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簿記2級の効果的な勉強方法|科目別対策と学習の進め方

簿記2級の勉強方法について知りたいあなたへ。「どのように学習を進めれば効率よく合格できるのか」という疑問は、科目の特性を理解し、適切な学習計画を立てることで解決できます。

本記事では、商業簿記と工業簿記の効果的な学習法、独学と通信講座の選び方、過去問の活用方法について、合格者の経験を交えて詳しく解説します。この情報をもとに、簿記2級合格に向けて、実践的な学習計画を立てましょう。

この記事を読むとわかること
  • 簿記2級の商業簿記と工業簿記の効果的な並行学習法
  • 独学と通信講座のメリット・デメリットと選び方
  • 過去問を活用した実践的な学習スケジュールの立て方
  • 70点合格を目指す戦略的な学習ポイント
押さえておきたい3つのポイント
  1. 商業簿記と工業簿記の並行学習:簿記2級では商業簿記60点・工業簿記40点の配点で出題されます。両科目をバランスよく学習し、特に工業簿記の原価計算の基礎を早めに固めることで、効率的に得点力を高められます。
  2. 理解重視の学習姿勢:暗記だけでなく、仕訳の意味や計算の根拠を理解することが合格への近道です。連結会計や標準原価計算など、簿記2級特有の論点は具体的なイメージを持ちながら学習することで、応用問題にも対応できる力が身につきます。
  3. 70点合格を意識した戦略:満点を目指す必要はなく、70点で合格できます。自分の得意分野を伸ばしつつ、苦手論点は基本問題を確実に解けるレベルまで引き上げる戦略が、効率的な合格への道筋となります。
目次

簿記2級(日商簿記2級)の勉強方法の基本的な流れ

簿記2級の学習を始める前に、全体の流れを把握しておくことが大切です。商業簿記と工業簿記の2科目を並行して学習する必要があるため、計画的なアプローチが合格への鍵となります。

簿記2級の試験内容を理解したうえで、自分に合った学習スタイルを選択しましょう。統一試験とネット試験のどちらを受験するかによっても、学習の進め方が若干変わってきます。

簿記2級合格までの学習ステップ

簿記2級の学習は、大きく分けて4つのステップで進めていきます。

ステップ1:基礎知識のインプット(1-2ヶ月)
テキストを使って商業簿記と工業簿記の基本概念を理解します。この段階では、仕訳のルールや勘定科目の意味を正確に把握することを優先しましょう。簿記3級の知識が曖昧な場合は、復習から始めることをおすすめします。

ステップ2:基本問題の演習(1-2ヶ月)
テキストの例題や問題集の基本問題を繰り返し解きます。商業簿記では仕訳問題、工業簿記では原価計算の基本パターンを確実にマスターしましょう。この時点で理解が不十分な論点は、テキストに戻って復習します。

ステップ3:応用問題への挑戦(1ヶ月)
問題集の応用問題に取り組み、複数の論点が組み合わさった問題に慣れていきます。連結会計や標準原価計算など、簿記2級特有の難関論点にも本格的に取り組む時期です。間違えた問題は必ず解説を読み、なぜ間違えたのかを分析しましょう。

ステップ4:過去問・予想問題での総仕上げ(1ヶ月)
実際の試験形式で時間を計りながら過去問を解きます。本番と同じ環境で演習することで、時間配分や解く順番の感覚が身につきます。苦手論点が見つかったら、該当箇所をテキストで復習し、類似問題を追加で解いて定着を図ります。

商業簿記と工業簿記の並行学習法

簿記2級では商業簿記60点、工業簿記40点の配点で出題されます。両科目を効果的に学習するには、並行学習が基本となります。

商業簿記を1単元学習したら、工業簿記も1単元進めるというペースで交互に学習することで、飽きずに学習を継続できます。商業簿記は簿記3級の延長線上にある内容が多いため、比較的スムーズに理解が進むでしょう。一方、工業簿記は簿記2級から新たに登場する科目なので、初めは戸惑うかもしれません。

工業簿記は原価計算の基本的な考え方を理解すれば、パターン化された問題が多く、得点源にしやすい科目です。商業簿記の難関論点(連結会計など)でつまずいたときは、気分転換に工業簿記の学習を進めるという方法も効果的です。

学習の初期段階では商業簿記に少し多めに時間を配分し(商業60%、工業40%程度)、中盤以降は工業簿記の演習量を増やすことで、バランスの取れた実力が養成されます。

理解重視の学習姿勢と具体的イメージの重要性

簿記2級の合格には、丸暗記ではなく「なぜそうなるのか」という理解が不可欠です。

例えば、連結会計で「のれん」が発生する理由を理解せずに仕訳だけ覚えても、問題のパターンが変わると対応できません。親会社が子会社株式を取得する場面を具体的にイメージし、投資と資本の相殺消去の意味を理解することで、応用問題にも対応できる力が身につきます。

工業簿記の標準原価計算でも同様です。標準原価と実際原価の差異分析は、単に計算式を覚えるのではなく、「なぜ差異が発生したのか」「その差異は有利なのか不利なのか」という視点で考えることが大切です。製造現場で材料費や労務費がどのように発生し、どう集計されるのかをイメージできれば、複雑な計算も理解しやすくなります。

理解を深めるためには、テキストの図解や具体例をしっかり読み込むことが有効です。また、わからない論点は複数の教材で確認したり、動画講座を活用したりすることで、異なる角度からの説明に触れることができます。

簿記2級の試験範囲に関してもっと詳しい記事はこちら
簿記2級とは?試験内容・難易度・取得メリットを徹底解説

簿記2級(日商簿記2級)の学習前提と簿記3級の復習

簿記2級の学習を始める前に、簿記3級の知識が十分に身についているか確認することが大切です。簿記2級は簿記3級の内容を理解していることを前提に、より高度な会計処理を学習します。

基礎が不十分なまま簿記2級の学習を始めると、途中で理解が追いつかなくなり、学習効率が大きく低下してしまいます。特に商業簿記は簿記3級の延長線上にあるため、基礎知識の確認は合格への近道となります。

