MENU

全商簿記とは?試験内容・正式名称・日商簿記との違いを解説

全商簿記について調べているあなたへ。「全商簿記とは何か」「日商簿記とどう違うのか」という疑問は、試験の特徴と対象者を理解することで解決できます。

本記事では、全商簿記の正式名称と主催団体、試験制度と級の構成、日商簿記や全経簿記との具体的な違いについて、実際のデータを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、自分に最適な簿記資格の選択と、進学・就職に向けた資格取得計画を立てましょう。

この記事を読むとわかること
  • 全商簿記の正式名称と主催団体、受験資格の詳細
  • 全商簿記3級・2級・1級の試験内容と出題範囲
  • 全商簿記と日商簿記・全経簿記の具体的な違い
  • 全商簿記を取得するメリットと効果的な勉強方法
押さえておきたい3つのポイント
  1. 全商簿記は高校生向けの簿記検定:正式名称は「簿記実務検定試験」で、全国商業高等学校協会が主催する商業高校生を主な対象とした検定試験です。
  2. 全商簿記1級は日商簿記2級レベル:全商簿記1級の難易度は日商簿記2級と同程度とされ、高校の教科書に沿った出題が特徴で合格率も日商簿記より高めです。
  3. 高校生の進学・就職に有利:推薦入試の基準として認められるケースが多く、商業高校生の就職活動でも評価されますが、社会人の転職には日商簿記が推奨されます。
目次

全商簿記(日商簿記)とは?正式名称と基本情報

全商簿記は、商業高校生を中心に年間約30万人が受験する簿記検定試験です。簿記の種類の中でも、教育機関で学ぶ内容に密接に関連した資格として位置づけられています。ここでは、全商簿記の正式名称や主催団体、受験資格について詳しく解説します。

全商簿記の正式名称は「簿記実務検定試験」

全商簿記の正式名称は「簿記実務検定試験」です。一般的に「全商簿記」と呼ばれるのは、主催団体である全国商業高等学校協会(全商協会)の略称「全商」に由来します。文部科学省の後援を受けている公的な検定試験で、商業高校のカリキュラムに基づいた内容となっています。高校の簿記教育と連動した試験設計により、学校で学んだ知識を直接活かせる点が大きな特徴です。

主催団体は全国商業高等学校協会

全商簿記を主催する全国商業高等学校協会は、商業教育の振興を目的とした公益財団法人です。全国の商業高等学校約500校が加盟しており、簿記以外にも情報処理やビジネス文書実務など、商業教育に関連する複数の検定試験を実施しています。試験問題は高校の教科書執筆者や商業教育の専門家が作成するため、学校教育との整合性が高く保たれています。

全商簿記の受験資格と受験者層

全商簿記には受験資格の制限がなく、年齢や学歴に関わらず誰でも受験できます。しかし実際の受験者の約95%は商業高校の在校生です。商業高校では授業の一環として全商簿記の取得を推奨しており、多くの生徒が在学中に3級から順次上級の級を目指します。一部の普通科高校や社会人も受験していますが、社会人で簿記資格を目指す場合は、企業での認知度が高い日商簿記を選択するケースがほとんどです。

全商簿記(日商簿記)の試験制度と級の構成

全商簿記は3級・2級・1級の3段階で構成され、それぞれの級で求められる知識レベルが明確に区分されています。試験は年2回(1月と6月)実施され、在学中の計画的な取得が可能です。ここでは各級の位置づけと学習内容の特徴について解説します。

全商簿記3級:個人企業の基礎的な会計処理

全商簿記3級は、個人企業の簿記を対象とした基礎レベルの検定です。商業高校1年生で学習する内容に対応しており、仕訳や転記、試算表の作成など簿記の基本的な流れを理解します。出題範囲には貸借対照表や損益計算書といった基本的な財務諸表の作成も含まれ、簿記の全体像を把握できる内容です。試験時間は90分で、筆記試験により実施されます。

