土地家屋調査士の副業として働くことを検討しているあなたへ。「会社員をしながら土地家屋調査士はできるのか」「副業として成立するのか」という疑問は、業務の特性と働き方の工夫で解決できます。本記事では、土地家屋調査士の副業・兼業の実態、副業を成立させるための4つの条件、会社員との両立が可能なケース、相性の良い資格との兼業について、実際のデータと実例を交えて詳しく解説します。この情報をもとに、土地家屋調査士としての副業・兼業の可能性を見極め、あなたに合った働き方を実現しましょう。
この記事を読むとわかること
- 土地家屋調査士の副業・兼業の実態と可能性
- 副業を成立させるための具体的な4つの条件
- 会社員との兼業が可能なケースと働き方
- 相性の良い資格との兼業パターンと収入モデル
押さえておきたい3つのポイント
- 土地家屋調査士の副業は条件次第で可能:平日昼間の業務が中心のため、フレックス制度やリモートワークができる環境なら副業として成立する可能性があります。ただし、役所や法務局の開庁時間に対応できることが必須条件となります。
- 初期費用80-100万円と毎月の経費負担:測量機材(トータルステーション、GPS測量機)、CADソフト、車両などの初期投資が必要で、毎月の会費やリース代もかかるため、経済的な準備が欠かせません。
- 他の士業とのダブルライセンスが有効:司法書士や行政書士との兼業により、ワンストップサービスを提供できれば、副業でも効率的に収入を得られる可能性が高まります。
土地家屋調査士を一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら
土地家屋調査士は副業にできるのか
土地家屋調査士として副業・兼業で働くことは可能なのでしょうか。結論から言えば、条件次第で可能ですが、一般的な会社員が副業として取り組むには多くのハードルがあるのが実態です。
土地家屋調査士の業務は、不動産の表示に関する登記申請や測量業務が中心です。土地家屋調査士の仕事内容を理解することで、副業としての実現可能性を判断できます。業務の性質上、平日昼間に役所や法務局に行く必要があり、測量の立会いも依頼者の都合に合わせる必要があるため、時間の自由度が高い働き方でなければ両立は困難です。
土地家屋調査士の副業・兼業の実態
土地家屋調査士の副業・兼業の実態は、完全な副業として成立させるのは難しいというのが現実です。日本土地家屋調査士会連合会の統計によれば、土地家屋調査士の多くは独立開業しており、会社員として働きながら副業で土地家屋調査士業務を行っている人はごく少数です。
副業として成立しにくい理由は、業務の時間的制約にあります。測量業務は天候に左右され、立会人の都合で日程が変更になることも頻繁です。また、法務局や役所は平日の開庁時間(通常9:00-17:00)にしか対応できないため、土日のみの副業では書類手続きができません。
実際に副業として土地家屋調査士業務を行っているケースは、以下のような限られた状況に該当します。
- フレックスタイム制度を活用できる会社員
- リモートワーク中心で時間調整が可能な職種
- 不動産・建設業界など関連業界での勤務者
- すでに他の士業資格を持ち、その延長で兼業する場合
これらの条件を満たさない場合、副業として土地家屋調査士業務を継続的に受任することは現実的ではありません。
会社員をしながら土地家屋調査士はできるか
会社員をしながら土地家屋調査士として働くことは、理論上は可能ですが、実務面では多くの制約があります。土地家屋調査士法には兼業禁止規定はありませんので、法的には問題ありません。
しかし、実際に会社員と土地家屋調査士を両立するには、以下の条件が必要です。
必要な勤務条件
- 平日昼間に2-3時間程度の自由時間を確保できる
- 急な予定変更に対応できる柔軟性
- 有給休暇を測量業務に使える環境
- 会社の副業規定で土地家屋調査士業務が認められている
対応が必要な業務時間
- 法務局・役所への書類提出:平日9:00-17:00
- 測量の立会い:依頼者の都合に合わせる(平日昼間が多い)
- 顧客との打ち合わせ:平日夕方以降も可能だが、昼間の連絡は必須
これらの条件を満たせる会社員は限られているため、完全な副業として土地家屋調査士業務を行うことは難しいのが実情です。
土地家屋調査士の副業が注目される理由
それでも土地家屋調査士の副業が注目される理由は、資格の希少性と収入の魅力にあります。土地家屋調査士は国家資格であり、独占業務を持つ専門職です。合格率は9-10%程度と難関資格でありながら、登録者数は約16,000人(2023年時点)と他の士業と比較して少ないため、需要に対して供給が不足している地域もあります。
副業としての魅力的なポイントは以下の通りです。
収入面のメリット
- 1件あたりの報酬が比較的高額(建物表題登記で8-15万円程度)
- 専門性が高く、価格競争になりにくい
- 継続的な顧客を獲得できれば安定収入が見込める
キャリア面のメリット
- 独立開業への準備期間として活用できる
- 実務経験を積みながら収入を得られる
- 他の資格とのダブルライセンスで相乗効果が期待できる
働き方の魅力
- 年齢に関係なく長く働ける
- 地域に密着した仕事で社会貢献できる
- 専門知識を活かせるやりがいのある仕事
これらの理由から、将来的な独立開業を見据えて、会社員のうちに実務経験を積むために副業を検討する人が増えています。ただし、実際に副業として成立させるには、次のセクションで解説する条件をクリアする必要があります。
土地家屋調査士の副業に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の仕事内容とは?業務範囲・働き方・キャリアパスを詳しく解説
土地家屋調査士を副業にするための4つの条件
土地家屋調査士を副業として成立させるには、4つの重要な条件をクリアする必要があります。これらの条件を満たせるかどうかが、副業としての実現可能性を左右します。
多くの土地家屋調査士志望者が見落としがちなのが、資格取得後の実務面での制約です。試験に合格することと、実際に業務を遂行できることは別問題です。以下の4つの条件を確認し、自分の現在の働き方で対応可能かを慎重に検討しましょう。
平日の昼間に電話に出られる環境
土地家屋調査士の業務では、顧客からの電話連絡に平日昼間にリアルタイムで対応できることが極めて重要です。不動産取引は金額が大きく、スケジュールもタイトなため、依頼者は即座に回答を求めることが多いからです。
電話対応が必要な場面は以下の通りです。
依頼者からの連絡
- 見積もり依頼や業務内容の問い合わせ
- 測量日程の調整や変更連絡
- 登記完了後の書類受け取り日時の確認
関係者との調整
- 隣地所有者との立会い日程調整
- 不動産業者や司法書士との連携
- 工務店や建築士との打ち合わせ
会社員として働いている場合、就業時間中に私用電話に出ることは難しい職場が多いでしょう。営業時間後に折り返すという対応では、急ぎの案件を逃してしまう可能性が高くなります。
対応策としては、以下の方法が考えられます。
- 休憩時間や移動時間を利用して折り返す
- メールやLINEでの連絡を基本とし、緊急時のみ電話対応
- パートナーや家族に一次対応を依頼する(ただし専門的な内容には限界あり)
ただし、これらの対応策には限界があり、本格的に副業として受任件数を増やすのは困難です。
役所や法務局の開庁時間に対応できること
土地家屋調査士の業務では、法務局や市区町村役場への書類提出や資料取得が頻繁に発生します。これらの機関は平日のみ開庁しており、開庁時間は通常9:00-17:00(昼休みを除く)です。
