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中小企業診断士口述試験の内容と対策|合格率と注意点

中小企業診断士の口述試験について知りたいあなたへ。「口述試験はどんな内容なのか」「本当に落ちることはないのか」という疑問は、試験の実態を正しく理解することで解決できます。

本記事では、中小企業診断士口述試験の具体的な内容と形式、約99%という高い合格率の理由、効果的な対策方法について、実際のデータと合格者の経験を交えて詳しく解説します。この情報をもとに、口述試験合格に向けて、適切な準備を進めましょう。

この記事を読むとわかること
  • 中小企業診断士口述試験の具体的な形式と内容
  • 合格率約99%の実態と不合格になるケース
  • 10日間という短期間での効果的な対策方法
  • 試験当日の注意点と緊張対策
押さえておきたい3つのポイント
  1. 口述試験は約10分間の個人面接形式:筆記試験の4事例をもとに、2~3名の試験官から質問を受ける形式で、資料の持ち込みは一切できません。
  2. 合格率は約99%だが油断は禁物:過去10年以上にわたり合格率は99%前後を維持していますが、完全な沈黙や不適切な態度では不合格になる可能性があります。
  3. 対策期間は10日間程度と短い:筆記試験合格発表から約10日後に実施されるため、事例の復習と想定問答の準備を効率的に進める必要があります。
目次

中小企業診断士(SME診断士)口述試験とは?試験の最終関門

中小企業診断士試験における口述試験は、一次試験と二次筆記試験に合格した受験生のみが受験できる最終関門です。約10分間の個人面接形式で実施され、筆記試験で扱った4つの事例をもとに、現役の中小企業診断士である試験官から質問を受けます。この試験では、診断士としての基本的なコミュニケーション能力や、事例企業に対する理解度が評価されます。

口述試験の位置づけと目的

口述試験は、中小企業診断士試験における最終段階として位置づけられています。一次試験では7科目の基礎知識、二次筆記試験では事例分析能力が問われましたが、口述試験では実務家としての基本的な対応力が評価されます。試験の主な目的は、受験生が診断士として最低限必要なコミュニケーション能力を持っているか、筆記試験の内容を理解しているかを確認することです。そのため、完璧な回答よりも、真摯な態度で質問に向き合う姿勢が重視されます。

試験形式(個人面接・約10分間)

口述試験は完全な個人面接形式で行われます。試験時間は約10分間と短く、1対2~3の形式で実施されます。受験生1名に対して、試験官が2~3名配置され、主に2名が質問を行い、残りの1名が評価を記録する役割を担います。試験室は一般的な会議室や教室で、受験生は着席した状態で質問に答えます。質問数は通常4問程度で、筆記試験の4事例から各1~2問ずつ出題されるパターンが一般的です。

受験資格(筆記試験合格者のみ)

口述試験を受験できるのは、同年度の二次筆記試験に合格した受験生のみです。一次試験は科目合格制度により複数年での合格が可能ですが、口述試験の受験資格は筆記試験合格年度に限定されます。つまり、筆記試験に合格した年に口述試験を受験できなかった場合や不合格になった場合は、翌年以降に再度筆記試験から受け直す必要があります。この点は、中小企業診断士二次試験の重要な特徴の一つです。

試験会場と実施地区

口述試験は全国の主要都市で実施されます。具体的には、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡などの会場が設定されています。受験生は筆記試験の受験地に関わらず、希望する試験地を選択できます。ただし、会場の収容人数には限りがあるため、希望者が多い場合は調整が行われることもあります。試験会場は大学や資格試験専用施設が使用されることが多く、受験票に詳細な場所と時間が記載されます。

中小企業診断士の資格全体の流れに関してもっと詳しい記事はこちら
中小企業診断士とは?資格の仕事内容・試験概要・取得メリットを徹底解説

中小企業診断士(SME診断士)口述試験の日程とスケジュール

中小企業診断士の口述試験は、二次筆記試験の合格発表から非常に短い期間で実施されるという特徴があります。この短期間のスケジュールは、受験生にとって大きな課題となります。対策期間が限られているため、効率的な準備計画を立てることが合格への鍵となります。