全商簿記2級:株式会社の基本的な会計処理

全商簿記2級では、株式会社の基本的な会計処理を学びます。商業高校2年生で学習する内容に該当し、3級の個人企業の簿記から発展して、株式会社特有の取引や会計処理を扱います。具体的には株式の発行、社債、剰余金の配当などが出題範囲に含まれます。さらに割賦販売や本支店会計といった特殊な取引についても理解が求められます。試験時間は90分です。

全商簿記1級:会計部門と原価計算部門の2科目制

全商簿記1級は会計部門と原価計算部門の2科目で構成される最上級の検定です。商業高校3年生で学習する高度な内容に対応しており、会計部門では連結会計や税効果会計など実務で必要となる複雑な処理を扱います。原価計算部門では製造業における原価の計算方法や原価管理の基礎を学びます。両科目とも試験時間は90分で、2科目とも合格することで1級合格となります。科目合格制度があり、1科目のみ合格した場合はその科目の合格が保持され、次回以降に残りの科目に合格すれば1級取得となります。

簿記3級(日商簿記3級)の詳細では、日商簿記との試験内容の違いについても解説しています。

全商簿記(日商簿記)の試験内容と出題範囲

全商簿記の試験内容は高校の教科書に準拠しており、学校で学んだ知識がそのまま試験に活かせる構成となっています。各級で扱う会計処理の範囲と難易度が明確に設定されているため、段階的な学習が可能です。ここでは各級の具体的な出題内容について解説します。

全商簿記3級の出題内容(仕訳・伝票・決算書作成)

全商簿記3級では、簿記の基本となる仕訳問題が出題の中心です。現金取引、預金取引、商品売買、固定資産の購入など、個人企業で日常的に発生する取引の仕訳が求められます。また伝票式会計の基礎として、入金伝票・出金伝票・振替伝票の記入方法も出題されます。決算整理では、減価償却費や貸倒引当金の計算、精算表の作成が含まれ、最終的に貸借対照表と損益計算書を作成する能力が試されます。

全商簿記2級の出題内容(割賦販売・本支店会計)

全商簿記2級では株式会社特有の会計処理が加わります。株式の発行や社債の発行、配当金の支払いといった資本取引の仕訳が出題範囲に含まれます。さらに特殊な販売形態である割賦販売では、代金回収期間が長期にわたる取引の会計処理を学びます。本支店会計では、本店と支店が別々に帳簿をつける場合の処理方法や、内部取引の相殺、合併財務諸表の作成方法が問われます。これらは実務でも頻繁に使用される知識です。

全商簿記1級の出題内容(会計法規・原価計算)

全商簿記1級の会計部門では、連結会計や税効果会計、外貨建取引など高度な会計処理が出題されます。会社法や会計基準といった会計法規の理解も求められ、実務に即した内容となっています。原価計算部門では、製造業における材料費・労務費・経費の計算、個別原価計算や総合原価計算の方法、標準原価計算による差異分析などが含まれます。製造原価報告書の作成や、原価情報を用いた経営判断の基礎も学習範囲です。

高校の教科書に沿った出題が特徴

全商簿記の最大の特徴は、文部科学省検定済みの高校教科書に準拠した出題である点です。教科書会社が発行する「簿記」「財務会計Ⅰ」「財務会計Ⅱ」「原価計算」といった教科書の内容が試験範囲となるため、授業で使用した教科書と参考書があれば十分に対応できます。日商簿記が実務を重視した出題であるのに対し、全商簿記は教育的な観点から体系的な知識の習得を重視した出題設計となっています。

全商簿記(日商簿記)の合格率と難易度

全商簿記の合格率は日商簿記と比較して高めに設定されており、商業高校での学習を前提とした難易度調整がなされています。ただし合格率の高さが必ずしも試験の容易さを意味するわけではなく、受験者層の違いが大きく影響しています。ここでは各級の合格率データと難易度の実態について解説します。

全商簿記3級の合格率は60~70%

全商簿記3級の合格率は例年60~70%前後で推移しています。2023年1月実施の試験では合格率68.5%、2023年6月実施の試験では65.3%でした(全国商業高等学校協会発表データ)。受験者のほとんどが商業高校で体系的に学習した生徒であることが高合格率の要因です。合格基準は100点満点中70点以上で、基本的な仕訳と決算処理を確実に理解していれば合格できる水準です。