役所や法務局で行う主な業務は以下の通りです。
法務局での業務
- 登記申請書類の提出(窓口提出が必要な場合もあり)
- 登記完了書類の受け取り
- 地図や公図、登記簿謄本の取得
- 登記官との相談や補正対応
市区町村役場での業務
- 建築確認書類の閲覧
- 道路台帳や上下水道台帳の確認
- 固定資産税評価証明書の取得
- 農地転用許可に関する資料収集
これらの業務は、オンライン申請や郵送でカバーできる部分もありますが、複雑な案件では窓口での相談や確認が必要になることが多々あります。
会社員が対応する方法としては以下が考えられます。
- 有給休暇を取得して対応する
- 昼休みを延長して対応する(会社の近くに法務局がある場合)
- フレックスタイム制度を活用して時差出勤する
月に数回の対応であれば可能かもしれませんが、案件が増えると会社での勤務に支障をきたす可能性があります。
測量のために柔軟にスケジュール調整ができること
測量業務は土地家屋調査士の主要業務の一つですが、スケジュール調整の難しさが副業の大きなハードルとなります。測量は天候に左右され、かつ隣地所有者や依頼者の立会いが必要なため、日程変更が頻繁に発生するからです。
測量のスケジュール調整で直面する課題は以下の通りです。
天候による変動
- 雨天や強風では測量精度が落ちるため延期が必要
- 測量機器が濡れると故障の原因になる
- 冬季は日照時間が短く、作業可能時間が限られる
立会人の都合
- 隣地所有者が平日昼間しか対応できない場合が多い
- 高齢の地主は日中在宅のことが多い
- 複数の隣地所有者全員の都合を合わせる必要がある
作業時間の予測困難
- 現地の状況により予定時間を大幅に超えることがある
- 境界トラブルが発覚すると長時間の協議が必要
- 想定外の障害物や植栽の処理が発生する
副業として対応するには、以下の柔軟性が求められます。
- 平日昼間に半日から1日単位で時間を確保できる
- 前日や当日の急な日程変更に対応できる
- 土日だけでなく平日も測量日として設定できる
これらの条件を満たせない場合、案件の受任を断らざるを得ず、副業として安定した収入を得ることは困難です。
初期費用と毎月の経費を払える経済力
土地家屋調査士として業務を開始するには、まとまった初期投資が必要です。副業として始める場合でも、専門的な機材やソフトウェアの購入は避けられません。
初期費用の主な内訳は以下の通りです。
測量機材(50-80万円)
- トータルステーション(測距測角儀):30-50万円
- GPS測量機(精密測位が必要な場合):20-30万円
- 水準器、スタッフ、プリズムなど:5-10万円
CADソフト・パソコン(20-30万円)
- 測量CADソフトのライセンス:10-20万円
- 高性能パソコン(図面作成用):10-15万円
その他の初期費用(10-20万円)
- 登録費用(土地家屋調査士会への入会金・登録料):約10万円
- 名刺、事務用品、測量用具一式:5-10万円
- 車両(既存の車を使用する場合は不要)
合計で80-100万円程度の初期投資が必要になります。さらに、毎月の経費も継続的に発生します。
毎月の経費(2-5万円)
- 土地家屋調査士会の会費:月5,000-10,000円
- 職業賠償責任保険:月3,000-5,000円
- CADソフトの保守料:年間2-3万円(月換算約2,500円)
- 測量機材のリース代(リースの場合):月2-3万円
- ガソリン代、駐車場代:月5,000-10,000円
- 通信費、事務用品費:月3,000-5,000円
副業として土地家屋調査士業務を行う場合、これらの経費を本業の収入から支払う覚悟が必要です。副業収入が安定するまでは、持ち出しになる可能性も考慮しましょう。
また、測量機材は定期的なメンテナンスや校正が必要で、数年ごとに買い替えや修理費用も発生します。長期的な経済計画を立てた上で、副業として取り組むかを判断することが重要です。
土地家屋調査士の費用に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の費用・料金相場|業務別の報酬体系を解説
土地家屋調査士の副業が難しい理由
土地家屋調査士を副業として行うことが難しい理由は、業務の性質そのものにあります。一般的な副業のイメージである「空いた時間を活用して収入を得る」というモデルが、土地家屋調査士業務にはほとんど当てはまりません。
ここでは、副業が困難な具体的な理由を4つの観点から詳しく解説します。これらの理由を理解することで、自分の現在の働き方で土地家屋調査士の副業が現実的かどうかを判断できるでしょう。
土地家屋調査士は平日昼間の業務が中心
土地家屋調査士の業務は、そのほとんどが平日昼間に集中しています。これは、業務の性質上、関係機関や関係者との連携が不可欠だからです。
平日昼間でなければ対応できない業務は以下の通りです。
官公署との手続き
- 法務局での登記申請と完了書類の受領(平日9:00-17:00)
- 市区町村役場での各種証明書取得(平日8:30-17:15)
- 道路管理者との境界確認協議(平日のみ)
測量と立会い
- 土地の境界確認測量(立会人の都合で平日昼間が多い)
- 建物の現況測量(施主や工務店の立会いで平日が多い)
- 隣地所有者との境界立会い(高齢者が多く平日昼間を希望)
関係者との打ち合わせ
- 不動産業者との物件確認(営業時間中)
- 司法書士との登記連携(事務所の営業時間中)
- 依頼者との現地打ち合わせ(平日昼間を希望されることが多い)
土日や夜間に対応できる業務は、図面作成や書類作成などの事務作業に限られます。しかし、これらの作業は測量データや現地確認の結果を踏まえて行うものなので、平日昼間の現地業務なしには進められません。
会社員が土日のみで対応できる業務の割合は、全体の2-3割程度に過ぎないのが実情です。残りの7-8割は平日昼間の対応が必須となるため、通常の会社勤めをしながら副業として土地家屋調査士業務を継続することは極めて困難です。
天候や立会人の都合で日程が変わる
土地家屋調査士の測量業務は、天候と立会人の都合に大きく左右されます。この予測不可能性が、副業として成立させることを難しくしている大きな要因です。
天候による影響は以下の通りです。
測量業務への天候の影響
- 雨天時は測量機器が濡れて故障のリスクがあり、中止せざるを得ない
- 強風時は測量の精度が落ちるため延期が必要
- 雪や凍結がある冬季は測量困難な日が多い
- 猛暑日は熱中症リスクがあり、長時間の現地作業が危険
立会人都合による変動
- 隣地所有者が急病や用事で当日キャンセルになる
- 複数の関係者の都合が合わず、何度も日程調整が必要
- 高齢の地主が体調不良で延期を希望する
- 遠方に住む相続人の来訪日程に合わせる必要がある
これらの理由で、測量日程は頻繁に変更になります。土地家屋調査士として独立している人であれば、スケジュールを柔軟に調整できますが、会社員として働いている場合は以下の問題が発生します。
会社員が直面する問題
- せっかく有給休暇を取得したのに天候で中止になる
- 測量日が変更になっても会社の都合で対応できない
- 複数回の日程変更で依頼者からの信頼を失う
- 結局、案件を断らざるを得なくなる
実際に、副業として土地家屋調査士を始めた人の多くが、この日程変更の問題で継続を断念しています。1つの案件で3-4回の日程変更が発生することも珍しくなく、会社での有給休暇の取得回数には限界があるためです。
顧客・業者からの電話対応が頻繁にある
土地家屋調査士の業務では、依頼者や関係者からの電話連絡に迅速に対応することが求められます。不動産取引は金額が大きく、スケジュールもタイトなため、連絡が取れないことで機会損失につながるリスクが高いのです。
