土地家屋調査士試験とは？試験制度・日程・科目を詳しく解説

土地家屋調査士試験について調べているあなたへ。「試験制度の全体像が分からない」「いつ、どのような形で試験が実施されるのか」という疑問は、試験制度の正確な理解で解決できます。

本記事では、土地家屋調査士試験の概要と実施機関、年間スケジュールと試験日程、試験科目と出題形式について、最新のデータを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、土地家屋調査士試験合格に向けて、計画的な学習準備を始めましょう。

土地家屋調査士試験とは

土地家屋調査士試験は、不動産の表示に関する登記業務を行う専門家を認定する国家資格試験です。土地や建物の物理的状況を正確に調査・測量し、登記申請を代理できる資格として、不動産取引の基盤を支える重要な役割を担っています。土地家屋調査士とは何か、基本的な情報から確認したい方は、資格の全体像を把握しておくことをおすすめします。

土地家屋調査士試験の概要と特徴

土地家屋調査士試験は、測量技術と法律知識の両方を求められる総合的な試験です。午前の部では測量計算と作図能力が問われ、午後の部では民法・不動産登記法の知識と実務的な書式問題への対応力が試されます。この二つの側面をバランスよく習得することが合格への鍵となります。

試験の特徴として、記述式問題の配点が高く設定されている点が挙げられます。択一式で基礎知識を確認しつつ、記述式で実務能力を測る構造になっているため、単なる暗記だけでは合格が難しい試験といえるでしょう。実際の業務に直結する実践的な能力が求められています。

また、合格率は例年9〜11%程度で推移しており、難関資格の一つに位置づけられています。しかし、午前の部免除制度を活用したり、効率的な学習計画を立てることで、働きながらでも合格を目指すことは十分可能です。

土地家屋調査士試験の実施機関

土地家屋調査士試験は法務省が所管し、各法務局および地方法務局が実施機関となっています。試験の企画・運営は法務省民事局が担当し、各地域の法務局が受験申請の受付や試験会場の設営を行う仕組みです。

具体的には、受験を希望する地域の法務局または地方法務局に受験申請書を提出します。全国8つの試験地（東京、大阪、名古屋、広島、福岡、那覇、仙台、札幌、高松）で試験が実施されており、自分の居住地や受験しやすい場所を選択できます。

試験の詳細情報や最新の案内は、法務省のウェブサイトおよび各法務局のウェブサイトで公表されます。受験を検討している方は、希望する受験地の法務局の情報を定期的に確認することをおすすめします。

土地家屋調査士試験の年1回実施体制

土地家屋調査士試験は年に1回のみ実施されます。これは、試験の性質上、実地での測量技術や作図能力を評価する必要があるため、複数回実施が困難であることが理由の一つです。受験機会が年1回に限られるため、計画的な学習と万全の準備が求められます。

年1回という実施体制は、受験者にとっては慎重な準備が必要となる一方で、じっくりと実力を養成できるというメリットもあります。特に働きながら受験する方にとっては、1年間という期間を活用して、仕事と学習のバランスを取りながら準備を進められます。

もし受験できなかった場合や不合格だった場合は、翌年の試験まで待つ必要があります。そのため、受験する年は体調管理や試験当日のスケジュール確保にも十分な注意を払うことが大切です。

土地家屋調査士試験の基礎知識に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士とは？資格の仕事内容・試験制度・取得メリットを徹底解説

土地家屋調査士試験の日程とスケジュール

土地家屋調査士試験の年間スケジュールを理解することは、学習計画を立てる上で非常に重要です。受験申請から最終合格発表までの流れを把握し、各段階で必要な準備を整えることで、スムーズに試験に臨むことができます。

土地家屋調査士試験の年間スケジュール

土地家屋調査士試験の年間スケジュールは、おおむね以下の流れで進行します。5月下旬から6月上旬に受験申請の受付が開始され、10月第3日曜日に筆記試験が実施されます。その後、11月に筆記試験合格者が発表され、合格者のみが口述試験に進みます。口述試験は例年1月中旬に実施され、最終合格発表は1月下旬から2月上旬に行われます。

このスケジュールから逆算すると、本格的な学習開始は前年の秋頃から始めるのが理想的です。1,000〜1,500時間の学習時間が必要とされる試験のため、10月の筆記試験に向けて、少なくとも1年程度の準備期間を確保することをおすすめします。

また、筆記試験と口述試験の間は約3ヶ月ありますが、この期間も無駄にせず、口述試験対策を進めることが大切です。筆記試験の合格を確認してから準備を始めるのでは遅い場合もあるため、筆記試験後すぐに口述試験の準備に取りかかる姿勢が求められます。