全商簿記2級の合格率は40~50%

全商簿記2級の合格率は40~50%程度です。2023年1月実施の試験では合格率46.2%、2023年6月実施の試験では48.7%でした(全国商業高等学校協会発表データ)。3級と比べて株式会社会計や特殊商品売買など応用的な内容が加わるため、難易度が上がります。しかし授業で学んだ内容を着実に復習し、教科書の例題と練習問題を繰り返し解くことで合格可能な水準です。

全商簿記1級の合格率は40~50%

全商簿記1級の合格率は会計部門と原価計算部門それぞれで40~50%程度、両科目同時合格となると30%前後になります。2023年1月実施の試験では会計部門の合格率45.3%、原価計算部門の合格率42.8%、両科目合格率は28.6%でした(全国商業高等学校協会発表データ)。高度な会計知識が求められますが、商業高校3年間で学習する内容の集大成であり、計画的に学習すれば在学中の取得が十分可能です。

日商簿記より高い合格率の理由

全商簿記の合格率が日商簿記より高い主な理由は、受験者層の違いにあります。全商簿記の受験者は商業高校で体系的な簿記教育を受けた生徒が中心で、授業での学習を前提とした試験設計です。一方、日商簿記は独学の社会人も多く受験し、実務的な応用力が問われるため相対的に難易度が高くなります。また全商簿記は教科書に準拠した出題のため学習範囲が明確で、対策が立てやすい点も合格率の高さに寄与しています。

全商簿記の合格率と日商簿記の合格率の詳しい比較は、簿記3級の合格率推移簿記2級の合格率推移でも解説しています。

全商簿記と日商簿記の違いを徹底比較

全商簿記と日商簿記は同じ簿記検定でありながら、主催団体や対象受験者、試験内容、社会的評価において大きな違いがあります。自分の目的に合わせて適切な検定を選択することが重要です。ここでは両者の具体的な違いについて詳しく解説します。

主催団体と対象受験者の違い

全商簿記は全国商業高等学校協会が主催し、主に商業高校生を対象とした検定試験です。学校教育の一環として位置づけられ、授業内容との連動性が高く設計されています。一方、日商簿記は日本商工会議所および各地商工会議所が主催する公的資格で、年齢や職業を問わず幅広い層が受験します。社会人の受験者が多く、企業の経理部門や会計事務所での実務を想定した試験内容となっています。受験会場も全商簿記は主に商業高校、日商簿記は商工会議所や専門学校など広範囲に設置されています。

試験内容の違い(教科書ベース vs 実務ベース)

全商簿記は文部科学省検定済みの高校教科書に準拠した出題が特徴です。教科書の章立てに沿って体系的に知識を問う問題が中心で、理論的な理解を重視します。例えば仕訳問題でも、教科書で学習した典型的なパターンが出題されます。対して日商簿記は実務で遭遇する多様な取引や、判断が必要な応用問題が含まれます。近年では会計基準の変更に対応した新しい処理方法も出題され、実務に即した知識が求められます。出題形式も全商簿記は筆記試験のみですが、日商簿記は統一試験(筆記)に加えてネット試験(CBT方式)も選択可能です。

難易度の違い(全商簿記1級≒日商簿記2級)

一般的に全商簿記1級の難易度は日商簿記2級と同程度、全商簿記2級は日商簿記3級と同程度とされています。全商簿記1級の会計部門と原価計算部門を両方取得した場合、日商簿記2級の商業簿記と工業簿記に相当する知識レベルです。ただし出題形式や問われる応用力には差があり、全商簿記1級合格者が日商簿記2級を受験する際は、実務的な応用問題への対策が必要になります。学習時間の目安として、全商簿記1級は両科目合わせて200~300時間、日商簿記2級は200~350時間程度とされています。

認知度と就職・転職での評価の違い

企業の求人における簿記資格の要件は、ほとんどが日商簿記を指しています。経理職の求人で「簿記2級以上」と記載がある場合、通常は日商簿記2級を意味します。全商簿記は商業高校生の就職活動では評価されますが、社会人の転職市場では認知度が低く、資格としての効力が限定的です。一方で商業高校から進学する場合、推薦入試の基準として全商簿記1級が指定されるケースは多数あります。目的に応じた使い分けが重要で、就職・転職を考える社会人は日商簿記、高校生の進学・就職活動には全商簿記が適しています。