筆記試験合格発表から約10日後に実施

二次筆記試験の合格発表は例年12月上旬に行われ、口述試験は合格発表から約10日後に実施されます。2023年度の例では、12月8日に合格発表があり、12月17日に口述試験が実施されました。この10日間という短い期間で、受験生は筆記試験の4事例を復習し、想定される質問への対策を行う必要があります。合格発表当日から即座に準備を始めることが推奨されます。

対策期間が短い理由

対策期間が短く設定されている理由は、試験の実施時期と年度内の手続き期間に関係しています。口述試験の合格発表は12月下旬に行われ、翌年1月には登録手続きが開始されます。年度内にこれらの手続きを完了させるため、口述試験は必然的に12月中旬の実施となり、結果として対策期間が短くなっています。この短期決戦の性質も、合格率が高い一因となっています。

試験当日のタイムスケジュール

口述試験当日は、受験票に記載された集合時間に会場に到着します。受付後は待機室で待機し、指定された時間に試験室へ案内されます。一人あたりの試験時間は約10分間ですが、入退室の時間を含めると15分程度の枠が設けられています。午前と午後に分けて実施されることが多く、受験番号により時間帯が割り振られます。試験終了後は速やかに退室し、当日中に全ての日程が完了します。

合格発表日程

口述試験の合格発表は、試験実施から約10日後に行われます。2023年度の場合、12月17日の試験実施後、12月25日に合格発表がありました。合格発表は中小企業診断協会のウェブサイトで行われ、合格者には受験番号が掲載されます。合格者には後日、合格証書と登録に関する案内が郵送されます。不合格の場合は特に通知はなく、ウェブサイトでの確認のみとなります。

中小企業診断士試験の合格発表に関してもっと詳しい記事はこちら
中小企業診断士試験の合格発表日程と確認方法を解説

中小企業診断士口述試験の合格率は約99%

中小企業診断士の口述試験は「落ちない試験」として知られており、合格率は約99%という非常に高い水準を維持しています。ただし、この高い合格率には理由があり、また例外的に不合格者が出る年もあるため、完全に油断してよい試験ではありません。

過去10年以上の合格率推移

過去10年以上にわたり、中小企業診断士の口述試験合格率は一貫して98%~100%の範囲で推移しています。2022年度は99.3%、2021年度は99.2%、2020年度は99.5%と、ほぼ全員が合格する状況が続いています。この傾向は2010年代前半から変わっておらず、長期的に安定した合格率を維持しています。多くの年度で合格率が99%を超えており、受験生にとっては安心材料となっています。

ほぼ全員合格する理由

高い合格率の背景には、いくつかの理由があります。第一に、口述試験を受験できるのは既に一次試験と二次筆記試験という高い壁を乗り越えた受験生のみであり、基礎的な知識と能力は保証されています。第二に、試験の目的が「落とすため」ではなく、「診断士として最低限の対応ができるか確認するため」にあります。第三に、評価基準が相対的ではなく絶対的であり、一定の水準に達していれば合格できる仕組みです。これらの要因により、真摯に準備して臨めばほぼ確実に合格できる試験となっています。

不合格者が出る年もある

合格率が99%前後とはいえ、毎年わずかながら不合格者が出ています。2022年度では約700名の受験者のうち5名が不合格、2021年度では約750名のうち6名が不合格でした。不合格となるケースの多くは、完全な沈黙、極端に不適切な回答、態度の問題などが理由です。また、試験を欠席した場合や、体調不良で試験を放棄した場合も不合格となります。

「落ちない試験」の実態

「落ちない試験」という表現は実態を反映していますが、これは「何の準備もせずに合格できる」という意味ではありません。実際には、ほとんどの受験生が筆記試験の復習や想定問答の練習、模擬面接などの対策を行っています。準備をした上で真摯な態度で臨めば合格できるという意味であり、完全に無策で臨むことは推奨されません。適切な準備と落ち着いた受け答えができれば、合格は確実に手に入ります。