筆記試験の実施時期（10月第3日曜日）

土地家屋調査士試験の筆記試験は、毎年10月の第3日曜日に実施されます。これは法律で定められた日程であり、毎年固定されているため、長期的な学習計画が立てやすいというメリットがあります。

筆記試験は1日で午前の部と午後の部の両方が実施されます。午前の部は午前9時30分から午前11時30分まで、午後の部は午後1時から午後4時30分まで行われます。午前の部免除者は午後の部のみ受験となるため、午後からの試験開始となります。

10月の第3日曜日という日程は、多くの受験者にとって覚えやすく、スケジュール調整もしやすい時期です。ただし、この時期は他の資格試験や行事と重なる可能性もあるため、早めにスケジュールを確保し、試験当日に向けて万全の体制を整えることが重要です。

口述試験から最終合格発表まで

筆記試験の合格発表は例年11月中旬に行われます。合格者には口述試験の受験通知が送付され、試験日時と会場が指定されます。口述試験は1月中旬に実施され、通常は15分程度の面接形式で行われます。

口述試験では、土地家屋調査士の実務に関する基本的な知識と、筆記試験で出題された内容の理解度が確認されます。試験官との質疑応答を通じて、実務に必要な知識と対応能力が評価されます。合格率は非常に高く、筆記試験を突破できれば、ほとんどの方が口述試験も合格しています。

最終合格発表は1月下旬から2月上旬に行われます。合格者には合格証書が交付され、土地家屋調査士として登録するための手続きを開始できます。受験申請から最終合格まで約8〜9ヶ月という長期間にわたるため、計画的に準備を進めることが求められます。

2025年度の試験日程

2025年度の土地家屋調査士試験の具体的な日程は、例年のスケジュールに基づくと以下のように予想されます。ただし、正式な日程は法務省および各法務局から発表される官報告示を必ず確認してください。

受験申請受付期間は2025年5月下旬から6月上旬頃、筆記試験は2025年10月19日（第3日曜日）に実施される見込みです。筆記試験合格発表は11月中旬、口述試験は2026年1月中旬、最終合格発表は2026年1月下旬から2月上旬となるでしょう。

試験日程の詳細は、毎年4月から5月にかけて法務省から正式に公表されます。受験を予定している方は、法務省のウェブサイトや受験地の法務局の情報を定期的にチェックし、申請期間を逃さないよう注意が必要です。申請期間は約2週間と短いため、必要書類を早めに準備しておくことをおすすめします。

土地家屋調査士試験の受験資格

土地家屋調査士試験は、受験のハードルが低く設定されている国家資格の一つです。多くの国家資格が学歴や実務経験を求める中で、土地家屋調査士試験は誰でも挑戦できる開かれた資格試験となっています。土地家屋調査士試験の受験資格についてさらに詳しく知りたい方は、専門記事で受験要件や申込方法を確認できます。

土地家屋調査士試験の受験要件

土地家屋調査士試験には、特別な受験要件は設けられていません。学歴、年齢、実務経験などの制限が一切なく、受験を希望する方であれば誰でも挑戦できる試験です。これは、能力と意欲があれば誰でも土地家屋調査士を目指せるという、開かれた資格制度の理念を反映しています。

ただし、試験に合格した後、実際に土地家屋調査士として登録するためには、日本土地家屋調査士会連合会への登録手続きが必要です。この登録時には、一定の要件（欠格事由に該当しないことなど）が求められますが、受験段階では何の制限もありません。

このように受験資格が広く開かれているため、大学生から社会人、シニア世代まで、幅広い年齢層の方が受験しています。自分のペースで学習を進め、準備が整ったタイミングで受験できる点は、働きながら資格取得を目指す方にとって大きなメリットといえるでしょう。

年齢・学歴・実務経験は不問

土地家屋調査士試験では、年齢制限が設けられていません。18歳で受験する方もいれば、50代や60代で挑戦する方もいます。実際に、さまざまな年齢層の方が合格し、土地家屋調査士として活躍しています。

学歴についても制限はありません。高校卒業、大学卒業、専門学校卒業など、どのような学歴であっても受験可能です。また、中卒や高校中退の方でも受験でき、学力試験に合格すれば土地家屋調査士の資格を取得できます。

実務経験も不要です。測量の仕事経験がない方、不動産業界で働いたことがない方でも、試験に合格すれば土地家屋調査士になれます。もちろん、測量会社や不動産関連の仕事経験がある方は、その知識を活かして効率的に学習を進められるメリットはありますが、受験要件としては求められていません。

誰でも受験できる国家資格

土地家屋調査士試験が誰でも受験できる国家資格である点は、キャリアチェンジを目指す方にとって大きな魅力です。他業種から転職を考えている方、独立開業を目指している方、定年後のセカンドキャリアとして専門資格を取得したい方など、多様な背景を持つ方が挑戦しています。

