中小企業診断士試験の科目について知りたいあなたへ。「何科目あるのか」「どんな内容を学ぶのか」という疑問は、試験の全体像を把握することで解決できます。本記事では、中小企業診断士試験の一次試験7科目と二次試験4科目の詳細内容、科目別の難易度と勉強時間の目安、効率的な学習順序について、実際のデータを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、中小企業診断士試験合格に向けて、計画的な学習をスタートさせましょう。
この記事を読むとわかること
- 中小企業診断士試験の一次試験7科目と二次試験4科目の具体的な内容
- 科目別の難易度ランキングと合格率の推移
- 科目合格制度と科目免除制度の活用方法
- 効率的な科目学習の順序と職種別の学習戦略
押さえておきたい3つのポイント
- 一次試験は7科目、二次試験は4科目+口述試験:中小企業診断士試験は一次試験で経済学から中小企業政策まで幅広い知識を問われ、二次試験では実務的な応用力が試されます。全科目の内容を理解することが合格への第一歩です。
- 科目合格制度で2年間の猶予がある:一次試験では60点以上で科目合格となり、翌年・翌々年の2年間は当該科目が免除されます。この制度を活用することで、働きながらでも計画的に合格を目指せます。
- 重要3科目(財務・企業経営・運営管理)を優先する:二次試験にも直結する重要科目から学習を始めることで、効率的に合格レベルに到達できます。職種や経験に応じた学習戦略を立てることが成功のカギです。
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中小企業診断士試験の科目数と試験構成
中小企業診断士試験は、一次試験と二次試験の2段階で構成されており、それぞれ異なる科目数と試験形式が採用されています。一次試験では幅広い経営知識が問われ、二次試験では実務的な応用力と思考力が試されます。試験全体の構成を理解することで、効率的な学習計画を立てることができます。
一次試験は全7科目のマークシート方式
中小企業診断士の一次試験は、全7科目のマークシート方式で実施されます。経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策という7つの科目で構成されており、各科目100点満点で出題されます。
合格基準は総得点420点以上(60%以上)かつ1科目でも40点未満がないことです。つまり、苦手科目を作らず、バランス良く得点することが求められます。試験は例年8月上旬の土日2日間で実施され、1日目に4科目、2日目に3科目が行われます。
一次試験は知識量を問う試験であるため、過去問演習と体系的な知識の整理が合格のカギとなります。各科目の出題範囲は広く、1,000時間程度の学習時間が必要とされています。
二次試験は全4科目の記述式+口述試験
中小企業診断士の二次試験は、筆記試験4科目と口述試験で構成されます。筆記試験は事例Ⅰ(組織・人事)、事例Ⅱ(マーケティング・流通)、事例Ⅲ(生産・技術)、事例Ⅳ(財務・会計)の4つの事例問題が出題され、いずれも記述式です。
各事例は80分の試験時間で、与件文(企業の状況説明)を読み解き、複数の設問に答える形式です。一次試験とは異なり、知識の暗記だけでなく、経営課題を分析し、具体的な解決策を文章で表現する能力が求められます。
筆記試験合格者のみが口述試験に進むことができます。口述試験は約10分間の面接形式で、筆記試験の事例内容について口頭で質問されます。二次試験全体の合格率は18%前後と一次試験よりも難易度が高く、論理的思考力と実務感覚が試される試験です。
合格までに必要な全体像
中小企業診断士試験の合格までには、一次試験と二次試験の両方をクリアする必要があります。一次試験の合格率は約28%、二次試験の合格率は約18%で、最終合格率(一次試験受験者ベース)は約5%程度となっています。
標準的な学習期間は1年から2年で、総勉強時間は1,000~1,200時間が目安です。一次試験の準備に700~800時間、二次試験の準備に300~400時間を配分するのが一般的です。働きながら合格を目指す場合、平日2時間、休日5時間の学習を継続することで、1年半から2年での合格が可能です。
一次試験は科目合格制度があり、合格した科目は翌年・翌々年の2年間免除されます。この制度を活用して、複数年計画で合格を目指すことも戦略の一つです。計画的に学習を進めることで、働きながらでも無理なく合格を目指せる資格です。
中小企業診断士一次試験の7科目一覧と内容
中小企業診断士の一次試験は7科目で構成されており、経営全般に関する幅広い知識が問われます。各科目は企業経営の異なる側面をカバーしており、中小企業の経営課題を多角的に分析するための基礎知識を身につけることが目的です。ここでは各科目の特徴と学習内容を詳しく解説します。
経済学・経済政策|マクロ・ミクロ経済の基礎知識
経済学・経済政策は、マクロ経済学とミクロ経済学の基礎理論を学ぶ科目です。需要と供給の関係、市場メカニズム、完全競争と不完全競争、国民所得、財政・金融政策などが出題範囲となります。
この科目の特徴は、理論的な理解と計算問題が中心となる点です。グラフの読み取りや数式を使った問題が多く、暗記だけでは対応できません。経済学の学習経験がない方は、基礎からしっかり学ぶ必要があります。
出題数は約25問で、難易度は中程度です。経済ニュースと関連付けて学習することで、理論の実践的な理解が深まります。計算問題は繰り返し演習することで、確実に得点源にできる科目です。
財務・会計|企業の財務分析と会計知識
財務・会計は、企業の財務諸表を読み解き、経営状態を分析する能力を問う科目です。簿記の基礎、財務諸表の作成と分析、原価計算、管理会計、企業価値評価などが出題されます。
この科目は二次試験の事例Ⅳに直結する最重要科目の一つです。計算問題が多く、正確な計算力とスピードが求められます。簿記2級レベルの知識があると学習がスムーズに進みますが、簿記未経験者でも基礎から学習することで合格レベルに到達できます。
出題数は約25問で、難易度は高めです。ROA、ROE、EVAなどの経営指標や、DCF法による企業価値評価など、実務でも活用できる知識が身につきます。計算過程を理解し、反復練習することが合格のカギです。
企業経営理論|経営戦略・マーケティング理論
企業経営理論は、経営戦略とマーケティング、組織論を学ぶ科目です。経営戦略論(競争戦略、成長戦略)、マーケティング理論(STP、4P、消費者行動)、組織論(組織構造、人的資源管理)が出題範囲です。
この科目は二次試験の事例Ⅰと事例Ⅱに直結する最重要科目です。理論の暗記だけでなく、企業の実例に当てはめて考える応用力が求められます。ケーススタディ形式の問題も多く、実務的な思考力を養うことができます。
