が最新の出題範囲に対応しているかを確認することが重要となりました。

連結会計など簿記1級の範囲が追加

試験範囲改定で最も大きな変更点は、連結会計の追加です。連結会計は、従来は簿記1級の出題範囲であり、かなり高度な会計処理として位置づけられていました。親会社と子会社を一つの企業グループとして捉え、グループ全体の財務状況を示すために連結財務諸表を作成するという内容です。

簿記2級で出題される連結会計は、簿記1級ほど複雑ではないものの、投資と資本の相殺消去、非支配株主持分の計算、子会社株式の一部売却など、初学者にとっては理解が難しい論点が含まれています。特に連結修正仕訳の考え方は、個別財務諸表の仕訳とは異なる視点が必要となるため、多くの受験者が苦戦するポイントです。

このほかにも、税効果会計(将来減算一時差異と将来加算一時差異に基づく繰延税金資産・負債の計算)、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別と会計処理、外貨建取引の換算など、実務で頻繁に登場する高度な論点が追加されました。

改定後の難易度の変化

試験範囲改定後、簿記2級の合格率は明確に低下しました。改定前の2015年度までは、合格率が30~40%台で推移することが多かったのですが、改定が本格化した2017年度以降は、20%前後、時には10%台にまで下がる回も出てきました。

例えば、2017年度第146回試験(連結会計が初めて出題された回)の合格率は47.5%と比較的高かったものの、その後の第147回は25.0%、第148回は21.2%と低下しました。2018年度以降も、第149回が15.6%、第150回が14.7%、第151回が12.7%と、10%台の合格率が続く厳しい状況となりました。

この難易度上昇を受けて、受験者側も対策の見直しが必要となりました。新しい論点に対応した教材の使用、過去問だけでなく予想問題集での演習、連結会計や税効果会計といった難解な論点への集中的な学習など、より綿密な試験対策が求められるようになっています。

簿記2級の合格に必要な勉強時間

簿記2級に合格するためには、どのくらいの勉強時間が必要なのでしょうか。学習の出発点(簿記3級保持者か初学者か)や学習方法(独学か通信講座か)によって、必要な時間は大きく異なります。

簿記3級保持者の場合:250~350時間

簿記3級をすでに取得している人が簿記2級を目指す場合、一般的に250~350時間の勉強時間が必要とされています。簿記3級で商業簿記の基礎を学んでいるため、簿記2級の商業簿記はその応用として学習できますが、連結会計や税効果会計などの新しい論点には100~150時間程度の学習が必要です。

さらに、全く新しい科目である工業簿記の学習には100~150時間程度を要します。工業簿記は商業簿記とは異なる考え方や計算方法が必要なため、ゼロから学ぶつもりで取り組む必要があります。

1日の学習時間を平日1~2時間、休日3~4時間と想定すると、週あたり約15時間の学習が可能です。この場合、250時間なら約4ヶ月、350時間なら約6ヶ月の学習期間となります。働きながら学習する社会人の場合、4~6ヶ月程度の学習期間を見込むのが現実的でしょう。

初学者の場合:400~500時間以上

簿記の学習が全く初めての初学者が簿記2級を目指す場合、400~500時間以上の勉強時間が必要です。まず簿記の基本的な考え方(借方・貸方、仕訳のルール、帳簿記入の方法など)を理解する必要があり、これに100~150時間程度を要します。

その後、簿記2級レベルの商業簿記を150~200時間、工業簿記を100~150時間学習する必要があります。合計すると400~500時間以上となり、学習期間は6~8ヶ月、場合によっては1年近くかかることもあります。

ただし、初学者がいきなり簿記2級を目指すのは効率的ではありません。簿記3級の内容を飛ばして簿記2級を学ぼうとすると、基礎が不十分なまま応用問題に取り組むことになり、理解が浅くなりがちです。多くの教育機関や通信講座では、初学者にはまず簿記3級から始めることを推奨しています。