簿記3級の知識確認が必要な理由

簿記2級の商業簿記では、簿記3級で学んだ仕訳や決算処理を前提として、より複雑な取引を扱います。

例えば、簿記3級で学んだ固定資産の減価償却は、簿記2級では定額法だけでなく定率法や生産高比例法も登場します。簿記3級レベルの減価償却の仕組みを理解していないと、これらの新しい方法を学ぶことが困難になります。

また、工業簿記は簿記2級から新たに登場する科目ですが、その基礎となる仕訳のルールは簿記3級で学んだものと同じです。「借方・貸方」の概念や、費用・収益の計上方法などの基礎知識がしっかりしていれば、工業簿記の学習もスムーズに進められます。

日商簿記検定では、簿記2級の試験問題に簿記3級レベルの知識を組み合わせた複合問題が出題されることもあります。基礎知識が曖昧だと、応用問題に対応する余裕がなくなってしまいます。

簿記3級の復習すべき重要項目

簿記2級の学習を始める前に、特に復習しておくべき簿記3級の重要項目をまとめました。

仕訳の基本ルール
借方・貸方の概念、資産・負債・純資産・収益・費用の分類は簿記の土台です。これらが曖昧だと、簿記2級の複雑な取引の仕訳が理解できません。仕訳の基本パターン(現金取引、掛取引、固定資産取引など)を確実に押さえておきましょう。

決算整理仕訳
減価償却、貸倒引当金の設定、売上原価の算定、費用・収益の繰延・見越などは、簿記2級でもそのまま使う知識です。決算整理の流れと各仕訳の意味を理解しておく必要があります。

精算表と財務諸表の作成
試算表から精算表を作成し、貸借対照表と損益計算書を完成させる一連の流れは、簿記2級でもベースとなる知識です。簿記2級では株式会社の会計処理を学ぶため、資本金や株主資本の概念も押さえておきましょう。

商品売買と三分法
仕入・売上の計上、繰越商品の処理は、簿記2級の本支店会計や連結会計の基礎となります。売上原価の計算方法(期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高)は完全にマスターしておきましょう。

これらの項目で不安がある場合は、簿記3級のテキストや問題集で復習してから簿記2級の学習に進むことをおすすめします。

簿記3級から簿記2級への学習移行のタイミング

簿記3級に合格してから簿記2級の学習を始めるのが理想的ですが、合格を待たずに学習を始めることも可能です。

簿記3級の試験後、合格発表を待たずに簿記2級の学習をスタートさせる人も多くいます。試験の手応えから合格の可能性が高いと判断できれば、学習の空白期間を作らずに次のステップに進めます。ただし、簿記3級の試験で思うように解けなかった論点がある場合は、必ずその部分を復習してから簿記2級に進みましょう。

簿記3級を飛ばして直接簿記2級から学習を始めることも制度上は可能です。しかし、簿記の基礎知識がない状態で簿記2級の内容を理解するのは非常に困難です。学習時間も大幅に長くなってしまうため、基本的には簿記3級から順番に学習することを強くおすすめします。

簿記3級の合格後、1-2ヶ月以内に簿記2級の学習を始めると、簿記3級の知識が新鮮なうちに次のステップに進めます。期間が空きすぎると基礎知識を忘れてしまうため、継続的な学習が理想的です。

簿記3級の勉強方法に関してもっと詳しい記事はこちら
簿記3級の効果的な勉強方法|科目別対策と学習の進め方

簿記2級(日商簿記2級)のテキスト・教材の選び方

簿記2級の学習において、テキスト選びは合格を左右する重要なポイントです。自分の学習スタイルや理解度に合った教材を選ぶことで、効率的に知識を吸収できます。

市販されている簿記2級の教材は多数ありますが、それぞれ特徴が異なります。初学者向けの丁寧な解説を重視した教材、合格に必要な知識を効率的にまとめた教材、図解やイラストが豊富な教材など、自分に合ったものを選びましょう。

商業簿記と工業簿記のテキスト選択

簿記2級では商業簿記と工業簿記の2科目を学習するため、基本的には両方のテキストが必要です。

多くの出版社では、商業簿記と工業簿記を別々のテキストとして販売しています。これは各科目の内容が豊富で、1冊にまとめると分厚くなりすぎるためです。別々のテキストを購入することで、持ち運びやすく、自分のペースで科目ごとに学習を進められます。

テキストを選ぶ際は、同じシリーズで商業簿記と工業簿記を揃えることをおすすめします。同じ著者・出版社のテキストであれば、説明の仕方や用語の使い方が統一されており、混乱なく学習できます。人気のあるシリーズとしては、「スッキリわかる」シリーズや「みんなが欲しかった」シリーズなどがあります。

初学者の場合、イラストや図解が豊富で、具体例を多く掲載しているテキストを選ぶと理解しやすいでしょう。一方、簿記3級を学習済みで基礎知識がある人は、合格に必要な知識を効率的にまとめたテキストを選ぶことで、短期間での合格を目指せます。

テキストは実際に書店で手に取って、解説の丁寧さ、文字の大きさ、レイアウトなどを確認してから購入することをおすすめします。オンラインで購入する場合は、試し読み機能やレビューを参考にしましょう。

最新の出題範囲に対応した教材の重要性

簿記2級の出題範囲は定期的に改定されるため、必ず最新の出題範囲に対応したテキストを使用しましょう。

日本商工会議所は簿記検定の出題範囲を数年ごとに見直しています。近年では2019年度に大規模な改定があり、連結会計の範囲が拡大されたり、リース取引が新たに追加されたりしました。古いテキストでは、これらの新しい論点が掲載されていない可能性があります。

テキストを購入する際は、必ず発行年度を確認してください。できれば前年度以降に発行されたテキストを選ぶことをおすすめします。出版社によっては、出題範囲の改定に合わせて増補版や改訂版を発行することもあるので、最新版かどうか確認しましょう。

中古のテキストを購入する場合は特に注意が必要です。価格は安く抑えられますが、出題範囲が古い可能性があります。数年前のテキストでは、現在の試験に対応できない論点が含まれていることがあるため、できるだけ新品の最新版を購入することをおすすめします。