電話対応が頻繁に必要な理由は以下の通りです。
依頼者からの連絡(1案件あたり5-10回程度)
- 見積もり依頼や業務内容の問い合わせ
- 測量日程の確認や変更連絡
- 進捗状況の確認
- 登記完了の確認と書類受け取り
関係者からの連絡(1案件あたり3-5回程度)
- 不動産業者からの急ぎの依頼
- 司法書士との登記スケジュール調整
- 隣地所有者からの境界確認の問い合わせ
- 工務店からの建物表題登記の日程確認
緊急性の高い連絡
- 決済日が迫っている案件の進捗確認
- 境界トラブルが発生した際の対応相談
- 測量当日の天候判断や開始時刻の確認
会社員として働いている場合、就業時間中にこれらの電話に出ることは困難です。営業時間後に折り返しても、相手がつかまらないことも多く、結果的にコミュニケーションが滞ります。
電話に出られないことで発生する問題は以下の通りです。
信頼関係の低下
- 連絡が取れないことで依頼者から信頼を失う
- 不動産業者から「レスポンスが遅い」と評価される
- 急ぎの案件を他の調査士に依頼されてしまう
業務の停滞
- 確認事項が進まず、スケジュールが遅延する
- 測量日程の調整に時間がかかる
- 関係者との連携がスムーズにいかない
独立している土地家屋調査士は、日中いつでも電話に出られる体制を整えているため、副業で対応している人は競争上不利になります。結果として、継続的な案件獲得が難しくなるのです。
測量機材などの初期投資が80-100万円必要
土地家屋調査士として業務を開始するには、専門的な測量機材やソフトウェアの購入が必須です。副業として少額から始めるということができず、まとまった初期投資が必要になります。
必要な初期投資の詳細は以下の通りです。
測量機材(50-80万円)
- トータルステーション(測距測角儀):30-50万円
- 土地の境界点の座標を正確に測定する機器
- 中古品でも20-30万円程度
- GPS測量機(必要に応じて):20-30万円
- 精密測位が必要な大規模測量で使用
- 水準器、スタッフ、プリズム、三脚など:5-10万円
CADソフトとパソコン(20-30万円)
- 測量CADソフトのライセンス:10-20万円
- 境界確定図や地積測量図を作成するための専門ソフト
- 年間保守料が2-3万円必要
- 高性能パソコン:10-15万円
- CADを快適に動作させるための高スペックPCが必要
登録費用と備品(10-20万円)
- 土地家屋調査士会の入会金と登録料:約10万円
- 開業時に必ず支払う必要がある
- 職業賠償責任保険(初年度):3-5万円
- 名刺、事務用品、測量用小物:2-5万円
車両(既存車を使用する場合は不要)
- 測量機材を運搬できる車両
- 軽バンや小型バンが一般的
- 新車購入なら100-200万円、中古なら50-100万円
これらを合計すると、最低でも80万円、充実した装備を揃えるなら150万円以上の初期投資が必要です。さらに、毎月の経費として以下の支出も継続的に発生します。
毎月の固定費(2-5万円)
- 土地家屋調査士会の会費:月5,000-10,000円
- 職業賠償責任保険:月3,000-5,000円
- CADソフトの保守料(月割り):約2,500円
- 測量機材のリース代(リースの場合):月2-3万円
- ガソリン代、駐車場代:月5,000-10,000円
- 通信費、事務用品費:月3,000-5,000円
副業で月に1-2件の案件しか受けられない場合、これらの固定費を回収するだけでも大変です。1件あたりの報酬が10-15万円だとしても、月2件で20-30万円の収入に対し、固定費と変動費を差し引くと手元に残る金額は限られます。
初期投資を回収し、継続的に利益を出すには、月に3-5件以上の安定した案件受注が必要です。しかし、会社員として副業で対応できる案件数は、時間的制約から月1-2件が限界のため、経済的に成立させることが難しいのです。
土地家屋調査士の副業が難しい理由に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の現状と将来性|業界の実態とキャリア展望を解説
会社員と土地家屋調査士の兼業はどんな場合に可能か
会社員と土地家屋調査士の兼業は、一般的には困難ですが、特定の条件が揃えば実現可能です。ここでは、兼業が可能になる3つのケースについて詳しく解説します。
これらのケースに該当する場合、副業として土地家屋調査士業務に取り組むことで、将来的な独立開業に向けた実務経験を積むことができます。自分の働き方がどのケースに当てはまるかを確認してみましょう。
フレックス制度がある会社なら可能性あり
フレックスタイム制度を導入している会社であれば、土地家屋調査士との兼業の可能性が高まります。フレックス制度により、平日昼間の時間を柔軟に使えるようになるためです。
フレックス制度が兼業に有利な理由は以下の通りです。
時間調整の柔軟性
- コアタイム(必ず勤務すべき時間)以外は自由に出退勤できる
- 午前中に法務局や役所に行き、午後から出社することが可能
- 測量業務のために早退し、早朝や夜間に業務時間を補える
- 月単位のフレックスなら、特定の日に集中して土地家屋調査士業務を行える
実際の運用例
- 月曜日の午前中に法務局で登記申請
- 火曜日の14:00から測量業務、その分早朝6:00から出社して時間調整
- 水曜日は通常勤務
- 木曜日の午後に境界立会い、その分夜間に業務時間を補填
- 金曜日は図面作成のため通常勤務
ただし、フレックス制度があっても、以下の条件を満たす必要があります。
フレックス活用の前提条件
- 会社の副業規定で土地家屋調査士業務が認められている
- 業務量が適切で、本業に支障をきたさない範囲
- 上司や同僚の理解が得られている
- 顧客対応のために電話に出られる環境(リモート勤務可など)
フレックス制度を最大限活用しても、案件数は月2-3件程度が限界でしょう。それ以上になると本業に影響が出るリスクが高まります。
リモートワーク中心の仕事なら両立しやすい
リモートワーク(在宅勤務)が中心の職種であれば、土地家屋調査士との兼業がかなり現実的になります。リモートワークにより、勤務場所の制約がなくなり、時間の使い方も柔軟になるためです。
リモートワークが兼業に有利な理由は以下の通りです。
場所の自由度
- 自宅で仕事をしているため、測量に出かけやすい
- 法務局や役所への移動時間を最小限にできる
- 測量後すぐに自宅で業務を再開できる
時間管理の柔軟性
- 業務の合間に電話対応がしやすい
- 昼休みを延長して役所に行くことができる
- 早朝や夜間に本業の業務時間を補填できる
効率的な時間活用
- 通勤時間がない分、土地家屋調査士業務に時間を充てられる
- 図面作成などの事務作業を本業の合間に進められる
- オンライン会議の合間に測量スケジュールの調整ができる
リモートワークで兼業しやすい職種の例は以下の通りです。
相性の良い職種
- ITエンジニア(システム開発、プログラマー)
- Webデザイナー、グラフィックデザイナー
- ライター、編集者
- オンラインマーケティング担当者
- データアナリスト、コンサルタント
これらの職種は、成果物ベースで評価されることが多く、勤務時間の柔軟性が高いため、土地家屋調査士との兼業に向いています。
ただし、リモートワークでも以下の点には注意が必要です。
注意すべきポイント
- 本業の納期やプロジェクトを最優先にする
- 顧客対応が重なった際の優先順位を明確にする
- 土地家屋調査士業務で本業に支障をきたさない
- 会社の就業規則で副業が認められている