独学か通信講座かで変わる学習時間

同じ勉強時間でも、独学で学ぶか通信講座や専門学校を利用するかで、学習効率は大きく変わります。独学の場合、教材選び、学習計画の立案、疑問点の解決などを全て自分で行う必要があるため、試行錯誤に時間がかかります。特に工業簿記や連結会計など、理解が難しい論点では、適切な説明を受けられないことが学習の妨げになることがあります。

通信講座や専門学校を利用する場合、体系的なカリキュラムに沿って学習でき、講師の解説動画や質問サポートを受けられるため、学習効率が高まります。同じ250時間の学習でも、独学では不十分な理解にとどまるところを、講座を利用することで合格レベルに到達できる可能性があります。

ただし、通信講座や専門学校は費用がかかるため、予算とのバランスを考える必要があります。独学で挑戦する場合は、評価の高い教材を選び、学習スケジュールを綿密に立てることが重要です。

簿記2級の勉強時間と学習計画では、効率的な学習スケジュールの立て方や科目別の時間配分について詳しく解説していますので、参考にしてください。

簿記2級は統一試験とネット試験どちらが難しい?

簿記2級には、従来からのペーパー試験である統一試験と、2020年12月に開始されたネット試験(CBT方式)の2つの受験方式があります。どちらの方式で受験すべきか、難易度に違いはあるのかについて解説します。

公式には難易度は同じ

日本商工会議所の公式見解では、統一試験とネット試験の難易度は同じとされています。出題範囲、試験時間(90分)、合格基準(70点以上)は両者で共通であり、いずれの方式で合格しても同じ「日商簿記検定2級」の資格が得られます。

ネット試験の問題は、統一試験と同じ出題区分表に基づいて作成されており、難易度が同等になるように調整されています。また、ネット試験は膨大な問題プールから受験者ごとに異なる問題が出題されるため、受験者間で問題の難易度に差が出ないように設計されています。

したがって、公式の立場からは「どちらが簡単」ということはなく、受験者は自分の都合や受験環境の好みに応じて、どちらの方式で受験するかを選択できます。

ネット試験の方が合格率が高い傾向

公式には同じ難易度とされているものの、実際の合格率を見ると、ネット試験の方が統一試験よりも高い傾向にあります。統一試験の合格率が10~30%で推移しているのに対し、ネット試験の合格率は約40%前後となっています。

この合格率の差が生じる理由としては、いくつかの要因が考えられます。まず、ネット試験は受験者が自分で受験日時を選べるため、十分に準備が整った状態で試験に臨める点が挙げられます。統一試験は年3回の実施日が決まっているため、「とりあえず受けてみる」という準備不足の受験者も含まれますが、ネット試験ではそのような受験者が少ないと考えられます。

また、ネット試験は試験会場(テストセンター)で随時実施されるため、受験環境が比較的静かで集中しやすいことや、パソコン操作に慣れている人にとっては解答しやすい形式であることも、合格率の高さに影響している可能性があります。

試験形式の違いと対策

統一試験とネット試験では、試験の形式や受験環境に違いがあるため、それぞれに適した対策が必要です。

統一試験は紙の問題用紙と解答用紙を使用するペーパー試験です。計算用紙が別途配布され、電卓を使いながら手書きで解答します。問題全体を一覧して解く順番を自由に決められる、見直しがしやすいというメリットがあります。一方、解答用紙への記入ミスや、計算ミスの修正が手間になることがデメリットです。

ネット試験はパソコン画面上に問題が表示され、キーボードやマウスで解答を入力します。問題は1問ずつ表示され、解答後に次の問題へ進む形式です。電卓機能が画面上に表示されますが、自分の電卓を持ち込んで使用することも可能です。入力ミスの修正が簡単で、自動計算機能を活用できる点がメリットですが、問題全体を俯瞰しにくい、画面での長時間作業に疲労を感じやすいというデメリットがあります。

対策としては、統一試験を受験する場合は紙の問題集で演習を重ね、手書きでの解答に慣れることが重要です。ネット試験を受験する場合は、CBT対策用の模擬試験ソフトを利用して、パソコン画面での解答に慣れておくことをおすすめします。

簿記ネット試験の詳細では、ネット試験の申込方法や受験時の注意点について詳しく解説していますので、ネット試験を検討している方は参考にしてください。

簿記2級は独学で合格できる?