ただし、受験資格が開かれているからといって、試験が簡単というわけではありません。合格率は9〜11%程度と低く、十分な準備と学習時間の確保が必要です。しかし、努力次第で誰でも合格を目指せるという点で、公平で透明性の高い資格試験といえます。

また、国籍による制限もありません。日本国籍を持たない方でも受験でき、合格すれば土地家屋調査士として登録できます。グローバル化が進む中で、外国籍の方も土地家屋調査士として活躍する道が開かれています。

土地家屋調査士試験の受験資格に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験の受験資格｜受験要件・受験料・申込方法を解説

土地家屋調査士試験の科目と出題範囲

土地家屋調査士試験は、午前の部と午後の部に分かれて実施され、それぞれ異なる科目が出題されます。測量技術、法律知識、実務能力を総合的に評価する試験構成となっており、幅広い知識とスキルが求められます。土地家屋調査士試験の科目について、科目別の詳細な対策方法を知りたい方は、専門記事を参照してください。

土地家屋調査士試験の5つの試験科目

土地家屋調査士試験では、主に5つの分野から出題されます。午前の部では、平面測量（多角測量、トラバース測量など）と作図の2分野が中心となります。午後の部では、民法、不動産登記法、土地家屋調査士法の3つの法律科目が出題されます。

これら5つの科目は、土地家屋調査士の実務で必要となる知識とスキルを網羅しています。測量技術は現地での調査業務に直結し、法律知識は登記申請や依頼者への説明に不可欠です。また、土地家屋調査士法は職業倫理や業務範囲を定めており、資格者として守るべきルールが問われます。

各科目はそれぞれ独立しているわけではなく、相互に関連しています。例えば、測量で得たデータを法的に正確に解釈し、適切な登記申請書類を作成するという一連の流れの中で、全ての知識が統合されます。そのため、バランスよく各科目を学習することが合格への近道となります。

午前の部の試験科目（測量・作図）

午前の部では、測量に関する知識と技能が問われます。具体的には、平面測量の計算問題と作図問題が出題されます。測量計算では、トラバース測量、多角測量、交点計算、面積計算などの問題が出され、電卓を使用して正確に計算する能力が求められます。

作図問題では、与えられた測量データをもとに、正確な図面を作成する技能が評価されます。定規、三角定規、コンパス、ディバイダーなどの製図用具を使用し、時間内に精密な図面を完成させる必要があります。作図の正確さと速さの両方が重要です。

午前の部の試験時間は2時間で、択一式10問と記述式2問（測量計算1問、作図1問）が出題されます。配点は択一式が100点、記述式が100点の合計200点満点です。ただし、測量士補などの資格を持っている方は、この午前の部が免除されます。

午後の部の試験科目（民法・登記法等）

午後の部では、法律科目と実務的な書式問題が出題されます。主な科目は民法、不動産登記法、土地家屋調査士法で、これらの法律知識を問う択一式問題が20問出題されます。民法は所有権や地役権など不動産に関する部分が中心で、不動産登記法は表示に関する登記の手続きや要件が問われます。

書式問題では、土地と建物の登記申請書を作成する記述式問題が2問出題されます。与えられた事例や図面をもとに、実際の業務で使用する登記申請書を作成し、必要な添付書類や計算過程も記載します。この書式問題は配点が高く、午後の部の合否を大きく左右します。

午後の部の試験時間は3時間30分で、択一式20問と記述式2問（土地1問、建物1問）が出題されます。配点は択一式が100点、記述式が100点の合計200点満点です。時間配分が重要で、多くの受験者が時間不足に悩まされるため、過去問演習を通じて効率的な解答手順を身につける必要があります。

土地家屋調査士試験の科目に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験の科目一覧｜出題範囲と科目別対策を解説

土地家屋調査士試験の出題形式と配点

土地家屋調査士試験の出題形式を理解することは、効果的な学習計画を立てる上で欠かせません。択一式と記述式の両方に対応する必要があり、それぞれに適した対策が求められます。

択一式問題の出題形式と出題数

択一式問題は、5つの選択肢から正解を1つ選ぶ形式です。午前の部では10問、午後の部では20問が出題されます。問題文を正確に読み取り、法律の条文や判例、測量の基本原則に基づいて正解を導く能力が問われます。

午前の部の択一式は測量に関する基礎知識が中心で、測量法や公共測量作業規程に基づく問題が出題されます。午後の部の択一式は、民法3〜4問、不動産登記法16〜17問、土地家屋調査士法1〜2問という配分が一般的です。