全商簿記と日商簿記の詳細比較では、さらに具体的な違いと選び方について解説しています。

全商簿記と全経簿記の違い

全商簿記以外にも、全経簿記という簿記検定が存在します。名称は似ていますが、主催団体や対象者が異なります。簿記資格を選択する際は、それぞれの特徴を理解することが大切です。ここでは全商簿記と全経簿記、そして日商簿記の3つを比較します。

全経簿記の主催団体と対象受験者

全経簿記の正式名称は「簿記能力検定試験」で、公益社団法人全国経理教育協会が主催しています。主な対象受験者は専門学校や各種学校で経理を学ぶ学生です。級の構成は4級・3級・2級・1級・上級の5段階で、上級は日商簿記1級と同等レベルとされています。全経簿記の上級合格者は税理士試験の受験資格が得られる点が大きな特徴です。試験は年4回実施され、受験機会が多い点も日商簿記や全商簿記と異なります。

全商簿記・全経簿記・日商簿記の比較表

3つの簿記検定の主な違いを表にまとめました。

項目全商簿記全経簿記日商簿記
主催団体全国商業高等学校協会全国経理教育協会日本商工会議所
主な対象者商業高校生専門学校生一般(社会人中心)
級の構成3級・2級・1級4級・3級・2級・1級・上級初級・3級・2級・1級
試験実施回数年2回(1月・6月)年4回(2月・5月・7月・11月)統一試験:年3回、ネット試験:随時
受験料(2級)1,300円2,200円4,720円
社会的認知度低い(高校生向け)やや低い(専門学校向け)非常に高い
就職・転職評価高校生の就職では評価限定的高い評価
税理士受験資格なし上級合格で取得可能1級合格で取得可能

どの簿記検定を選ぶべきか

簿記検定の選び方は、受験者の立場と目的によって異なります。商業高校生は授業内容と連動する全商簿記が最適で、推薦入試や就職活動でも評価されます。専門学校生で税理士を目指す場合は、上級合格で受験資格が得られる全経簿記が選択肢となります。社会人や普通科高校生、就職・転職を考える大学生は、企業での認知度が圧倒的に高い日商簿記を選ぶべきです。また全商簿記や全経簿記で基礎を学んだ後、日商簿記にステップアップする方法も効果的です。

全経簿記の詳細では、全経簿記の上級資格や税理士試験との関連についてさらに詳しく解説しています。

全商簿記を取得するメリット

全商簿記は商業高校生にとって多くのメリットがある資格です。進学や就職活動での優遇措置に加え、簿記の基礎知識を体系的に学べる点も大きな利点です。ここでは全商簿記を取得する具体的なメリットについて解説します。

高校生の進学に有利(推薦入試の基準)

全商簿記1級は、多くの大学・短期大学の推薦入試で優遇措置の対象となっています。商学部や経営学部、経済学部などでは、全商簿記1級保持者に対して出願資格を認めたり、加点評価を行ったりするケースが一般的です。特に簿記や会計を重視する大学では、全商簿記1級と全経簿記上級、または日商簿記2級のいずれかを推薦入試の要件とする場合もあります。商業高校から四年制大学への進学を目指す場合、全商簿記1級の取得は大きなアドバンテージになります。

高校生の就職活動で評価される

商業高校からの就職では、全商簿記の取得が企業から高く評価されます。特に地元企業や中小企業の経理部門では、全商簿記2級以上の保持者を積極的に採用する傾向があります。高校の就職指導でも全商簿記の取得を推奨しており、求人票に「全商簿記2級以上」という条件が記載されることも珍しくありません。複数の全商検定(簿記・情報処理・ビジネス文書など)を取得すると、より幅広い職種への応募が可能になります。