簿記2級は独学でも合格可能な資格ですが、適切な教材選びと計画的な学習が不可欠です。独学のメリット・デメリットを理解した上で、自分に合った学習方法を選びましょう。

独学での合格も可能

簿記2級は独学でも十分に合格可能な資格です。実際に、多くの合格者が市販の教材と過去問題集を使って独学で合格を果たしています。簿記2級の学習内容は、適切な教材を使えば独学でも理解できる範囲であり、特別な講義を受けなければ合格できないというものではありません。

独学のメリットは、学習費用を抑えられることと、自分のペースで学習できることです。通信講座や専門学校を利用すると数万円から十数万円の費用がかかりますが、独学なら教材費のみで数千円から1万円程度で済みます。また、仕事や家庭の都合に合わせて、自由に学習スケジュールを組める点も独学の魅力です。

ただし、独学には強い自己管理能力が求められます。学習計画を自分で立て、継続的に学習を進める意志の強さが必要です。また、疑問点が生じた際に質問できる相手がいないため、自分で解決する努力が求められます。

計画的な学習スケジュールが必要

独学で簿記2級に合格するには、計画的な学習スケジュールを立てることが最も重要です。試験日から逆算して、各科目にどれだけの時間を割り当てるか、いつまでにテキストを終わらせるか、過去問演習をいつから始めるかなど、具体的なスケジュールを作成しましょう。

学習スケジュールの例としては、最初の2~3ヶ月でテキストを使った基礎学習を行い、商業簿記と工業簿記の全範囲を一通り学習します。次の1~2ヶ月で問題集を使った演習を行い、各論点の理解を深めます。最後の1~2ヶ月で過去問や模擬試験を繰り返し解き、試験形式に慣れるとともに、弱点を補強します。

学習を継続するコツは、毎日決まった時間に学習する習慣を作ることです。平日は朝の1時間、または帰宅後の1~2時間を学習時間として確保し、休日は3~4時間まとめて学習するなど、無理のないペースで継続することが大切です。

また、学習の進捗を記録することもモチベーション維持に有効です。学習時間を記録するアプリを使ったり、学習計画表に実施した内容をチェックしたりすることで、達成感を得ながら学習を進められます。

通信講座や予備校の利用も検討すべき

独学に不安がある場合や、より確実に合格を目指したい場合は、通信講座や専門学校(予備校)の利用を検討する価値があります。これらの学習サービスには以下のようなメリットがあります。

通信講座や専門学校では、合格に必要な内容が体系的に整理されたカリキュラムが用意されています。何をどの順番で学べばよいかが明確になっているため、学習の迷いが少なくなります。また、プロの講師による解説動画や講義を受けられるため、独学では理解しにくい工業簿記や連結会計などの難解な論点も、分かりやすい説明で学習できます。

さらに、質問サポートがあることも大きなメリットです。学習中に疑問点が生じた際に、メールやチャットで質問できる体制が整っているため、躓いたポイントで学習が止まることを防げます。定期的な模擬試験や添削サービスがある講座では、自分の実力を客観的に把握し、弱点を効率的に補強できます。

費用面では、通信講座なら2万円~5万円程度、専門学校の通学講座なら5万円~15万円程度が一般的です。独学と比べると費用はかかりますが、確実に合格したい場合や、学習時間を効率化したい場合には、投資する価値があると言えるでしょう。

簿記2級と他の資格の難易度比較

簿記2級の難易度を他の資格と比較することで、その位置づけをより明確に理解できます。上位資格である簿記1級や、他の人気資格との難易度比較を見ていきましょう。

簿記1級の難易度(合格率10%前後)