ネット試験(CBT方式)を受験する予定の人は、ネット試験対応と明記されたテキストを選ぶとよいでしょう。ネット試験では統一試験とは出題形式が若干異なる場合があるため、対応した教材で学習することで安心して試験に臨めます。

テキストと問題集の効果的な組み合わせ

簿記2級の学習では、テキストだけでなく問題集も必須です。インプットとアウトプットをバランスよく行うことが、効率的な学習の鍵となります。

テキストと問題集は、基本的に同じシリーズで揃えることをおすすめします。テキストで学んだ内容に対応した問題が問題集に収録されているため、学習の流れがスムーズになります。例えば、「スッキリわかる」シリーズには「スッキリとける」という対応問題集があり、両者を併用することで効率的に学習できます。

学習の基本的な流れは、テキストで1単元学習したら、すぐに問題集の対応問題を解くというサイクルです。インプットとアウトプットを短いスパンで繰り返すことで、知識の定着率が大きく向上します。テキストを最初から最後まで読んでから問題集に取り組むという方法は、非効率になりやすいので避けましょう。

問題集は最低でも2-3周は繰り返して解くことをおすすめします。1周目で間違えた問題にチェックをつけておき、2周目は間違えた問題を中心に解き直します。3周目でも間違える問題があれば、その論点はテキストに戻って徹底的に復習しましょう。

問題集とは別に、過去問題集も必要です。問題集で基礎力を養成し、過去問で実践力を鍛えるという二段構えの学習が、簿記2級合格への確実な道筋となります。

簿記2級のテキスト選びに関してもっと詳しい記事はこちら
簿記2級のおすすめテキスト|独学者向け教材を厳選比較

簿記2級の商業簿記の勉強方法

商業簿記は簿記2級の配点の6割を占める重要科目です。簿記3級の延長として学習できる論点もあれば、連結会計のように簿記2級で初めて登場する難関論点もあります。

商業簿記の学習では、基本的な仕訳パターンの習得から始め、段階的に複雑な問題に取り組んでいくことが大切です。焦らず一つひとつの論点を確実に理解しながら進めましょう。

連結会計・本支店会計の攻略法

連結会計と本支店会計は、簿記2級の商業簿記における最大の難関です。これらの論点を攻略できるかどうかが、合格を左右すると言っても過言ではありません。

連結会計の学習ポイント
連結会計は、親会社と子会社をまとめて一つの企業集団として財務諸表を作成する手続きです。初学者には難しく感じられますが、基本的な考え方を理解すれば、パターン化された処理が多いことに気づきます。

まずは「投資と資本の相殺消去」の意味を理解しましょう。親会社が子会社株式に投資した金額と、子会社の資本金や利益剰余金を相殺する理由を、具体的な企業買収の場面をイメージしながら学習します。のれんや非支配株主持分の概念も、この段階でしっかり押さえておきましょう。

開始仕訳、連結修正仕訳、非支配株主への利益配分など、連結会計には複数のステップがあります。各ステップの目的と処理内容を理解し、問題を解く際の手順を確立することが大切です。最初は時間がかかっても、正確に処理できるようになることを優先しましょう。

本支店会計の学習ポイント
本支店会計は、本店と支店の会計を別々に記録し、最終的に合算して財務諸表を作成する手続きです。連結会計ほど複雑ではありませんが、本店・支店間の取引の相殺消去が理解のポイントとなります。

本店勘定と支店勘定の関係性を理解することが第一歩です。本店の帳簿には「支店勘定」、支店の帳簿には「本店勘定」が登場し、これらは互いに鏡像関係にあります。この基本的な仕組みを押さえれば、未達取引の処理や内部利益の消去もスムーズに理解できます。

本支店会計の問題は、出題パターンがある程度決まっています。本店・支店間の商品移動、本店集中計算制度、支店分散計算制度など、代表的なパターンを繰り返し練習することで、得点源にできる論点です。

外貨建取引・リース取引の理解

外貨建取引とリース取引は、簿記2級で新たに登場する論点です。実務でも頻繁に使われる知識なので、しっかり理解しておきましょう。

外貨建取引の学習ポイント
外貨建取引は、外国通貨で取引を行った際の会計処理を学びます。為替レートの変動により、円換算額が取引時と決済時で異なることが特徴です。

取引発生時は取引日レート、決算時は決算日レート、決済時は決済日レートを使用するという基本ルールを押さえましょう。為替差損益がどのタイミングで発生するのかを理解することが重要です。

外貨建取引の問題は、為替レートを正しく適用できるかがポイントです。問題文で与えられた為替レートをしっかり確認し、どのレートをどの場面で使うのかを間違えないように注意しましょう。

リース取引の学習ポイント
リース取引は、資産を購入するのではなく借りる取引です。簿記2級では、ファイナンス・リース取引(所有権移転外リース)を主に学習します。

リース資産とリース債務の計上、リース料の支払い、減価償却費の計上という一連の流れを理解することが大切です。通常の固定資産購入と異なり、資産と負債が同時に計上されることを理解しておきましょう。

リース取引の問題では、利息相当額の計算方法がポイントになることが多いです。利息法と定額法の違いを理解し、問題文の指示に従って正しく計算できるように練習しましょう。

商業簿記の応用問題への対応

商業簿記の応用問題では、複数の論点が組み合わされて出題されることが多くあります。個別の論点を理解しているだけでは対応できないため、総合的な問題演習が必要です。

決算整理問題では、減価償却、貸倒引当金、有価証券の評価替え、税金の計上など、複数の処理を正しい順序で行う必要があります。どの順序で処理を進めるのが効率的か、自分なりの手順を確立しておきましょう。

また、簿記2級の商業簿記では、株式会社の会計処理が中心となります。資本金の増資、剰余金の配当、税効果会計など、株式会社特有の処理にも慣れておく必要があります。これらの論点は、実際の企業の財務諸表をイメージしながら学習すると理解しやすくなります。

応用問題を解く際は、時間配分も意識しましょう。1問に時間をかけすぎると、他の問題を解く時間がなくなってしまいます。わからない問題は一旦飛ばして、解ける問題から確実に得点することも重要な戦略です。

