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土地家屋調査士の仕事内容とは?業務範囲・働き方・キャリアパスを詳しく解説

土地家屋調査士の仕事内容について知りたいあなたへ。「具体的にどんな仕事をするのか」「どのような働き方ができるのか」という疑問は、業務の全体像を理解することで解決できます。

本記事では、土地家屋調査士の5つの主要業務と独占業務、調査・測量から登記申請までの業務の流れ、1日のスケジュールと働き方の特徴について、実際の業務内容を交えて詳しく解説します。この情報をもとに、土地家屋調査士としてのキャリアを具体的にイメージし、資格取得に向けた一歩を踏み出しましょう。

この記事を読むとわかること
  • 土地家屋調査士の5つの主要業務と独占業務の内容
  • 受託から登記申請までの具体的な業務の流れ
  • 調査・測量・境界立会いなど実務の詳細
  • 1日の仕事の流れと内勤・外勤のバランス
  • キャリアパスと必要なスキル
押さえておきたい3つのポイント
  1. 表示に関する登記の専門家:土地家屋調査士は不動産の物理的状況を登記する「表示に関する登記」を専門とし、この業務は土地家屋調査士の独占業務として法律で定められています。
  2. 調査・測量・登記の3つが柱:現地での測量作業、法務局や役所での資料調査、登記申請書類の作成という3つの業務を組み合わせて、内勤と外勤をバランスよく行います。
  3. 補助者からキャリアスタート:多くの土地家屋調査士は補助者として実務経験を積みながら資格取得を目指し、合格後は勤務調査士として経験を重ねた後、独立開業する道を選ぶことができます。

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目次

土地家屋調査士の仕事内容とは

土地家屋調査士は、不動産の物理的な現況を正確に調査・測量し、登記に反映させる専門家です。土地や建物の形状、面積、位置などを明確にすることで、不動産取引の安全性を確保し、所有者の権利を守る重要な役割を担っています。

土地家屋調査士とは何かを理解するには、まずその業務内容を知ることが第一歩です。土地家屋調査士の仕事は、大きく分けて調査業務、測量業務、登記申請業務の3つに分類されます。これらの業務を通じて、不動産の正確な情報を法的に証明する書類を作成し、法務局に登記申請を行います。

土地家屋調査士の5つの主要業務

土地家屋調査士の業務は、以下の5つの主要な分野に分かれています。

第一に、不動産の調査業務です。法務局や市役所などで登記記録や地図、図面などの資料を調査し、対象不動産の権利関係や過去の経緯を確認します。この段階で、隣接地との境界に関する情報や、過去の測量記録なども詳しく調べます。

第二に、現地での測量業務です。トータルステーションやGPS測量機などの専門機器を使用して、土地の形状や面積、建物の位置や大きさをミリ単位の精度で測量します。この測量データが、後の登記申請の基礎となる重要な情報です。

第三に、境界の確定業務です。隣接する土地の所有者と立ち会いを行い、境界の位置について合意を得ます。境界標を設置し、境界確認書を取り交わすことで、将来的なトラブルを未然に防ぎます。

第四に、図面の作成業務です。測量した結果をもとに、地積測量図や建物図面、各階平面図などの正確な図面をCADソフトを使って作成します。これらの図面は登記申請時に法務局に提出する重要な書類となります。

第五に、登記申請業務です。作成した図面と申請書類を法務局に提出し、不動産の表示に関する登記を申請します。申請後は法務局との連絡調整を行い、登記が完了するまでの手続きを管理します。

表示に関する登記を専門とする職種

土地家屋調査士が専門とするのは「表示に関する登記」です。不動産登記は大きく「表示に関する登記」と「権利に関する登記」の2つに分かれており、土地家屋調査士は前者を、司法書士は後者を担当します。

表示に関する登記とは、不動産の物理的な現況を記録する登記のことです。具体的には、土地の所在、地番、地目、地積、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが該当します。例えば、土地を分割する分筆登記や、複数の土地を合併する合筆登記、新築建物の表題登記などが代表的な業務です。

一方、権利に関する登記は、所有権や抵当権などの権利関係を記録するもので、司法書士の専門分野です。土地家屋調査士と司法書士は、不動産登記という同じフィールドで活動しながらも、それぞれ異なる専門性を持って業務を行っています。

土地家屋調査士の独占業務

土地家屋調査士には、法律で定められた独占業務があります。これは土地家屋調査士法第3条に規定されており、資格を持たない者が行うことは禁止されています。

独占業務の中心となるのは、不動産の表示に関する登記の申請手続きを代理することです。依頼者に代わって登記申請書を作成し、法務局に申請する業務は、土地家屋調査士だけに認められた専門業務です。

また、登記申請に必要な調査や測量を行うことも、実質的に土地家屋調査士の専門領域となっています。特に、境界確定に関わる測量や、地積測量図の作成などは、高度な専門知識と技術が必要とされる業務です。

さらに、筆界特定の手続きについて代理人として活動することも、土地家屋調査士の独占業務です。筆界特定制度は、土地の境界が不明確な場合に、法務局の筆界特定登記官が公的に境界を特定する制度であり、この手続きの代理は土地家屋調査士だけが行えます。

加えて、土地家屋調査士会連合会が指定する研修を修了することで、境界問題に関するADR(裁判外紛争解決手続)の代理権を取得できます。この特定の研修を修了した認定土地家屋調査士は、境界に関する民事紛争について、裁判によらずに解決する手続きを代理することができます。

土地家屋調査士の業務の流れ

土地家屋調査士の業務は、依頼者からの相談を受けてから登記完了までの一連の流れがあります。各段階で専門的な知識と技術を駆使しながら、正確かつ丁寧に業務を進めていくことが求められます。

受託・委任契約から資料調査まで

業務の第一段階は、依頼者との面談から始まります。依頼者が抱える問題や要望を詳しくヒアリングし、どのような登記が必要かを判断します。例えば、土地を分割して売却したい場合は分筆登記、新築した建物を登記する場合は表題登記というように、状況に応じた業務内容を提案します。

業務内容と報酬額について合意が得られたら、委任契約を締結します。この際、業務の範囲、費用、スケジュールなどを明確に書面で取り交わすことで、後々のトラブルを防ぎます。委任状や本人確認書類などの必要書類も、この段階で受領します。