簿記1級は、簿記検定の最高峰であり、公認会計士や税理士を目指す人が取得する超難関資格です。合格率は10%前後で推移しており、簿記2級と比べても格段に難易度が高くなっています。

簿記1級の試験内容は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目で構成されており、試験時間は3時間です。出題範囲は広く、企業会計原則や会計基準の深い理解、高度な連結会計、税効果会計の詳細、複雑な原価計算など、実務でも専門的な知識が求められる内容が出題されます。

簿記2級の合格に必要な勉強時間が250~350時間であるのに対し、簿記1級は500~1000時間以上の学習時間が必要とされています。また、簿記1級は各科目で足切り点(最低点)が設定されており、総合点で70点以上であっても、1科目でも足切り点に達していなければ不合格となる厳しい試験です。

簿記2級から簿記1級へのステップアップは、難易度の差が非常に大きいため、相応の覚悟と学習時間の確保が必要です。多くの受験者が1年以上かけて学習し、複数回受験してようやく合格するのが実情です。

他の人気資格との比較

簿記2級の難易度を、他の人気資格と比較してみましょう。

FP(ファイナンシャルプランナー)2級は、合格率が30~40%程度で、必要な勉強時間は150~300時間程度とされています。簿記2級と同程度かやや易しいレベルと言えます。FP2級は金融・保険・不動産・税金・相続など幅広い分野を扱いますが、各分野の深さは簿記2級ほど深くありません。

ITパスポート試験は、IT関連の基礎知識を問う国家試験で、合格率は50%前後です。必要な勉強時間は100~150時間程度であり、簿記2級よりは取得しやすい資格と言えます。

宅建士(宅地建物取引士)は、不動産取引の専門家としての国家資格で、合格率は15~17%程度です。必要な勉強時間は300~500時間程度とされており、簿記2級と同等かやや難しい資格と位置づけられます。

行政書士は、法律系の国家資格で、合格率は10~15%程度です。必要な勉強時間は500~1000時間程度であり、簿記2級よりも明確に難易度が高い資格です。

簿記2級の位置づけ

これらの比較から、簿記2級は「中級レベルの資格」として位置づけられます。初心者でも数ヶ月の学習で取得を目指せる入門レベルの資格(ITパスポート、FP3級など)よりは明確に難しく、超難関資格(簿記1級、税理士、公認会計士など)ほどではないものの、相応の学習時間と努力が必要な資格です。

簿記2級は、実務で即戦力となるレベルの会計知識を証明できる資格であり、就職・転職市場でも一定の評価を受けます。経理職を目指す人にとっては、最低限取得しておきたい資格と言えるでしょう。また、簿記2級を取得することで、より上位の資格(簿記1級、税理士、公認会計士)へのステップアップの基盤を作ることができます。

資格取得の目的が「経理の基礎知識を身につけたい」「就職・転職で有利にしたい」といったものであれば、簿記2級は適切な目標設定と言えます。一方、「公認会計士や税理士を目指したい」という場合は、簿記2級はあくまで通過点として位置づけ、最終的には簿記1級や各種国家試験への挑戦を視野に入れることになります。

簿記2級の合格率推移では、年度別・回別の詳細な合格率データと傾向分析を掲載していますので、試験の難易度をより詳しく知りたい方は参考にしてください。

簿記2級の難易度に関連するよくある質問(FAQ)

Q. 簿記2級は簿記3級よりどれくらい難しいですか?

簿記2級は簿記3級よりも格段に難易度が高くなります。合格率で見ると、簿記3級が40~50%であるのに対し、簿記2級は10~30%と約半分になります。出題範囲も大きく広がり、簿記3級が商業簿記のみであるのに対し、簿記2級では工業簿記が追加され、商業簿記の内容も連結会計や税効果会計など高度化します。必要な勉強時間も、簿記3級の50~100時間に対し、簿記2級は250~350時間(簿記3級保持者の場合)と約3~4倍になります。