簿記2級の工業簿記の勉強方法

工業簿記は簿記2級から新たに登場する科目です。商業簿記とは異なり、製造業の原価計算を扱います。初めは戸惑うかもしれませんが、基本的な考え方を理解すれば、得点源にしやすい科目です。

工業簿記の配点は40点で、試験全体の4割を占めます。商業簿記の難関論点(連結会計など)が苦手な人でも、工業簿記で高得点を取れば合格ラインに到達できる可能性が高まります。

原価計算の基本的な考え方

工業簿記を学習する前に、原価計算の基本的な考え方を理解しておくことが大切です。

原価とは、製品を製造するためにかかった費用のことです。材料費(原材料の費用)、労務費(作業員の人件費)、経費(その他の製造費用)の3つに分類されます。これらを「原価の三要素」と呼び、工業簿記の基礎となる概念です。

製造原価は、直接費と間接費にも分類できます。直接費は特定の製品に直接紐づけられる費用(例:製品Aに使った材料費)、間接費は複数の製品に共通してかかる費用(例:工場全体の光熱費)です。間接費は何らかの基準で各製品に配賦する必要があり、この配賦計算が工業簿記の重要なポイントとなります。

原価計算の流れは、大きく分けて「費用の発生→原価の集計→製品への原価配分→原価の計算」という4つのステップで進みます。この全体の流れを理解しておくことで、個々の計算手順がどこに位置づけられるのかがわかりやすくなります。

工業簿記の問題を解く際は、製造現場の様子を具体的にイメージすることが有効です。材料が投入され、作業員が加工し、完成品が出来上がるまでの流れを頭の中で描きながら学習しましょう。

個別原価計算と総合原価計算の習得

工業簿記には、大きく分けて個別原価計算と総合原価計算の2つの計算方法があります。どちらも簿記2級の重要論点なので、両方をしっかり理解する必要があります。

個別原価計算の学習ポイント
個別原価計算は、注文生産のように製品ごとに異なる原価を計算する方法です。建設業や造船業、オーダーメイド製品などで使われます。

個別原価計算では、製造指図書ごとに原価を集計します。直接材料費と直接労務費は、製造指図書に直接集計できますが、製造間接費は予定配賦率を使って配賦します。予定配賦率の計算方法と、配賦差異(予定配賦額と実際発生額の差)の処理をしっかり理解しましょう。

仕損や作業くずが発生した場合の処理も重要です。正常仕損は製造原価に含め、異常仕損は営業外費用として処理するという原則を押さえておきましょう。

総合原価計算の学習ポイント
総合原価計算は、連続生産のように同じ製品を大量生産する場合に使う方法です。食品製造業や化学工業などで使われます。

総合原価計算の基本は、「総原価÷完成品数量」で単位あたり原価を計算することです。ただし、期末に仕掛品が残っている場合は、完成品と期末仕掛品にどう原価を配分するかがポイントになります。

平均法と先入先出法の2つの計算方法があります。平均法は期首仕掛品と当期投入を平均して計算し、先入先出法は期首仕掛品を先に完成させたと仮定して計算します。両方の方法を正確に使い分けられるように練習しましょう。

工程別総合原価計算や等級別総合原価計算など、応用的な論点も出題されます。基本的な総合原価計算をマスターしてから、これらの応用論点に取り組むとスムーズに理解できます。

CVP分析と標準原価計算の学習

CVP分析と標準原価計算は、工業簿記の中でもやや応用的な論点ですが、出題頻度が高いため、しっかり対策しておく必要があります。

CVP分析の学習ポイント
CVP分析(Cost-Volume-Profit分析)は、原価と生産量と利益の関係を分析する手法です。損益分岐点分析とも呼ばれます。

固定費と変動費の概念を理解することが第一歩です。固定費は生産量に関わらず一定額発生する費用(例:工場の賃借料)、変動費は生産量に比例して発生する費用(例:原材料費)です。

損益分岐点(利益がゼロになる売上高や販売量)の計算方法を確実にマスターしましょう。公式を暗記するだけでなく、なぜその公式で計算できるのかを理解することが大切です。グラフを描いて視覚的に理解する方法も有効です。

安全余裕率や目標利益を達成するための販売量など、応用的な問題にも対応できるように練習しましょう。CVP分析は、一度理解すれば確実に得点できる論点なので、得点源にすることをおすすめします。

標準原価計算の学習ポイント
標準原価計算は、事前に設定した標準原価(目標とする原価)と実際原価を比較し、差異を分析する手法です。原価管理の基本となる考え方です。

標準原価の計算、実際原価の計算、差異分析という3つのステップを理解しましょう。特に差異分析では、価格差異と数量差異、能率差異と操業度差異など、複数の差異に分解する計算が出題されます。

各差異が「有利差異(標準より実際が少ない)」なのか「不利差異(標準より実際が多い)」なのかを正しく判断することがポイントです。計算結果のプラス・マイナスの意味を理解し、正確に解答できるように練習しましょう。

標準原価計算の問題は、計算量が多くなりがちです。電卓操作に慣れておくことと、計算の順序を効率化することで、試験時間内に確実に解答できるようにしておきましょう。

簿記2級の学習スケジュールの立て方

簿記2級の合格には、計画的な学習スケジュールが不可欠です。一般的に150-250時間の学習時間が必要とされていますが、個人の前提知識や学習環境によって必要な時間は変わります。

無理のない学習計画を立て、継続的に学習を進めることが合格への近道です。途中で挫折しないよう、自分のペースで学習できるスケジュールを組みましょう。

3〜6ヶ月の学習計画の組み方

簿記2級の学習期間は、1日あたりの学習時間によって大きく変わります。

3ヶ月プラン(1日2-3時間)
平日2時間、休日4時間程度の学習時間が確保できる人向けのプランです。簿記3級の合格直後で知識が新鮮な状態であれば、3ヶ月での合格も十分可能です。

1ヶ月目:商業簿記と工業簿記のテキストを読み、基本問題を解く
2ヶ月目:問題集で応用問題を解き、苦手論点を洗い出して復習
3ヶ月目:過去問・予想問題で総仕上げ、本番形式の演習