中小企業診断士試験の合格率に関してもっと詳しい記事はこちら
中小企業診断士試験の合格率推移と一次・二次の傾向分析

中小企業診断士口述試験の合格基準と評価方法

口述試験には明確な合格基準が定められており、試験官による評価ポイントも概ね共通しています。評価方法を理解することで、どのような対策をすべきかが明確になります。

合格基準は評定60%以上

口述試験の合格基準は、評定点が60%以上と定められています。試験官は複数の評価項目について点数をつけ、その合計が60点以上(100点満点換算)であれば合格となります。評価項目には、質問への理解度、回答の論理性、コミュニケーション能力、態度・マナーなどが含まれます。完璧な回答を求められているわけではなく、診断士として最低限必要な水準をクリアしているかが判断されます。

試験官による評価ポイント

試験官が評価する主なポイントは、第一に質問を正しく理解しているか、第二に論理的に説明できているか、第三に適切なコミュニケーションが取れているかです。専門知識の深さよりも、クライアントに対応する際の基本的な姿勢が重視されます。言葉遣いや表情、聞く態度なども評価対象に含まれます。分からないことを正直に伝えた上で、自分なりの考えを述べる姿勢は評価されますが、完全な沈黙や的外れな回答を続けることはマイナス評価となります。

絶対評価か相対評価か

口述試験は基本的に絶対評価で行われます。つまり、他の受験生との比較ではなく、個々の受験生が合格基準を満たしているかが判断されます。そのため、理論上は全員が合格することも、全員が不合格になることも可能です。実際には、二次筆記試験を突破した受験生の大多数が基準を満たしており、結果として高い合格率となっています。この絶対評価方式により、他の受験生の出来を気にする必要がなく、自分自身の準備に集中できます。

合格基準の実際

実際の合格基準は、常識的な対応ができていれば十分にクリアできるレベルです。全ての質問に完璧に答える必要はなく、4問中2~3問について適切に回答できていれば合格圏内に入ります。一部の質問で詰まってしまっても、他の質問で挽回することが可能です。また、回答の正確性よりも、考え方のプロセスや説明の仕方が重視されます。筆記試験の内容を概ね理解しており、診断士としての基本的な姿勢を示せれば、合格基準の60%は達成できます。

中小企業診断士口述試験の内容と質問形式

口述試験の具体的な内容と質問形式を理解することで、効果的な対策を立てることができます。試験の構成や流れを事前に把握しておくことで、当日の緊張を軽減できます。

筆記試験の4事例をもとにした質問

口述試験の質問は、全て二次筆記試験で出題された4つの事例に基づいています。事例Ⅰ(組織・人事)、事例Ⅱ(マーケティング・流通)、事例Ⅲ(生産・技術)、事例Ⅳ(財務・会計)の各事例から質問が出されます。与件文に記載されている企業の状況、強み・弱み、経営課題などについて問われることが多く、筆記試験で自分が書いた解答との整合性は問われません。重要なのは、与件文の内容を理解し、診断士としての視点で説明できることです。

質問数は通常4問(2事例×2問ずつが多い)

試験時間約10分間の中で、通常4問程度の質問が出されます。最も一般的なパターンは、4事例のうち2事例を選び、各事例から2問ずつ質問される形式です。例えば、事例ⅠとⅡから各2問、または事例ⅡとⅢから各2問といった組み合わせです。各質問に対する回答時間は2~3分程度となります。質問が終わった後に試験官から補足質問や確認が入ることもありますが、これは不合格のサインではなく、理解を深めるための通常のやり取りです。

試験官は2~3名の現役診断士

試験官は全員が現役の中小企業診断士です。通常2~3名が配置され、主に2名が質問を担当し、残りの1名が評価を記録します。試験官は受験生を落とすためではなく、診断士としての適性を確認するために質問を行います。質問の仕方も威圧的ではなく、受験生がリラックスして答えられるよう配慮されることが多いです。実務経験豊富な診断士が試験官を務めるため、実践的な視点からの質問や、受験生の説明に対する建設的なフィードバックが期待できます。