Q. 簿記2級の難易度は近年上がっていますか?

はい、簿記2級の難易度は近年明確に上がっています。2016年度から2018年度にかけて実施された試験範囲改定により、従来は簿記1級の範囲だった連結会計や税効果会計が簿記2級に追加されました。この改定の影響で、合格率は改定前の30~40%から、改定後は20%前後、時には10%台にまで低下しています。企業の会計実務の高度化に対応するための改定であり、実務で即戦力となるレベルの知識が求められるようになっています。

Q. 簿記2級は初学者が独学で合格できますか?

簿記の学習が全く初めての初学者が独学で簿記2級に合格することは、不可能ではありませんが非常に困難です。400~500時間以上の学習時間が必要であり、独学では教材選びや学習計画の立案、疑問点の解決などを全て自分で行う必要があります。初学者の場合は、まず簿記3級から始めて基礎を固め、その後に簿記2級に進むことを強くおすすめします。どうしても独学で挑戦したい場合は、評価の高い教材を選び、計画的な学習スケジュールを立てることが重要です。

Q. 簿記2級の工業簿記はなぜ難しいのですか?

簿記2級の工業簿記が難しい主な理由は、製造業の原価計算という馴染みのない分野を扱うためです。商業簿記が商品売買という日常的にイメージしやすい取引を対象とするのに対し、工業簿記は材料を仕入れて製品を製造する過程の原価を計算します。製造業での勤務経験がない人には、製造プロセスや原価という概念自体がイメージしにくく、材料費・労務費・製造経費の分類や製造間接費の配賦など、独特の計算方法を理解する必要があります。また、全体の流れを体系的に把握しないと応用問題に対応できないため、苦手意識を持ちやすい科目です。

Q. 簿記2級のネット試験と統一試験、どちらが簡単ですか?

公式には両方の難易度は同じとされていますが、実際の合格率を見るとネット試験の方が高い傾向にあります。統一試験の合格率が10~30%であるのに対し、ネット試験は約40%前後です。ネット試験は受験者が自分で受験日時を選べるため、十分に準備が整った状態で試験に臨める点が合格率の高さにつながっていると考えられます。ただし、どちらの方式で合格しても同じ「日商簿記検定2級」の資格が得られるため、自分の受験環境の好みや都合に応じて選択することをおすすめします。

まとめ:簿記2級は難易度が高いが計画的な学習で合格可能

本記事では、簿記2級の難易度について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. 合格率20%前後の難関資格:簿記2級の合格率は統一試験で10~30%、ネット試験で約40%と、簿記3級の約半分です。2016年度からの試験範囲改定により、連結会計や税効果会計など簿記1級の範囲が追加され、難易度が明確に上昇しています。
  2. 工業簿記の追加が最大の壁:簿記2級では商業簿記に加えて工業簿記(原価計算)が新たに追加され、全く異なる考え方や計算方法を学ぶ必要があります。製造業特有の原価計算は馴染みがなく、全体の流れを把握する必要があるため、多くの受験者が苦戦します。
  3. 計画的な学習で合格は可能:簿記2級の合格には、簿記3級保持者で250~350時間、初学者で400~500時間以上の勉強時間が必要ですが、適切な教材選びと計画的な学習スケジュールがあれば、独学でも合格は十分可能です。

簿記2級の難易度を理解できたら、次は具体的な学習計画を立てましょう。簿記2級の勉強時間と学習計画簿記2級の効果的な勉強方法を参考に、効率的に試験対策を進めることをおすすめします。また、教材選びについては簿記2級のおすすめテキストも参考にしてください。

本記事を通じて、簿記2級の難易度とその理由、合格に必要な学習レベルを理解いただけたはずです。簿記2級は確かに難易度が高い資格ですが、正しい方法で計画的に学習すれば合格は十分可能です。これらの情報を活用して、簿記2級合格に向けて着実に準備を進めましょう。

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