簿記1級の合格を目指すあなたへ。「簿記1級にはどれくらいの勉強時間が必要なのか」という疑問は、適切な学習計画を立てることで解決できます。
本記事では、簿記2級取得者と初学者それぞれに必要な勉強時間の目安、科目別の時間配分、働きながら合格するための時間管理術について、実際の合格者データを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、簿記1級合格に向けて、無理のない長期学習計画を立てましょう。
- 簿記1級合格に必要な勉強時間の目安(500〜1,000時間以上)
- 科目別(商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算)の効率的な時間配分
- 働きながら合格するための現実的な学習スケジュールの立て方
- 独学と専門学校での勉強時間の違いと選択基準
- 簿記2級取得者でも500〜800時間必要:簿記1級は学習範囲が広く、会計学と原価計算が追加されるため、簿記2級の知識があっても長期的な学習計画が不可欠です。
- 4科目への時間配分が合格の鍵:商業簿記30%、会計学20%、工業簿記25%、原価計算25%のバランスで学習を進めることで、効率的に合格ラインに到達できます。
- 働きながらなら1年以上の計画を:社会人が1日1〜2時間の学習で合格を目指す場合、1年から1年半の長期計画を立てることで、仕事と両立しながら着実に実力をつけられます。
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簿記1級(日商簿記1級)に必要な勉強時間の目安
簿記1級は日商簿記検定の最高峰に位置する資格試験です。合格に必要な勉強時間は、受験者の簿記知識レベルや学習方法によって大きく変動します。ここでは、簿記2級取得者と初学者それぞれに必要な標準的な勉強時間について解説します。
簿記2級取得者が簿記1級合格に必要な勉強時間は500〜800時間
簿記2級に合格している方が簿記1級を目指す場合、標準的な勉強時間は500〜800時間程度です。簿記2級で学んだ商業簿記と工業簿記の基礎知識があるため、初学者よりも学習時間を短縮できます。
ただし、簿記1級では連結会計、企業結合、キャッシュフロー計算書など、簿記2級にはない高度な論点が多数登場します。また、会計学という理論科目が新たに加わり、会計基準や財務諸表の深い理解が求められます。簿記2級から1年以内に簿記1級を受験する場合、知識の定着度が高いため600時間程度で合格できるケースもあります。一方、簿記2級取得から数年経過している場合は、基礎の復習に時間がかかるため800時間程度を見込む必要があります。
1日2〜3時間の学習で進める場合、6ヶ月から10ヶ月程度の学習期間が必要になります。年2回実施される統一試験を見据えて、試験日から逆算した学習計画を立てることが合格への近道です。
初学者が簿記1級合格に必要な勉強時間は800〜1,000時間以上
簿記の学習経験がない初学者が簿記1級に挑戦する場合、800〜1,000時間以上の勉強時間が必要です。簿記3級と簿記2級の内容をゼロから学び、さらに簿記1級レベルの高度な会計知識を身につける必要があるためです。
初学者がいきなり簿記1級から始めることは推奨されません。簿記の基本原理である仕訳や勘定科目の理解なしに、連結会計や原価計算の複雑な論点に取り組むのは非常に困難です。一般的には、簿記3級で約100〜150時間、簿記2級で約200〜300時間、簿記1級で約500〜800時間と段階的に学習を進めるのが現実的です。
もし初学者が簿記1級を目指す場合は、まず簿記3級と簿記2級の内容を短期集中で習得し、その後簿記1級の学習に移行するステップアップ方式が効果的です。専門学校の初学者向けコースでは、簿記3級から簿記1級までを1年半から2年程度で体系的に学べるカリキュラムが用意されています。
他の難関資格との勉強時間比較
簿記1級の勉強時間を他の難関資格と比較すると、その位置づけがより明確になります。
主な資格の標準勉強時間
- 簿記3級:50〜100時間
- 簿記2級:200〜300時間
- 簿記1級:500〜1,000時間
- 税理士試験(1科目):400〜600時間
- 税理士試験(5科目):3,000〜5,000時間
- 公認会計士試験:3,000〜5,000時間
- 中小企業診断士:1,000〜1,300時間
簿記1級は税理士試験や公認会計士試験への足がかりとなる資格です。税理士試験の会計科目(簿記論・財務諸表論)と出題範囲が重複する部分が多く、簿記1級合格後に税理士試験にステップアップする方も少なくありません。公認会計士試験の短答式試験(財務会計論)も、簿記1級の知識が基礎となります。
中小企業診断士と比較すると、簿記1級のほうがやや学習時間は短いものの、会計分野に特化している分、専門性が高い試験と言えます。簿記1級に合格すれば、企業の経理部門や財務部門で即戦力として活躍できる知識が身につきます。
簿記1級の試験内容と難易度については、別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
簿記1級(日商簿記1級)の勉強時間が変動する要因
簿記1級の勉強時間は、受験者の状況や学習環境によって大きく変動します。500時間で合格する人もいれば、1,000時間以上かけても合格できない人もいます。ここでは、勉強時間が変動する主な要因について解説します。
簿記2級の知識定着度と実務経験の有無
簿記2級の知識がしっかり定着しているかどうかが、簿記1級の学習効率に大きく影響します。簿記2級に高得点で合格し、試験範囲の内容を深く理解している方は、簿記1級の学習にスムーズに移行できます。
一方、簿記2級に何度も挑戦してようやく合格した場合や、合格から数年経過している場合は、基礎知識の復習に多くの時間を費やすことになります。特に工業簿記の原価計算や商業簿記の連結会計の基礎が曖昧だと、簿記1級の高度な論点を理解するのに苦労します。