契約締結後、まず着手するのが資料調査です。法務局で登記事項証明書や公図、地積測量図などの登記関係書類を取得し、対象不動産の現在の登記状況を確認します。同時に、市役所や町村役場で固定資産税の課税台帳、道路台帳、都市計画図なども調査します。

これらの資料調査により、土地の権利関係、過去の測量履歴、隣接地の状況、法的な制限などを把握します。この情報は、現地調査の計画を立てる際の重要な基礎資料となります。また、過去に境界トラブルがあった場合や、測量図に不備がある場合など、注意すべきポイントも事前に確認できます。

現地調査と測量の実施

資料調査で得た情報をもとに、現地での調査と測量を実施します。現地調査では、まず対象不動産の実際の状況を目視で確認します。土地の形状、境界標の有無、隣接地との高低差、建物の配置などを詳細に観察し、資料と現況に相違がないかをチェックします。

測量作業では、トータルステーションやGPS測量機などの精密機器を使用します。トータルステーションは、距離と角度を同時に測定できる測量機器で、ミリ単位の高精度な測量が可能です。測量に際しては、既存の基準点や隣地の境界標を基準として、対象地の座標を正確に測定していきます。

建物の測量では、建物の配置、形状、高さ、各階の床面積などを測定します。外壁の位置を正確に測り、建物図面や各階平面図を作成するための基礎データを収集します。屋根裏や地下室なども含めて、建物の全体構造を把握することが重要です。

測量作業は天候にも左右されます。雨天時には精密機器が使用できないため、晴天の日を選んで実施します。また、早朝や夕方など、隣接地の所有者が在宅している時間帯を選ぶこともあります。1つの案件で複数回の現地調査が必要になることも珍しくありません。

境界立会いと境界確定

測量データが揃ったら、隣接地の所有者と境界立会いを行います。境界立会いは、隣接する土地の所有者全員に立ち会ってもらい、境界線の位置について合意を得る重要な手続きです。

立会いの前には、隣接地の所有者に連絡を取り、日程調整を行います。所有者が遠方に住んでいる場合や、相続で所有者が複数いる場合など、調整に時間がかかることもあります。立会いでは、測量結果をもとに境界の位置を説明し、関係者全員の同意を得ます。

境界の位置について合意が得られたら、コンクリート杭や金属プレートなどの境界標を設置します。境界標は、将来にわたって境界の位置を明確にするための重要な目印です。設置後は、隣接地の所有者と境界確認書を取り交わし、境界が確定したことを文書で残します。

しかし、境界立会いがスムーズに進まないケースもあります。隣接地の所有者と連絡が取れない場合、境界の位置について意見が対立する場合、過去の経緯から関係が悪化している場合などです。このような場合には、筆界特定制度の利用やADRでの解決を提案することもあります。

図面作成から登記申請・引渡しまで

測量と境界確定が完了したら、事務所に戻ってCADソフトを使用し、地積測量図や建物図面、各階平面図などの正確な図面を作成します。これらの図面は法務局に提出する公的な書類となるため、作成には細心の注意を払います。

地積測量図には、測量した土地の形状、面積、境界標の位置、測量の方法などを記載します。建物図面には、敷地内での建物の配置と形状を、各階平面図には各階の床面積と間取りを記載します。これらの図面は、不動産登記規則で定められた様式に従って作成する必要があります。

図面が完成したら、登記申請書を作成します。申請書には、登記の目的、申請人の情報、不動産の表示、添付書類などを正確に記載します。建物の表題登記であれば建築確認済証や検査済証、土地の分筆登記であれば境界確認書や地積測量図などを添付します。

申請書と添付書類が揃ったら、法務局に登記申請を行います。申請後、法務局の登記官による審査が行われ、補正が必要な場合には連絡が入ります。補正事項があれば速やかに対応し、登記が完了するまで管理します。

登記が完了したら、登記事項証明書を取得し、依頼者に成果物を引き渡します。境界確認書、測量図、図面のデータ、登記完了書類などを整理してファイルにまとめ、今後の参考資料として保管できる形で提供します。これで一連の業務が完了となります。

土地家屋調査士の調査・測量業務

調査・測量業務は、土地家屋調査士の業務の中核を成す重要な分野です。正確な測量データがなければ、適切な登記申請を行うことができません。この業務では、法的な知識と測量技術の両方が求められます。

土地家屋調査士が行う調査の詳細

土地家屋調査士が行う調査業務は、多岐にわたります。まず、法務局での調査が基本となります。登記事項証明書で所有者や地目、地積などの基本情報を確認し、公図で土地の位置関係を把握します。地積測量図があれば、過去の測量データや境界標の位置も確認できます。

市役所や町村役場での調査も重要です。固定資産税の課税台帳で課税地目や評価額を確認し、道路台帳で接道状況を調べます。都市計画図では、用途地域や建ぺい率、容積率などの法的制限を確認します。これらの情報は、土地の利用可能性を判断する際に欠かせません。

現地調査では、資料では分からない実際の状況を確認します。境界標の有無と状態、隣接地との高低差、建物の配置、道路との接し方、給排水設備の位置などを詳しく観察します。周辺環境や近隣の建物の状況も、将来的な問題を予測するために重要な情報です。

聞き取り調査も大切な業務です。依頼者から物件の購入経緯や過去の工事履歴を聞き、隣接地の所有者からは境界に関する認識を確認します。地元の古くからの住民に話を聞くことで、昔の境界の位置や土地の変遷について貴重な情報が得られることもあります。

測量に使用する機器と技術

土地家屋調査士が使用する測量機器は、高度な精密機器です。最も基本的な機器はトータルステーションで、レーザー光を使って距離と角度を同時に測定します。測定データは自動的に記録され、後でコンピューターで処理することができます。

GPS測量機も近年広く使用されています。人工衛星からの信号を受信して位置を測定するシステムで、広範囲の測量や、基準点が遠い場合に有効です。RTK-GPS(リアルタイムキネマティックGPS)を使えば、センチメートル単位の高精度な測量が可能です。

レベル(水準儀)は、高低差を測定する機器です。土地の傾斜や、建物の基礎の高さを測定する際に使用します。デジタルレベルでは、測定値を自動的に記録できるため、作業効率が向上しています。