資料の持ち込みは一切禁止

口述試験では、筆記試験の問題用紙や解答用紙、メモ類など、一切の資料持ち込みが禁止されています。試験室内にメモを取るための用紙や筆記用具も用意されていません。全て記憶に基づいて回答する必要があります。ただし、試験官は受験生が細かい数値や固有名詞を完全に記憶していることは期待していません。「与件文の企業名は覚えていませんが」「正確な数値は記憶していませんが、概ね〜という状況でした」といった前置きをした上で、企業の状況や課題について説明すれば十分です。

中小企業診断士口述試験の質問パターンと傾向

過去の口述試験では、いくつかの典型的な質問パターンが繰り返し出題されています。これらのパターンを理解し、準備しておくことで、効率的な対策が可能になります。

企業の強み・弱みに関する質問

最も頻出するのが、事例企業の強みや弱みについて説明を求める質問です。「この企業の強みは何ですか」「なぜこの企業は競合に対して優位性を持っているのですか」「この企業が抱える課題は何ですか」といった質問が典型的です。与件文から読み取れる情報を整理し、SWOT分析の視点で説明することが求められます。強みについては、それが競争優位性につながる理由まで説明できると高評価です。

経営課題と解決策に関する質問

事例企業が直面している経営課題と、それに対する解決策について問われることも多いです。「この企業の最大の課題は何だと考えますか」「その課題を解決するために、どのような施策が有効ですか」といった質問です。筆記試験で提案した内容と異なる回答をしても問題ありません。与件文の状況を踏まえて、診断士としての視点で論理的に説明できれば評価されます。解決策については、実現可能性や優先順位についても触れられると良いでしょう。

助言・提案に関する質問

診断士として企業にどのような助言や提案をするかを問う質問も出題されます。「あなたが診断士としてこの企業に関わるとしたら、社長にどのようなアドバイスをしますか」「この企業の今後の方向性について、診断士としてどう考えますか」といった質問です。これらの質問では、単なる知識の披露ではなく、診断士としての実務的な視点や、クライアント企業に寄り添う姿勢が評価されます。

与件文の読み込みを前提とした質問

与件文に記載されている具体的な情報について、理解度を確認する質問も出されます。「この企業の主要顧客層は誰ですか」「生産体制にはどのような特徴がありますか」「財務状況についてどのように評価しますか」といった質問です。細かい数値や固有名詞を完全に記憶している必要はありませんが、企業の全体像や重要なポイントについては説明できる必要があります。与件文を読み込んでいれば自然に答えられる内容です。

中小企業診断士口述試験で不合格になるケース

合格率約99%の口述試験ですが、不合格になるケースも存在します。これらのケースを理解し、避けるべき行動を認識しておくことが重要です。

完全に沈黙してしまう

最も不合格になりやすいのが、質問に対して完全に沈黙してしまうケースです。分からない質問があっても、「申し訳ございませんが、その点については記憶が曖昧です」と正直に伝えた上で、「ただし、私なりの考えとしては〜」と自分の意見を述べることが重要です。何も答えずに黙り込んでしまうと、コミュニケーション能力に問題があると判断され、評価が大きく下がります。不完全でも何か答える姿勢を示すことが、合格への鍵となります。

態度や言葉遣いが不適切

診断士として最低限のビジネスマナーが身についていないと判断される態度や言葉遣いは、不合格の理由となります。具体的には、試験官に対する横柄な態度、極端に失礼な言葉遣い、質問を遮って話し始める行為、明らかに準備不足で誠実さに欠ける対応などです。スーツでなくても構いませんが、清潔感のある服装と礼儀正しい態度は必須です。診断士はクライアント企業と接する職業であり、基本的な対人スキルは評価の重要な要素となります。

質問の意図を全く理解していない

試験官の質問に対して、全く的外れな回答を繰り返すことも不合格の要因となります。例えば、財務に関する質問に対してマーケティングの話を延々と続ける、企業の強みを聞かれているのに弱みばかり述べるなどです。質問の意図が分からない場合は、「恐れ入りますが、もう一度質問をお聞かせいただけますか」と確認することができます。理解が曖昧なまま回答を始めるより、確認してから適切に答える方が評価は高くなります。