経理や財務の実務経験がある方は、簿記1級の学習内容が実務とリンクするため、理解が早い傾向があります。日常業務で財務諸表を扱っている方なら、キャッシュフロー計算書や連結財務諸表の実務的なイメージが湧きやすく、暗記に頼らず理論的に理解できます。ただし、実務経験があっても試験特有の出題形式に慣れる必要はあるため、過去問演習は欠かせません。
学習方法の選択(独学・専門学校・通信講座)
独学、専門学校、通信講座のどれを選ぶかによって、必要な勉強時間は変わります。
独学の場合、テキスト選びから学習計画の立案まで全て自分で行う必要があり、効率的な学習順序を見つけるまでに時間がかかります。理解できない論点があっても質問できる相手がいないため、自力で解決するまでに多くの時間を費やすことがあります。独学で合格を目指す場合、専門学校利用者よりも100〜200時間多く見積もるのが安全です。
専門学校や通信講座を利用すると、プロの講師が最短ルートで合格レベルまで導いてくれるため、学習時間を効率化できます。分からない論点があればすぐに質問でき、理解のつまずきを早期に解消できます。また、定期的に開催される答練や模擬試験によって、本試験レベルの問題に慣れることができます。費用はかかりますが、確実に合格を目指すなら専門学校の活用は有効な選択肢です。
受験回数による勉強時間の増加
簿記1級は合格率が10%前後の難関試験のため、複数回の受験が必要になるケースも珍しくありません。1回目の受験で不合格だった場合、次回の試験に向けて追加で200〜400時間の勉強時間が必要になります。
初回受験時に基礎固めを十分に行わず、過去問演習を軽視してしまうと、複数回受験する可能性が高まります。特に4科目全てで基準点(各科目10点以上、合計70点以上)をクリアする必要があるため、苦手科目を放置すると足切りで不合格になってしまいます。
複数回受験を避けるためには、初回受験までに十分な準備期間を確保し、過去問を最低でも5年分は解いておくことが重要です。模擬試験で安定して70点以上取れるようになってから本試験に臨むのが理想的です。
1日あたりの学習時間と継続性
1日あたりの学習時間をどれだけ確保できるかによって、合格までの期間が変わります。1日3〜4時間確保できれば6ヶ月程度での合格も可能ですが、1日1〜2時間しか確保できない場合は1年以上かかります。
重要なのは、学習の継続性です。週末に集中して10時間勉強するよりも、平日に毎日2時間ずつ学習したほうが知識の定着率は高まります。簿記1級の学習内容は難易度が高いため、一度学んだ内容も復習を怠るとすぐに忘れてしまいます。
働きながら簿記1級を目指す社会人の場合、平日は2時間、休日は3〜4時間という学習ペースが現実的です。このペースで進めると、週に約20時間、月に約80時間の学習時間が確保できます。年2回の統一試験に合わせて計画を立てる場合、試験日の6ヶ月から1年前から学習を開始するとよいでしょう。
簿記1級(日商簿記1級)と簿記2級の勉強時間の違い
簿記1級と簿記2級では、学習範囲の広さと難易度に大きな違いがあります。簿記2級に合格した方が簿記1級に挑戦する際、その勉強時間の違いに驚くことも少なくありません。ここでは、両者の勉強時間の違いとその理由について解説します。
学習範囲の圧倒的な違いと勉強時間への影響
簿記2級の標準的な勉強時間が200〜300時間であるのに対し、簿記1級は500〜1,000時間と約2.5〜3倍の学習時間が必要です。この違いは、学習範囲の広さに起因します。
簿記2級では商業簿記と工業簿記の2科目を学びますが、簿記1級ではさらに会計学と原価計算が加わり、合計4科目になります。商業簿記の範囲も大幅に拡大し、連結会計、企業結合、リース取引、退職給付会計、税効果会計など、実務でも高度な論点が出題されます。
また、簿記2級は個別財務諸表の作成が中心ですが、簿記1級では連結財務諸表の作成が求められます。親会社と子会社の取引を相殺消去し、グループ全体の財務状態を表す連結財務諸表を作成する手順は複雑で、理解に時間がかかります。
工業簿記も、簿記2級の原価計算の基礎から一歩進んで、標準原価計算、直接原価計算、CVP分析、業務的意思決定など、経営管理会計の領域まで学習範囲が広がります。これらの高度な論点を全て習得するには、簿記2級の2倍以上の学習時間が必要になるのは当然と言えます。
会計学と原価計算の追加による学習負担
簿記1級では、商業簿記と工業簿記に加えて、会計学と原価計算という2つの理論科目が追加されます。この4科目体制が学習負担を大きく増加させる要因です。
会計学は、会計基準や企業会計原則の理論を学ぶ科目です。財務会計の理論的背景、会計処理の根拠、財務諸表の表示方法など、簿記2級までの「仕訳を覚える」という学習スタイルから、「なぜその会計処理をするのか」という理論的理解が求められます。理論問題では、会計基準の内容を正確に記述する必要があり、暗記だけでなく深い理解が不可欠です。
原価計算は、工業簿記の計算問題に加えて、原価計算の理論や原価管理の手法を学びます。個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算の理論的背景、原価差異分析、予算管理など、経営管理に直結する内容を扱います。計算だけでなく理論問題も出題されるため、両方の対策が必要です。
簿記2級までは計算問題が中心でしたが、簿記1級では理論問題の比重が高まります。会計学は40点満点中、理論問題が20〜30点を占めることもあります。計算のスピードと正確性に加えて、会計理論を自分の言葉で説明できる力が求められるため、学習の幅が大きく広がります。
簿記2級から簿記1級へのステップアップ期間
簿記2級に合格した後、どれくらいの期間で簿記1級に挑戦すべきかは、多くの受験生が悩むポイントです。