大学入学共通テストで簿記選択が可能

大学入学共通テストの「簿記・会計」科目を選択する際、全商簿記で学習した知識が直接活用できます。商業高校では簿記の授業時間が普通科より多く確保されており、全商簿記の学習を通じて共通テストレベルの問題にも対応できる力が身につきます。国公立大学の商学部や経営学部を目指す商業高校生にとって、全商簿記の学習は共通テスト対策にもなる効率的な選択です。

簿記の基礎を体系的に学べる

全商簿記は高校の教科書に準拠しているため、簿記の基本原理から応用まで体系的に学習できます。仕訳の考え方、貸借対照表と損益計算書の構造、会計処理の論理的な流れなど、簿記の本質的な理解を深められる内容です。この基礎知識は、将来的に日商簿記や税理士試験にチャレンジする際の土台となります。また大学で会計学を専攻する場合も、全商簿記で学んだ知識がスムーズな理解につながります。

全商簿記のデメリットと注意点

全商簿記には高校生にとってのメリットがある一方、社会人や一般の資格取得者には留意すべき点があります。資格取得の目的と将来の活用方法を考慮した上で、計画的に取り組むことが重要です。ここでは全商簿記の主なデメリットについて解説します。

社会人の就職・転職には不向き

全商簿記は企業の求人市場での認知度が限定的で、社会人の就職・転職活動ではほとんど評価されません。経理職の求人で「簿記資格」と記載がある場合、通常は日商簿記を指しています。全商簿記1級を持っていても、日商簿記2級相当の知識レベルとは認識されないケースが多く、履歴書に記載しても効果が薄い場合があります。商業高校を卒業後に一度就職し、その後転職を考える場合は、改めて日商簿記の取得を目指す必要があります。

一般的な認知度が低い

全商簿記は商業高校関係者以外にはあまり知られていない資格です。大学生や社会人の間では日商簿記が一般的な簿記資格として認識されており、「簿記」と言えば日商簿記を指すことがほとんどです。このため面接などで全商簿記について説明を求められたり、資格の価値を正しく理解してもらえなかったりする可能性があります。特に都市部の企業や大企業では、全商簿記の存在自体を知らない採用担当者も少なくありません。

上級試験・国家試験の受験資格にならない

全商簿記では、どの級に合格しても税理士試験や公認会計士試験の受験資格は得られません。税理士試験の受験には日商簿記1級または全経簿記上級の合格が条件の一つとなっています。将来的に税理士や公認会計士を目指す場合、全商簿記だけでは不十分で、日商簿記や全経簿記へのステップアップが必要です。全商簿記は高校生にとって優れた資格ですが、プロフェッショナルな会計資格への道筋としては位置づけられていない点に注意が必要です。

全商簿記の効果的な勉強方法

全商簿記の合格には、教科書を中心とした基礎の徹底と、過去問演習による実践力の養成が欠かせません。高校の授業で学んだ内容を確実に理解し、繰り返し問題を解くことが最も効率的な学習方法です。ここでは全商簿記に特化した勉強方法について解説します。

教科書の内容を確実に理解する

全商簿記は高校の教科書に準拠した出題のため、まず教科書の内容を完全に理解することが最優先です。各章の例題を自分で解き直し、解答プロセスを説明できるレベルまで理解を深めます。特に仕訳のルールや勘定科目の分類、決算手続きの流れなど、簿記の基本原理を確実に押さえることが重要です。わからない箇所は授業で質問したり、同級生と教え合ったりして、曖昧な理解のまま先に進まないよう注意しましょう。

過去問を繰り返し解く(公式サイトで入手可能)

全国商業高等学校協会の公式サイトでは、過去数回分の試験問題と解答が無料で公開されています。過去問を解くことで出題形式や頻出問題のパターンを把握でき、実戦的な対策が可能です。最初は時間を気にせず丁寧に解き、2回目以降は試験時間(90分)を意識して取り組みます。間違えた問題は教科書に戻って該当箇所を復習し、同じミスを繰り返さないよう理解を深めることが大切です。少なくとも過去5回分の問題を2~3周解くことをおすすめします。