このプランでは、スケジュール通りに進めることが重要です。遅れが出ると後半で時間が不足する可能性があるため、計画的な学習が求められます。

4-5ヶ月プラン(1日1-2時間)
働きながら学習する人や、じっくり理解を深めたい人に適したプランです。最も一般的な学習期間と言えます。

1-2ヶ月目:商業簿記のテキストと基本問題(連結会計は時間をかける)
2-3ヶ月目:工業簿記のテキストと基本問題
3-4ヶ月目:問題集の応用問題と苦手論点の復習
4-5ヶ月目:過去問・予想問題で実践演習

余裕を持ったスケジュールなので、理解が不十分な論点にしっかり時間をかけられます。仕事や家事との両立もしやすいプランです。

6ヶ月プラン(1日1時間程度)
ゆっくり確実に合格を目指したい人向けのプランです。初学者や、簿記3級の知識に不安がある人におすすめです。

1-2ヶ月目:簿記3級の復習と商業簿記の基礎
3-4ヶ月目:商業簿記の応用と工業簿記の基礎
5ヶ月目:問題集で総合演習
6ヶ月目:過去問・予想問題で仕上げ

時間に余裕があるため、理解できない論点を繰り返し復習できます。焦らず着実に実力を積み上げられるプランです。

商業簿記と工業簿記の時間配分

商業簿記と工業簿記の学習時間配分は、全体の6:4程度が目安です。配点と学習の難易度を考慮した比率です。

商業簿記は簿記3級の延長線上にある論点も多いですが、連結会計や本支店会計など、新しく難易度の高い論点も含まれます。特に連結会計は理解に時間がかかるため、十分な学習時間を確保しましょう。商業簿記全体で60-70%の学習時間を割り当てることをおすすめします。

工業簿記は簿記2級で初めて学習する科目ですが、パターン化された問題が多く、一度理解すれば安定して得点できる科目です。商業簿記に比べて少ない学習時間でも高得点を狙えるため、全体の30-40%程度の時間配分で十分です。

ただし、これはあくまで目安です。工業簿記の理解に時間がかかる人は、工業簿記により多くの時間を割いても構いません。大切なのは、両科目ともバランスよく学習し、どちらかに偏りすぎないことです。

学習の初期段階では商業簿記を優先し、中盤以降は工業簿記の演習量を増やすというメリハリをつけることも効果的です。自分の理解度を確認しながら、柔軟に時間配分を調整しましょう。

継続学習と復習のタイミング

簿記の学習は、継続が何より大切です。1週間に1回5時間勉強するより、毎日1時間ずつ勉強する方が効果的です。

学習を継続するコツは、毎日決まった時間に学習する習慣をつけることです。朝起きてから30分、通勤時間、寝る前の1時間など、自分の生活リズムに合わせて学習時間を確保しましょう。

復習のタイミングも重要です。エビングハウスの忘却曲線によれば、学習した内容は24時間以内に大幅に忘れてしまいます。そのため、学習した翌日に軽く復習することで、記憶の定着率が大きく向上します。

おすすめの復習サイクルは、学習当日→翌日→1週間後→1ヶ月後です。このタイミングで復習することで、長期記憶に定着しやすくなります。特に苦手な論点は、より頻繁に復習することをおすすめします。

また、週に1回は学習の進捗を振り返る時間を設けましょう。計画通り進んでいるか、理解が不十分な論点はないかを確認し、必要に応じてスケジュールを調整します。

簿記2級の勉強時間に関してもっと詳しい記事はこちら
簿記2級の勉強時間|合格までの学習スケジュールと時間配分

簿記2級の過去問・予想問題の活用法

過去問演習は簿記2級合格への最終段階です。テキストと問題集で基礎を固めたら、過去問に取り組むことで実践力を養います。

過去問を解くことで、試験の出題傾向や時間配分の感覚をつかめます。また、自分の弱点を発見し、重点的に復習すべき論点を明確にできます。

過去問演習を始める適切なタイミング

過去問演習は、基礎的な知識がある程度身についてから始めることが大切です。早すぎても遅すぎても効果が薄れてしまいます。

過去問演習を始める目安は、問題集の基本問題が7-8割程度解けるようになった段階です。まったく解けない状態で過去問に取り組んでも、自信を失うだけで学習効果は低くなってしまいます。基礎知識が不十分な場合は、まずテキストと問題集で基礎を固めることを優先しましょう。

学習期間で言えば、試験の1-1.5ヶ月前から過去問演習を始めるのが理想的です。それまでの期間でインプットとアウトプットを繰り返し、過去問に対応できる基礎力を養成します。

初めて過去問に取り組む際は、時間を気にせずゆっくり解いても構いません。まずは問題の形式や難易度を把握することが目的です。1回目で高得点が取れなくても落ち込む必要はありません。間違えた問題を丁寧に復習することが大切です。

過去問は最低でも5-10回分は解くことをおすすめします。日本商工会議所の公式サイトや市販の過去問題集を活用しましょう。ネット試験を受験する人は、ネット試験対応の模擬試験プログラムも活用すると効果的です。

時間配分を意識した実践練習

簿記2級の試験時間は90分です。商業簿記と工業簿記の両方を解く必要があるため、時間配分が合否を分ける重要なポイントとなります。

理想的な時間配分は、商業簿記に50-60分、工業簿記に30-40分です。配点が商業簿記60点、工業簿記40点なので、配点に応じた時間配分と言えます。ただし、これはあくまで目安で、問題の難易度によって柔軟に調整する必要があります。

過去問演習では、必ず時間を計って解く習慣をつけましょう。本番と同じ90分で解くことで、試験当日の時間感覚をつかめます。途中で時間を確認しながら解き、「30分経過時点でどこまで進んでいるべきか」という感覚を養いましょう。

時間が足りなくなる人は、以下の工夫を試してみてください。

まず、問題全体に目を通し、解きやすそうな問題から手をつけることです。簿記2級では、第1問が仕訳問題、第2問・第3問が商業簿記の応用問題、第4問・第5問が工業簿記という構成が一般的です。第1問の仕訳問題は比較的短時間で解けるため、まず確実に得点しましょう。

次に、わからない問題は一旦飛ばす勇気を持つことです。難問に時間をかけすぎると、解ける問題を解く時間がなくなってしまいます。全体を一通り解いてから、余った時間で難問に戻ることをおすすめします。