リモートワーク中心であれば、月3-4件程度の案件に対応することも可能になるでしょう。
本業が不動産・建設関連なら相性が良い
本業が不動産業界や建設業界に関連している場合、土地家屋調査士との兼業は非常に相性が良く、むしろシナジー効果が期待できます。業務内容や顧客層が重なるため、効率的に案件を獲得できるからです。
不動産・建設関連の仕事が兼業に有利な理由は以下の通りです。
知識とスキルの共通性
- 不動産登記や測量の知識が本業でも活かせる
- 土地や建物の専門用語が共通している
- 図面の読み方や法規制の理解が業務に直結する
- 顧客の悩みや課題を理解しやすい
人脈とネットワーク
- 不動産業者や建築会社との既存の人脈を活用できる
- 司法書士や行政書士との連携がスムーズ
- 顧客紹介を受けやすい環境
- 業界の動向や案件情報が入りやすい
案件獲得の効率性
- 本業の顧客から土地家屋調査士業務の依頼を受けられる
- 自社物件の登記業務を担当できる可能性
- 関連企業からの紹介案件が期待できる
相性の良い職種の具体例は以下の通りです。
不動産関連
- 不動産営業(売買仲介、賃貸仲介)
- 不動産管理会社の社員
- 不動産鑑定士、宅地建物取引士
- 不動産コンサルタント
建設関連
- 建築士、建築施工管理技士
- 住宅メーカーの営業や設計担当
- 工務店の経営者や従業員
- 測量会社の社員
士業関連
- 司法書士事務所の補助者
- 行政書士事務所の職員
- 税理士事務所で不動産関連を扱う担当者
これらの職種であれば、本業の業務時間内でも土地家屋調査士に関連する知識を活かせ、人脈形成も兼ねることができます。
実際の兼業パターンの例は以下の通りです。
不動産仲介営業 × 土地家屋調査士
- 本業で扱った物件の測量や登記を土地家屋調査士として受任
- 顧客に対してワンストップサービスを提供
- 不動産取引の知識と登記の専門知識で差別化
建築士 × 土地家屋調査士
- 設計した建物の表題登記を自ら行う
- 建築確認と登記をセットで提案
- 設計料と登記報酬で収入を増やす
ただし、本業との利益相反や会社の規定には十分注意が必要です。自社の顧客を独自に受任することが禁止されている場合もあるため、事前に会社と相談し、適切なルールを設定することが重要です。
会社員と土地家屋調査士の兼業に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士に向いている人とは?適性・性格・必要なスキルを解説
土地家屋調査士と相性が良い資格との兼業
土地家屋調査士を副業として成立させる上で、他の資格とのダブルライセンスは非常に有効な戦略です。複数の資格を組み合わせることで、顧客にワンストップサービスを提供でき、効率的に収入を増やすことができます。
ここでは、土地家屋調査士と相性が良い資格との兼業パターンを詳しく解説します。これらの組み合わせは、実際に多くの専門家が採用している実績のあるモデルです。
土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンス
土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンスは、最も相性が良い組み合わせとして知られています。不動産登記において、表示登記(土地家屋調査士)と権利登記(司法書士)をセットで扱えるため、顧客に大きな価値を提供できます。
土地家屋調査士と司法書士の違いを理解した上で、両資格の組み合わせを検討すると良いでしょう。
ダブルライセンスのメリットは以下の通りです。
業務範囲の拡大
- 土地家屋調査士:土地の分筆・合筆、建物表題登記など表示登記全般
- 司法書士:所有権移転、抵当権設定など権利登記全般
- 一連の不動産取引をワンストップで対応できる
収入の増加
- 1つの案件で表示登記と権利登記の両方を受任できる
- 土地の分筆と所有権移転をセットで受注(報酬20-40万円)
- 建物新築時の表題登記と所有権保存登記をセット受注(報酬15-30万円)
顧客の利便性向上
- 窓口が一本化され、顧客の手間が減る
- スケジュール調整がスムーズになる
- コミュニケーションコストが下がる
相互送客の可能性
- 司法書士案件で表示登記が必要な場合、自ら対応できる
- 土地家屋調査士案件で権利登記が必要な場合、自ら対応できる
- 他の専門家に依頼するより利益率が高い
ただし、両資格を取得するハードルは高く、それぞれの試験に合格する必要があります。
取得の難易度
- 土地家屋調査士試験:合格率9-10%、勉強時間1,500-2,000時間
- 司法書士試験:合格率4-5%、勉強時間3,000-5,000時間
- 両資格取得には5-10年かかることも珍しくない
副業として両資格を活用する場合、司法書士事務所に勤務しながら土地家屋調査士として個人受任するパターンが現実的です。司法書士事務所であれば、登記に関する業務時間の融通が利きやすいためです。
土地家屋調査士と行政書士の兼業
土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンスも、非常に相性が良い組み合わせです。土地家屋調査士のダブルライセンスの中でも、行政書士との組み合わせは取得しやすく、業務の幅が大きく広がります。
行政書士とのダブルライセンスのメリットは以下の通りです。
業務範囲の補完性
- 土地家屋調査士:不動産の表示登記、測量業務
- 行政書士:農地転用許可、開発許可、建設業許可など
- 不動産開発の上流から下流まで一貫して対応できる
具体的な相乗効果
- 農地を宅地に転用する際、農地転用許可(行政書士)と地目変更登記(土地家屋調査士)をセットで受任
- 建築許可申請(行政書士)と建物表題登記(土地家屋調査士)をセットで対応
- 相続手続きの遺産分割協議書作成(行政書士)と土地の分筆登記(土地家屋調査士)をセットで提供
収入モデルの例
- 農地転用許可申請:報酬5-15万円
- 地目変更登記:報酬3-8万円
- セットで受任すれば8-23万円の収入
資格取得の難易度
- 行政書士試験:合格率10-15%、勉強時間800-1,000時間
- 土地家屋調査士より取得しやすい
- 法律科目(民法、行政法)の重複部分もある
副業として両資格を活用する場合、以下のような働き方が考えられます。
兼業パターン
- 平日夜間と土日に行政書士業務(許可申請の書類作成が中心)
- 平日昼間に有給を取得して土地家屋調査士業務(測量や登記申請)
- 行政書士業務は比較的時間の自由度が高いため、副業向き
行政書士業務は、書類作成が中心で夜間や土日でも対応可能な部分が多いため、土地家屋調査士の弱点(平日昼間必須)を補える点も魅力です。
他の士業との兼業でワンストップサービスを提供
土地家屋調査士と他の士業を組み合わせることで、顧客に対して総合的なサービスを提供できます。ワンストップサービスは顧客満足度を高め、案件獲得にも有利に働きます。
他の士業との兼業パターンは以下の通りです。
土地家屋調査士 × 税理士
- 相続税申告と相続に伴う土地の分筆・測量をセットで提供
- 不動産の評価額算定に必要な測量データを提供
- 相続対策として生前贈与に伴う分筆を提案
土地家屋調査士 × 宅地建物取引士
- 不動産売買の仲介と測量・登記をセットで対応
- 境界未確定の物件の売買をスムーズに進められる
- 顧客に対して専門性の高いコンサルティングを提供
土地家屋調査士 × 不動産鑑定士
- 不動産の鑑定評価と測量データの提供
- より正確な面積データに基づく鑑定が可能
- 裁判案件での鑑定と測量を一貫して対応
土地家屋調査士 × 測量士
- 大規模な公共測量と個別の不動産登記をセットで対応