測距儀(レーザー距離計)は、建物内部の測量や、狭い場所での測定に便利な携帯型の機器です。レーザー光を対象物に当てて距離を測定するもので、1人でも迅速に測定作業ができます。

これらの測量機器を使いこなすには、測量の原理を理解し、適切な測量方法を選択する技術が必要です。また、測量誤差の発生原因を理解し、誤差を最小限に抑える工夫も求められます。気温や気圧、大気の状態なども測定精度に影響を与えるため、条件に応じた補正を行います。

ミリ単位の精度が求められる測量作業

土地家屋調査士の測量作業では、ミリ単位の精度が求められます。土地の面積は1平方メートル単位まで正確に測定する必要があり、わずかな測量誤差が大きな面積の差となって現れます。100平方メートルの土地であれば、数センチの誤差が数千円から数万円の資産価値の差につながることもあります。

境界標の設置位置も、ミリ単位で正確である必要があります。一度設置した境界標は、将来にわたって境界の位置を示す基準となります。設置位置がわずかにずれていても、隣接地との境界トラブルの原因となる可能性があります。

建物の測量でも同様の精度が求められます。建物の配置や床面積は、建築基準法や都市計画法の規制に適合しているかを判断する重要な情報です。建ぺい率や容積率の計算では、床面積の小数点以下まで正確に算出する必要があります。

このような高精度の測量を実現するため、土地家屋調査士は測量機器の定期的な点検と校正を行います。機器の精度が保たれていることを確認し、必要に応じて調整を行います。また、複数の方法で測定を行い、測定結果を相互にチェックすることで、測量誤差を発見し修正します。

測量作業では、基準点の選定も重要です。既知の座標を持つ公共基準点や、過去の測量で設置された境界標を基準として測量を行うことで、測量精度を確保します。基準点からの距離が遠くなるほど誤差が累積するため、適切な位置に基準点を設けることが精度向上の鍵となります。

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土地家屋調査士の登記申請業務

登記申請業務は、調査・測量の成果を法的な記録として確定させる重要な業務です。土地家屋調査士は、不動産の表示に関するあらゆる登記について、申請書類の作成から申請手続きまでを行います。

土地家屋調査士と司法書士の違いを理解することは、登記業務の範囲を明確にする上で重要です。土地家屋調査士は表示に関する登記を、司法書士は権利に関する登記を担当し、両者が協力して不動産登記を完成させます。

土地の表示に関する登記の種類

土地の表示に関する登記には、様々な種類があります。最も基本的なのは土地表題登記です。これは、まだ登記されていない土地について、初めて登記記録を作成する登記です。公有地の払い下げを受けた場合や、海や川の埋め立てで新たに土地ができた場合などに必要となります。

分筆登記は、1つの土地を2つ以上に分割する登記です。土地の一部を売却する場合や、相続で土地を分ける場合、道路用地として一部を提供する場合などに行います。分筆登記では、分割後のそれぞれの土地について地積測量図を作成し、境界を明確にします。

合筆登記は、複数の土地を1つにまとめる登記です。隣接する複数の土地を所有している場合に、管理や活用を容易にするために行います。ただし、合筆できる土地には条件があり、地目が異なる土地や、抵当権が設定されている土地は合筆できません。

地目変更登記は、土地の用途が変わった場合に行う登記です。例えば、農地を宅地に変更した場合、山林を原野に変更した場合などに必要です。地目は23種類が定められており、土地の主な用途によって判断します。

地積更正登記は、登記されている土地の面積が実際の面積と異なる場合に、正しい面積に更正する登記です。古い測量で登記された土地や、公図が不正確な地域の土地では、実測と登記面積に大きな差があることがあります。

建物の表示に関する登記の種類

建物の表示に関する登記も多様です。建物表題登記は、新築した建物について、初めて登記記録を作成する登記です。建物を新築した所有者は、完成から1ヶ月以内に表題登記を申請する義務があります。

建物表題変更登記は、建物の物理的な状況に変更があった場合に行う登記です。増築して床面積が増えた場合、一部を取り壊して床面積が減った場合、用途が変更された場合などに必要です。変更があった日から1ヶ月以内に申請する義務があります。

建物滅失登記は、建物を取り壊したり、火災などで消失したりした場合に行う登記です。登記記録を閉鎖する手続きで、取り壊しから1ヶ月以内に申請する義務があります。建物がなくなったにもかかわらず登記が残っていると、固定資産税が課税され続けることがあります。

区分建物の表題登記は、マンションなどの区分所有建物について行う登記です。敷地権の表示や、専有部分の床面積、共用部分の持分などを登記します。区分建物は通常の建物とは登記の方法が異なり、より複雑な手続きが必要です。

建物合体登記は、複数の建物を物理的に接続して1つの建物にした場合に行う登記です。逆に、建物分割登記は、1つの建物を物理的に分割して複数の建物にした場合の登記です。

地積測量図・建物図面の作成

地積測量図は、土地の表示に関する登記を申請する際に添付する図面です。土地の形状、面積、境界標の位置、測量の方法などが記載され、登記完了後は法務局に永久保存されます。将来、その土地の境界を確認する際の重要な資料となります。

地積測量図の作成では、まず測量の基準点を明示します。国家基準点や公共基準点など、座標が明確な点を基準として測量を行ったことを示します。次に、境界点の座標を記載し、各境界点の間の距離と方向を示します。

土地の面積は、座標から計算した面積を平方メートル単位で、小数点以下2桁まで記載します。境界標の種類(コンクリート杭、金属プレート、石杭など)も図面上に表示します。測量年月日や測量者の氏名も記録として残します。

建物図面は、敷地内での建物の配置を示す図面です。敷地の形状と建物の位置関係を正確に表現し、建物が敷地のどの位置に建っているかを明確にします。建ぺい率の計算や、建築基準法の規制に適合しているかを確認する際の基礎資料となります。

各階平面図は、建物の各階の床面積と間取りを示す図面です。各部屋の用途と面積を記載し、階段や廊下などの共用部分も明示します。床面積の計算方法は不動産登記規則で定められており、壁の中心線で囲まれた部分を測定します。

これらの図面はCADソフトを使用して作成します。手書きでも作成できますが、正確性と効率性の観点から、現在ではほとんどの土地家屋調査士がCADを使用しています。作成した図面は、不動産登記規則で定められた様式に適合している必要があり、縮尺や表示方法にも細かい規定があります。