電卓操作のスピードアップも時間短縮につながります。メモリー機能やグランドトータル機能を使いこなすことで、計算時間を大幅に短縮できます。

苦手論点の洗い出しと対策

過去問を解く最大の目的は、自分の苦手論点を発見し、集中的に対策することです。

過去問を解いた後は、必ず答え合わせと解説の確認を丁寧に行いましょう。間違えた問題は、なぜ間違えたのかを分析します。計算ミスなのか、理解不足なのか、時間が足りなかったのかなど、原因を明確にします。

苦手論点が見つかったら、該当箇所のテキストに戻って復習します。理解が不十分な場合は、別の教材や動画講座も活用して、異なる角度からの説明に触れることをおすすめします。

苦手論点は、類似問題を複数解くことで克服できます。問題集やネット上の演習問題を活用し、同じ論点を繰り返し練習しましょう。3-5問解けば、その論点のパターンがつかめてきます。

過去問を解くたびに、正答率や間違えた論点を記録しておくことをおすすめします。学習の進捗が可視化され、モチベーション維持にもつながります。また、試験直前に見返すことで、最終確認にも使えます。

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簿記2級の過去問活用法|入手方法と効果的な解き方

簿記2級を独学で勉強する方法とコツ

簿記2級は独学でも十分合格可能な資格です。多くの合格者が市販のテキストと問題集を使って独学で合格しています。

ただし、独学には自己管理能力が求められます。学習計画の立案、モチベーションの維持、わからない箇所の解決など、すべて自分で行う必要があります。独学のメリットとデメリットを理解したうえで、自分に合った学習方法を選びましょう。

独学のメリットとデメリット

独学で簿記2級を目指す場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。

独学のメリット
費用を大幅に抑えられることが最大のメリットです。テキスト・問題集・過去問題集を購入しても、5,000-10,000円程度で済みます。通信講座や専門学校に通う場合は数万円から十数万円かかるため、独学は経済的な選択肢と言えます。

自分のペースで学習を進められることも大きな利点です。仕事や家事が忙しい時期は学習量を減らし、時間に余裕がある時期に集中して学習するなど、柔軟にスケジュールを調整できます。通学の必要がないため、移動時間も節約できます。

学習内容を自分で選択できることもメリットです。得意な論点はさっと進め、苦手な論点に時間をかけるなど、自分の理解度に合わせた学習ができます。

独学のデメリット
わからない箇所を質問できる相手がいないことが最大のデメリットです。テキストの説明だけでは理解できない論点に出会ったとき、解決に時間がかかることがあります。

学習計画やモチベーション管理をすべて自分で行う必要があることも難点です。挫折しそうになっても励ましてくれる講師や仲間がいないため、強い意志が求められます。

最新の試験傾向や改正情報を自分で収集する必要があることもデメリットです。専門学校では最新情報を提供してくれますが、独学では自分で情報収集しなければなりません。

独学で挫折しないための工夫

独学で簿記2級に合格するためには、挫折を防ぐ工夫が必要です。

学習習慣の確立
毎日決まった時間に学習する習慣をつけることが最も重要です。「朝起きたら30分勉強する」「寝る前に1時間勉強する」など、生活リズムに組み込むことで、学習を継続しやすくなります。

最初は短時間でも構いません。毎日15分の学習から始め、徐々に時間を延ばしていく方法も効果的です。大切なのは、毎日継続することです。

小さな目標設定
「簿記2級に合格する」という大きな目標だけでなく、「今週はテキストの第2章を終わらせる」「今日は仕訳問題を10問解く」といった小さな目標を設定しましょう。小さな達成感を積み重ねることで、モチベーションを維持できます。

目標を達成したら、自分にご褒美を用意することも効果的です。「1章終わったら好きなスイーツを食べる」など、楽しみを用意しておくとモチベーションが上がります。

学習記録の活用
学習した内容や時間を記録することをおすすめします。カレンダーに学習時間を書き込んだり、学習記録アプリを使ったりすることで、自分の努力が可視化されます。

記録を見返すことで、「これだけ学習してきた」という自信につながります。また、学習が滞っている時期があれば、早めに対策を立てられます。

SNSやコミュニティの活用
同じ目標を持つ仲間とつながることで、モチベーションを維持しやすくなります。SNSの簿記学習アカウントや、オンライン掲示板などで情報交換や励まし合いができます。

ただし、SNSに時間を取られすぎないよう注意が必要です。学習時間を削ってまでSNSを見ることのないよう、バランスを保ちましょう。

無料動画講座やアプリの活用

独学の弱点を補う方法として、無料の学習リソースを活用することをおすすめします。

YouTube動画講座
YouTubeには簿記2級の解説動画が多数公開されています。テキストだけでは理解できない論点も、動画で視覚的に説明されることで理解しやすくなります。

特に連結会計や標準原価計算など、初学者が躓きやすい論点は、複数の講師の解説を見比べることで理解が深まります。自分に合った説明スタイルの動画を見つけましょう。

通勤時間や家事をしながらでも視聴できるため、スキマ時間の活用にも適しています。ただし、受け身になりすぎず、動画を見た後は必ず自分で問題を解いて知識を定着させることが大切です。

簿記学習アプリ
スマートフォンで利用できる簿記学習アプリも数多くあります。仕訳問題の演習に特化したアプリや、用語を覚えるためのフラッシュカードアプリなど、目的に応じて選べます。

無料で利用できるアプリも多いので、複数試してみて自分に合ったものを使いましょう。通勤時間や待ち時間などのスキマ時間に活用することで、学習効率が上がります。

日本商工会議所の公式サイト
日本商工会議所のウェブサイトでは、試験の最新情報や出題範囲の改定情報が公開されています。定期的にチェックすることで、独学でも最新情報を入手できます。