出題数は約35問と最も多く、配点も高い科目です。難易度は中から高で、用語の正確な理解と、理論を実例に適用する能力が試されます。ポーターの競争戦略やコトラーのマーケティング理論など、経営学の基本理論を体系的に学べます。
運営管理|生産管理と店舗運営の実務
運営管理は、生産管理と店舗運営の2つの分野で構成される科目です。生産管理分野では、生産方式、品質管理、設備管理、IE(インダストリアル・エンジニアリング)などを学びます。店舗運営分野では、小売業の店舗設計、商品管理、物流、サービス業の運営などが出題されます。
この科目は二次試験の事例Ⅲに直結する重要科目です。製造業やサービス業の実務に関わる内容が多く、実際のオペレーションをイメージしながら学習すると理解が深まります。
出題数は約45問で、生産管理と店舗運営がほぼ半々の割合です。難易度は中程度で、専門用語が多いため、用語の意味を正確に理解することが重要です。QC七つ道具やトヨタ生産方式など、実務で役立つ知識を習得できます。
経営法務|企業法務と知的財産権
経営法務は、企業活動に関連する法律知識を問う科目です。会社法、民法(契約法)、知的財産権法(特許法、商標法、著作権法)、その他の企業法務(独占禁止法、個人情報保護法)などが出題範囲です。
法律科目特有の条文理解と判例の知識が求められます。暗記すべき事項が多い一方で、法律の趣旨や原則を理解すれば、応用問題にも対応できるようになります。
出題数は約25問で、難易度は高めです。特に知的財産権分野は専門性が高く、初学者には難しく感じられます。ただし、過去問のパターンを押さえることで、効率的に得点できる科目でもあります。会社法の機関設計や知的財産権の保護期間など、実務でも必須の知識を学べます。
経営情報システム|IT・情報システムの知識
経営情報システムは、IT技術と情報システムに関する科目です。ハードウェア、ソフトウェア、データベース、ネットワーク、情報セキュリティ、システム開発、経営情報管理などが出題されます。
IT技術の進化が速いため、最新のトレンド(クラウド、AI、IoTなど)も出題されます。IT業界の経験者には有利な科目ですが、未経験者でも基礎から学習することで十分対応できます。
出題数は約25問で、難易度は中程度です。専門用語が多いため、用語の正確な理解が重要です。また、計算問題(進数変換、ネットワークの帯域幅計算など)も出題されます。DX時代に必須のIT知識を体系的に学べる科目です。
中小企業経営・中小企業政策|中小企業支援施策
中小企業経営・中小企業政策は、日本の中小企業の現状と政府の支援施策を学ぶ科目です。前半の中小企業経営では、中小企業白書に基づく統計データや経営動向を学びます。後半の中小企業政策では、中小企業基本法や各種支援制度(補助金、融資、税制など)を学びます。
この科目の特徴は、暗記中心の学習となる点です。最新の白書や施策を確認する必要があるため、試験直前期に集中的に学習するのが効率的です。
出題数は約40問で、難易度は低から中程度です。統計データや支援施策の詳細を覚える必要がありますが、過去問の傾向を押さえることで高得点を狙える科目です。中小企業診断士として実務で活用する制度知識を習得できます。
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中小企業診断士一次試験の科目・難易度・合格率と対策方法
中小企業診断士二次試験の4科目一覧と内容
中小企業診断士の二次試験は、一次試験で学んだ知識を実務的な事例問題で応用する試験です。4つの事例問題と口述試験で構成されており、企業の経営課題を分析し、具体的な解決策を提案する能力が問われます。記述式の試験であるため、論理的な文章力と説得力のある提案力が必要です。
事例Ⅰ|組織・人事を中心とした経営戦略
事例Ⅰは、組織・人事を中心とした経営戦略の事例問題です。与件文では、中小企業の歴史、組織体制、人事制度、企業文化などが描かれます。設問では、経営者の意思決定、組織変革、人材育成、労務管理などについて問われます。
この事例は一次試験の企業経営理論(特に組織論)の知識が基礎となります。経営環境の変化に対して、組織や人事制度をどう変革すべきかを論理的に説明する力が求められます。
解答は100~200字の記述が中心で、与件文の情報を根拠として、説得力のある提案をする必要があります。組織のライフサイクルや変革理論、モチベーション理論などを理解し、事例企業の状況に適用できる応用力が重要です。過去問演習を通じて、出題パターンと解答の型を身につけることが合格への近道です。
事例Ⅱ|マーケティング・流通の経営戦略
事例Ⅱは、マーケティングと流通を中心とした経営戦略の事例問題です。与件文では、中小企業の製品・サービス、顧客層、競合状況、販売チャネルなどが描かれます。設問では、市場分析、ターゲット設定、商品開発、プロモーション戦略、販売戦略などが問われます。
この事例は一次試験の企業経営理論(特にマーケティング論)の知識が基礎となります。STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)や4P(製品、価格、流通、プロモーション)のフレームワークを活用して、具体的な施策を提案します。
解答では、顧客ニーズの分析、差別化戦略、販促施策の立案などを論理的に記述します。消費者行動や市場環境を踏まえた実践的な提案が評価されます。マーケティング理論を実務に落とし込む力と、創造的な発想が求められる事例です。
事例Ⅲ|生産・技術の経営戦略
事例Ⅲは、生産管理と技術を中心とした経営戦略の事例問題です。与件文では、製造業の生産体制、生産プロセス、品質管理、設備、技術力などが描かれます。設問では、生産性向上、品質改善、納期短縮、コスト削減、生産計画などが問われます。
この事例は一次試験の運営管理(特に生産管理分野)の知識が基礎となります。QC、IE、生産方式(JIT、トヨタ生産方式など)の知識を活用して、生産現場の課題を解決する提案をします。
解答では、現状の問題点を特定し、改善策を具体的に記述します。生産リードタイムの短縮や在庫削減、品質向上などの施策を、与件文の情報に基づいて論理的に展開します。製造業の実務経験がない方でも、生産管理の基本原則を理解すれば対応できます。図表やデータを読み解く力も重要です。
事例Ⅳ|財務・会計を中心とした経営分析
事例Ⅳは、財務・会計を中心とした経営分析の事例問題です。与件文では、企業の財務諸表や経営数値が提示されます。設問では、財務分析、経営指標の計算、投資判断、資金調達、予算管理、原価計算などが問われます。
この事例は一次試験の財務・会計の知識が直結する最重要科目です。他の事例と異なり、計算問題が多く、正確な計算力とスピードが求められます。記述問題では、財務データから経営課題を読み取り、改善策を提案します。