- 開発案件での測量と登記を一貫して提供
- 測量会社に勤務しながら個人で土地家屋調査士業務を受任
これらの組み合わせにより、専門性を高めつつ、業務の幅を広げることができます。副業として土地家屋調査士を行う場合、本業の資格や専門性と組み合わせることで、効率的に案件を獲得し、収入を増やすことが可能になります。
ワンストップサービスのメリットは以下の通りです。
顧客側のメリット
- 複数の専門家に別々に依頼する手間が省ける
- トータルコストが抑えられる可能性
- 一貫したサービスでミスが少ない
- スケジュール調整がスムーズ
専門家側のメリット
- 1つの案件で複数の報酬を得られる
- 専門性の高さで差別化できる
- 顧客満足度が高く、リピートや紹介につながりやすい
- 他の専門家との競争で優位に立てる
副業として土地家屋調査士を行う場合、すでに保有している資格や本業の専門性と組み合わせることを強く推奨します。単独で土地家屋調査士業務だけを副業にするより、はるかに実現可能性が高まります。
土地家屋調査士と相性が良い資格に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士と司法書士の違い|資格比較と選び方
土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンス|相性と取得メリット
土地家屋調査士を一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら
土地家屋調査士の副業に必要な費用・経費
土地家屋調査士を副業として始める場合、初期費用と継続的な経費の両方を考慮する必要があります。他の副業と比較して、土地家屋調査士は専門機材が必要なため、初期投資が高額になる点が特徴です。
ここでは、具体的な費用の内訳と、副業で経費を回収できる収入ラインについて詳しく解説します。資金計画を立てる上で、これらの情報を参考にしてください。
土地家屋調査士の初期費用(測量機・CAD・車両)
土地家屋調査士として業務を開始するには、専門的な測量機材、CADソフト、そして車両が必要です。これらの初期費用は、副業として始める場合でも削減することは難しく、最低限の投資が求められます。
初期費用の詳細は以下の通りです。
測量機材(50-80万円)
測量機材は土地家屋調査士の必須装備です。測量の精度が業務品質に直結するため、信頼性の高い機器を選ぶ必要があります。
- トータルステーション(測距測角儀):30-50万円
- 新品の業務用モデル:40-50万円
- 中古品や廉価モデル:20-35万円
- 距離と角度を同時に測定できる測量の基本機器
- 境界確定測量には必須
- GPS測量機(精密測位用):20-30万円
- 高精度なRTK-GPS受信機
- 大規模測量や基準点測量で使用
- 小規模な副業では当初は不要な場合も
- その他の測量用具:5-10万円
- 水準器、光波プリズム:2-3万円
- 測量用スタッフ(標尺):1-2万円
- 三脚、ポール、杭、ペンキ:2-3万円
- メジャー、巻尺、境界標識:1-2万円
CADソフトとパソコン(20-30万円)
図面作成は土地家屋調査士業務の重要な部分であり、専門のCADソフトと高性能パソコンが必要です。
- 測量CADソフト:10-20万円
- 土地家屋調査士専用CAD(例:TREND-ONE、BLUETREND XA):15-20万円
- 汎用CADソフト(AutoCAD LTなど):10-15万円
- 年間保守料:2-3万円(サポートとバージョンアップ)
- 高性能パソコン:10-15万円
- CAD作業に適したスペック(CPU Core i7以上、メモリ16GB以上、SSD搭載)
- 大画面モニター(24インチ以上):2-3万円
- プリンター(A3サイズ対応):3-5万円
登録費用と備品(10-20万円)
土地家屋調査士として業務を開始するには、各種登録や保険加入が必須です。
- 土地家屋調査士会への入会:約10万円
- 日本土地家屋調査士会連合会の登録料:約3万円
- 各都道府県土地家屋調査士会の入会金:5-7万円
- 初年度会費:別途必要
- 職業賠償責任保険:3-5万円(初年度)
- 業務上のミスによる損害賠償に備える保険
- 年間保険料:3-5万円
- 事務用品・名刺など:2-5万円
- 名刺、封筒、レターヘッド:1-2万円
- 事務用品(ファイル、筆記用具など):1-2万円
- 測量野帳、メモ帳:0.5-1万円
車両(既存車を使用する場合は不要)
測量機材を運搬し、現地に移動するための車両が必要です。
- 軽バンまたは小型バン
- 新車:100-200万円
- 中古車:50-100万円
- 既存の車両を使用する場合は追加費用なし
これらを合計すると、車両を除いても80-130万円、車両を購入する場合は180-330万円の初期投資が必要です。副業として始める場合、既存の車両を活用し、測量機材は中古品も検討することで、初期費用を80-100万円程度に抑えることが現実的です。
毎月かかる経費(会費・リース代・ガソリン代)
土地家屋調査士として業務を継続するには、毎月の固定費と変動費が発生します。副業として少ない案件しか受けない場合でも、これらの経費は継続的に支払う必要があります。
毎月の経費の内訳は以下の通りです。
固定費(月2-3.5万円)
案件数に関わらず毎月発生する費用です。
- 土地家屋調査士会の会費:月5,000-10,000円
- 日本土地家屋調査士会連合会の会費:月2,000-3,000円
- 都道府県土地家屋調査士会の会費:月3,000-7,000円
- 地域によって金額が異なる
- 職業賠償責任保険:月3,000-5,000円
- 年間保険料を月割りした金額
- 保険加入は実質的に必須
- CADソフトの保守料:月約2,000円
- 年間保守料2-3万円を月割り
- サポートやバージョンアップに必要
- 測量機材のリース代(リースの場合):月2-3万円
- 高額な測量機を一括購入せずリースする場合
- リース期間は通常3-5年
- 通信費:月3,000-5,000円
- 業務用携帯電話の基本料金
- インターネット回線(自宅と共用の場合は按分)
固定費合計:月2万円-3.5万円程度
変動費(案件数に応じて変動)
業務量に応じて変動する費用です。
- ガソリン代:1案件あたり2,000-5,000円
- 測量現地への往復
- 複数回の現地訪問が必要な場合もある
- 駐車場代:1案件あたり500-2,000円
- 現地や役所での駐車料金
- 書類取得費用:1案件あたり2,000-5,000円
- 登記簿謄本、公図、地積測量図など
- 建築確認書類、道路台帳など
- 図面印刷代:1案件あたり500-1,000円
- 境界確定図、地積測量図などの印刷
- A3カラー印刷が必要な場合もある
- 文具・消耗品:月1,000-3,000円
- 測量杭、ペンキ、測量野帳など
- 事務用品(封筒、用紙など)
変動費は案件数に比例しますが、月に2件受任する場合で合計1-2万円程度が目安です。
月間経費の合計(月3-5.5万円)
- 固定費:2-3.5万円
- 変動費(月2件の場合):1-2万円
- 合計:3-5.5万円
副業として月2件の案件を受任した場合、月間の経費は3-5.5万円程度になります。これに対して、1件あたりの報酬が10-15万円であれば、月収20-30万円となり、経費を差し引いた純利益は14.5-27万円となります。
ただし、この純利益から所得税や住民税、国民健康保険料(副業の場合は影響小)などが差し引かれる点にも注意が必要です。
副業で経費を回収できる収入ラインは