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土地家屋調査士の境界に関する業務

境界に関する業務は、土地家屋調査士の専門性が最も発揮される分野です。土地の境界は、所有者にとって極めて重要な財産の範囲を示すものであり、その確定には高度な専門知識と丁寧な対応が求められます。

境界立会いの進め方

境界立会いは、隣接地の所有者と現地で会い、境界の位置について確認し合う手続きです。土地家屋調査士が間に入って調整役を務めることで、円滑に境界を確定することができます。

立会いの準備として、まず隣接地の所有者全員に連絡を取ります。登記簿で所有者の氏名と住所を調べ、手紙や電話で立会いの趣旨を説明し、日程調整を行います。所有者が多数いる場合や、遠方に住んでいる場合は、調整に時間がかかることもあります。

立会い当日は、測量した結果をもとに境界の位置を説明します。過去の測量図や、既存の境界標の位置、隣接地との関係などを示しながら、境界線がどこにあるべきかを提示します。専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明することが大切です。

隣接地の所有者から質問や意見があれば、丁寧に回答します。過去の経緯や、測量の根拠について説明を求められることもあります。時には、所有者が考えていた境界の位置と、測量結果が異なることもあり、その場合は根拠を示して理解を求めます。

合意が得られたら、境界標を設置します。コンクリート杭や金属プレートなど、耐久性のある境界標を地中に埋設し、将来にわたって境界の位置が分かるようにします。設置後は、境界確認書に全員が署名・押印し、境界が確定したことを文書で残します。

立会いが難航する場合もあります。隣接地の所有者と連絡が取れない、境界の位置について意見が対立する、過去のトラブルから関係が悪化しているなどのケースです。このような場合は、粘り強く交渉を続けるか、筆界特定制度やADRの利用を提案することもあります。

筆界特定手続きの代理

筆界特定制度は、土地の所有者の申請により、法務局の筆界特定登記官が土地の筆界(境界)の位置を公的に特定する制度です。隣接地の所有者と境界について合意できない場合の解決手段として、平成18年に創設されました。

筆界特定の手続きは、法務局に申請書を提出することから始まります。申請には、対象となる土地の情報、隣接地の情報、申請の理由などを記載します。土地家屋調査士は、この申請手続きの代理人として活動することができます。

申請後、法務局は筆界調査委員を選任し、現地調査や測量を行います。過去の公図や測量図、航空写真なども参考にしながら、筆界の位置を特定していきます。土地家屋調査士は代理人として、筆界調査委員に対して意見を述べたり、資料を提出したりします。

筆界特定の結果は、筆界特定書として申請者に通知されます。この結果には法的な拘束力はありませんが、公的機関が判断した境界として、実務上は尊重されることが多いです。筆界特定の結果に基づいて、改めて隣接地の所有者と境界確認書を取り交わすこともあります。

筆界特定制度の利点は、裁判に比べて期間が短く、費用も安いことです。通常は半年から1年程度で結果が出ます。ただし、筆界特定は境界の位置を特定するだけで、所有権の範囲を確定するものではありません。所有権について争いがある場合は、最終的には裁判で解決する必要があります。

ADR(裁判外紛争解決手続)での役割

ADR(Alternative Dispute Resolution)は、裁判によらずに紛争を解決する手続きの総称です。土地家屋調査士会では、境界問題に特化したADRセンターを設置しており、境界紛争の解決に取り組んでいます。

境界ADRでは、専門的な研修を修了した認定土地家屋調査士が代理人として活動できます。認定土地家屋調査士になるには、土地家屋調査士会連合会が実施する特別研修を受講し、試験に合格する必要があります。

ADRの手続きは、当事者の一方または双方が申立てを行うことから始まります。ADRセンターは、調停委員を選任し、当事者双方の言い分を聞きながら、話し合いによる解決を目指します。調停委員には、弁護士や土地家屋調査士など、専門的な知識を持つ者が選ばれます。

認定土地家屋調査士は、依頼者の代理人として、調停の場で意見を述べたり、資料を提出したりします。測量データや過去の資料をもとに、境界の位置について主張を展開します。相手方との交渉や、調停案の検討なども代理人の重要な役割です。

調停が成立すると、調停合意書が作成されます。この合意書には法的な効力があり、当事者は合意内容に従う義務があります。合意内容に基づいて境界標を設置し、境界確認書を取り交わすことで、境界問題は最終的に解決します。

ADRの利点は、裁判に比べて柔軟な解決が可能なことです。法的な白黒をつけるだけでなく、当事者双方が納得できる解決策を探ることができます。また、非公開で行われるため、プライバシーも守られます。期間も裁判より短く、費用も比較的安いという利点があります。

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土地家屋調査士の1日の仕事の流れ

土地家屋調査士の1日は、内勤と外勤を組み合わせながら、様々な業務を並行して進めていきます。案件の進捗状況や天候、立会いの予定などによって、日々のスケジュールは大きく変わります。

午前中の業務(内勤・外勤)

土地家屋調査士の1日は、通常午前8時から9時頃に始まります。まず事務所でメールや郵便物をチェックし、その日の予定を確認します。依頼者からの問い合わせに返信したり、法務局からの連絡事項に対応したりします。

測量作業が予定されている日は、午前中から現地に向かいます。測量機器や図面、資料などを車に積み込み、対象地に移動します。現地では、助手や補助者と協力しながら、測量作業を進めます。境界標の位置を測定し、土地の形状や面積を正確に測ります。

内勤の日は、事務所でCAD作業や書類作成を行います。過去に測量したデータをもとに、地積測量図や建物図面を作成します。CADソフトを使って正確な図面を描き、必要な情報を記入していきます。登記申請書の作成や、依頼者への報告書の準備も午前中の重要な業務です。

法務局や市役所に行く必要がある日は、午前中に訪問します。登記事項証明書や公図などの資料を取得したり、登記申請を行ったりします。窓口の混雑状況を考慮して、開庁直後の時間帯に訪問することが多いです。

午前中に依頼者との面談が予定されている場合もあります。新規の依頼を受ける場合は、依頼内容を詳しくヒアリングし、必要な業務と費用を説明します。既存案件の進捗報告や、成果物の引渡しを行うこともあります。