解答では、ROE、ROA、損益分岐点分析、NPV(正味現在価値)、CVP分析などの手法を使って定量的に分析します。計算ミスが命取りになるため、日頃から計算練習を積むことが重要です。財務の視点から経営を分析する力が身につく事例です。
口述試験の内容と対策
口述試験は、二次筆記試験合格者のみが受験できる最終試験です。約10分間の面接形式で、試験官2名から筆記試験の事例内容について質問されます。与件文と自分の解答を基に、口頭で説明や追加提案を求められます。
口述試験の合格率は約99%と非常に高く、筆記試験に合格していれば、よほどのことがない限り合格できます。ただし、緊張して何も答えられない、質問の意図を理解せず的外れな回答をする、といった場合は不合格になる可能性もあります。
対策としては、筆記試験の自分の解答を見直し、なぜその解答にしたのか説明できるようにしておくことが重要です。また、模擬面接や勉強会で練習することで、緊張を和らげることができます。落ち着いて、論理的に自分の考えを説明できれば、問題なく合格できる試験です。
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中小企業診断士二次試験の内容・対策・合格率を詳しく解説
中小企業診断士試験の科目別難易度と合格率
中小企業診断士試験の各科目には、それぞれ異なる難易度があります。科目ごとの特性や出題傾向を理解することで、効率的な学習計画を立てることができます。ここでは、一次試験と二次試験の科目別難易度と合格率について、データを基に詳しく解説します。
一次試験科目別の難易度ランキング
一次試験の科目別難易度は、受験者の背景知識や学習スタイルによって異なりますが、一般的な難易度ランキングは以下の通りです。
高難易度科目
- 財務・会計:計算問題が多く、簿記の知識が必要。時間内に解き切る処理スピードも求められる。
- 経営法務:条文や判例の暗記量が多く、専門性が高い。知的財産権分野は特に難解。
- 経済学・経済政策:理論的思考と計算力が必要。グラフ問題や数式の理解が難しい。
中難易度科目
- 企業経営理論:出題範囲が広く、理論の応用力が問われる。ケース問題の判断が難しい。
- 経営情報システム:IT用語が多く、技術の進化に対応する必要がある。計算問題もある。
- 運営管理:専門用語が多いが、実務経験があれば理解しやすい。暗記中心の学習。
低難易度科目
- 中小企業経営・政策:暗記中心で、直前対策で得点しやすい。過去問の反復が有効。
このランキングはあくまで一般的な傾向です。営業職の方はマーケティング(企業経営理論)が得意、経理職の方は財務・会計が得意など、職種によって得意科目は異なります。
一次試験科目別の合格率推移
一次試験の科目別合格率(科目合格率)は、年度によって変動がありますが、過去5年間の平均は以下の傾向です。
- 中小企業経営・政策:60-70%(最も高い)
- 運営管理:40-50%
- 企業経営理論:40-50%
- 経営情報システム:35-45%
- 経済学・経済政策:30-40%
- 経営法務:25-35%
- 財務・会計:20-30%(最も低い)
財務・会計と経営法務の合格率が低い傾向にあります。これは計算問題の難度が高いこと、法律知識の専門性が高いことが理由です。一方、中小企業経営・政策は暗記中心で対策しやすいため、合格率が高くなっています。
全科目の合格率(一次試験総合)は25-30%程度で推移しています。科目合格制度を活用すれば、複数年で段階的に合格を目指すことも可能です。苦手科目は早めに対策し、得意科目で確実に得点することがポイントです。
二次試験事例別の難易度
二次試験の事例別難易度は、受験者の得意分野によって大きく異なりますが、一般的な評価は以下の通りです。
事例Ⅳ(財務・会計):最難関と言われる事例です。計算問題が多く、1問のミスが致命的になります。時間配分も難しく、80分で全問解き切るのは容易ではありません。ただし、計算が合えば確実に得点できるため、対策次第で得点源にもなります。
事例Ⅰ(組織・人事):抽象度が高く、正解が見えにくい事例です。組織論や人事理論の深い理解と、与件文から問題点を読み取る力が必要です。経営者の視点で考える能力が問われます。
事例Ⅱ(マーケティング):比較的取り組みやすい事例ですが、創造的な提案が求められます。マーケティング理論を実務に落とし込む力と、顧客視点での発想が必要です。
事例Ⅲ(生産管理):製造業の経験者には取り組みやすい事例です。生産現場の改善という明確なテーマがあり、解答の方向性が定まりやすい傾向にあります。ただし、図表の読み取りや定量的な分析が求められます。
二次試験は事例ごとの難易度差よりも、全体的なバランスが重要です。4事例とも60点以上を取る必要があるため、苦手事例を作らないことが合格のカギとなります。
中小企業診断士試験の科目別勉強時間の目安
中小企業診断士試験に合格するためには、科目ごとに適切な勉強時間を配分することが重要です。各科目の難易度や出題範囲に応じて、効率的に時間を使うことで、限られた学習時間を最大限に活用できます。ここでは、一次試験と二次試験の科目別推奨勉強時間について解説します。
一次試験科目別の推奨勉強時間
一次試験の科目別推奨勉強時間は、総勉強時間700-800時間を基準として、以下のように配分するのが効果的です。
財務・会計:150-180時間
最も勉強時間が必要な科目です。簿記の基礎から財務分析、管理会計まで幅広い範囲をカバーする必要があります。計算問題の反復練習に時間をかけることで、確実な得点源にできます。
企業経営理論:120-150時間
出題範囲が広く、理論の理解と応用力の両方が必要です。経営戦略論、マーケティング、組織論の3分野をバランス良く学習します。二次試験にも直結するため、じっくり時間をかける価値があります。
運営管理:100-120時間
生産管理と店舗運営の2分野があり、専門用語の暗記が中心です。図表やフローチャートを活用して視覚的に理解することで、効率的に学習できます。
経済学・経済政策:100-120時間
理論の理解と計算練習が必要です。初学者は基礎からしっかり学ぶ必要がありますが、経済学既習者は復習中心で対応できます。グラフ問題の演習に時間を割くことが重要です。
経営法務:80-100時間
条文と判例の暗記が中心ですが、理解を伴う暗記が必要です。会社法と知的財産権法に重点を置き、過去問で出題パターンを把握します。
経営情報システム:60-80時間
IT用語の暗記が中心で、比較的短時間で対応できます。ただし、技術の進化に対応するため、最新トレンドもチェックする必要があります。
中小企業経営・政策:50-80時間
暗記中心の科目で、試験直前期に集中的に学習するのが効率的です。白書と施策の最新情報を押さえることが重要です。