択一式問題の特徴として、「正しいものはどれか」「誤っているものはどれか」といった問い方だけでなく、「組み合わせとして正しいものはどれか」という複合問題も出題されます。このタイプの問題は難易度が高く、各選択肢を正確に判断する必要があります。

記述式問題の出題形式と出題数

記述式問題は、実務能力を直接評価する重要な問題です。午前の部では測量計算1問と作図1問、午後の部では土地の書式1問と建物の書式1問が出題されます。記述式は配点が高く、合否に直結するため、十分な対策が必要です。

午前の部の記述式では、与えられた測量データから座標計算や面積計算を行い、さらにその結果を図面に正確に表現します。計算ミスが致命的となるため、慎重かつ正確な作業が求められます。作図では、定規やコンパスを使って精密な線を引く技術も必要です。

午後の部の記述式では、事例に基づいて登記申請書を作成します。土地の問題では地積測量図の作成も求められ、建物の問題では建物図面・各階平面図の作成が必要です。申請書の記載事項、添付書類、計算過程まで正確に記述する必要があり、実務に即した総合的な能力が試されます。

土地家屋調査士試験の配点と時間配分

土地家屋調査士試験の配点は、午前の部と午後の部でそれぞれ200点満点、合計400点満点となっています。ただし、午前の部免除者は午後の部の200点のみで評価されます。

午前の部では、択一式100点、記述式100点という配点です。択一式は1問10点、記述式は測量計算と作図で各50点程度が目安となります。試験時間2時間の中で、択一式に30〜40分、記述式に80〜90分を配分するのが一般的です。

午後の部では、択一式100点、記述式100点の配点です。択一式は1問5点、記述式は土地と建物で各50点程度となります。試験時間3時間30分の中で、択一式に60〜80分、記述式に130〜150分を配分する受験者が多いです。ただし、個人の得意・不得意に応じて時間配分を調整することも重要です。

土地家屋調査士試験の午前の部免除制度

土地家屋調査士試験には、午前の部を免除できる制度があります。この制度を活用することで、午後の部の学習に集中でき、合格への道筋が明確になります。土地家屋調査士試験の午前の部免除について、より詳しい情報は専門記事で確認できます。

午前の部免除の対象資格

午前の部免除制度の対象となるのは、測量に関する国家資格を保有している方です。具体的には、測量士、測量士補、一級建築士、二級建築士の資格保有者が免除の対象となります。これらの資格を持っている方は、午前の部の試験を受験せずに、午後の部のみ受験できます。

免除制度の趣旨は、既に測量技術や作図能力を有していると認められる資格保有者に対して、重複する試験を省略するというものです。これにより、受験者の負担を軽減し、より効率的に資格取得を目指せる仕組みとなっています。

免除を受けるためには、受験申請時に資格証明書のコピーを提出する必要があります。また、一度免除が認められると、その後の受験でも継続して免除を受けられます。合格するまで毎回免除申請書を提出する必要がある点には注意が必要です。

測量士補資格による免除が主流

午前の部免除制度を利用する受験者の中で、最も多いのが測量士補資格を活用するケースです。測量士補試験は年1回5月に実施される国家試験で、土地家屋調査士試験よりも難易度が低く、合格率も30〜40%程度と比較的高いため、多くの受験者がまず測量士補を取得してから土地家屋調査士試験に臨みます。

測量士補を先に取得するメリットは大きく、午前の部の勉強時間（約300〜400時間）を午後の部の学習に充てられます。午後の部は法律科目と書式問題の両方を学習する必要があるため、学習量が多く時間がかかります。午前の部免除により、午後の部に集中できる点は合格率向上につながります。

実際、土地家屋調査士試験の合格者の約9割が午前の部免除者というデータもあります。これは、免除制度を活用することで学習効率が上がり、合格に近づけることを示しています。土地家屋調査士を目指す方は、まず測量士補の取得を検討することをおすすめします。

土地家屋調査士試験の免除申請方法

午前の部免除を受けるためには、受験申請時に所定の手続きが必要です。受験申請書に免除申請欄があるので、該当する資格にチェックを入れ、資格証明書のコピーを添付して提出します。資格証明書は、測量士補であれば測量士補登録証、建築士であれば建築士免許証のコピーが該当します。

免除申請は受験申請期間内に行う必要があり、後から追加で申請することはできません。そのため、受験申請書を提出する前に、資格証明書のコピーを準備しておくことが重要です。コピーは原本と相違ないことを確認し、鮮明なものを用意しましょう。

免除が認められると、受験票に「午前の部免除」と記載されます。試験当日は午後の部のみ受験し、午前中は試験会場に行く必要はありません。午後1時からの試験開始に間に合うように会場に到着すれば問題ありません。免除者専用の受験番号が割り当てられるため、受験票をよく確認しておきましょう。