午後の業務と現地作業

午後は、午前中に続いて測量作業を行うことが多いです。土地の測量は時間がかかるため、1日がかりになることも珍しくありません。複雑な形状の土地や、境界標が多数ある土地では、午後いっぱいかけて測量を続けます。

境界立会いが予定されている日は、隣接地の所有者の都合に合わせて、午後2時から3時頃に開始することが多いです。複数の隣接地の所有者に順番に立ち会ってもらい、それぞれに境界の位置を説明して合意を得ます。1件の立会いに1時間以上かかることもあります。

建物の測量は、午後に行うことが多いです。建物の配置や各階の床面積を測定し、建物図面や各階平面図の作成に必要なデータを収集します。屋内の測量では、依頼者や居住者の立会いが必要なため、相手の都合の良い時間帯を選びます。

現地作業が早く終わった日は、午後から事務所に戻ってデスクワークを行います。測量データをコンピューターに取り込み、整理します。図面作成の続きを行ったり、次の案件の準備をしたりします。

午後遅い時間に、依頼者から電話で相談を受けることもあります。土地の境界について悩んでいる、建物を新築するので登記が必要、土地を売却するので測量をしてほしいなど、様々な相談が寄せられます。内容によっては、後日改めて面談の予定を入れます。

デスクワークと事務処理

外勤が入っていない日は、1日中事務所でデスクワークに集中します。CADを使った図面作成は、細かい作業で集中力が必要なため、まとまった時間を確保して取り組みます。

登記申請書の作成も、重要なデスクワークです。登記の目的や不動産の表示を正確に記載し、添付書類を確認します。申請書に不備があると補正を求められるため、慎重にチェックします。オンライン申請システムを使用する場合は、電子署名や電子証明書の準備も必要です。

依頼者への報告書や見積書、請求書の作成も日常的な事務処理です。業務の進捗状況を分かりやすく報告し、今後の予定を伝えます。費用の内訳を明確に示し、透明性の高い請求を心がけます。

会計処理も重要な業務です。収入や経費を記録し、帳簿を整理します。個人事業主として独立開業している土地家屋調査士は、自ら確定申告の準備を行う必要があります。会計ソフトを使用して、日々の取引を記録します。

研修や勉強会への参加も、土地家屋調査士の継続的な学習の一環です。法改正の情報や新しい測量技術について学び、専門性を維持・向上させます。土地家屋調査士会が主催する研修に参加したり、専門書を読んで勉強したりします。

1日の業務が終わるのは、通常午後6時から7時頃です。ただし、繁忙期や締切が迫っている案件がある時は、夜遅くまで作業を続けることもあります。逆に、外勤が早く終わった日は、午後3時頃には事務所に戻って早めに業務を切り上げることもできます。

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土地家屋調査士の働き方の特徴

土地家屋調査士の働き方には、他の士業とは異なる独特の特徴があります。内勤と外勤のバランス、季節による業務量の変動など、この仕事ならではの働き方を理解することが大切です。

内勤と外勤のバランス

土地家屋調査士の業務は、内勤と外勤がほぼ同じ割合で構成されています。一般的には、週の半分程度を外勤、残りの半分を内勤に充てることが多いです。ただし、案件の内容や進捗状況によって、バランスは大きく変わります。

外勤には、現地での測量作業、境界立会い、法務局や市役所への訪問などが含まれます。測量作業は天候に左右されるため、晴天の日を選んで集中的に行います。夏場は日射しが強く、冬場は寒さが厳しいため、体力的にも負担の大きい作業です。

内勤では、CADを使った図面作成、登記申請書の作成、資料調査、依頼者とのやり取りなどを行います。デスクワークが中心ですが、細かい作業で集中力が必要です。特に、登記申請書や図面の作成は、正確性が求められる緻密な作業です。

外勤と内勤のバランスを上手く取ることが、効率的な業務遂行の鍵となります。雨天の日は測量ができないため、内勤に集中します。逆に、天気の良い日が続く時期は、外勤を優先して進めます。複数の案件を同時進行させながら、柔軟にスケジュールを組み立てます。

個人事務所を経営している土地家屋調査士は、自分で業務のバランスを調整できる自由度があります。外勤が好きな人は測量作業に多くの時間を割き、デスクワークが得意な人は図面作成に集中するなど、自分の適性に合わせた働き方ができます。

フィールドワークとデスクワークの両立

土地家屋調査士の仕事は、フィールドワークとデスクワークの両方が必要な職種です。どちらか一方だけでは業務が成立せず、両方のスキルを身につけることが求められます。

フィールドワークでは、体力と行動力が必要です。測量機器を持って現地を歩き回り、時には傾斜地や雑草の茂った場所でも作業を行います。夏の暑い日や冬の寒い日も、屋外で長時間作業を続けることがあります。天候や地形、季節に応じた対応力も求められます。

現地では、コミュニケーション能力も重要です。境界立会いでは隣接地の所有者と話し合い、合意を得る必要があります。時には、感情的になっている相手を説得したり、複雑な状況を分かりやすく説明したりする能力が求められます。

一方、デスクワークでは、精密な作業と集中力が必要です。CADを使った図面作成では、ミリ単位の精度で正確な図面を描きます。数値の入力ミスや、縮尺の設定間違いがないよう、細心の注意を払います。

登記申請書の作成では、法律知識と正確な文書作成能力が求められます。不動産登記法や不動産登記規則に従って、適切な記載を行います。添付書類の漏れがないかも、入念にチェックします。

デスクワークには、事務処理能力も含まれます。見積書や請求書の作成、会計処理、スケジュール管理など、事務所運営に必要な様々な作業をこなします。個人事務所の経営者は、これらの事務作業も全て自分で行う必要があります。

フィールドワークとデスクワークを両立させるには、時間管理のスキルが重要です。測量に行く日、図面作成に集中する日、事務処理をまとめて行う日など、効率的にスケジュールを組みます。締切が近い案件を優先しながら、他の案件も並行して進めるマルチタスク能力も必要です。

季節や時期による業務の変動

土地家屋調査士の業務量は、季節や時期によって大きく変動します。不動産取引が活発になる時期や、税制との関連で登記需要が高まる時期には、業務が集中します。

春から初夏にかけては、比較的忙しい時期です。3月から4月は年度末で不動産取引が増え、それに伴って測量や登記の依頼が増加します。また、この時期は気候も良く、測量作業に適しているため、冬場に受けた依頼の測量を集中的に行います。