二次試験科目別の推奨勉強時間
二次試験の科目別推奨勉強時間は、総勉強時間300-400時間を基準として、以下のように配分します。
事例Ⅳ(財務・会計):100-120時間
計算問題の練習に最も時間をかけるべき事例です。過去問や問題集を繰り返し解き、スピードと正確性を高めます。NPV計算、CVP分析、財務比率の計算などを完璧にしておく必要があります。
事例Ⅰ(組織・人事):60-80時間
与件文の読解力と論理的な記述力を養います。過去問演習を通じて、出題パターンと解答の型を身につけます。組織論・人事理論の復習も必要です。
事例Ⅱ(マーケティング):60-80時間
マーケティング理論の復習と、創造的な提案力を磨きます。顧客分析や市場分析のフレームワークを使いこなせるように練習します。
事例Ⅲ(生産管理):60-80時間
生産現場の改善提案力を養います。QC、IE、生産方式の知識を事例に適用する練習を重ねます。図表の読み取り練習も重要です。
統合演習・口述対策:20-40時間
4事例を総合的に解く練習と、口述試験の対策に充てます。時間配分の練習や、自分の弱点補強に使います。
二次試験は一次試験の知識が前提となるため、一次試験の復習も並行して行う必要があります。特に財務・会計、企業経営理論、運営管理の復習は欠かせません。
総勉強時間1,000時間の配分例
中小企業診断士試験の合格に必要な総勉強時間1,000時間の標準的な配分例を示します。
一次試験準備(700時間)
- 財務・会計:150時間
- 企業経営理論:130時間
- 運営管理:110時間
- 経済学・経済政策:110時間
- 経営法務:90時間
- 経営情報システム:70時間
- 中小企業経営・政策:40時間
二次試験準備(300時間)
- 事例Ⅳ:110時間
- 事例Ⅰ:70時間
- 事例Ⅱ:60時間
- 事例Ⅲ:60時間
この配分は標準的な目安であり、個人の経験や得意分野によって調整が必要です。簿記資格を持っている方は財務・会計の時間を減らせますし、IT業界の方は経営情報システムの時間を短縮できます。自分の強みを活かした時間配分を考えることが、効率的な合格への近道です。
働きながら学習する場合、平日2時間×週5日+休日5時間×週2日=週20時間で計算すると、約1年(50週)で1,000時間を確保できます。無理のないペースで継続することが成功のカギです。
中小企業診断士の勉強時間に関してもっと詳しい記事はこちら
中小企業診断士試験に必要な勉強時間|合格までのスケジュール
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中小企業診断士の科目合格制度とは?
中小企業診断士試験の一次試験には、科目合格制度が設けられています。この制度を理解し、戦略的に活用することで、働きながらでも無理なく合格を目指すことができます。科目合格制度は、複数年計画での合格を可能にする重要な仕組みです。
科目合格の仕組みと基準(60点以上)
科目合格制度とは、一次試験で60点以上を取得した科目について、個別に合格を認める制度です。一次試験の合格基準は「総得点420点以上(60%)かつ1科目も40点未満がないこと」ですが、科目合格の基準は「各科目60点以上」となります。
例えば、7科目のうち5科目で60点以上を取得し、2科目が60点未満だった場合、5科目については科目合格となり、翌年以降はその5科目が免除されます。残りの2科目のみを受験すればよいため、学習負担が大幅に軽減されます。
科目合格は一次試験全体で不合格でも認められます。つまり、総得点が420点未満であっても、60点以上の科目は科目合格として扱われます。この制度により、一度に全科目合格を目指すプレッシャーが軽減され、段階的に合格を積み重ねることが可能です。
科目合格の有効期限(翌年・翌々年の2年間)
科目合格の有効期限は、合格した年の翌年と翌々年の2年間です。例えば、2024年度に財務・会計を科目合格した場合、2025年度と2026年度の一次試験で財務・会計が免除されます。2027年度以降は免除が失効するため、再度受験する必要があります。
この2年間の猶予期間を活用することで、計画的に残りの科目の学習に集中できます。例えば、1年目に財務・会計、企業経営理論、運営管理の重要3科目を科目合格し、2年目に残りの4科目を受験するという戦略が考えられます。
注意点として、科目免除を受ける場合は、試験申込時に科目合格証明書を提出する必要があります。また、免除科目が多い場合でも、試験日に会場に行く必要はなく、受験する科目のみの時間帯に出席すれば問題ありません。
科目合格を活用した合格パターン
科目合格制度を活用した代表的な合格パターンをいくつか紹介します。
2年計画パターン
1年目:重要3科目(財務・会計、企業経営理論、運営管理)を科目合格
2年目:残り4科目(経済学、経営法務、情報システム、中小企業政策)を受験して一次合格
このパターンは、1年目に二次試験に直結する重要科目に集中し、2年目に比較的対策しやすい科目で総合合格を目指す戦略です。
3年計画パターン
1年目:財務・会計、企業経営理論の2科目を科目合格
2年目:運営管理、経済学、経営法務の3科目を科目合格(1年目の2科目は免除)
3年目:情報システム、中小企業政策の2科目を受験して一次合格(1-2年目の5科目は免除)
このパターンは、働きながら無理なく学習を進めたい方に適しています。毎年の学習負担を平準化できるメリットがあります。
一発合格を狙いながら科目合格も確保するパターン
1年目:7科目全て受験し、一発合格を目指す。結果的に5科目で科目合格
2年目:残り2科目のみ集中して学習し、一次合格
このパターンは、一発合格の可能性を残しつつ、保険として科目合格も確保する戦略です。
科目合格のメリット・デメリット
科目合格制度のメリットとデメリットを理解した上で、自分に合った戦略を選択することが重要です。
メリット
- 学習負担を分散できる:一度に全科目合格を目指すプレッシャーがない
- 働きながらでも無理なく合格を目指せる:毎年の学習時間を調整できる
- 苦手科目に集中できる:得意科目を早めに合格させることで、苦手科目に時間をかけられる
- リスク分散:不合格でも科目合格を積み重ねることで、着実に前進できる
デメリット
- 合格までに時間がかかる:一発合格より1-2年長くかかる可能性がある
- モチベーション維持が難しい:長期戦になるため、継続的な学習意欲が必要
- 知識の陳腐化:初年度に合格した科目の知識が、二次試験時に忘れている可能性
- 免除期限のプレッシャー:2年以内に残り科目を合格しなければ、免除が失効する
自分の学習可能時間、仕事の忙しさ、家庭の状況などを考慮して、一発合格を目指すか、科目合格を活用するかを決めることが大切です。