市販の模擬問題集を活用する

教科書と過去問に加えて、市販の全商簿記対策問題集を活用すると学習効果が高まります。実教出版や東京法令出版などから発行されている問題集には、予想問題や頻出論点がまとめられており、効率的な学習が可能です。特に1級の会計部門と原価計算部門については、十分な問題演習が合格の鍵となるため、問題集での練習が有効です。解説が詳しい問題集を選び、間違えた問題の解説をしっかり読んで理解することが重要です。

基本事項を確実に押さえることが合格への近道

全商簿記では奇をてらった難問はほとんど出題されず、基本的な知識と正確な処理能力が問われます。70点以上で合格となるため、基本問題を確実に得点することが最も効率的な合格戦略です。複雑な応用問題に時間をかけすぎるより、仕訳の基本、勘定記入、試算表作成、決算整理といった頻出項目を確実にマスターすることを優先しましょう。ケアレスミスを減らすため、計算過程を丁寧に書く習慣をつけることも大切です。

全商簿記の勉強方法をさらに詳しく知りたい方は、簿記3級の勉強方法簿記2級の勉強方法も参考になります。

全商簿記から日商簿記へのステップアップ

全商簿記を取得した後、日商簿記にチャレンジすることで、より幅広いキャリアの選択肢が広がります。全商簿記で身につけた基礎知識を活かしながら、実務的な応用力を伸ばすことが可能です。ここでは全商簿記から日商簿記へのステップアップ方法について解説します。

全商簿記1級取得後に日商簿記2級を目指す

全商簿記1級(会計部門・原価計算部門の両方)に合格した場合、次のステップとして日商簿記2級へのチャレンジが推奨されます。知識レベルは同程度ですが、日商簿記2級では実務を想定した応用問題が多く出題されるため、追加の学習が必要です。具体的には連結会計や税効果会計など、より実務的な論点を補強します。全商簿記1級の学習で基礎が固まっていれば、追加で100~150時間程度の学習で日商簿記2級の合格が目指せます。簿記2級(日商簿記2級)の詳細で試験内容を確認しましょう。

簿記の知識を深めてキャリアアップ

日商簿記2級以上を取得すると、経理職への就職・転職の選択肢が大きく広がります。企業の経理部門、会計事務所、税理士事務所などで専門的な仕事に携わる道が開けます。さらに実務経験を積みながら日商簿記1級にチャレンジすれば、経理のスペシャリストとしてキャリアを築くことも可能です。商業高校で全商簿記を取得し、その後日商簿記へステップアップした人の中には、経理部門の管理職や財務責任者として活躍している例も多くあります。

税理士・公認会計士への道も視野に

全商簿記から日商簿記へとステップアップし、さらに上位の国家資格を目指す道もあります。日商簿記1級に合格すれば税理士試験の受験資格が得られ、会計のプロフェッショナルへの道が開けます。公認会計士試験にも簿記の知識は必須で、全商簿記や日商簿記での学習が基礎となります。商業高校から大学の商学部や経営学部に進学し、在学中に日商簿記1級や税理士試験科目の合格を目指すキャリアパスを選択する人もいます。全商簿記は、そうした長期的なキャリア形成の第一歩として位置づけることができます。

全商簿記に関連するよくある質問(FAQ)

全商簿記について、受験を検討している方からよく寄せられる質問をまとめました。試験制度や難易度、活用方法について、具体的に回答します。

Q. 全商簿記は高校生以外でも受験できますか?

全商簿記には受験資格の制限がなく、年齢や学歴に関わらず誰でも受験可能です。ただし試験会場の多くが商業高校で、一般の方は受け入れていない会場もあります。社会人や普通科高校生が受験を希望する場合は、事前に全国商業高等学校協会や実施校に問い合わせて、受験可能な会場を確認する必要があります。実際には受験者の95%以上が商業高校生であるため、高校生以外の受験者は少数です。

Q. 全商簿記1級の難易度は日商簿記のどのレベルですか?

全商簿記1級(会計部門・原価計算部門の両科目合格)の難易度は、日商簿記2級とほぼ同等とされています。ただし出題形式や問われる内容には違いがあり、全商簿記は教科書に準拠した基本的な問題が中心、日商簿記は実務的な応用問題が含まれます。知識レベルは同程度でも、全商簿記1級合格者が日商簿記2級を受験する際は、実務的な問題への対応力を養う学習が必要です。逆に全商簿記2級は日商簿記3級と同程度の難易度です。