簿記2級合格直後に簿記1級の学習を始める場合、簿記2級の知識が鮮明に記憶に残っているため、学習効率が高まります。特に工業簿記の原価計算や商業簿記の連結会計の基礎は、簿記1級でさらに深く学ぶため、知識のつながりがスムーズです。簿記2級合格から半年以内に簿記1級の学習を開始すれば、基礎の復習に費やす時間を最小限に抑えられます。
一方、簿記2級合格から1年以上経過している場合は、簿記2級の内容を復習しながら簿記1級に進む必要があります。特に仕訳や勘定科目の基礎が曖昧になっていると、簿記1級の高度な論点を理解するのに苦労します。この場合、簿記2級の問題集を再度解き直してから簿記1級の学習に入るのが効果的です。
実務で経理や会計に携わっている方は、日常業務を通じて簿記の知識を維持できるため、簿記2級合格から数年経っていても比較的スムーズに簿記1級の学習に入れます。逆に、簿記の知識を使う機会がない方は、早めに簿記1級にチャレンジするほうが有利です。
簿記2級の勉強時間については別の記事で詳しく解説していますので、2級との違いをより深く理解したい方はあわせてご覧ください。
簿記1級合格までの学習期間パターン
簿記1級の学習期間は、1日あたりの学習時間によって大きく変わります。ここでは、代表的な3つの学習期間パターンを紹介します。自分のライフスタイルに合わせて、無理のない計画を選びましょう。
6ヶ月短期集中プラン(1日3〜4時間の学習)
1日3〜4時間の学習時間を確保できる方は、6ヶ月での合格を目指すことができます。このプランでは、週に約25時間、月に約100時間、半年で約600時間の学習時間が確保できます。
6ヶ月プランのスケジュール例
- 1〜2ヶ月目(基礎学習期):商業簿記と会計学の基礎を固める。テキストを読み込み、基本的な仕訳と理論を習得。
- 3〜4ヶ月目(基礎学習期):工業簿記と原価計算の基礎を固める。4科目全ての基本論点を一通り学習。
- 4〜5ヶ月目(問題演習期):過去問演習を開始。各科目の典型問題を繰り返し解き、解法パターンを習得。
- 6ヶ月目(総仕上げ期):模擬試験と総復習。苦手分野を重点的に復習し、時間配分を確認。
このプランは、仕事を辞めて資格取得に専念する方や、大学生で時間に余裕がある方に適しています。短期集中で一気に知識を詰め込むため、学習内容の忘却を防ぎ、効率的に合格レベルに到達できます。
ただし、1日3〜4時間の学習を半年間継続するのは、強い意志とモチベーション管理が必要です。週に1日は休息日を設けるなど、燃え尽きないようペース配分に注意しましょう。
8〜10ヶ月標準プラン(1日2〜3時間の学習)
1日2〜3時間の学習時間が確保できる方は、8〜10ヶ月での合格を目指すのが現実的です。このプランでは、週に約18時間、月に約75時間、10ヶ月で約750時間の学習時間が確保できます。
10ヶ月プランのスケジュール例
- 1〜3ヶ月目(基礎学習期):商業簿記と会計学の基礎を固める。理論問題にも対応できるよう、会計基準を理解。
- 4〜6ヶ月目(基礎学習期):工業簿記と原価計算の基礎を固める。標準原価計算や直接原価計算などの応用論点も学習。
- 7〜8ヶ月目(問題演習期):過去問演習と典型問題の繰り返し。4科目バランスよく演習を重ねる。
- 9〜10ヶ月目(総仕上げ期):模擬試験、苦手分野の克服、総復習。本試験レベルの問題を時間を計って解く。
このプランは、働きながら簿記1級を目指す社会人や、学業と両立しながら資格取得を目指す学生に最も人気があります。平日は2時間、休日は3〜4時間という学習ペースで進められます。
10ヶ月あれば基礎から応用まで丁寧に学習できるため、理解を深めながら着実にレベルアップできます。年2回の統一試験(6月と11月)に合わせて、試験日の10ヶ月前から学習を開始するのが理想的です。
1年以上じっくりプラン(1日1〜2時間の学習)
1日1〜2時間の学習時間で進める場合、1年から1年半の学習期間を見込む必要があります。このプランでは、週に約10時間、月に約40時間、1年で約500時間、1年半で約750時間の学習時間が確保できます。
1年半プランのスケジュール例
- 1〜6ヶ月目(基礎学習期):商業簿記と会計学の基礎をじっくり学習。理論の理解に時間をかける。
- 7〜12ヶ月目(基礎学習期):工業簿記と原価計算の基礎を固める。計算問題を繰り返し解く。
- 13〜15ヶ月目(問題演習期):過去問演習を開始。科目ごとに典型問題を習得。
- 16〜18ヶ月目(総仕上げ期):模擬試験、苦手分野の復習、総仕上げ。
このプランは、仕事が忙しく毎日の学習時間が限られる社会人や、家事や育児と両立しながら資格取得を目指す方に適しています。無理のないペースで学習を継続できるため、途中で挫折するリスクを減らせます。
ただし、学習期間が長くなると、最初に学んだ内容を忘れてしまうリスクもあります。定期的に過去の内容を復習する時間を設け、知識を定着させることが重要です。学習開始から6ヶ月後に一度全体を復習するなど、計画的に復習を組み込みましょう。
簿記1級の4科目別の勉強時間配分
簿記1級は商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4科目で構成されます。効率的に合格を目指すには、各科目への時間配分が重要です。ここでは、各科目に必要な標準的な勉強時間と学習のポイントを解説します。
商業簿記の学習時間(全体の30%・150〜240時間)
商業簿記は簿記1級の中で最も配点が高く(25点満点)、学習範囲も広い科目です。全体の学習時間の約30%、つまり600時間の学習計画なら180時間、800時間なら240時間を商業簿記に割り当てるのが適切です。
商業簿記で学ぶ主な論点は、連結会計、企業結合、事業分離、本支店会計、外貨建取引、リース取引、退職給付会計、税効果会計、資産除去債務などです。特に連結会計は出題頻度が高く、子会社の支配獲得、のれんの償却、非支配株主持分の計算など、複雑な処理を正確に行う必要があります。
商業簿記の学習では、まず個別財務諸表の作成を確実にできるようにしてから、連結財務諸表に進むのが効果的です。簿記2級で学んだ連結会計の基礎(資本連結の開始仕訳、成果連結)を復習し、段階的に難易度を上げていきましょう。