サンプル問題や出題の意図なども公開されているため、試験対策に活用しましょう。

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簿記2級は独学で合格できる?勉強法とおすすめ教材

簿記2級の効率的な勉強方法のポイント

簿記2級に効率よく合格するには、戦略的な学習が必要です。闇雲に勉強するのではなく、合格に必要な知識を効率的に身につけることを意識しましょう。

限られた時間の中で最大の成果を出すためには、重要論点の見極めと、自分の得意・苦手の把握が大切です。

70点合格を意識した学習戦略

簿記2級の合格点は70点です。満点を取る必要はなく、70点で合格できることを常に意識しましょう。

100点満点を目指すと、すべての論点を完璧に理解しようとして時間がかかりすぎてしまいます。合格に必要な70点を確実に取るという戦略の方が、効率的に合格に近づけます。

具体的には、出題頻度の高い重要論点を優先的に学習します。商業簿記では仕訳問題、連結会計、本支店会計、工業簿記では個別原価計算、総合原価計算、CVP分析などが頻出論点です。これらを確実に理解し、得点できるようにしておけば、合格ラインに到達する可能性が高まります。

一方で、出題頻度の低いマイナーな論点は、深入りしすぎないことも戦略の一つです。基本的な理解にとどめ、より重要な論点に時間を使いましょう。

また、自分の得意分野を伸ばすことも有効です。例えば、工業簿記が得意な人は、工業簿記で40点満点を目指し、商業簿記で30点以上取れば合格できます。すべてを均等に学習するよりも、得意分野を確実な得点源にする方が効率的です。

捨て問の見極めと得点源の確保

試験本番では、すべての問題を解こうとするのではなく、解ける問題を確実に得点することが重要です。

簿記2級の試験では、時々非常に難易度の高い問題(いわゆる「捨て問」)が出題されることがあります。これらの問題に時間をかけすぎると、他の解ける問題を解く時間がなくなってしまいます。

問題を見て「これは時間がかかりそうだ」「今の自分の知識では難しい」と判断したら、潔く飛ばす勇気を持ちましょう。全体を一通り解いてから、余った時間で難問に戻れば良いのです。

得点源として確保すべきなのは、以下の論点です。

商業簿記の第1問(仕訳問題)は、比較的短時間で得点できるため、確実に正解したい問題です。基本的な仕訳パターンを繰り返し練習し、本番で迷わず解けるようにしておきましょう。

工業簿記の基本的な原価計算問題も得点源です。個別原価計算や総合原価計算の基本パターンは、練習を重ねれば安定して得点できます。

一方で、連結会計の複雑な応用問題や、見たことのない形式の問題は、捨て問の候補となります。基本レベルの問題は確実に解き、応用レベルは時間があれば挑戦するというスタンスで臨みましょう。

電卓操作の習熟と計算スピードアップ

簿記2級では多くの計算が必要なため、電卓操作のスキルが合格を左右します。

簿記検定では、計算機能のみの電卓(関数電卓やプログラム電卓は不可)が使用できます。試験用の電卓を早めに用意し、毎日の学習で使い慣れておくことが大切です。

電卓の便利な機能を使いこなすことで、計算スピードが大幅に向上します。

メモリー機能(M+、M-、MR、MC)
複数の計算結果を合計する際に便利です。例えば、原価計算で材料費・労務費・経費をそれぞれ計算し、最後に合計する場合、各計算結果をメモリーに加算していけば、最後にMR(メモリーリコール)で合計が表示されます。

グランドトータル機能(GT)
計算結果を自動的に累積加算する機能です。複数の計算を行い、最後にGTキーを押せば、すべての計算結果の合計が表示されます。

定数計算機能
同じ数値で繰り返し計算する際に便利です。例えば、複数の金額に同じ消費税率をかける場合、定数計算を使えば効率的に計算できます。

電卓のキーの配置にも慣れておきましょう。ブラインドタッチ(見ないで打つ)ができるようになると、問題用紙を見ながら計算できるため、時間短縮につながります。

計算ミスを減らすためには、大きな金額から順に入力する、計算結果をメモしておくなどの工夫も有効です。特に金額の桁数が多い問題では、ゼロの数を間違えやすいので注意しましょう。

簿記2級の勉強方法に関連するよくある質問(FAQ)

Q. 簿記2級は商業簿記と工業簿記どちらから勉強すべきですか?

簿記2級の学習では、商業簿記から始めることをおすすめします。商業簿記は簿記3級の延長線上にあるため、既存の知識を活かしてスムーズに学習を進められます。簿記3級で学んだ仕訳の基礎や決算処理の知識が、商業簿記の理解を助けてくれます。

ただし、商業簿記だけを先に終わらせるのではなく、商業簿記と工業簿記を並行して学習することが効果的です。商業簿記を1単元学習したら、工業簿記も1単元進めるというペースで交互に学習することで、飽きずに継続できます。商業簿記の難関論点でつまずいたときは、気分転換に工業簿記を学習するという方法も有効です。

Q. 簿記2級の勉強方法で独学と通信講座どちらがおすすめですか?

独学と通信講座のどちらが適しているかは、個人の状況によって異なります。費用を抑えたい人や、自分のペースで学習したい人には独学が向いています。市販のテキストと問題集を使えば、5,000-10,000円程度で学習できます。

一方、わからない箇所を質問したい人や、学習計画を立てるのが苦手な人には通信講座がおすすめです。講師に質問できる環境があれば、理解に詰まったときもスムーズに解決できます。また、学習スケジュールが提供されるため、計画的に学習を進められます。

簿記3級に独学で合格できた人は、簿記2級も独学で挑戦する価値があります。学習方法が確立されているため、同じ方法で学習を進められます。一方、簿記3級で苦労した人や、簿記2級の難関論点(連結会計など)に不安がある人は、通信講座の利用を検討してもよいでしょう。

Q. 簿記2級の勉強でつまずきやすいポイントは?

簿記2級でつまずきやすい論点は、連結会計、標準原価計算、本支店会計の3つです。

連結会計は、親会社と子会社を合算して財務諸表を作成する処理で、簿記2級で初めて登場する概念です。投資と資本の相殺消去、のれんの計算、非支配株主持分の計算など、複数の新しい概念を理解する必要があります。企業買収の場面を具体的にイメージしながら、一つひとつの処理の意味を理解することが攻略の鍵です。

標準原価計算は、予定原価と実際原価の差異分析を行う手法です。価格差異、数量差異、能率差異、操業度差異など、複数の差異に分解する計算が複雑に感じられます。各差異の意味を理解し、計算手順を確立することで、確実に得点できる論点になります。