科目合格を履歴書に書く方法
科目合格は正式な合格ではないため、履歴書への記載方法には注意が必要です。ただし、学習努力や専門知識の証明として記載することは可能です。
記載例
令和○年○月 中小企業診断士試験一次試験 科目合格(財務・会計、企業経営理論、運営管理)
記載する際のポイントは以下の通りです。
- 「科目合格」であることを明記する(「合格」とだけ書くと誤解を招く)
- 合格した科目名を具体的に記載する
- 「取得」ではなく「科目合格」と表現する
履歴書への記載は義務ではありませんが、経営知識を学んでいることのアピールや、向上心の証明として活用できます。特に経営コンサルティング業界や財務部門への転職の際には、科目合格でも評価される場合があります。
ただし、面接では「現在も学習を継続しており、○年後の最終合格を目指している」といった前向きな説明を加えることが重要です。科目合格だけで満足していると受け取られないよう、継続的な努力姿勢を示すことが大切です。
中小企業診断士の科目免除制度
中小企業診断士試験には、他の資格保有者や実務経験者を対象とした科目免除制度があります。この制度を活用することで、学習負担を軽減し、効率的に合格を目指すことができます。自分が免除対象となる資格や経験を持っているか確認してみましょう。
他資格保有者の科目免除一覧
中小企業診断士試験では、特定の国家資格保有者に対して、一次試験の一部科目が免除されます。主な免除対象資格と免除科目は以下の通りです。
公認会計士・税理士
- 免除科目:経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム(6科目免除)
- 残り科目:中小企業経営・中小企業政策のみ
弁護士
- 免除科目:経営法務(1科目免除)
- 残り科目:6科目
司法書士
- 免除科目:経営法務(1科目免除)
- 残り科目:6科目
技術士
- 免除科目:経営情報システム(1科目免除)
- 残り科目:6科目
情報処理技術者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、応用情報技術者など)
- 免除科目:経営情報システム(1科目免除)
- 残り科目:6科目
社会保険労務士
- 免除科目:なし(ただし、企業経営理論の組織・人事分野で有利)
免除制度は、既に習得している専門知識を活かせる仕組みです。該当する資格を持っている方は、積極的に活用することをおすすめします。
公認会計士・税理士の免除科目
公認会計士と税理士は、中小企業診断士試験で最も多くの科目免除を受けられる資格です。6科目が免除され、中小企業経営・中小企業政策の1科目のみ受験すれば一次試験に合格できます。
免除の理由
公認会計士と税理士は、財務・会計の専門家として、企業経営に関する幅広い知識を持っていると認められています。財務諸表分析、税務、監査などの専門知識は、中小企業診断士の業務と重複する部分が多いため、多くの科目が免除されます。
メリット
- 一次試験の学習負担が大幅に軽減される
- 中小企業政策の学習に集中できる
- 短期間で一次試験突破が可能
注意点
二次試験は免除されないため、事例問題への対策が必要です。特に事例Ⅳ(財務・会計)は得意分野ですが、記述式の問題形式に慣れる練習が必要です。また、中小企業経営・政策は独自の学習が必要で、白書や支援施策の最新情報を押さえることが重要です。
公認会計士・税理士の方は、ダブルライセンスとして中小企業診断士を取得することで、経営コンサルティング業務の幅を広げることができます。
弁護士・司法書士の免除科目
弁護士と司法書士は、経営法務の1科目が免除されます。法律の専門家として、企業法務に関する深い知識を持っているため、会社法、民法、知的財産権法などをカバーする経営法務科目が免除対象となります。
免除の理由
弁護士と司法書士は、会社法、商業登記、契約法務などの企業法務に精通しています。中小企業診断士試験の経営法務科目は、これらの法律知識を問う内容であるため、免除が認められています。
学習戦略
経営法務が免除されても、残り6科目の学習は必要です。特に財務・会計と企業経営理論は重要科目であり、しっかりとした対策が求められます。法律知識を活かして、M&A、事業承継、知的財産戦略などの分野で、独自の強みを持った中小企業診断士として活躍できます。
注意点
二次試験の事例Ⅰ、Ⅱ、Ⅲでは、経営戦略やマーケティング、生産管理の知識が必要です。法律知識だけでは対応できないため、一次試験で学んだ経営知識を二次試験でしっかり応用できるよう準備することが重要です。
技術士・情報処理技術者の免除科目
技術士(全部門)と情報処理技術者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、応用情報技術者、システム監査技術者など)は、経営情報システムの1科目が免除されます。
免除の理由
技術士と情報処理技術者は、IT技術や情報システムに関する高度な専門知識を持っています。中小企業診断士試験の経営情報システム科目は、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、セキュリティなどのIT知識を問うため、これらの資格保有者には免除が認められています。
学習戦略
IT技術者として、情報システムの導入支援やDX推進の分野で強みを発揮できます。一方で、財務・会計や企業経営理論など、経営分野の科目は新たに学習する必要があります。技術と経営の両面を理解することで、IT経営の専門家として付加価値の高いコンサルティングが可能になります。
注意点
経営情報システムは比較的学習時間が少ない科目であるため、免除によるメリットは限定的です。それでも、6科目に集中できることは学習負担の軽減につながります。二次試験では、IT戦略の視点を事例Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに盛り込むことで、独自の解答を作成できます。
科目免除を申請する方法
科目免除を受けるためには、試験申込時に必要書類を提出する必要があります。申請手続きの流れは以下の通りです。
1. 受験申込書の準備
中小企業診断協会のウェブサイトから受験案内をダウンロードし、受験申込書を入手します。申込書には科目免除の申請欄があります。
2. 免除申請に必要な書類
- 資格証明書のコピー(公認会計士証、税理士証、弁護士登録証など)
- 合格証明書のコピー(情報処理技術者試験など)
- 技術士登録証のコピー
3. 申込書の記入
科目免除の申請欄に、該当する資格名と免除科目を記入します。免除を受ける科目にチェックを入れることを忘れないようにしましょう。
4. 書類の提出
受験申込書と免除申請書類を、指定された期日までに郵送または持参します。郵送の場合は、簡易書留など記録が残る方法を推奨します。