理論問題も出題されるため、企業会計原則や各種会計基準の内容を理解しておく必要があります。特に金融商品会計基準、リース会計基準、退職給付会計基準などは理論問題の頻出分野です。
会計学の学習時間(全体の20%・100〜160時間)
会計学は理論科目として位置づけられ、簿記1級の特徴的な科目です。全体の学習時間の約20%、つまり600時間の学習計画なら120時間、800時間なら160時間を会計学に割り当てるのが目安です。
会計学では、財務会計の理論、会計基準の内容、財務諸表の表示方法、経営分析などを学びます。企業会計原則、金融商品会計基準、減損会計基準、リース会計基準、退職給付会計基準など、主要な会計基準の内容を正確に理解し、記述できるようにする必要があります。
会計学の学習では、暗記だけでなく理解が重要です。「なぜその会計処理をするのか」「どのような考え方に基づいているのか」を理論的に説明できるようにしましょう。計算問題も出題されますが、商業簿記の内容と重複するため、商業簿記の学習が進めば自然と対応できるようになります。
理論問題の対策としては、過去問で出題された理論問題を繰り返し解き、模範解答の書き方を習得することが効果的です。会計基準の原文を読み込むのも有効ですが、時間がかかるため、専門学校のテキストで要点を押さえるほうが効率的です。
工業簿記の学習時間(全体の25%・125〜200時間)
工業簿記は製造業の原価計算を扱う科目で、簿記2級で学んだ内容をさらに発展させます。全体の学習時間の約25%、つまり600時間の学習計画なら150時間、800時間なら200時間を工業簿記に割り当てるのが目安です。
工業簿記で学ぶ主な論点は、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算、CVP分析、セグメント別損益計算などです。簿記2級では基本的な原価計算を学びましたが、簿記1級ではより複雑な計算や意思決定に関わる論点が加わります。
標準原価計算では、材料費差異、労務費差異、製造間接費差異の分析方法を学びます。差異分析は計算量が多く、時間内に正確に解くには訓練が必要です。直接原価計算では、変動費と固定費を区別し、限界利益や貢献利益の計算を行います。
工業簿記の学習では、計算のスピードと正確性が求められます。過去問や問題集で典型問題を繰り返し解き、解法パターンを体に染み込ませることが重要です。電卓の使い方にも慣れ、ミスなく効率的に計算できるようにしましょう。
原価計算の学習時間(全体の25%・125〜200時間)
原価計算は工業簿記の理論科目として位置づけられ、計算問題と理論問題の両方が出題されます。全体の学習時間の約25%、つまり600時間の学習計画なら150時間、800時間なら200時間を原価計算に割り当てるのが目安です。
原価計算で学ぶ主な論点は、原価計算の理論、予算管理、原価管理、業績評価、業務的意思決定などです。工業簿記の計算問題と内容が重複する部分もありますが、原価計算では「なぜその原価計算手法を使うのか」という理論的背景を理解する必要があります。
業務的意思決定の問題では、受注の可否、自製か購入か、設備投資の採算性などを判断するための計算を行います。これらは経営管理に直結する実務的な内容で、単なる計算問題ではなく、経営者の視点で考える力が求められます。
原価計算の学習では、工業簿記と並行して進めるのが効果的です。工業簿記で計算方法を学び、原価計算でその理論的背景を理解することで、両科目の理解が深まります。理論問題の対策としては、原価計算基準の内容を理解し、自分の言葉で説明できるようにしましょう。
簿記1級の効率的な学習スケジュールの立て方
簿記1級の合格には、長期的な学習計画が欠かせません。年2回の統一試験に合わせて、逆算して計画を立てることが重要です。ここでは、効率的な学習スケジュールの立て方を解説します。
試験日から逆算した長期学習計画の作成方法
簿記1級の学習計画を立てる際は、まず目標とする試験日を決め、そこから逆算してスケジュールを組み立てます。統一試験は例年6月と11月に実施されるため、どちらの試験を目指すかを明確にしましょう。
逆算スケジュールの立て方(10ヶ月プランの例)
- 試験日を決定:例えば11月の統一試験を目標とする
- 学習開始日を決定:試験日の10ヶ月前、つまり1月から学習開始
- 総学習時間を設定:1日2〜3時間で750時間を目標
- 学習期間を3つに分割:
- 基礎学習期(1〜6ヶ月目):450時間
- 問題演習期(7〜8ヶ月目):150時間
- 総仕上げ期(9〜10ヶ月目):150時間
- 科目別の時間配分を決定:
- 商業簿記:225時間(30%)
- 会計学:150時間(20%)
- 工業簿記:187.5時間(25%)
- 原価計算:187.5時間(25%)
学習計画を立てる際は、余裕を持たせることが重要です。予定通りに進まないことも多いため、予備期間を1ヶ月程度設けておくと安心です。また、定期的に進捗を確認し、遅れている科目があれば時間配分を調整しましょう。
簿記1級の試験日程を確認して、自分に合った受験スケジュールを立てることをおすすめします。
年2回の統一試験を見据えたスケジュール
簿記1級の統一試験は年2回(6月・11月)実施されます。この試験日程を見据えて学習計画を立てることで、効率的に合格を目指せます。
6月試験を目指す場合
- 前年8月〜9月:学習開始
- 前年8月〜翌年1月:基礎学習期(6ヶ月)
- 翌年2月〜3月:問題演習期(2ヶ月)
- 翌年4月〜5月:総仕上げ期(2ヶ月)
- 6月:統一試験
11月試験を目指す場合
- 1月〜2月:学習開始
- 1月〜6月:基礎学習期(6ヶ月)
- 7月〜8月:問題演習期(2ヶ月)
- 9月〜10月:総仕上げ期(2ヶ月)
- 11月:統一試験