土地家屋調査士試験の午前の部免除に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験の午前の部免除制度｜測量士補資格で免除される条件

土地家屋調査士試験の筆記試験

筆記試験は土地家屋調査士試験の第一関門であり、合格率の低さから多くの受験者が苦戦する試験です。午前の部と午後の部のそれぞれの特徴を理解し、戦略的に準備を進めることが合格への鍵となります。

土地家屋調査士の午前の部試験内容

午前の部の試験内容は、平面測量および作図に関する知識と技能です。試験時間は2時間で、択一式10問（100点）と記述式2問（測量計算50点、作図50点）の計200点満点で構成されています。

択一式では、測量法、公共測量作業規程、測量の基本原則などに関する問題が出題されます。測量機器の使用方法、誤差調整の計算、座標変換などの理論的知識が問われます。1問10点という高配点のため、1問のミスが合否に影響する可能性があります。

記述式の測量計算では、トラバース測量の計算、座標計算、面積計算などが出題されます。作図問題では、与えられた測量データをもとに、正確な地形図や地積測量図を作成します。作図では、線の太さ、長さの正確さ、図面の美しさも評価対象となるため、日頃から製図用具の扱いに慣れておく必要があります。

土地家屋調査士の午後の部試験内容

午後の部の試験内容は、民法、不動産登記法、土地家屋調査士法に関する知識と、土地・建物の登記申請書の作成能力です。試験時間は3時間30分で、択一式20問（100点）と記述式2問（土地50点、建物50点）の計200点満点で構成されています。

択一式では、民法の所有権、地役権、相隣関係などの不動産法分野、不動産登記法の表示に関する登記の手続きや要件、土地家屋調査士法の業務範囲や職業倫理などが出題されます。法律の条文を正確に理解し、事例問題に適用する能力が求められます。

記述式の書式問題では、土地の分筆登記や地積更正登記、建物の新築登記や表題変更登記などの申請書を作成します。登記の目的、原因、添付書類を正確に記載し、地積測量図や建物図面も作成する必要があります。実務に即した問題のため、登記申請の流れと様式を十分に理解しておくことが重要です。

筆記試験の基準点と足切り制度

土地家屋調査士試験には、基準点制度（足切り制度）があります。これは、択一式と記述式のそれぞれに最低基準点が設定され、いずれか一方でも基準点に達しない場合は、総合得点が高くても不合格となる制度です。

午前の部では、択一式の基準点が例年50〜70点、記述式の基準点が30〜40点程度に設定されます。午後の部では、択一式の基準点が40〜50点、記述式の基準点が30〜40点程度です。これらの基準点は毎年変動し、試験の難易度に応じて調整されます。

足切り制度があるため、得意科目だけを伸ばすのではなく、バランスよく全ての形式で基準点を超える実力をつける必要があります。特に記述式は配点が高く、基準点に達しないリスクも高いため、十分な演習を重ねて実力を養成することが求められます。

土地家屋調査士試験の口述試験

筆記試験に合格すると、最後の関門である口述試験に進みます。口述試験は筆記試験に比べて合格率が高いですが、適切な準備をしないと不合格となる可能性もあります。

土地家屋調査士の口述試験の内容

口述試験は、面接形式で行われる試験です。試験官2〜3名が受験者1名に対して質問を行い、その回答内容や態度を評価します。質問内容は、土地家屋調査士の実務に関する基本的な知識、筆記試験で出題された内容の理解度、職業倫理などが中心です。

具体的には、不動産登記法の条文や手続き、測量の基本原則、依頼者対応の方法、業務上の注意点などが質問されます。また、筆記試験の記述式問題で出題された事例について、「なぜこの登記が必要なのか」「どのような測量をするのか」といった実務的な質問もされます。

口述試験では、正確な知識だけでなく、受け答えの態度や説明の分かりやすさも評価されます。落ち着いて質問を聞き、論理的に説明する能力が求められます。暗記した知識をそのまま述べるのではなく、自分の言葉で説明できるようにしておくことが大切です。

口述試験の実施時期と時間

口述試験は例年1月中旬に実施されます。筆記試験の合格発表が11月中旬のため、約2ヶ月の準備期間があります。試験会場は各地の法務局または指定された会場で、受験地ごとに日程が指定されます。

試験時間は1人あたり10〜15分程度です。待機室で順番を待ち、呼ばれたら試験室に入室します。簡単な自己紹介の後、試験官からの質問に答えていく形式です。15分という短い時間の中で、複数の質問に答える必要があるため、簡潔で分かりやすい回答を心がけることが重要です。