副業として土地家屋調査士業務を行う場合、初期費用と毎月の経費を回収し、利益を出すには、どの程度の収入が必要なのでしょうか。ここでは、具体的な収支モデルを示します。
初期費用の回収期間
初期費用を80万円と仮定した場合、回収にかかる期間を計算してみましょう。
- 初期費用:80万円
- 月の純利益:15万円(月2件受任、報酬25万円 – 経費10万円)
- 回収期間:80万円 ÷ 15万円 = 約5.3ヶ月
ただし、これは順調に案件を獲得できた場合のシミュレーションです。副業を開始した当初は案件獲得が難しく、月1件も受任できない可能性もあります。現実的には、初期費用の回収に1-2年かかると見込むべきでしょう。
損益分岐点の分析
毎月の固定費をカバーするために必要な最低収入を計算します。
- 月の固定費:3万円
- 1件あたりの報酬(平均):12万円
- 1件あたりの変動費:8,000円
- 1件あたりの純利益:12万円 – 8,000円 = 11.2万円
固定費3万円をカバーするには、11.2万円 ÷ 3万円 = 約0.27件、つまり月に1件以上の案件受任が必要です。
収益モデルの例
案件数別の月間収支をシミュレーションします。
月1件受任の場合
- 収入:12万円
- 固定費:3万円
- 変動費:8,000円
- 純利益:8.2万円
月2件受任の場合
- 収入:24万円
- 固定費:3万円
- 変動費:1.6万円
- 純利益:19.4万円
月3件受任の場合
- 収入:36万円
- 固定費:3万円
- 変動費:2.4万円
- 純利益:30.6万円
年間収支の見通し
月2件を安定して受任できた場合の年間収支を計算します。
- 年間収入:24万円 × 12ヶ月 = 288万円
- 年間経費(固定費):3万円 × 12ヶ月 = 36万円
- 年間経費(変動費):1.6万円 × 12ヶ月 = 19.2万円
- 年間純利益:232.8万円
初期費用80万円を差し引いても、初年度で152.8万円の利益が見込めます。
副業として成立する収入ライン
副業として経済的に成立するには、以下の収入ラインが目安となります。
- 最低ライン:月1件受任(年間収入144万円、純利益約98万円)
- 経費を賄い、わずかな利益が出る
- 初期費用の回収に1-2年かかる
- 現実的なライン:月2件受任(年間収入288万円、純利益約233万円)
- 初年度で初期費用を回収できる
- 副業としてのモチベーションを維持できる利益水準
- 理想的なライン:月3-4件受任(年間収入432-576万円、純利益約368-506万円)
- 副業としてはかなりの収入
- ただし、会社員との両立が困難になるレベル
副業として土地家屋調査士業務を行う場合、月2件程度の安定した受任が経済的に成立する最低ラインと言えるでしょう。それ以下では、時間と労力に見合う収入を得ることが難しくなります。
土地家屋調査士の費用に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の費用・料金相場|業務別の報酬体系を解説
土地家屋調査士の建物登記業務なら副業しやすい
土地家屋調査士の業務の中でも、建物の表題登記業務は比較的副業として取り組みやすい分野です。土地の測量業務と比較して、時間的制約が少なく、必要な機材も限定的だからです。
ここでは、建物登記業務が副業に向いている理由と、実際の業務の進め方について詳しく解説します。ただし、建物登記だけを選んで受任することの現実的な難しさについても触れます。
建物登記は測量機材が少なくて済む
建物の表題登記業務は、土地の境界確定測量と比較して、必要な測量機材が少なくて済みます。これにより、初期投資を抑えることができ、副業としてのハードルが下がります。
建物登記で必要な機材は以下の通りです。
最低限必要な機材
- レーザー距離計:2-5万円
- 建物の外周や各部屋の寸法を測定
- 手軽で精度も十分
- 巻尺・メジャー:1,000-3,000円
- 細部の寸法確認用
- 長尺のもの(30-50m)があると便利
- 水平器・レベル:5,000-10,000円
- 建物の傾きや階高の確認
- デジタルカメラ:既存のスマホカメラでも可
- 現況写真の撮影
- CADソフト:10-20万円
- 図面作成に必須
建物登記に不要な機材
- トータルステーション(30-50万円):基本的に不要
- GPS測量機(20-30万円):不要
- 高価な測量用プリズムやスタッフ:不要
初期費用を比較すると以下のようになります。
- 土地測量業務を含む場合:80-100万円
- 建物登記のみの場合:15-30万円
建物登記業務に特化することで、初期投資を大幅に削減できます。副業として少額から始めたい人にとって、建物登記からスタートするという選択肢は現実的です。
現場作業が比較的短時間で終わる
建物の表題登記業務は、現場での作業時間が土地測量と比較して短く済む点も、副業に向いている理由の一つです。
建物登記の現場作業の流れは以下の通りです。
現地調査の内容(所要時間:1-2時間)
- 建物の外周測定(30-45分)
- レーザー距離計で各辺の長さを測定
- 建物の形状を確認
- 各階・各部屋の測定(30-45分)
- 各階の床面積を算出するための測定
- 部屋ごとの寸法を記録
- 建物の仕様確認(15-30分)
- 構造(木造、鉄骨造など)
- 屋根の種類(瓦葺、スレート葺など)
- 外壁の材質
- 現況写真の撮影(10-15分)
- 建物の外観写真
- 各階の内部写真
合計で1-2時間程度で現地作業が完了します。
土地測量との比較
土地の境界確定測量の場合、現地作業に3-8時間かかることも珍しくありません。
- 境界確定測量:3-8時間(隣地所有者の立会い含む)
- 建物現況測量:1-2時間(立会いは施主のみ)
建物登記であれば、有給休暇を半日取得するだけで対応できます。平日の午前中に現地調査を行い、午後から出社するという働き方も可能です。
立会人の調整が容易
建物登記の場合、立会いが必要なのは施主(建物所有者)のみです。土地測量のように複数の隣地所有者の都合を調整する必要がありません。
- 建物登記:施主1人の都合のみ調整
- 土地測量:施主 + 隣地所有者2-4人の都合を調整
スケジュール調整の難易度が大きく異なるため、副業として取り組む際の時間管理がしやすくなります。
ただし建物登記だけを選ぶのは現実的に難しい
建物登記業務は副業に向いていますが、実際には建物登記だけを選んで受任することは現実的に困難です。その理由を以下に説明します。
土地測量とセットの案件が多い
実際の業務では、建物新築時に土地の測量も同時に依頼されるケースが多くあります。
- 新築住宅の場合:建物表題登記 + 敷地の現況測量
- 建売住宅の場合:建物表題登記 + 土地の分筆・地積更正登記
- 建て替えの場合:建物滅失登記 + 建物表題登記 + 境界確認
顧客としては、1人の土地家屋調査士にまとめて依頼したいと考えるのが自然です。建物登記だけを受けて、土地測量は断るという対応は、顧客の利便性を損ない、信頼関係にも影響します。
業務の選択が難しい理由
- 顧客に「建物登記のみ対応」と伝えると、別の調査士に全てを依頼される可能性
- 不動産業者や工務店からの紹介案件では、土地測量も含めた対応を求められる
- 建物登記のみの案件は相対的に少ない
現実的な対応策
副業として建物登記を中心に対応したい場合、以下の方法が考えられます。
- 土地測量が簡単な案件のみ受任する
- 既に境界が確定している土地
- 測量図が最近作成されている物件
- 隣地との関係が良好で立会いが容易
- 他の土地家屋調査士と協力する
- 自分は建物登記のみ担当
- 土地測量は協力者に依頼(報酬を分配)