どちらの試験を目指すかは、現在の時期と自分の学習ペースに合わせて決めましょう。もし1回目の受験で不合格だった場合でも、次回の試験まで半年あるため、苦手分野を克服して再挑戦できます。
年2回のチャンスがあるからといって、準備不足で受験するのは避けましょう。模擬試験で安定して70点以上取れるようになってから本試験に臨むのが、一発合格への近道です。不合格になると次回までの半年間、モチベーションを維持するのが難しくなります。
科目別の学習順序と時間配分
4科目をどの順序で学習するかは、効率的な学習に大きく影響します。一般的には、商業簿記→会計学→工業簿記→原価計算の順序で学習するのが推奨されます。
推奨学習順序
- 商業簿記(基礎期の前半):簿記2級の復習から始め、連結会計、企業結合などの高度な論点を学習。商業簿記は全ての基礎となるため、最初に固める。
- 会計学(基礎期の後半):商業簿記の学習と並行して理論を学習。会計基準の内容を理解し、理論問題に対応できるようにする。
- 工業簿記(基礎期の中盤):簿記2級の原価計算を復習してから、標準原価計算、直接原価計算などの応用論点を学習。
- 原価計算(基礎期の後半):工業簿記の学習と並行して理論を学習。原価管理や業務的意思決定の論点を理解する。
ただし、この順序は絶対ではありません。専門学校のカリキュラムでは、商業簿記と工業簿記を並行して学習する方式もあります。重要なのは、4科目全てをバランスよく学習し、どの科目も基準点(10点)をクリアできるレベルに到達することです。
苦手科目ができてしまうと、その科目が足を引っ張って不合格になるリスクがあります。定期的に4科目全ての問題を解き、自分の弱点を把握しながら学習を進めましょう。
簿記1級の難易度を理解することで、各科目の学習に必要な時間を見積もりやすくなります。
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簿記1級を独学で学ぶ場合の勉強時間
簿記1級は独学での合格も可能ですが、専門学校を利用する場合と比べて多くの時間と努力が必要です。ここでは、独学で簿記1級を目指す際の勉強時間と効率的な学習方法について解説します。
独学での標準的な勉強時間(600〜1,000時間)
独学で簿記1級に合格するには、600〜1,000時間の勉強時間が必要です。これは専門学校を利用する場合と比べて、100〜200時間程度多い時間です。独学では、学習計画の立案、テキスト選び、理解できない論点の自力解決など、全てを自分で行う必要があるためです。
簿記2級までは独学でも比較的スムーズに合格できますが、簿記1級は難易度が大きく上がるため、独学での合格率は低くなります。簿記1級の統一試験合格率は約10%ですが、独学受験者に限ると合格率はさらに低いと推測されます。
独学で600時間程度で合格できるのは、簿記2級に高得点で合格し、理解力が高く、自己管理能力に優れた一部の受験者に限られます。多くの独学受験者は800〜1,000時間かけても合格できず、複数回受験するケースが少なくありません。
独学で時間がかかる理由と挫折リスク
独学で勉強時間が増加する主な理由は以下の通りです。
学習の非効率性
専門学校では、講師が最短ルートで合格レベルまで導いてくれますが、独学では自分で効率的な学習順序を見つけなければなりません。どの論点を重点的に学習すべきか、どの論点は試験で出にくいかといった情報がないため、全ての論点を同じ時間をかけて学習してしまい、非効率になります。
理解の壁
簿記1級には、連結会計、税効果会計、退職給付会計など、理解が難しい論点が多数あります。専門学校では分からない点をすぐに講師に質問できますが、独学では自力で理解するまでに多くの時間を費やします。理解できないまま次に進んでしまうと、後の学習でつまずく原因になります。
挫折のリスク
独学では学習のペースメーカーがいないため、モチベーションを維持するのが難しくなります。長期間の学習が必要な簿記1級では、途中で挫折してしまうリスクが高まります。特に、理解できない論点に直面したときや、模擬試験で思うように点数が取れなかったときに、学習を継続する意欲を失いやすくなります。
独学で勉強時間を短縮するコツ
独学でも効率的に学習を進めるためのコツをいくつか紹介します。
質の高いテキストと問題集を選ぶ
独学の成否はテキスト選びで決まると言っても過言ではありません。評判の良いテキストを選び、そのテキストを徹底的に理解することが重要です。複数のテキストに手を出すのではなく、1冊のテキストを完璧にマスターする方が効率的です。問題集も、過去問と予想問題が充実したものを選びましょう。
オンライン学習資源を活用する
独学といっても、完全に一人で学習する必要はありません。YouTubeには簿記1級の解説動画が多数アップロードされています。また、オンラインの学習コミュニティやSNSで他の受験生と情報交換することで、モチベーションを維持しやすくなります。
定期的に模擬試験を受ける
独学では、自分の実力を客観的に把握するのが難しくなります。専門学校の公開模擬試験を受験することで、自分の弱点を発見し、学習の方向性を修正できます。模擬試験は本試験の雰囲気を体験できる貴重な機会でもあるため、積極的に活用しましょう。
計画的に学習を進める
独学では自己管理が全てです。毎日の学習時間を記録し、計画通りに進んでいるかを定期的にチェックしましょう。遅れが出た場合は、すぐにリカバリープランを立てて修正します。週ごと、月ごとに学習の進捗を確認し、目標達成までの道筋を明確にしておくことが重要です。
簿記1級を働きながら合格するための時間管理術
社会人が働きながら簿記1級に合格するのは容易ではありませんが、適切な時間管理と学習計画によって実現可能です。ここでは、仕事と簿記1級の学習を両立させるための具体的な方法を解説します。
社会人が簿記1級の勉強時間を確保する方法
社会人が簿記1級の学習時間を確保するには、日常生活の中にいかに学習時間を組み込むかが鍵となります。
平日の学習時間確保