試験放棄や遅刻・欠席

試験を途中で放棄したり、遅刻や欠席をした場合は当然ながら不合格となります。体調不良などのやむを得ない事情がある場合でも、基本的に救済措置はなく、翌年度に再度筆記試験から受験し直す必要があります。交通機関の遅延などの可能性も考慮し、試験当日は余裕を持って会場に到着することが重要です。万が一、当日に不測の事態が発生した場合は、速やかに試験実施機関に連絡を入れることが推奨されます。

中小企業診断士口述試験の効果的な対策方法

10日間という限られた期間で効率的に対策を行うためには、優先順位を明確にし、実践的な準備を進める必要があります。ここでは、合格者が実際に行っている効果的な対策方法を紹介します。

筆記試験の4事例を徹底的に復習する

最も重要な対策は、筆記試験で出題された4つの事例を徹底的に復習することです。与件文を最低3回は読み直し、企業の状況、強み・弱み、経営課題、市場環境などを整理します。自分が筆記試験で書いた解答は参考程度にとどめ、むしろ予備校や通信講座が公開する模範解答や解説を確認することが有効です。事例ごとにA4用紙1枚程度で要点をまとめておくと、試験直前の見直しに役立ちます。中小企業診断士二次試験の基本的な思考プロセスを再確認することも重要です。

想定問答集を活用する

予備校や受験生のコミュニティでは、口述試験の想定問答集が毎年作成されています。これらの問答集には、過去に実際に出題された質問とその回答例が掲載されており、対策の貴重な資料となります。ただし、回答例を丸暗記するのではなく、どのような視点で答えるべきかを理解することが重要です。自分の言葉で説明できるように練習し、暗記した文章を棒読みするような回答は避けましょう。

模擬面接・口述セミナーに参加する

時間と予算が許せば、予備校や資格学校が実施する模擬面接や口述セミナーに参加することを強く推奨します。実際の試験形式で練習することで、緊張感に慣れることができます。試験官役の講師から具体的なフィードバックを受けられることも大きなメリットです。他の受験生の回答を聞くことで、自分の準備の方向性を確認することもできます。オンラインで実施される模擬面接も増えているため、地方在住の受験生でも参加しやすくなっています。

声に出して練習する

頭の中で考えているだけでは、実際の試験で言葉が出てこないことがあります。想定問答を声に出して練習することが効果的です。家族や友人に試験官役を頼んで、実際の面接形式で練習するのが理想的ですが、一人で鏡に向かって話す練習も有効です。スマートフォンで自分の回答を録音し、後で聞き直してみると、話すスピードや言葉遣い、論理の流れなどを客観的に確認できます。

中小企業診断士口述試験の10日間対策スケジュール

合格発表から試験日までの約10日間を、どのように使うかが合格を確実にする鍵となります。以下に、効率的な10日間対策スケジュールを提案します。

合格発表当日~2日目:事例の復習

合格発表当日から即座に対策を開始します。まず、筆記試験の4事例全ての与件文を読み直し、企業の全体像を把握します。1事例につき2~3時間かけて、企業の概要、強み・弱み、経営課題、市場環境、組織体制などを整理します。予備校の模範解答や解説があれば、それらも確認し、自分の理解が正しいか検証します。各事例についてA4用紙1枚程度で要点をまとめ、いつでも見返せるようにしておきます。

3日目~5日目:想定問答集の活用

事例の復習が一通り終わったら、想定問答集を使った対策に移ります。各事例について典型的な質問とその回答例を確認し、自分の言葉で説明できるように練習します。質問のパターンを理解し、どのような視点で答えるべきかを把握することが重要です。この段階では、完璧な回答を目指すのではなく、主要なポイントを押さえた説明ができることを目標とします。分からない点や自信のない部分は、事例の与件文に戻って再確認します。

6日目~8日目:模擬面接・音読練習

中盤から後半にかけて、実践的な練習に時間を割きます。模擬面接に参加できる場合は、この時期に受講します。模擬面接に参加できない場合は、家族や友人に試験官役を依頼して、質問してもらいます。また、想定問答を声に出して繰り返し練習し、スムーズに説明できるようにします。1日1~2時間は声に出して練習する時間を確保しましょう。この時期には、全ての事例について一通り説明できる状態を目指します。