- 建物登記に強みを持つことを明示する
- ホームページやチラシで「建物登記専門」を打ち出す
- 工務店や住宅メーカーとの直接契約を目指す
ただし、これらの対応策にも限界があり、長期的には土地測量も含めた総合的な対応が求められるようになります。
段階的なアプローチ
副業として土地家屋調査士業務を始める場合、以下のような段階的なアプローチが現実的です。
- 第1段階:建物登記のみに対応(副業開始時)
- 時間的制約が大きい時期
- 初期投資を抑えて小規模にスタート
- 第2段階:簡単な土地測量も対応(副業1-2年目)
- 建物登記で実績を積んだ後
- 測量機材への投資を検討
- 第3段階:総合的な業務に対応(独立準備期)
- 本業の時間を減らし、土地家屋調査士業務を拡大
- 独立開業に向けた実務経験を積む
建物登記は副業の入り口としては優れていますが、最終的には土地測量を含む総合的な対応力が必要になることを理解しておくべきでしょう。
土地家屋調査士の建物登記業務に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の仕事内容とは?業務範囲・働き方・キャリアパスを詳しく解説
土地家屋調査士の柔軟な働き方の可能性
土地家屋調査士の資格を活かした働き方は、完全な副業だけではありません。企業に勤務しながら土地家屋調査士として働く方法や、段階的に独立を目指すキャリアパスなど、柔軟な選択肢があります。
ここでは、土地家屋調査士資格を活かした多様な働き方について、現実的な選択肢を詳しく解説します。土地家屋調査士の年収も参考にしながら、自分に合ったキャリアプランを検討してみましょう。
企業勤務しながら土地家屋調査士として働く
土地家屋調査士の資格を持ちながら、企業に勤務するという働き方があります。これは、土地家屋調査士事務所や測量会社、不動産関連企業で正社員として働くパターンです。
この働き方のメリットは以下の通りです。
安定した収入と福利厚生
- 毎月の固定給与が保証される
- 社会保険、厚生年金の加入
- 有給休暇、賞与などの福利厚生
- 独立開業のリスクを負わない
実務経験を積める環境
- 先輩調査士から直接指導を受けられる
- 多様な案件に携わることで経験値が上がる
- 測量技術や登記実務のノウハウを習得できる
- 顧客対応や営業のスキルも身につく
初期投資が不要
- 会社の測量機材を使用できる
- CADソフトも会社が用意
- 自己資金なしで実務をスタートできる
勤務先の選択肢
- 土地家屋調査士事務所(個人事務所、法人事務所)
- 測量会社
- 不動産会社(登記部門)
- 建設会社(用地部門)
- 官公庁(用地取得担当など)
企業勤務の土地家屋調査士の年収は、経験や地域によって異なりますが、以下が目安です。
- 新人(資格取得後1-3年):年収300-400万円
- 中堅(資格取得後4-10年):年収400-600万円
- ベテラン(資格取得後10年以上):年収600-800万円
独立開業と比較すると収入は低めですが、安定性があり、実務経験を積みながら独立の準備ができる点が魅力です。
企業勤務から個人受任への移行
一部の企業では、勤務しながら個人でも案件を受任することを認めている場合があります。
- 会社の業務時間外に個人で案件を受ける
- 会社の規定で副業が認められている必要がある
- 会社の顧客と競合しない範囲での受任
- 報酬の一部を会社に納める場合もある
このような働き方により、企業勤務の安定性を保ちながら、個人の実績も積むことができます。
副業的に個人で受任する働き方
本業は別の職種で働きながら、土地家屋調査士として個人で案件を受任する働き方です。これは本記事で主に解説してきた副業パターンですが、改めて整理します。
副業として成立しやすい条件
- 時間の柔軟性が高い本業
- フレックスタイム制度
- リモートワーク中心
- 自営業や経営者
- 関連業界での勤務
- 不動産業界
- 建設業界
- 他の士業事務所
- 他の資格とのダブルライセンス
- 司法書士との兼業
- 行政書士との兼業
- 測量士との兼業
副業として受任する案件の例
- 友人・知人からの依頼(月0-1件)
- 他の士業からの紹介案件(月0-1件)
- インターネット経由の問い合わせ(月0-1件)
- 本業の顧客からの依頼(月0-2件)
副業として安定した案件獲得は難しいため、月1-2件程度の受任が現実的なラインです。
副業収入の目安
- 月1件受任:月収10-15万円、年収120-180万円
- 月2件受任:月収20-30万円、年収240-360万円
経費を差し引くと、純利益は上記の60-70%程度になります。
副業から独立への移行タイミング
副業での実績が安定してきたら、独立開業を検討するタイミングです。
- 月3件以上の安定受注が見込める
- 顧客ネットワークが構築できた
- 測量技術と登記実務に自信がついた
- 独立後の収入見込みが本業を上回る
一般的には、副業として2-3年の実績を積んだ後、独立開業するケースが多いようです。
実務経験を積んでから独立する道筋
土地家屋調査士として長期的なキャリアを考える場合、最も確実なのは実務経験を積んでから独立する道筋です。ここでは、段階的に独立を目指すキャリアパスを紹介します。
ステップ1:試験合格と登録(0年目)
- 土地家屋調査士試験に合格
- 土地家屋調査士会に登録
- 基礎的な知識は習得済み
ステップ2:企業勤務で実務経験(1-5年目)
- 土地家屋調査士事務所や測量会社に就職
- 測量技術と登記実務を習得
- 顧客対応や営業スキルを学ぶ
- 業界ネットワークを構築
この期間の目標:
- 年間50-100件の案件に携わる
- 多様な案件タイプを経験する
- 一人で案件を完結できる実力をつける
ステップ3:副業として個人受任開始(3-5年目)
- 会社の許可を得て個人でも案件を受ける
- 友人・知人からの依頼を受任
- 週末や夜間を活用して対応
- 個人事業主としての実績を作る
この期間の目標:
- 月1-2件の個人案件を受任
- 顧客満足度を高め、リピート・紹介を増やす
- 独立後の収入見込みを試算する
ステップ4:独立開業の準備(5-7年目)
- 本格的な独立に向けた準備
- 事務所の場所選定
- ホームページ作成、営業ツール準備
- 資金計画の策定
この期間の目標:
- 独立後の初年度に月3-5件の案件獲得見込みを立てる
- 開業資金200-300万円を貯蓄
- 顧客ネットワークの拡大
ステップ5:独立開業(7年目以降)
- 個人事務所を開業
- 本格的に土地家屋調査士として独立
- 安定した案件受注体制を構築
独立後の目標:
- 初年度:月3-5件(年収500-800万円)
- 3年目:月5-8件(年収800-1,200万円)
- 5年目以降:月8-10件以上(年収1,000-1,500万円以上)
独立のタイミングを判断する基準
以下の条件を満たした時が、独立の適切なタイミングです。
- 実務経験5年以上
- 顧客ネットワークが構築できている
- 月5件以上の安定した案件獲得の見込みがある
- 開業資金200-300万円の準備ができている
- 家族の理解と協力が得られている
焦らずに実務経験を積み、確実に準備を整えてから独立することが、長期的な成功につながります。副業としてスタートし、段階的に独立を目指すことで、リスクを最小限に抑えながらキャリアを構築できます。
土地家屋調査士の働き方に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の年収は?平均給与・開業・勤務別の収入を徹底分析
土地家屋調査士の副業・兼業に関連するよくある質問(FAQ)