朝活を活用する:出勤前の1〜2時間を学習に充てる。朝は頭が冴えているため、理論問題や難しい論点の学習に適しています。早朝5時〜6時に起床し、7時〜8時まで学習する習慣をつけると、平日でも確実に1時間以上確保できます。
通勤時間を活用する:電車通勤の場合、往復の通勤時間を有効活用しましょう。理論問題の暗記や、スマートフォンアプリを使った問題演習が可能です。ただし、計算問題は電卓が必要なため、通勤時間には向きません。
昼休みを活用する:昼食後の15〜30分を学習に充てることで、平日の学習時間を増やせます。前日の復習や、短い理論問題の確認などに利用できます。
帰宅後の学習:仕事から帰宅後、夕食と入浴を済ませた後に1〜2時間の学習時間を確保します。疲れている日は無理せず、簡単な復習程度にとどめることも大切です。
休日の学習時間確保
休日は3〜5時間程度のまとまった学習時間を確保できるため、計算問題や過去問演習に充てるのが効果的です。午前中に2〜3時間、午後に1〜2時間という形で分割すると、集中力を維持しやすくなります。
ただし、休日全てを学習に費やすとストレスが溜まり、長続きしません。週に1日は完全な休息日を設け、リフレッシュする時間も確保しましょう。
仕事と両立できる現実的な長期学習計画
社会人が簿記1級を目指す場合、無理のない長期学習計画を立てることが成功の鍵です。
1年〜1年半プランの実例
- 平日の学習時間:朝1時間 + 夜1時間 = 2時間
- 休日の学習時間:1日あたり4時間
- 週の学習時間:平日2時間 × 5日 + 休日4時間 × 2日 = 18時間
- 月の学習時間:18時間 × 4週 = 72時間
- 年間の学習時間:72時間 × 12ヶ月 = 864時間
このペースで進めれば、1年で800時間以上の学習時間を確保でき、簿記1級合格に必要な時間を十分にカバーできます。
繁忙期への対応も重要です。決算期や年度末など、仕事が忙しい時期は学習時間が減少することを見込んで、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。繁忙期前に学習を前倒しで進めておくことで、忙しい時期に遅れが出ても挽回しやすくなります。
段階的な目標設定
長期学習では、モチベーション維持のために段階的な目標を設定することが効果的です。
- 3ヶ月目標:商業簿記の基礎論点を全て学習完了
- 6ヶ月目標:4科目全ての基礎学習を完了
- 9ヶ月目標:過去問5年分を解き終える
- 12ヶ月目標:模擬試験で70点以上を安定して取得
これらの中間目標を達成するたびに達成感を得られるため、長期間のモチベーション維持につながります。
モチベーション維持のための工夫
1年以上の学習期間を乗り切るには、モチベーション管理が不可欠です。
学習記録をつける
毎日の学習時間と学習内容を記録することで、自分の努力を可視化できます。累積学習時間がグラフで上昇していく様子を見ることで、達成感とモチベーションが高まります。学習記録アプリを活用すると、スマートフォンで手軽に記録できます。
学習仲間を作る
一人で学習を続けるのは孤独で、挫折しやすくなります。同じ目標を持つ仲間がいると、お互いに励まし合い、モチベーションを維持しやすくなります。専門学校の答練に参加したり、オンラインの学習コミュニティに参加したりすることで、学習仲間を見つけられます。
合格後のビジョンを明確にする
簿記1級に合格した後の自分の姿を具体的にイメージしましょう。キャリアアップ、転職、昇給、税理士試験へのステップアップなど、明確な目標があれば、辛い時期も乗り越えやすくなります。
適度な休息を取る
頑張りすぎて燃え尽きてしまわないよう、適度な休息も必要です。週に1日は完全に学習から離れる日を設けたり、月に1回は趣味や旅行を楽しんだりすることで、リフレッシュできます。長期戦を制するには、ペース配分が重要です。
簿記1級の学習段階別の時間配分
簿記1級の学習は、基礎学習期、問題演習期、総仕上げ期の3つの段階に分けて進めるのが効果的です。各段階での学習内容と時間配分について詳しく解説します。
基礎学習期(全体の60%・300〜480時間)
基礎学習期は、4科目全ての基本論点を理解し、知識の土台を築く期間です。全体の学習時間の約60%を基礎学習期に充てるのが理想的です。600時間の学習計画なら360時間、800時間なら480時間を基礎学習に費やします。
基礎学習期の主な学習内容
- テキストの通読と理解:各科目のテキストを丁寧に読み込み、基本的な理論と計算方法を理解します。分からない論点は何度も読み返し、理解できるまで時間をかけます。
- 基本問題の演習:テキストに掲載されている例題や基本問題を解き、学んだ内容を定着させます。間違えた問題は解説を読み込み、なぜ間違えたのかを理解します。
- 重要論点の重点学習:連結会計、標準原価計算など、試験で頻出する重要論点は特に時間をかけて学習します。これらの論点は配点が高く、確実に得点する必要があります。
基礎学習期では、理解のスピードよりも理解の深さを優先しましょう。基礎が固まっていないまま次の段階に進むと、問題演習期で苦労することになります。理解が不十分な論点は、基礎学習期のうちに必ず解決しておきます。
また、基礎学習期の中盤(全体の3〜4ヶ月目頃)には、一度全体を復習する時間を設けると効果的です。最初に学んだ内容を忘れてしまう前に復習することで、知識の定着率が高まります。
問題演習期(全体の25%・125〜200時間)
問題演習期は、過去問や典型問題を繰り返し解くことで、解法パターンを習得し、計算スピードと正確性を高める期間です。全体の学習時間の約25%を問題演習期に充てます。600時間の学習計画なら150時間、800時間なら200時間です。
問題演習期の主な学習内容
- 過去問演習:簿記1級の過去問を最低5年分、できれば10年分解きます。本試験の出題傾向、難易度、時間配分を体感し、本番に備えます。過去問は何度も繰り返し解き、典型問題は見た瞬間に解法が浮かぶレベルまで習熟します。