5. 受験票の確認
受験票が届いたら、免除科目が正しく反映されているか確認します。誤りがあれば、すぐに試験実施機関に連絡しましょう。
注意点
- 免除申請の締切は受験申込期間内です。期限を過ぎると受け付けられません。
- 資格証明書は原本ではなく、コピーで問題ありません。
- 免除を受けた科目は受験できません(受験しても採点されません)。
- 免除科目がある場合でも、受験料は同額です(科目数による減額はありません)。
科目免除制度を活用することで、学習期間を短縮し、効率的に合格を目指すことができます。該当する資格を持っている方は、必ず申請手続きを行いましょう。
中小企業診断士試験の効率的な科目学習順序
中小企業診断士試験の合格には、科目の学習順序が重要です。闇雲に手当たり次第学習するのではなく、科目間の関連性や難易度、二次試験への影響を考慮した戦略的な学習順序を組むことで、効率的に知識を積み上げることができます。
重要3科目(財務・企業経営・運営管理)から始める理由
中小企業診断士試験の学習は、財務・会計、企業経営理論、運営管理の重要3科目から始めることを強く推奨します。この順序には明確な理由があります。
二次試験に直結する科目
この3科目は、二次試験の事例Ⅰ〜Ⅳの基礎となる科目です。財務・会計は事例Ⅳ、企業経営理論は事例Ⅰ・Ⅱ、運営管理は事例Ⅲに直結します。一次試験の学習時から二次試験を意識することで、一次合格後の二次試験対策がスムーズになります。
学習ボリュームが大きい
この3科目は出題範囲が広く、学習に時間がかかります。早めに着手することで、十分な学習時間を確保できます。特に財務・会計は計算練習に時間が必要で、繰り返しの演習が不可欠です。
他科目の基礎となる
財務・会計の知識は、経済学・経済政策や中小企業経営・政策でも必要です。企業経営理論で学ぶ経営戦略論は、他の科目を理解する上での基礎となります。基礎科目を先に固めることで、後続科目の理解が深まります。
おすすめの学習開始順序
- 財務・会計:計算力を早期に身につける
- 企業経営理論:経営全般の理論的基礎を固める
- 運営管理:実務的な知識を習得する
この3科目を先に学習することで、中小企業診断士としての基礎体力が身につきます。
理論系科目(経済学・経営法務)の学習タイミング
経済学・経済政策と経営法務は、理論や条文の理解が必要な科目です。これらは重要3科目の後、暗記系科目の前に学習することをおすすめします。
経済学・経済政策
経済学は理論的思考が求められる科目です。財務・会計の学習で計算に慣れた後に取り組むと、経済学の計算問題にも対応しやすくなります。ミクロ経済学とマクロ経済学を体系的に学び、グラフ問題に慣れることが重要です。
学習タイミングとしては、重要3科目を一通り学習した後、試験の4〜6ヶ月前に着手するのが理想的です。理論の理解に時間をかけ、過去問演習で出題パターンを把握します。
経営法務
経営法務は条文と判例の暗記が中心ですが、理解を伴う暗記が必要です。会社法、民法、知的財産権法の3分野を、企業活動の流れに沿って学習すると効率的です。
学習タイミングは、試験の3〜5ヶ月前が適切です。法律科目は一度に詰め込むと混乱しやすいため、毎日少しずつ学習し、繰り返し復習することが重要です。判例は理由とセットで覚えることで、応用問題にも対応できます。
注意点
理論系科目は一度学習しても、時間が経つと忘れやすい傾向があります。試験直前期に再度復習する時間を確保しておくことが大切です。
暗記系科目(情報システム・中小企業政策)は後回し
経営情報システムと中小企業経営・中小企業政策は、暗記中心の科目です。これらは試験直前期に集中的に学習するのが効率的です。
経営情報システム
IT用語の暗記が中心で、比較的短期間で対応できます。ただし、技術の進化が速いため、最新のトレンド(クラウド、AI、セキュリティなど)は試験直前にチェックする必要があります。
学習タイミングは試験の2〜3ヶ月前から始め、1〜2ヶ月で仕上げるのが理想です。IT経験者は復習程度で済みますが、未経験者は基礎から学習する必要があります。過去問を繰り返し解くことで、出題パターンを把握できます。
中小企業経営・中小企業政策
この科目は暗記中心で、最新の白書と政策をチェックする必要があります。試験の1〜2ヶ月前から集中的に学習することで、最新情報を確実に記憶に残すことができます。
白書の統計データは細かい数字まで覚える必要はなく、傾向や特徴を押さえることが重要です。政策分野は、補助金や融資制度の概要を理解し、過去問で頻出項目を確認します。
暗記系科目を後回しにする理由
- 学習から試験までの期間が短いほど、記憶が新鮮な状態で試験に臨める
- 最新情報を反映できる(特に情報システムと政策分野)
- 短期集中で効率的に得点できる
- 他の科目に十分な時間を配分できる
試験直前の1〜2ヶ月は、暗記系科目の追い込みと、全科目の総復習に充てることが理想的です。
二次試験を見据えた科目学習の考え方
一次試験の学習段階から、二次試験を意識した学習を行うことが重要です。一次試験の知識が二次試験の基盤となるため、ただ合格点を取るだけでなく、深い理解を目指すことが長期的な合格戦略となります。
財務・会計:事例Ⅳの計算力の基礎
一次試験の財務・会計で学ぶ財務分析、管理会計、投資判断は、二次試験の事例Ⅳで直接使います。一次試験の学習時から、計算の背景にある経営的意味を理解することが重要です。ROEやROAを単に計算するだけでなく、「なぜこの指標が重要なのか」「改善するにはどうすべきか」まで考える習慣をつけましょう。
企業経営理論:事例Ⅰ・Ⅱの理論的基盤
企業経営理論で学ぶ経営戦略論やマーケティング理論は、事例Ⅰ・Ⅱで活用します。一次試験では理論の暗記が中心ですが、二次試験では理論を企業の実例に当てはめる応用力が求められます。学習時から「この理論はどんな場面で使えるか」を考え、新聞やビジネス書の企業事例と関連付けることが有効です。
運営管理:事例Ⅲの実務知識
運営管理で学ぶ生産管理や品質管理の知識は、事例Ⅲで使います。QC七つ道具、IEの手法、トヨタ生産方式などは、製造現場の改善提案に直結します。一次試験の学習時から、生産現場をイメージし、「どのように改善できるか」を考える視点を持つことが大切です。
学習ノートの作り方
二次試験を見据えた学習では、理論や手法を「自分の言葉でまとめたノート」を作ることが効果的です。暗記カードではなく、理論の意味、使用場面、具体例をまとめたノートは、二次試験対策の強力なツールになります。
一次試験の合格だけを目指すのではなく、「二次試験でも使える知識」を意識して学習することが、最終合格への最短ルートです。
中小企業診断士の勉強法に関してもっと詳しい記事はこちら
中小企業診断士の効果的な勉強法|科目別対策と時間管理術