口述試験の受験票は、筆記試験合格発表後に郵送されます。受験票には試験日時、集合時間、会場の地図などが記載されているので、事前によく確認しておきましょう。当日は時間に余裕を持って会場に到着し、落ち着いて試験に臨むことが大切です。

口述試験の合格率と対策

口述試験の合格率は非常に高く、例年95〜98%程度です。筆記試験を突破した受験者であれば、基本的な知識は十分に身についているため、よほどのことがない限り不合格にはなりません。ただし、全く準備をせずに臨むと、緊張で頭が真っ白になり、答えられない可能性もあります。

口述試験の対策としては、まず筆記試験の復習が重要です。特に記述式で出題された事例や、択一式で間違えた問題を見直し、なぜその答えになるのかを説明できるようにしておきます。また、不動産登記法の条文や土地家屋調査士法の重要部分を音読し、口頭で説明する練習をしておくと効果的です。

予備校では口述試験対策講座が開講されるので、参加することをおすすめします。模擬面接を通じて、質問に答える練習ができ、他の受験者と情報交換もできます。また、過去の口述試験で質問された内容をまとめた資料も配布されるため、効率的に準備を進められます。

土地家屋調査士試験の合格基準と合格点

土地家屋調査士試験の合格基準を理解することは、目標設定と学習計画の立案に役立ちます。毎年変動する基準点の推移を把握し、安定して合格ラインを超える実力を養成することが重要です。

土地家屋調査士試験の合格基準点

土地家屋調査士試験の合格は、総合得点と基準点の両方をクリアする必要があります。総合得点は午前の部と午後の部を合わせた得点（午前の部免除者は午後の部のみ）で、上位約400名が合格する相対評価方式が採用されています。

基準点は、択一式と記述式のそれぞれに設定されます。午後の部を例にすると、択一式の基準点は例年40〜50点（100点満点中）、記述式の基準点は30〜40点（100点満点中）程度です。総合得点が高くても、どちらか一方の基準点に達しない場合は不合格となります。

合格基準点は、その年の試験の難易度や受験者の得点分布によって調整されます。難しい年は基準点が下がり、易しい年は基準点が上がる傾向にあります。そのため、過去の合格基準点はあくまで参考値として捉え、どのような難易度でも対応できる実力をつけることが重要です。

択一式・記述式の基準点推移

過去5年間の午後の部の基準点推移を見ると、択一式は38〜50点、記述式は30〜40点の範囲で推移しています。2023年度は択一式が42点、記述式が35.5点でしたが、2022年度は択一式が45点、記述式が32.5点というように、年度によって変動があります。

この推移から分かることは、択一式では100点満点中40点台後半、つまり50%前後の正答率が求められるということです。記述式では100点満点中30点台、つまり30〜40%程度の得点が基準となっています。記述式の基準点が低めに設定されるのは、完璧な答案を作成することが難しいためです。

受験対策としては、択一式で確実に50点以上、記述式で40点以上を目標に学習を進めることをおすすめします。基準点ギリギリを狙うのではなく、余裕を持って基準点を超えられる実力をつけることで、試験当日の緊張やミスにも対応できます。

総合得点による合格者決定方法

土地家屋調査士試験の最終的な合格者は、総合得点の上位者から決定されます。合格者数は例年400名前後で、受験者数に対する合格率は9〜11%程度です。この相対評価方式により、その年の受験者の実力に応じて合格ラインが決まります。

午前の部免除者と午前の部受験者では、評価方法が異なります。午前の部受験者は400点満点中の総合得点で、午前の部免除者は午後の部200点満点を400点満点に換算した得点で評価されます。ただし、実質的には午前の部免除者の方が合格率が高い傾向にあります。

総合得点の目安としては、午前の部受験者で280〜320点、午後の部のみの受験者で140〜160点程度が合格ラインとなっています。ただし、これは年度によって変動するため、過去問演習で常に7〜8割以上の得点を安定して取れる実力をつけることを目標にしましょう。

土地家屋調査士試験の申込方法と手続き

土地家屋調査士試験を受験するためには、期限内に正確な手続きを行う必要があります。申込方法を事前に理解し、必要書類を準備しておくことで、スムーズに受験申請ができます。

土地家屋調査士試験の申込期間

土地家屋調査士試験の受験申請期間は、例年5月下旬から6月上旬の約2週間です。正確な期間は毎年4月から5月にかけて法務省から公表されるため、受験を予定している方は法務省のウェブサイトや受験地の法務局の情報を定期的に確認する必要があります。

申請期間は短いため、期間が始まったらすぐに申請できるよう、事前に必要書類を準備しておくことをおすすめします。特に午前の部免除を希望する方は、資格証明書のコピーを事前に用意しておきましょう。申請期間を過ぎると一切受け付けてもらえないため、十分な注意が必要です。