土地家屋調査士の副業や兼業について、よくある質問をまとめました。副業を検討している方が気になるポイントを中心に、具体的に回答します。
Q. 土地家屋調査士は副業にできますか?
土地家屋調査士は法的には副業にできますが、実務面では多くの制約があります。土地家屋調査士法には兼業禁止の規定はありませんので、会社員をしながら土地家屋調査士として登録し、業務を行うことは可能です。
ただし、副業として成立させるには以下の条件が必要です。
- 平日昼間に柔軟に時間を確保できる環境(フレックス制度、リモートワークなど)
- 役所や法務局の開庁時間(平日9:00-17:00)に対応できること
- 測量のために急な日程調整ができること
- 初期費用80-100万円と毎月の経費2-5万円を負担できる経済力
これらの条件を満たせない場合、副業として継続的に案件を受任することは困難です。多くの場合、副業として成立するのは月1-2件程度が限界となります。
Q. 会社員をしながら土地家屋調査士はできますか?
会社員をしながら土地家屋調査士業務を行うことは可能ですが、一般的な会社員の働き方では両立が非常に困難です。土地家屋調査士の業務は平日昼間が中心であり、以下のような対応が頻繁に必要になるためです。
平日昼間に必須の業務
- 法務局での登記申請と書類受領(平日9:00-17:00)
- 役所での各種証明書取得や資料閲覧(平日8:30-17:15)
- 測量と境界立会い(隣地所有者の都合で平日昼間が多い)
- 不動産業者や司法書士との打ち合わせ
会社員と両立できる可能性があるのは、以下のようなケースです。
- フレックスタイム制度を活用できる会社
- リモートワーク中心で時間調整が可能な職種
- 不動産・建設業界など関連業界での勤務
- 他の士業資格を持ち、その事務所で働いている
これらの条件に該当しない一般的な会社員の場合、土地家屋調査士業務を副業として継続することは現実的ではありません。
Q. 土地家屋調査士の兼業に必要な条件は?
土地家屋調査士を兼業するために必要な条件は、時間的条件、経済的条件、環境的条件の3つに分類されます。
時間的条件
- 平日昼間に最低でも週2-3回、半日程度の時間を確保できる
- 急な日程変更に対応できる柔軟性
- 顧客や関係者からの電話に日中応答できる
経済的条件
- 初期投資80-100万円を用意できる資金力
- 毎月2-5万円の固定費を継続して支払える収入
- 案件が少ない時期でも経費を負担できる経済的余裕
環境的条件
- 会社の副業規定で土地家屋調査士業務が認められている
- 家族の理解と協力が得られている
- 測量機材を保管できる場所(自宅や倉庫)
- 図面作成のための作業スペース
技術的条件
- 測量技術と登記実務の知識(実務経験が望ましい)
- CADソフトを使いこなせるスキル
- 顧客対応やコミュニケーション能力
これらの条件をすべて満たすことは容易ではありませんが、特に時間的条件が最も重要です。時間の柔軟性がなければ、他の条件を満たしていても兼業は成立しません。
Q. 土地家屋調査士の副業で稼げる金額は?
土地家屋調査士の副業で稼げる金額は、受任できる案件数に大きく依存します。1件あたりの報酬と経費、そして月間の受任件数から計算してみましょう。
1件あたりの報酬相場
- 建物表題登記:8-15万円
- 土地境界確定測量:15-30万円
- 土地分筆登記:20-40万円
- 平均的な案件:12万円程度
月間受任件数別の収入モデル
月1件受任の場合
- 月収:12万円
- 年収:144万円
- 経費控除後の純利益:年間約100万円
月2件受任の場合
- 月収:24万円
- 年収:288万円
- 経費控除後の純利益:年間約230万円
月3件受任の場合
- 月収:36万円
- 年収:432万円
- 経費控除後の純利益:年間約370万円
副業として現実的に受任できるのは月1-2件程度です。会社員をしながら月3件以上を継続的に受任することは、時間的制約から極めて困難です。
経費の内訳
- 固定費:月2-3.5万円(会費、保険、保守料など)
- 変動費:1件あたり8,000-10,000円(ガソリン代、書類代など)
年収から経費を差し引いた純利益が、実際に手元に残る金額となります。さらに、この純利益から所得税や住民税が課税される点にも注意が必要です。
Q. 土地家屋調査士と相性が良い資格は何ですか?
土地家屋調査士と相性が良い資格は、業務範囲が補完的で、相乗効果が期待できるものです。特に相性が良いのは以下の資格です。
司法書士(最も相性が良い)
- 不動産登記で表示登記と権利登記をセットで対応できる
- 1つの案件で両方の報酬を得られる
- 顧客に対してワンストップサービスを提供できる
- 試験難易度は高い(合格率4-5%)
行政書士(取得しやすく相性も良い)
- 農地転用許可と地目変更登記をセットで対応
- 開発許可と建物表題登記をセットで受任
- 司法書士より試験難易度が低い(合格率10-15%)
測量士・測量士補
- 土地家屋調査士試験の午前の部が免除される
- 大規模な測量業務と個別の登記業務を組み合わせられる
- 測量会社に勤務しながら個人で登記業務を受任しやすい
宅地建物取引士
- 不動産売買の仲介と測量・登記をセットで提供
- 不動産業界でのネットワークを活かせる
- 比較的取得しやすい資格
不動産鑑定士
- 不動産の鑑定評価と測量データの提供
- より正確な評価が可能になる
- 高度な専門性で差別化できる
ダブルライセンスを取得することで、副業としての収入源を多様化し、案件獲得の可能性も高まります。すでに他の資格を持っている場合は、土地家屋調査士との組み合わせを検討する価値があります。
土地家屋調査士と相性が良い資格に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士と司法書士の違い|資格比較と選び方
土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンス|相性と取得メリット
まとめ:土地家屋調査士の副業・兼業の現実と可能性
本記事では、土地家屋調査士の副業・兼業について、実態と可能性を詳しく解説してきました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
土地家屋調査士の副業は条件次第で可能だが、ハードルは高い
土地家屋調査士を副業として成立させるには、平日昼間に柔軟に時間を確保できる環境、役所や法務局の開庁時間に対応できること、測量のためのスケジュール調整ができること、そして初期費用80-100万円と毎月の経費を負担できる経済力が必要です。これらの条件を満たせる会社員は限られており、一般的な会社員が副業として取り組むには多くの制約があります。
フレックス制度やリモートワーク、関連業界勤務なら可能性あり
フレックスタイム制度がある会社、リモートワーク中心の職種、不動産・建設業界など関連業界での勤務であれば、土地家屋調査士との兼業の可能性が高まります。特に、他の士業資格とのダブルライセンスにより、ワンストップサービスを提供できれば、副業でも効率的に収入を得られる可能性があります。
実務経験を積んでから独立する道筋が最も確実
長期的なキャリアを考える場合、まず土地家屋調査士事務所や測量会社で実務経験を積み、副業として個人案件を受任し始め、準備が整ったら独立開業するという段階的なアプローチが最も確実です。焦らずに実務経験を積むことで、独立後の成功確率が高まります。
土地家屋調査士の副業・兼業を検討しているなら、まずは自分の働き方がどのケースに当てはまるかを確認しましょう。土地家屋調査士の仕事内容と土地家屋調査士の年収を参考に、現実的なキャリアプランを立てることをおすすめします。副業として始める場合でも、将来的な独立開業を見据えた長期的な視点を持つことが重要です。
土地家屋調査士を一発合格合格をめざす!人気の通信講座がこちら
土地家屋調査士の関連記事
コメント