Q. 全商簿記は就職・転職に役立ちますか?

全商簿記は商業高校生の就職活動では評価されますが、社会人の転職市場での効力は限定的です。企業の求人で「簿記資格」と記載がある場合、通常は日商簿記を指しており、全商簿記では要件を満たさないケースがほとんどです。商業高校から地元企業への就職や、高卒での経理職採用では全商簿記が評価されることもありますが、一般的な転職市場では日商簿記の取得が推奨されます。全商簿記で基礎を学んだ後、日商簿記にステップアップする方法が効果的です。

Q. 全商簿記の合格点は何点ですか?

全商簿記は全級とも100点満点中70点以上で合格です。1級の場合は会計部門と原価計算部門それぞれで70点以上を取る必要があり、両科目とも合格して初めて全商簿記1級取得となります。科目合格制度があるため、一度に両科目合格できなくても、次回以降に残りの科目で70点以上を取れば1級が認定されます。3級と2級は1科目のみの試験で、70点以上で合格です。

Q. 全商簿記の過去問はどこで入手できますか?

全商簿記の過去問は全国商業高等学校協会の公式ウェブサイトで無料公開されています。過去数回分の試験問題と解答用紙、模範解答がPDF形式でダウンロード可能です。また実教出版や東京法令出版などから、過去問題集や予想問題集も市販されています。商業高校の生徒であれば、学校を通じて過去問題集を入手できる場合もあります。試験対策には最低でも過去5回分の問題を解くことをおすすめします。

Q. 全商簿記と日商簿記はどちらを受験すべきですか?

受験者の立場によって選択が異なります。商業高校生は授業内容と連動する全商簿記が最適で、推薦入試や高校生の就職活動でも評価されます。普通科高校生や大学生、社会人は企業での認知度が高い日商簿記を選ぶべきです。商業高校生でも、将来的に転職を考える可能性がある場合は、全商簿記に加えて日商簿記の取得も視野に入れると良いでしょう。両方取得する場合、まず全商簿記で基礎を固め、その後日商簿記にチャレンジする順序が効率的です。

Q. 全商簿記1級の科目合格制度とは何ですか?

全商簿記1級は会計部門と原価計算部門の2科目で構成されており、同じ試験日に両科目を受験します。科目合格制度により、一度の試験で1科目のみ合格した場合、その科目の合格が保持されます。次回以降の試験で残りの科目に合格すれば、全商簿記1級として認定されます。科目合格に有効期限はなく、自分のペースで両科目の合格を目指せる制度です。両科目を別々の回で受験しても構いませんが、多くの受験者は同じ回での両科目合格を目指します。

まとめ:全商簿記は高校生の進学・就職に最適な簿記資格

本記事では、全商簿記の試験内容、正式名称、日商簿記との違いについて詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. 全商簿記は商業高校生向けの検定試験:正式名称は「簿記実務検定試験」で、全国商業高等学校協会が主催し、高校の教科書に準拠した出題が特徴です。
  2. 全商簿記1級は日商簿記2級レベル:難易度は日商簿記2級と同程度で、会計部門と原価計算部門の2科目制となっています。合格率は日商簿記より高めですが、これは受験者層の違いによるものです。
  3. 高校生の進学・就職に有利:推薦入試の基準や高校生の就職活動で評価されますが、社会人の転職市場では日商簿記の取得が推奨されます。

全商簿記の取得を検討できたら、次は自分の目的に合わせた学習計画を立てましょう。簿記3級のおすすめテキスト簿記2級のおすすめテキストを参考に、教材選びから始めることをおすすめします。また将来的に日商簿記へのステップアップを考えている方は、簿記2級(日商簿記2級)の詳細も確認しておきましょう。

本記事を通じて、全商簿記の特徴と活用方法を理解いただけたはずです。商業高校生にとって全商簿記は、進学や就職の選択肢を広げる有効な資格です。高校の授業を活かしながら計画的に取得し、将来のキャリア形成の第一歩としましょう。

簿記の関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次