受験申請は、受験を希望する試験地を管轄する法務局または地方法務局に提出します。郵送での申請も可能ですが、期間内必着となるため、余裕を持って送付するか、直接窓口に提出することをおすすめします。

受験申請書の入手方法と提出先

受験申請書は、受験を希望する試験地を管轄する法務局または地方法務局で配布されます。配布開始時期は例年5月上旬からで、各法務局の窓口で無料で入手できます。また、郵送での請求も可能で、返信用封筒を同封して請求すれば、郵送で受験申請書を受け取ることができます。

一部の法務局では、ウェブサイトから受験申請書をダウンロードできる場合もあります。ただし、正式な様式であることを確認してから使用してください。受験申請書には、氏名、生年月日、住所、学歴、職歴などを記入し、写真を貼付します。

提出先は、受験を希望する試験地を管轄する法務局です。例えば、東京で受験する場合は東京法務局、大阪で受験する場合は大阪法務局に提出します。提出方法は窓口持参または郵送で、郵送の場合は簡易書留など配達記録が残る方法を利用することが推奨されます。

受験料と必要書類

土地家屋調査士試験の受験料は8,300円です。受験申請書と一緒に、収入印紙を貼付して提出します。収入印紙は郵便局や法務局で購入できます。金額を間違えないよう注意し、受験申請書の指定箇所にしっかりと貼付してください。

必要書類は、受験申請書、写真（縦5cm×横5cm、無帽・正面・上半身、申請前6ヶ月以内に撮影したもの）、午前の部免除を希望する場合は資格証明書のコピーです。写真は受験票と合格証書に使用されるため、きちんとした写真を用意しましょう。

受験申請書には、氏名、生年月日、住所、連絡先などを正確に記入します。誤字や記入漏れがあると受理されない場合があるため、提出前によく確認してください。また、受験票の送付先住所も明記する必要があるため、確実に受け取れる住所を記入しましょう。

土地家屋調査士試験の難易度と合格率

土地家屋調査士試験は難関資格の一つとして知られており、その難易度と合格率を正確に理解することは、受験を決断する上で重要な情報となります。土地家屋調査士試験の難易度について、他資格との詳しい比較や合格への具体的な道筋を知りたい方は、専門記事を参照してください。

土地家屋調査士試験の合格率推移

土地家屋調査士試験の合格率は、例年9〜11%程度で推移しています。過去10年間のデータを見ると、2014年度が8.82%、2018年度が9.54%、2023年度が10.47%というように、概ね9〜10%台を維持しています。この合格率の低さが、土地家屋調査士試験を難関資格たらしめている要因の一つです。

合格率が低い理由として、試験の難易度の高さと、相対評価方式による合格者数の制限が挙げられます。土地家屋調査士試験は、測量技術と法律知識の両方を高いレベルで求められるため、どちらか一方だけでは合格できません。また、合格者数が400名前後に抑えられているため、受験者全体のレベルが上がっても合格率は大きく変動しません。

ただし、午前の部免除者に限定すると、合格率はやや高くなる傾向があります。測量士補を取得してから受験する戦略が主流となっているのは、この合格率の差も理由の一つです。計画的に準備を進め、適切な学習方法を選択すれば、決して不可能な試験ではありません。

土地家屋調査士試験が難関資格である理由

土地家屋調査士試験が難関資格とされる理由は、複数の要因が重なっています。第一に、試験範囲の広さです。測量計算、作図、民法、不動産登記法、土地家屋調査士法と、多岐にわたる知識とスキルを習得する必要があります。

第二に、記述式問題の難易度の高さです。特に午後の部の書式問題は、実務レベルの正確さが求められ、時間内に完成させることが困難です。登記申請書の作成、地積測量図の作成、建物図面の作成と、複数の課題を限られた時間でこなす必要があります。

第三に、基準点制度の存在です。択一式と記述式の両方で基準点をクリアしなければならないため、苦手分野を作らずにバランスよく実力をつける必要があります。得意科目で高得点を取っても、苦手科目で基準点に達しなければ不合格となる厳しさがあります。

他の資格試験との難易度比較

土地家屋調査士試験の難易度を他の資格試験と比較すると、司法書士試験よりはやや易しく、行政書士試験よりは難しいというのが一般的な評価です。合格率だけで見ると、司法書士試験が3〜4%、土地家屋調査士試験が9〜11%、行政書士試験が10〜15%程度です。

必要な学習時間で比較すると、土地家屋調査士試験は1,000〜1,500時間程度とされています。司法書士試験は3,000時間以上、行政書士試験は600〜1,000時間程度が目安なので、土地家屋調査士試験は中程度の難易度と位置づけられます。