本支店会計は、本店と支店の会計を統合する処理です。未達取引の処理や内部利益の消去など、慣れるまで混乱しやすい論点です。本店勘定と支店勘定の関係性を理解し、パターンを覚えることで対応できます。

Q. 簿記2級を3級飛ばしていきなり勉強できますか?

制度上は簿記3級を飛ばして簿記2級から受験することが可能です。しかし、簿記の基礎知識がない状態で簿記2級の内容を理解するのは非常に困難です。

簿記2級は簿記3級の知識を前提として構成されています。借方・貸方の概念、仕訳の基本ルール、決算整理の流れなどの基礎知識がないと、簿記2級の内容を理解できません。特に商業簿記は、簿記3級の延長線上にある論点が多いため、基礎が固まっていないと応用問題に対応できません。

簿記3級を飛ばして簿記2級から始める場合、学習時間が大幅に長くなります。基礎から学習する必要があるため、通常の1.5-2倍の時間がかかると考えられます。効率的に合格を目指すなら、簿記3級から順番に学習することを強くおすすめします。

ただし、会計の実務経験がある人や、大学で会計学を専攻していた人など、既に基礎知識がある人は、簿記3級を飛ばして簿記2級から挑戦することも可能です。その場合でも、簿記3級のテキストで基礎知識を確認してから簿記2級の学習に入ることをおすすめします。

Q. 簿記2級の工業簿記が苦手な場合の対処法は?

工業簿記が苦手な人は、原価計算の基本的な考え方から学び直すことをおすすめします。

工業簿記は製造業の原価計算を扱う科目で、商業簿記とは考え方が大きく異なります。材料費・労務費・経費という原価の三要素、直接費と間接費の分類、製造原価の流れなど、基礎概念を確実に理解することが第一歩です。

工業簿記の学習では、製造現場の様子を具体的にイメージすることが有効です。テキストの図解や事例をしっかり読み込み、材料が投入されて製品が完成するまでの流れを頭の中で描きましょう。抽象的な数式だけで理解しようとすると、つまずきやすくなります。

動画講座を活用することも効果的です。視覚的に説明されることで、工場での製造プロセスや原価の流れがイメージしやすくなります。YouTubeの無料講座でも、工業簿記をわかりやすく解説している動画が多数あります。

また、工業簿記は問題のパターンが決まっているため、繰り返し問題を解くことで慣れていきます。最初は時間がかかっても、同じ論点の問題を3-5問解けば、パターンがつかめてくるはずです。

Q. 簿記2級の勉強で連結会計を捨ててもいいですか?

連結会計を完全に捨てることはおすすめしません。連結会計は簿記2級の重要論点の一つで、出題頻度も高いからです。

ただし、連結会計の難易度は問題によって大きく異なります。基本的な連結会計の問題は確実に得点できるようにしておき、非常に複雑な応用問題は捨て問として扱うという戦略は有効です。

連結会計の基本である「投資と資本の相殺消去」と「のれんの計算」は、必ず理解しておきましょう。これらは連結会計の土台となる概念で、基本問題で必ず出題されます。

成果連結(連結損益計算書の作成)や、複数年度にわたる連結会計、持分法などの応用論点は、時間があれば学習するというスタンスでも構いません。まずは基本レベルの連結会計を確実にマスターし、そのうえで余裕があれば応用論点に取り組みましょう。

工業簿記が得意な人は、工業簿記で高得点を取り、連結会計の基本問題だけを確実に解くという戦略でも合格ラインに到達できます。自分の得意・不得意を見極めて、戦略的に学習を進めることが大切です。

Q. 簿記2級の勉強で動画講座は必要ですか?

動画講座は必須ではありませんが、理解を深めるための有効なツールです。特に独学で学習している人にとって、動画講座は講師の説明を聞ける貴重な機会となります。

テキストだけでは理解できない論点も、動画で視覚的に説明されることで理解しやすくなることがあります。連結会計や標準原価計算など、複雑な論点は、複数の講師の説明を見比べることで理解が深まります。

YouTubeには簿記2級の無料解説動画が多数公開されているので、まずは無料動画を活用してみることをおすすめします。それで十分理解できれば、有料の動画講座を購入する必要はありません。

一方、独学での理解に限界を感じる人や、体系的な講義を受けたい人は、有料の動画講座や通信講座の利用を検討してもよいでしょう。通信講座では、質問対応や添削サービスが付いている場合もあり、独学のデメリットを補えます。

自分の学習スタイルや予算に合わせて、必要に応じて動画講座を活用することをおすすめします。

まとめ:簿記2級の効果的な勉強方法と合格への道筋

本記事では、簿記2級の効果的な勉強方法について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. 商業簿記と工業簿記の並行学習:簿記2級では商業簿記60点、工業簿記40点の配点で出題されます。両科目を交互に学習することで、飽きずに効率的に実力を養成できます。商業簿記の難関論点(連結会計など)でつまずいたときは、工業簿記で気分転換しながら学習を進めましょう。
  2. 理解重視の学習姿勢:丸暗記ではなく、「なぜそうなるのか」を理解することが合格への近道です。連結会計や標準原価計算など、複雑な論点は具体的な場面をイメージしながら学習することで、応用問題にも対応できる力が身につきます。
  3. 70点合格を意識した戦略:満点を目指す必要はなく、70点で合格できます。出題頻度の高い重要論点を優先的に学習し、得意分野を確実な得点源にすることで、効率的に合格ラインに到達できます。

簿記2級の学習は、簿記3級の基礎知識を確認することから始めます。簿記3級の勉強方法を参考に、仕訳や決算処理の基本を押さえておきましょう。そのうえで、簿記2級のおすすめテキストを使って計画的に学習を進めます。

過去問演習では、簿記2級の過去問を活用して実践力を養います。独学で進める人は、簿記2級の独学勉強法も参考にしてください。

本記事を通じて、簿記2級の効果的な勉強方法と学習計画の立て方を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、簿記2級合格に向けて着実に一歩を踏み出しましょう。継続的な学習と適切な復習を重ねることで、必ず合格を手にすることができます。

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