- 科目別の典型問題演習:問題集や専門学校の答練を活用し、各科目の典型問題を網羅的に解きます。商業簿記の連結会計、工業簿記の標準原価計算など、頻出論点は特に重点的に演習します。
- 苦手分野の克服:問題演習を通じて、自分の苦手分野が明確になります。苦手な論点は基礎に戻って再学習し、類似問題を繰り返し解いて克服します。
問題演習期では、ただ問題を解くだけでなく、間違えた問題の分析が重要です。なぜ間違えたのか、どこで計算ミスをしたのか、理解が不十分だった論点はどこかを明確にし、同じミスを繰り返さないようにします。
また、時間を計って問題を解く訓練も始めましょう。本試験は時間との戦いでもあるため、制限時間内に全ての問題を解き終える力が必要です。過去問を解く際は、必ず本試験と同じ時間(各科目90分)で取り組みます。
総仕上げ期(全体の15%・75〜120時間)
総仕上げ期は、試験直前の1〜2ヶ月間で、模擬試験を受験し、苦手分野の最終確認を行う期間です。全体の学習時間の約15%を総仕上げ期に充てます。600時間の学習計画なら90時間、800時間なら120時間です。
総仕上げ期の主な学習内容
- 模擬試験の受験:専門学校が実施する公開模擬試験を受験し、本試験のシミュレーションを行います。模擬試験の結果をもとに、最終的な弱点を洗い出し、対策を立てます。
- 苦手分野の集中復習:模擬試験で点数が取れなかった論点や、理解が不十分な論点を重点的に復習します。基礎に戻って再学習し、完全に理解できるまで時間をかけます。
- 理論問題の暗記:会計学や原価計算の理論問題は、模範解答を暗記する必要があります。よく出る理論問題の答案を何度も書き写し、自分の言葉で説明できるようにします。
- 時間配分の最終確認:本試験では、90分という限られた時間で問題を解く必要があります。どの問題から解くか、時間配分はどうするかを事前に決めておき、模擬試験で実践します。
総仕上げ期は、新しい論点を学習する時期ではありません。これまで学んだ内容を総復習し、知識を定着させることに集中します。試験1週間前には、新しい問題に手を出さず、過去に間違えた問題の復習や理論問題の暗記に専念しましょう。
試験前日は、長時間の学習は避け、軽い復習とリラックスに時間を使います。睡眠を十分に取り、試験当日に最高のパフォーマンスを発揮できるようコンディションを整えます。
簿記1級合格者の実際の勉強時間事例
簿記1級に合格した方々の実際の学習記録を見ることで、自分の学習計画の参考になります。ここでは、学習時間の異なる3つの合格事例を紹介します。
300時間で合格した効率的学習の事例
Aさん(25歳・経理職)は、簿記2級合格後すぐに簿記1級の学習を開始し、わずか300時間で一発合格しました。これは極めて効率的な学習事例です。
Aさんの背景と学習方法
- 簿記2級に90点以上の高得点で合格
- 経理実務経験2年あり、連結財務諸表の作成業務に従事
- 専門学校の速修コースを受講
- 1日3時間 × 3ヶ月 = 約270時間 + 答練・模試30時間 = 計300時間
Aさんが短期間で合格できた理由は、簿記2級の知識が完璧に定着していたこと、実務経験により理論的な理解がスムーズだったこと、専門学校の効率的なカリキュラムを活用したことです。
ただし、この事例は非常に稀なケースです。簿記2級合格直後で知識が鮮明、実務経験あり、専門学校のサポートありという好条件が揃って初めて実現できる学習時間です。一般的な受験生は、この倍以上の時間が必要です。
600時間で合格した標準的な学習記録
Bさん(28歳・会社員)は、専門学校の通信講座を利用し、約600時間の学習で簿記1級に合格しました。これは標準的な学習時間での合格事例です。
Bさんの学習スケジュール
- 学習期間:10ヶ月
- 平日:朝1時間 + 夜1時間 = 2時間
- 休日:午前2時間 + 午後2時間 = 4時間
- 週の学習時間:平日2時間 × 5日 + 休日4時間 × 2日 = 18時間
- 月の学習時間:約72時間
- 総学習時間:72時間 × 8ヶ月 + 直前期100時間 = 約670時間(実質600時間程度)
Bさんの学習の進め方
- 1〜5ヶ月目:基礎学習期。通信講座の講義動画を視聴し、4科目の基礎を固める。テキストを3周読み込む。
- 6〜8ヶ月目:問題演習期。過去問7年分を解く。苦手な連結会計と標準原価計算を重点的に演習。
- 9〜10ヶ月目:総仕上げ期。模擬試験を3回受験。苦手分野を総復習。
Bさんは働きながら学習を続け、計画通りに進めたことで一発合格を果たしました。通信講座の質問制度を活用し、分からない論点をすぐに解決できたことも合格の要因です。
1,000時間以上かけて複数回受験した事例
Cさん(32歳・営業職)は、独学で簿記1級に挑戦し、3回の受験で合格しました。総学習時間は約1,100時間に及びました。
Cさんの学習経緯
- 1回目受験(学習時間400時間):不合格(54点)。商業簿記と会計学で基準点割れ。基礎理解が不十分だったことが原因。
- 2回目受験(追加300時間):不合格(62点)。原価計算で基準点割れ。時間配分のミスで最後の問題が解けなかった。
- 3回目受験(追加400時間):合格(73点)。専門学校の模擬試験を受験し、弱点を克服。時間配分を見直して合格。
Cさんが複数回受験を要した理由は、独学で効率的な学習ができなかったこと、苦手分野を放置してしまったこと、時間配分の訓練が不足していたことです。3回目の受験前に専門学校の模擬試験を受け、プロのアドバイスを受けたことで、ようやく合格できました。
この事例から学べるのは、独学での学習には限界があること、複数回受験すると時間もコストもかかること、専門学校の活用が合格への近道となることです。独学で苦戦している方は、早めに専門学校の利用を検討するのも一つの選択肢です。
簿記1級の過去問活用法を参考に、効率的な学習を進めることで、複数回受験を避けることができます。
簿記1級の勉強時間に関連するよくある質問(FAQ)