ただし、測量や作図という実技的要素が含まれる点で、純粋な法律系資格とは異なる難しさがあります。法律の知識だけでなく、計算力、作図技術、空間認識能力も求められるため、文系・理系の両方の素養が必要とされる総合的な試験といえるでしょう。

土地家屋調査士試験の難易度に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士試験の難易度｜他資格との比較と合格への道筋

土地家屋調査士試験に関連するよくある質問（FAQ）

土地家屋調査士試験について、受験を検討している方からよく寄せられる質問をまとめました。これらの情報を参考に、受験準備を進めてください。

土地家屋調査士試験は年に何回実施されますか？

土地家屋調査士試験は年に1回のみ実施されます。筆記試験は毎年10月の第3日曜日に行われ、筆記試験合格者を対象とした口述試験が翌年1月中旬に実施されます。受験機会が限られているため、計画的な準備と万全の体調管理が重要です。もし不合格となった場合は、翌年の試験まで待つ必要があります。

土地家屋調査士試験に受験資格はありますか？

土地家屋調査士試験には特別な受験資格はありません。年齢、学歴、実務経験などの制限が一切なく、受験を希望する方であれば誰でも挑戦できます。高校生から社会人、シニア世代まで、幅広い年齢層の方が受験しています。国籍による制限もないため、外国籍の方も受験可能です。

土地家屋調査士試験の午前の部は免除できますか？

測量士、測量士補、一級建築士、二級建築士の資格を持っている方は、午前の部を免除できます。多くの受験者が測量士補を先に取得してから土地家屋調査士試験に臨む戦略を取っています。土地家屋調査士試験の午前の部免除制度について、詳しい条件や手続き方法は専門記事で確認できます。

土地家屋調査士試験の合格率はどのくらいですか？

土地家屋調査士試験の合格率は例年9〜11%程度で推移しています。2023年度の合格率は10.47%でした。合格者数は毎年400名前後で、受験者数は4,000名前後です。午前の部免除者の方が合格率がやや高い傾向にあるため、測量士補を先に取得する戦略が有効です。

土地家屋調査士試験の勉強時間はどのくらい必要ですか？

土地家屋調査士試験に必要な勉強時間は、午前の部免除者で1,000〜1,500時間、午前の部も受験する場合は1,500〜2,000時間程度が目安です。働きながら1日2〜3時間の学習を確保すると、1〜2年での合格を目指せます。効率的な学習計画の立て方や時間管理術については、土地家屋調査士の勉強時間の記事で詳しく解説しています。

土地家屋調査士試験は独学でも合格できますか？

土地家屋調査士試験は独学でも合格可能ですが、予備校や通信講座を利用する方が効率的です。特に記述式の書式問題は、独学では対策が難しい部分があります。独学で挑戦する場合は、過去問を徹底的に分析し、作図技術を独自に磨く必要があります。土地家屋調査士の独学に関する詳しい情報は、専門記事を参照してください。

土地家屋調査士試験の口述試験は難しいですか？

土地家屋調査士試験の口述試験は、筆記試験に比べて合格率が非常に高く、例年95〜98%程度です。筆記試験を突破した方であれば、基本的な知識は十分に身についているため、適切な準備をすれば合格できます。ただし、全く準備をせずに臨むと、緊張で答えられない可能性もあるため、筆記試験の復習と口述試験対策講座の受講をおすすめします。

まとめ：土地家屋調査士試験の制度と対策

本記事では、土地家屋調査士試験の制度、日程、科目について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

1. 年1回の試験機会：土地家屋調査士試験は毎年10月第3日曜日に筆記試験が実施され、年1回のみの受験機会となっています。受験申請は5月下旬から6月上旬の約2週間で、計画的な準備と確実な申請手続きが必要です。
2. 午前の部免除制度の活用：測量士補などの資格を活用して午前の部を免除することで、午後の部の学習に集中でき、合格率の向上につながります。多くの合格者が測量士補を先に取得してから土地家屋調査士試験に臨む戦略を取っています。
3. 総合的な学習が必要：土地家屋調査士試験は、測量技術、法律知識、実務能力を総合的に評価する試験です。択一式と記述式の両方で基準点をクリアする必要があるため、バランスよく各分野の実力を養成することが合格への近道となります。

土地家屋調査士試験の制度を正しく理解できたら、次は具体的な学習計画を立てましょう。土地家屋調査士の勉強時間と土地家屋調査士の勉強法を参考に、自分に合った学習スタイルを見つけることをおすすめします。

本記事を通じて、土地家屋調査士試験の全体像と試験制度、年間スケジュール、各科目の出題形式を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、土地家屋調査士試験合格に向けて計画的な準備を始めましょう。