夏場は、測量作業が体力的に厳しい時期です。炎天下での屋外作業は熱中症のリスクもあり、早朝や夕方に作業時間をずらすこともあります。ただし、日照時間が長いため、測量可能な時間帯は多くなります。建物の新築が増える時期でもあり、表題登記の依頼が多くなります。

秋は、春と同様に測量作業に適した季節です。気候が安定しており、屋外での作業がしやすくなります。不動産取引も活発になる時期で、土地の分筆や売買に伴う測量の依頼が増えます。

冬場は、寒さや降雪のため、測量作業が難しくなる地域があります。特に、積雪地域では冬季は測量が困難なため、春になるまで測量を延期することもあります。一方で、デスクワークに集中できる時期でもあり、図面作成や登記申請の準備を進めます。

年末から年明けにかけては、税制の影響を受けた業務が増えます。相続税の節税対策として、年内に土地の分筆や贈与を行いたいという依頼が12月に集中することがあります。また、1月から3月にかけては、確定申告に向けて前年の取引を整理するための登記が増えます。

建築業界の動向も、土地家屋調査士の業務に影響します。住宅着工件数が増えると、建物の表題登記の依頼が増加します。逆に、不動産市況が低迷すると、取引に伴う測量や登記の需要も減少します。

このような業務の変動に対応するため、土地家屋調査士は繁忙期と閑散期の差を見越して、仕事を計画的に進めます。閑散期に研修や勉強会に参加したり、新しい営業活動を行ったりすることで、年間を通じて安定した収入を確保する工夫をしています。

土地家屋調査士の働き方に関してもっと詳しい記事はこちら
土地家屋調査士の年収は?平均給与・開業・勤務別の収入を徹底分析

土地家屋調査士のキャリアパスと働き方

土地家屋調査士のキャリアには、いくつかの道筋があります。未経験から始める場合でも、段階的にスキルを身につけながら、最終的には独立開業を目指すことができます。

土地家屋調査士になるには、まず資格試験に合格することが必要ですが、実務経験を積みながら資格取得を目指すルートが一般的です。多くの土地家屋調査士が、補助者として働きながら試験勉強を続け、合格後に本格的なキャリアをスタートさせています。

補助者からキャリアをスタート

土地家屋調査士の補助者は、資格を持たずに土地家屋調査士事務所で働く職員のことです。測量作業の手伝いや、図面作成の補助、事務作業など、土地家屋調査士の業務全般をサポートします。

補助者として働く最大のメリットは、実務経験を積みながら資格試験の勉強ができることです。実際の測量作業や登記申請の手続きを間近で見ることで、試験で学ぶ知識が実務でどう使われるかを理解できます。特に、書式問題で必要となる図面の読み方や、登記申請書の書き方は、実務経験を通じて自然に身につきます。

補助者の給与は、事務所や地域によって異なりますが、月給20万円から25万円程度が一般的です。未経験から始める場合は、最初は低めの給与でも、経験を積むにつれて昇給していきます。資格取得後は、給与が大幅に上がることが期待できます。

補助者として働きながら資格を取得した場合、そのまま同じ事務所で土地家屋調査士として働き続けることもできます。事務所の規模や業務内容をよく知っているため、資格取得後もスムーズに業務を続けられます。また、経営者との信頼関係もすでに築かれているため、待遇面での交渉もしやすくなります。

補助者の経験年数は、人によって様々です。1年から2年で資格を取得する人もいれば、数年かけて合格を目指す人もいます。仕事をしながらの勉強は大変ですが、実務経験と試験勉強が相互に補完し合うため、効率的な学習が可能です。

個人事務所・法人での働き方

資格取得後の働き方には、大きく分けて個人事務所で働く方法と、法人組織で働く方法があります。それぞれに特徴があり、自分のキャリアプランに合わせて選択できます。

個人事務所で勤務する場合、事務所の規模は所長1人に補助者数名という小規模なところが多いです。業務範囲は広く、測量から登記申請まで一通りの業務に携わることができます。所長との距離が近く、直接指導を受けられるため、実務スキルが効率的に向上します。

個人事務所での勤務は、将来の独立開業に向けた準備期間としても有効です。事務所の経営方法や、営業活動、顧客対応など、独立に必要なノウハウを間近で学べます。所長がどのように仕事を取ってきて、どう進めているかを見ることで、独立後のイメージが具体的になります。

法人組織で働く場合は、より組織的な業務体制の中で働きます。大手の測量会社や、複数の土地家屋調査士が在籍する法人では、案件ごとに役割分担がされており、専門性を深めることができます。給与体系も整備されており、安定した収入が得られます。

法人では、大規模な開発案件や、官公庁からの業務委託など、個人事務所では受けにくい大型案件に携わる機会もあります。チームで業務を進めるため、様々な土地家屋調査士と協力しながら仕事ができます。他の調査士の仕事の進め方を学べる点も、法人で働くメリットです。

勤務土地家屋調査士の年収は、経験年数や所属する事務所・法人の規模によって異なりますが、一般的には400万円から600万円程度です。ベテランになると、700万円から800万円の収入を得ることも可能です。土地家屋調査士の年収については、独立開業した場合との比較も含めて、詳しく解説されています。

土地家屋調査士の独立開業

多くの土地家屋調査士が目指すのは、独立開業です。自分の事務所を構え、自分の判断で業務を進められる自由度の高さが、独立開業の大きな魅力です。

独立開業のタイミングは、資格取得後すぐに独立する人もいれば、5年から10年の実務経験を積んでから独立する人もいます。一般的には、実務経験を3年から5年程度積んでから独立するケースが多いです。この期間に、業務の進め方を身につけ、顧客との信頼関係を築き、営業のノウハウを学びます。

独立開業には、初期投資が必要です。事務所の賃料、測量機器の購入費用、CADソフトやパソコンなどの設備投資、開業時の広告費用などを合計すると、300万円から500万円程度の資金が必要になります。測量機器は特に高額で、トータルステーションだけでも100万円から200万円します。

開業当初は、顧客の獲得が最大の課題です。前職の事務所から独立する場合は、所長の了解を得て一部の顧客を引き継げることもあります。また、同業者や不動産業者、司法書士などとのネットワークを構築し、紹介を受けることも重要です。ホームページやSNSでの情報発信も、新規顧客獲得の手段として有効です。