簿記1級の勉強時間について、よくある質問とその回答をまとめました。
Q. 簿記1級を2級飛ばしていきなり受験する場合の勉強時間は?
簿記3級から直接簿記1級を目指す場合、1,500〜2,000時間以上の勉強時間が必要です。簿記2級の内容(商業簿記の応用と工業簿記の基礎)も含めて学習する必要があるため、段階的に進むよりも多くの時間がかかります。
簿記2級を飛ばすことは推奨されません。簿記2級で学ぶ連結会計の基礎や工業簿記の原価計算は、簿記1級の学習の土台となるため、これらをスキップすると理解が困難になります。効率的に合格を目指すなら、簿記3級→簿記2級→簿記1級と順番に進むことをおすすめします。
Q. 簿記1級を1日2時間の勉強で合格するには何ヶ月必要ですか?
簿記2級取得者が1日2時間の学習ペースで進める場合、10〜12ヶ月程度必要です。1日2時間 × 300日(週5日ペース) = 600時間が確保できます。週末に追加で学習時間を確保すれば、10ヶ月程度で合格レベルに到達できます。
ただし、これは順調に学習が進んだ場合の目安です。理解に時間がかかる論点や、苦手分野の克服に追加時間が必要になることもあります。余裕を持って1年から1年半の学習期間を見込むのが現実的です。
Q. 簿記1級の勉強時間が1,000時間を超える人の特徴は?
勉強時間が1,000時間を超える方には、以下のような特徴があります。
- 簿記2級の知識が十分に定着していない状態で簿記1級に進んだ
- 独学で学習しており、効率的な学習方法を見つけられていない
- 理解が不十分なまま次の論点に進み、基礎が固まっていない
- 過去問演習を軽視し、テキストの読み込みだけに時間を費やしている
- 苦手分野を放置し、得意分野ばかり学習している
- 複数回受験しており、その都度追加の学習時間が必要になっている
効率的に学習を進めるには、基礎をしっかり固めること、過去問演習を重視すること、苦手分野から逃げないことが重要です。
Q. 簿記1級の勉強時間は独学と専門学校でどれくらい違いますか?
独学の場合は600〜1,000時間、専門学校利用の場合は500〜800時間が目安です。専門学校を利用すると、100〜200時間程度学習時間を短縮できます。
専門学校では、プロの講師が効率的なカリキュラムを組んでおり、重要論点に絞った学習ができます。分からない論点があればすぐに質問でき、理解のつまずきを早期に解消できるため、独学よりも効率的に学習を進められます。
ただし、専門学校には費用がかかります(10万円〜30万円程度)。時間を買うという意味で、確実に合格を目指すなら専門学校の利用は有効な選択肢です。
Q. 簿記1級の4科目はどの順番で勉強すべきですか?
一般的には、商業簿記→会計学→工業簿記→原価計算の順序で学習するのが推奨されます。商業簿記は全ての基礎となるため、最初に固めます。会計学は商業簿記の理論部分なので、並行して学習すると効率的です。
工業簿記と原価計算も関連が深いため、並行して学習するのが効果的です。ただし、専門学校のカリキュラムによっては、商業簿記と工業簿記を並行して学ぶ方式もあります。重要なのは、4科目全てをバランスよく学習することです。
Q. 簿記2級合格後すぐに簿記1級の勉強を始めるべきですか?
簿記2級合格後すぐに簿記1級の学習を始めることをおすすめします。簿記2級の知識が鮮明に記憶に残っているうちに簿記1級に進むことで、学習効率が高まります。
ただし、簿記2級にギリギリで合格した場合や、複数回受験してようやく合格した場合は、簿記2級の内容を復習してから簿記1級に進むほうが安全です。基礎が固まっていないまま簿記1級に進むと、理解に苦しむことになります。
Q. 簿記1級に1回で合格できる人の勉強時間の特徴は?
1回で合格する方の多くは、600〜800時間程度の学習時間をしっかり確保しています。特徴は以下の通りです。
- 簿記2級の知識がしっかり定着している
- 計画的に学習を進め、基礎学習期・問題演習期・総仕上げ期をバランスよく配分している
- 過去問を最低5年分、できれば10年分解いている
- 模擬試験で安定して70点以上取れるようになってから本試験に臨んでいる
- 苦手分野を放置せず、全科目で基準点をクリアできるレベルに到達している
逆に、準備不足で受験すると複数回受験が必要になり、結果的に総学習時間が増えてしまいます。一発合格を目指すなら、十分な準備期間を確保することが重要です。
まとめ:簿記1級の勉強時間と効率的な長期学習計画
本記事では、簿記1級の勉強時間について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 必要な勉強時間は500〜1,000時間:簿記2級取得者で500〜800時間、初学者で800〜1,000時間以上が標準的な学習時間です。独学の場合はさらに100〜200時間多く見積もる必要があります。
- 4科目への効率的な時間配分が合格の鍵:商業簿記30%、会計学20%、工業簿記25%、原価計算25%のバランスで学習を進めることで、全科目で基準点をクリアし、合格ラインに到達できます。
- 長期計画と継続的な学習が不可欠:働きながら簿記1級を目指す場合、1年から1年半の長期計画を立て、毎日コツコツと学習を継続することが成功への道です。年2回の統一試験に合わせて、試験日から逆算した学習計画を立てましょう。
簿記1級の合格に向けて、次は簿記1級の試験日程を確認し、具体的な受験スケジュールを立てることをおすすめします。また、簿記1級の過去問活用法を参考に、効率的な学習を進めましょう。
本記事を通じて、簿記1級に必要な勉強時間と効率的な学習計画の立て方を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、簿記1級合格という目標の実現に向けて、着実な一歩を踏み出しましょう。
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