職種別・経験別におすすめの科目学習戦略
中小企業診断士試験の学習は、自分の職種や経験を活かすことで、効率的に進めることができます。得意分野を伸ばしながら、苦手分野を補強するバランスの取れた学習戦略が合格への近道です。ここでは、職種別・経験別のおすすめ学習戦略を紹介します。
営業職・マーケティング職の方
営業職やマーケティング職の方は、企業経営理論(特にマーケティング分野)で有利です。顧客分析、市場調査、販売戦略などの実務経験が、理論の理解を助けます。
得意科目として伸ばす
- 企業経営理論:マーケティング理論を実務経験と結びつけて理解
- 運営管理(店舗運営分野):小売業やサービス業の経験が活きる
重点的に学習すべき科目
- 財務・会計:営業職は財務知識が不足しがちなので、早めに着手
- 経済学・経済政策:理論的思考に慣れるための時間を確保
学習戦略
企業経営理論は実務経験を活かして効率的に学習し、浮いた時間を財務・会計に充てることがポイントです。二次試験の事例Ⅱ(マーケティング)は得意分野になる可能性が高いため、一次試験からマーケティング理論を深く理解しておくことが重要です。
顧客視点や市場分析の視点は、二次試験の全事例で活かせます。営業・マーケティングの実務感覚を大切にしながら、理論的な裏付けを学ぶことで、説得力のある解答が作れるようになります。
経理・財務職の方
経理・財務職の方は、財務・会計で大きなアドバンテージがあります。簿記の知識や財務諸表の読解力は、一次試験でも二次試験でも強力な武器になります。
得意科目として伸ばす
- 財務・会計:実務経験を活かして高得点を狙える最重要科目
- 経済学・経済政策:数字や計算に強いため、対応しやすい
重点的に学習すべき科目
- 企業経営理論:経営戦略やマーケティングは新たに学ぶ分野
- 運営管理:生産管理や店舗運営の実務経験がない場合は時間をかける
学習戦略
財務・会計は得意分野ですが、油断せず確実に高得点を取る準備をしましょう。簿記2級以上の資格を持っている方は、管理会計や企業価値評価など、簿記の範囲外の論点に集中すると効率的です。
二次試験の事例Ⅳ(財務・会計)は得点源になります。一次試験の段階から、計算だけでなく「財務データから経営課題を読み取る力」を養うことが重要です。一方で、事例Ⅰ〜Ⅲは新しい視点が必要なので、企業経営理論と運営管理をしっかり学習しましょう。
経理・財務の専門性に、経営全般の知識を加えることで、CFO候補やファイナンシャルアドバイザーとして活躍の幅が広がります。
IT・システム職の方
IT・システム職の方は、経営情報システムで有利です。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、セキュリティなどの知識は、実務経験そのものです。
得意科目として伸ばす
- 経営情報システム:実務経験を活かして短時間で仕上げられる
- 運営管理(生産管理分野):システム開発のプロジェクト管理経験が活きる
重点的に学習すべき科目
- 財務・会計:IT職は財務知識が不足しがちなので、早めに着手
- 企業経営理論:経営戦略やマーケティングは新たに学ぶ分野
学習戦略
経営情報システムは科目免除を受けられる資格(応用情報技術者など)を持っている場合が多いですが、持っていなくても短期間で高得点を狙えます。浮いた時間を財務・会計と企業経営理論に充てましょう。
二次試験では、IT戦略の視点を各事例に盛り込むことで、独自の解答を作れます。DX推進、システム導入、業務効率化などの提案は、IT職の強みです。一次試験から経営とITの融合を意識した学習をすることで、二次試験でも活かせる知識が身につきます。
技術と経営の両面を理解することで、CIO候補やITコンサルタントとして高い付加価値を提供できるようになります。
製造業・生産管理職の方
製造業や生産管理職の方は、運営管理(生産管理分野)で有利です。生産方式、品質管理、設備管理、IE(インダストリアル・エンジニアリング)などの実務経験が理論の理解を助けます。
得意科目として伸ばす
- 運営管理(生産管理分野):実務経験を活かして高得点を狙える
- 経営情報システム:製造業のシステム経験が活きる場合がある
重点的に学習すべき科目
- 財務・会計:製造原価計算は得意だが、財務分析は新たに学ぶ
- 企業経営理論(マーケティング分野):顧客視点やマーケティングは製造現場では馴染みが薄い
学習戦略
運営管理は実務経験を理論と結びつけることで、短時間で高得点を狙えます。QC七つ道具、トヨタ生産方式、TPMなどは、実務で使っている手法を理論的に整理する機会になります。
二次試験の事例Ⅲ(生産管理)は得意分野になります。一次試験の段階から、「生産現場の課題をどう改善するか」という視点を持つことが重要です。ただし、事例Ⅰ・Ⅱではマーケティングや組織論の視点が必要なので、企業経営理論をしっかり学習しましょう。
製造業の実務経験に経営知識を加えることで、生産管理コンサルタントやものづくりアドバイザーとして活躍できます。
未経験者・初学者の方
ビジネス経験が少ない方や、経営知識が全くない初学者の方でも、中小企業診断士試験に合格することは十分可能です。体系的な学習と適切な学習戦略で、着実に知識を積み上げることができます。
学習の進め方
- 基礎から丁寧に学ぶ:簿記や経済学の基礎知識がない場合は、入門書から始める
- 重要3科目に時間をかける:財務・会計、企業経営理論、運営管理を優先
- 過去問演習を重視する:出題傾向を把握し、効率的に学習する
- 通信講座や予備校の活用:体系的なカリキュラムで学ぶことで、独学の不安を解消
科目別の学習アプローチ
- 財務・会計:簿記3級レベルから始め、段階的にレベルアップ
- 企業経営理論:ビジネス書や新聞で企業事例に触れながら学習
- 運営管理:製造業やサービス業の現場見学(可能なら)で実務をイメージ
- 経済学・経済政策:基礎理論を丁寧に学び、グラフ問題に慣れる
- 経営法務:条文の丸暗記ではなく、趣旨を理解する
- 経営情報システム:IT用語を基礎から学ぶ
- 中小企業経営・政策:白書と政策を試験直前に集中学習
学習期間の目安
未経験者・初学者の場合、2年計画での合格を目指すのが現実的です。1年目に重要3科目を科目合格し、2年目に残り4科目で一次合格、その後二次試験に挑戦するというペースが無理なく続けられます。
おすすめの学習リソース
- 中小企業診断士の通信講座:初学者向けの体系的なカリキュラム
- 中小企業診断士のテキスト:基礎から学べる教材選び
- 中小企業診断士の独学方法:独学での学習法とコツ
未経験からのスタートは不利ではなく、先入観なく体系的に学べる利点もあります。継続的な学習と適切な戦略で、確実に合格レベルに到達できます。
中小企業診断士の科目に関連するよくある質問(FAQ)