独立開業した土地家屋調査士の年収は、業務量や地域によって大きく異なります。開業直後は年収300万円から400万円程度のこともありますが、顧客基盤が確立すると、年収1000万円以上を稼ぐことも可能です。ただし、収入が安定するまでには、3年から5年程度かかることが一般的です。

独立開業のメリットは、自分の裁量で業務を進められることです。受ける案件を選べますし、業務のスケジュールも自分で決められます。頑張った分だけ収入が増えるため、やりがいも大きいです。一方で、経営者としての責任も重く、営業活動、顧客管理、会計処理など、業務以外の仕事も全て自分で行う必要があります。

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土地家屋調査士の仕事に必要なスキル

土地家屋調査士として成功するには、専門的な技術力だけでなく、コミュニケーション能力や法律知識など、多様なスキルが求められます。これらのスキルをバランスよく身につけることが、優れた土地家屋調査士になるための鍵です。

土地家屋調査士に向いている人の特徴を知ることで、自分に必要なスキルを把握し、計画的に習得していくことができます。

調査・測量に必要な技術力

土地家屋調査士の核となるスキルは、調査・測量の技術力です。トータルステーションやGPS測量機などの専門機器を正確に操作し、ミリ単位の精度で測量を行う技術が必要です。測量の原理を理解し、誤差を最小限に抑える工夫ができることが重要です。

測量データを正確に処理する能力も不可欠です。測定した数値をもとに座標を計算し、面積を算出します。三角関数や座標計算などの数学的知識を活用しながら、正確な計算を行います。計算ミスは登記の誤りにつながるため、慎重かつ正確な作業が求められます。

CADソフトを使いこなすスキルも、現代の土地家屋調査士には必須です。測量データをもとに正確な図面を作成し、不動産登記規則で定められた様式に適合させます。レイヤーの使い分けや、縮尺の設定、寸法の記入など、CADの機能を十分に理解して活用します。

資料調査のスキルも重要です。法務局や市役所で入手した様々な資料を読み解き、必要な情報を抽出します。登記簿や公図、過去の測量図などから、対象不動産の状況や歴史を把握します。資料の読み取りミスは、測量や登記の誤りにつながるため、注意深く確認します。

現地での観察力も、土地家屋調査士に必要な技術です。境界標の位置や状態、土地の利用状況、周辺環境などを注意深く観察し、資料では分からない情報を把握します。長年の経験を積むことで、わずかな手がかりから重要な情報を読み取る能力が養われます。

コミュニケーション能力と交渉力

土地家屋調査士の業務では、様々な人とのコミュニケーションが不可欠です。依頼者、隣接地の所有者、法務局の職員、司法書士、不動産業者など、多くの関係者と円滑にやり取りする能力が求められます。

依頼者とのコミュニケーションでは、専門知識を分かりやすく説明する能力が重要です。登記の仕組みや測量の必要性を、専門用語を避けて平易な言葉で説明します。依頼者の不安や疑問に丁寧に答え、信頼関係を築くことが、円滑な業務遂行につながります。

境界立会いでは、交渉力と調整力が試されます。隣接地の所有者と境界の位置について合意を得るため、測量結果を根拠として説明しながら、相手の意見にも耳を傾けます。時には、感情的になっている相手を冷静になだめたり、複雑な状況を整理して分かりやすく説明したりする能力が必要です。

対立が生じた場合には、双方が納得できる解決策を提案する交渉力が求められます。法的な根拠を示しながら、相手の立場も理解し、妥協点を見出す能力が重要です。粘り強く話し合いを続け、最終的には全員が合意できる結論に導きます。

関係機関とのコミュニケーションも大切です。法務局の窓口では、登記申請の手続きについて相談したり、補正事項について説明を受けたりします。市役所では、道路や都市計画についての情報を問い合わせます。専門家同士のやり取りでも、丁寧で正確なコミュニケーションが求められます。

顧客対応のスキルも、特に独立開業した土地家屋調査士には重要です。電話やメールでの問い合わせに迅速に対応し、見積もりや提案を分かりやすく説明します。業務の進捗状況を定期的に報告し、依頼者が安心して任せられる関係を築きます。

法律知識とCADスキル

土地家屋調査士には、不動産登記法や民法、建築基準法など、幅広い法律知識が必要です。不動産登記法は土地家屋調査士の業務の根幹となる法律で、登記の種類、申請手続き、添付書類などの規定を正確に理解している必要があります。

民法の知識も重要です。特に、物権法や相続法は、不動産の権利関係を理解する上で欠かせません。境界に関する紛争では、民法の隣地関係や時効取得などの知識が必要になることもあります。境界が私法上の境界(所有権の範囲)なのか、公法上の筆界(登記上の境界)なのかを区別する法的知識も重要です。

建築基準法や都市計画法の知識は、建物の表題登記や、土地の利用計画に関する業務で必要です。建ぺい率や容積率、用途地域、道路斜線制限などの規制を理解し、建物が法令に適合しているかを確認します。

測量法や公共測量に関する知識も、測量業務を行う上で必要です。測量の基準や方法について定められており、これらの規定に従って測量を実施します。測量士や測量士補の資格を持っていると、測量法への理解も深まります。

CADスキルは、現代の土地家屋調査士に不可欠な技術です。AutoCADやJw_cadなどのCADソフトを使いこなし、正確で見やすい図面を作成します。レイヤーの使い方、線の種類や太さの設定、文字の配置など、CADの機能を十分に理解して活用します。

CAD以外のコンピュータースキルも重要です。測量データを処理するための表計算ソフト、登記申請書を作成するためのワープロソフト、オンライン申請システムの操作など、様々なソフトウェアを使いこなす能力が求められます。デジタル技術の進化に対応し、新しいツールを積極的に学ぶ姿勢も大切です。

継続的な学習も、土地家屋調査士に必要なスキルです。法改正や新しい測量技術について常に最新の情報を把握し、専門性を維持・向上させます。土地家屋調査士会の研修に参加したり、専門書を読んだり、同業者との情報交換を行ったりすることで、知識とスキルをアップデートし続けます。

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土地家屋調査士の仕事内容に関連するよくある質問(FAQ)

土地家屋調査士の仕事はきついですか?

土地家屋調査士の仕事には、体力的・精神的に厳しい面があることは事実です。夏の炎天下や冬の寒さの中で屋外測量を行う必要があり、体力が求められます。境界問題では隣接地の所有者との調整に苦労することもあります。 しかし、デスクワークと外勤のバランスを取りながら働けるため、体力に自信がない方でも工夫次第で長く続けられます。また、不動産の権利を守る社会的に意義のある仕事であり、依頼者から感謝される場面も多く、やりがいを感じられる職業です。独立開業すれば自分のペースで働けるため、ワークライフバランスも調整しやすくなります。

土地家屋調査士は外での仕事が多いですか?

土地家屋調査士の業務は、外勤と内勤がほぼ半々の割合です。現地での測量作業や境界立会いなどの外勤は週の2日から3日程度、残りはCADでの図面作成や登記申請書の作成などの内勤に充てることが一般的です。 天候や季節によって外勤の割合は変動します。春や秋の測量に適した季節は外勤が多くなり、雨天や降雪時は内勤に集中します。自分で業務のスケジュールを調整できるため、体調や予定に合わせて柔軟に働き方を変えられる点が、土地家屋調査士の魅力の一つです。

土地家屋調査士の仕事で最も重要な業務は何ですか?

土地家屋調査士の業務の中で最も重要なのは、境界を正確に確定する作業です。境界は不動産の所有権の範囲を示すものであり、わずかな誤りが将来的な紛争につながる可能性があります。正確な測量技術と、隣接地所有者との丁寧な調整により、適切に境界を確定することが土地家屋調査士の核心的な役割です。 また、登記申請業務も同様に重要です。調査・測量の成果を法的な記録として確定させる最終段階であり、ここでのミスは登記の誤りにつながります。不動産登記法に従った正確な申請書類の作成と、法務局との適切な連絡調整が求められます。

土地家屋調査士と司法書士の仕事内容の違いは?

土地家屋調査士と司法書士は、どちらも不動産登記に関わる専門家ですが、担当する業務が明確に分かれています。土地家屋調査士は「表示に関する登記」を担当し、土地の地目、地積、建物の種類、構造、床面積など、不動産の物理的な現況を登記します。 一方、司法書士は「権利に関する登記」を担当し、所有権、抵当権、地上権など、不動産の権利関係を登記します。実務では、不動産売買の際に土地家屋調査士が測量と境界確定を行い、司法書士が所有権移転登記を行うなど、両者が協力して業務を進めることが多いです。土地家屋調査士と司法書士の違いについて、より詳しく知りたい方は専門記事をご覧ください。

土地家屋調査士の繁忙期はいつですか?

土地家屋調査士の繁忙期は、主に春と秋です。3月から4月にかけては年度末で不動産取引が活発になり、それに伴って測量や登記の依頼が増加します。また、この時期は気候も良く測量作業に適しているため、冬場に受けた依頼の測量を集中的に行います。 9月から11月の秋も、春と同様に不動産取引が増える時期です。気候が安定しており屋外作業がしやすいため、業務が集中します。年末には、税制の関係で土地の分筆や贈与に伴う登記が増えることもあります。逆に、1月から2月の厳冬期や、7月から8月の酷暑期は、比較的閑散期となることが多いです。

土地家屋調査士は未経験でも仕事ができますか?

土地家屋調査士の資格を取得していれば、未経験でも仕事を始めることは可能です。ただし、実務経験がないと業務の進め方が分からないため、最初は土地家屋調査士事務所に勤務して実務を学ぶことが一般的です。 多くの土地家屋調査士は、資格取得前に補助者として働きながら実務経験を積んでいます。測量作業や図面作成を実際に経験することで、試験で学んだ知識が実務でどう使われるかを理解できます。資格取得後も数年間は勤務調査士として経験を重ね、その後独立開業するという道筋が王道です。全くの未経験から独立開業することは可能ですが、業務の習得に時間がかかるため、まずは経験豊富な土地家屋調査士の下で学ぶことをおすすめします。

土地家屋調査士の仕事にやりがいはありますか?

土地家屋調査士の仕事には、大きなやりがいがあります。まず、不動産という重要な財産の権利を守る社会的に意義のある仕事です。正確な測量と境界確定により、将来的なトラブルを未然に防ぎ、依頼者の財産を守ることができます。 境界問題を解決した時や、複雑な測量を無事に完了させた時には、大きな達成感を得られます。依頼者から「ありがとう」と感謝の言葉をもらえることも多く、人の役に立っている実感が得られます。専門的な知識と技術を駆使して問題を解決する過程は、知的好奇心も満たしてくれます。 また、独立開業して自分の事務所を経営する場合は、自分の判断で業務を進められる自由度の高さも魅力です。頑張った分だけ収入が増えるため、経済的なやりがいもあります。生涯現役で働ける職業でもあり、長期的なキャリアを築けることも、この仕事の大きな魅力です。

まとめ:土地家屋調査士の仕事内容と業務範囲

本記事では、土地家屋調査士の仕事内容について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. 表示に関する登記の専門家:土地家屋調査士は、不動産の物理的状況を正確に調査・測量し、登記に反映させる専門家です。調査業務、測量業務、境界確定業務、図面作成業務、登記申請業務という5つの主要業務を通じて、不動産の正確な情報を法的に証明します。
  2. 内勤と外勤のバランス:土地家屋調査士の働き方は、現地での測量作業や境界立会いなどの外勤と、CADでの図面作成や登記申請書作成などの内勤がほぼ半々です。フィールドワークとデスクワークの両方のスキルが求められ、季節や時期によって業務量が変動します。
  3. 多様なキャリアパス:補助者として実務経験を積みながら資格取得を目指し、合格後は勤務調査士として経験を重ねた後、独立開業する道が一般的です。調査・測量の技術力、コミュニケーション能力、法律知識、CADスキルなど、多様なスキルを身につけることで、長期的なキャリアを築けます。

土地家屋調査士の仕事内容を理解できたら、次は土地家屋調査士になるための資格取得方法土地家屋調査士試験の制度を確認し、具体的な学習計画を立てることをおすすめします。

本記事を通じて、土地家屋調査士という専門職の業務範囲と働き方の特徴を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、土地家屋調査士としてのキャリアを具体的にイメージし、資格取得に向けた第一歩を踏み出しましょう。

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