中小企業診断士試験の科目に関して、受験者からよく寄せられる質問をまとめました。これらの疑問を解決することで、より効率的な学習計画を立てることができます。
Q. 中小企業診断士の一次試験は何科目ありますか?
中小企業診断士の一次試験は全7科目で構成されています。具体的には、経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策です。
各科目は100点満点で、合格基準は総得点420点以上(60%)かつ1科目も40点未満がないことです。試験は例年8月上旬の土日2日間で実施され、1日目に4科目、2日目に3科目が行われます。7科目全てに合格する必要がありますが、科目合格制度を活用すれば、複数年で段階的に合格を目指すことも可能です。
Q. 中小企業診断士試験で最も難しい科目はどれですか?
中小企業診断士試験で最も難しいとされる科目は、一般的に財務・会計です。計算問題が多く、簿記の知識が前提となるため、初学者には特に難しく感じられます。また、時間内に全問を解き切る処理スピードも求められます。
次いで難易度が高いのは経営法務です。条文や判例の暗記量が多く、知的財産権分野は専門性が高いため、法律の学習経験がない方には難関科目となります。ただし、個人の経験や得意分野によって難易度の感じ方は異なります。経理職の方は財務・会計が得意ですし、法律職の方は経営法務が得意です。自分の強みを活かした学習戦略を立てることが重要です。
Q. 中小企業診断士の科目合格は何年間有効ですか?
中小企業診断士の科目合格の有効期間は、合格した年の翌年と翌々年の2年間です。例えば、2024年度に財務・会計を科目合格した場合、2025年度と2026年度の一次試験で財務・会計が免除されます。
2027年度以降は免除が失効するため、再度受験する必要があります。この2年間の猶予期間を戦略的に活用することで、働きながらでも無理なく残りの科目に集中できます。複数年計画で合格を目指す場合は、免除期限を意識したスケジュール管理が重要です。科目合格制度の詳細については、中小企業診断士一次試験の対策で詳しく解説しています。
Q. 中小企業診断士試験の科目免除を受けるにはどうすればいいですか?
中小企業診断士試験の科目免除を受けるには、試験申込時に必要書類を提出する必要があります。具体的な手順は以下の通りです。
まず、自分が保有する資格が免除対象かを確認します。公認会計士・税理士は6科目免除、弁護士・司法書士は経営法務1科目免除、技術士・情報処理技術者は経営情報システム1科目免除となります。次に、受験申込書の科目免除申請欄に該当する資格名と免除科目を記入します。
資格証明書または合格証明書のコピーを添付し、受験申込期間内に中小企業診断協会に郵送または持参します。受験票が届いたら、免除科目が正しく反映されているか必ず確認しましょう。免除申請の締切は受験申込期間内なので、期限を過ぎないよう注意が必要です。
Q. 中小企業診断士の科目はどの順番で勉強すべきですか?
中小企業診断士試験の科目は、財務・会計、企業経営理論、運営管理の重要3科目から学習を始めることを強く推奨します。この3科目は二次試験に直結する最重要科目であり、学習ボリュームも大きいため、早めに着手することが重要です。
次に、経済学・経済政策と経営法務の理論系科目を学習します。これらは重要3科目の後、試験の4〜6ヶ月前に着手するのが理想的です。最後に、経営情報システムと中小企業経営・中小企業政策の暗記系科目を、試験直前の1〜2ヶ月に集中的に学習します。
この学習順序により、二次試験を見据えた知識の積み上げができ、かつ最新情報が必要な科目を直前に対策できます。効率的な学習順序の詳細は、中小企業診断士の勉強法で解説しています。
Q. 中小企業診断士の科目合格は履歴書に書けますか?
中小企業診断士の科目合格は履歴書に記載することができます。ただし、「科目合格」であることを明記することが重要です。単に「合格」とだけ書くと、最終合格と誤解される可能性があるため注意が必要です。
記載例としては、「令和○年○月 中小企業診断士試験一次試験 科目合格(財務・会計、企業経営理論、運営管理)」のように、合格した科目名を具体的に記載します。科目合格は学習努力や専門知識の証明として評価される場合があり、特に経営コンサルティング業界や財務部門への転職の際にはアピールポイントになります。
面接では「現在も学習を継続しており、○年後の最終合格を目指している」といった前向きな説明を加えることで、向上心をアピールできます。科目合格だけで満足せず、最終合格に向けた継続的な努力姿勢を示すことが大切です。
Q. 中小企業診断士試験の科目で最も勉強時間が必要な科目は?
中小企業診断士試験で最も勉強時間が必要な科目は財務・会計です。推奨勉強時間は150〜180時間で、全科目の中で最も長い学習時間が必要とされています。
財務・会計は簿記の基礎知識から始まり、財務諸表分析、管理会計、企業価値評価まで幅広い範囲をカバーします。計算問題が多く、正確性とスピードの両方が求められるため、反復練習に時間がかかります。特に簿記未経験者は、基礎から学ぶ必要があるため、さらに時間がかかる場合があります。
次いで勉強時間が必要なのは企業経営理論(120〜150時間)と運営管理(100〜120時間)です。これらの重要3科目で、一次試験全体の学習時間の約半分を占めます。早めに着手し、十分な時間をかけることが合格への近道です。科目別の勉強時間の詳細は、中小企業診断士の勉強時間で詳しく解説しています。
まとめ:中小企業診断士試験の科目を理解して効率的に合格を目指そう
本記事では、中小企業診断士試験の科目について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 一次試験は7科目、二次試験は4科目+口述試験:一次試験では経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策の7科目があり、二次試験では事例Ⅰ〜Ⅳと口述試験があります。各科目の特性を理解し、バランス良く学習することが合格への第一歩です。
- 科目合格制度と科目免除制度を戦略的に活用:科目合格制度により、60点以上取得した科目は翌年・翌々年の2年間免除されます。また、公認会計士や税理士などの資格保有者は科目免除を受けられます。これらの制度を活用することで、働きながらでも無理なく合格を目指せます。
- 重要3科目から始め、二次試験を見据えた学習を:財務・会計、企業経営理論、運営管理の重要3科目から学習を始めることで、二次試験に直結する知識を早期に習得できます。職種や経験に応じた学習戦略を立て、効率的に勉強時間を配分することが成功のカギです。
中小企業診断士試験の科目を理解できたら、次は具体的な学習計画を立てましょう。中小企業診断士の勉強時間とスケジュールと中小企業診断士の勉強法を参考に、計画的に進めることをおすすめします。
本記事を通じて、中小企業診断士試験の科目構成、各科目の内容と難易度、効率的な学習順序を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、中小企業診断士試験合格に向けて、着実な一歩を踏み出しましょう。科目の特性を理解し、自分に合った学習戦略を立てることで、必ず合格できます。
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