9日目~前日:最終確認とイメージトレーニング

試験直前の2日間は、これまでの復習と最終確認に充てます。まとめた要点ノートを見直し、重要ポイントを再確認します。新しいことを詰め込むのではなく、既に準備した内容を整理することに集中します。試験当日の流れをイメージトレーニングし、どのような質問が来ても落ち着いて対応できるよう心の準備をします。前日は早めに就寝し、十分な睡眠を取ることが重要です。体調管理も合格への重要な要素です。

中小企業診断士口述試験当日の注意点

試験当日は、これまでの準備を最大限に活かすため、いくつかの重要な注意点があります。事前に確認しておくことで、余計な不安を減らすことができます。

服装はスーツが無難(私服も可)

服装に明確な規定はありませんが、スーツで臨む受験生が大多数です。スーツであれば、服装で評価が下がる心配はありません。私服でも構いませんが、ビジネスカジュアル程度の清潔感のある服装が推奨されます。診断士は企業の経営者や管理職と接する職業であることを考えると、それに相応しい服装が望ましいでしょう。女性の場合、スーツやオフィスカジュアルな装いが一般的です。極端にカジュアルな服装は避けた方が無難です。

時間厳守・余裕を持った到着

試験会場には、指定された集合時間の30分前には到着するよう心がけましょう。交通機関の遅延や道に迷う可能性を考慮し、時間に余裕を持って出発します。遅刻は不合格の理由となるため、絶対に避けなければなりません。早めに到着した場合は、会場周辺で最終確認の時間として活用できます。受験票と身分証明書は忘れずに持参し、出発前に必ず確認しましょう。

待機時間の過ごし方

受付を済ませた後は、待機室で順番を待ちます。待機時間は30分から数時間に及ぶこともあります。この時間を有効活用するため、まとめた要点ノートを持参し、最終確認に使います。ただし、新しい情報を詰め込もうとするのではなく、既に準備した内容を思い出す程度にとどめましょう。深呼吸をしてリラックスし、余計な緊張を避けることも重要です。他の受験生と話すことで緊張がほぐれることもありますが、過度に情報交換すると不安が増すこともあるため、自分に合った過ごし方を選びましょう。

入室から退室までの流れ

試験室に呼ばれたら、ドアをノックして入室します。「失礼します」と一礼し、試験官の指示に従って着席します。試験官から簡単な説明があった後、質問が始まります。質問には落ち着いて答え、分からない場合は正直に伝えた上で、自分なりの考えを述べます。全ての質問が終了したら、試験官から「以上で終了です」と告げられます。「ありがとうございました」とお礼を述べて一礼し、退室します。入退室時の態度も評価の対象となるため、基本的なマナーは守りましょう。

中小企業診断士口述試験の緊張対策

どれだけ準備をしても、試験当日は緊張するものです。緊張を完全になくすことはできませんが、適度にコントロールすることで、実力を十分に発揮できます。

深呼吸とリラックス法

試験室に入る前や、質問に答える前に、深呼吸をすることが効果的です。ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと吐くことを数回繰り返すだけで、心拍数が落ち着き、冷静さを取り戻すことができます。肩の力を抜き、表情を柔らかくすることも意識しましょう。待機時間には、手首や首を軽く回すなど、簡単なストレッチで体の緊張をほぐすことも有効です。

「落ちない試験」と自分に言い聞かせる

合格率約99%という事実を思い出し、「この試験は落ちない試験だ」と自分に言い聞かせることが効果的です。試験官も受験生を落とそうとしているわけではなく、診断士としての基本的な姿勢を確認しているだけです。過度に緊張する必要はないと理解することで、気持ちが楽になります。「ここまで来たのだから大丈夫」という前向きな気持ちを持つことが重要です。

完璧な回答を目指さない

全ての質問に完璧に答えようとすると、かえって緊張が高まります。完璧を目指すのではなく、自分なりの考えを誠実に伝えることを目標にしましょう。分からない質問があっても問題ありません。正直に分からないと伝えた上で、自分の考えを述べる姿勢が評価されます。回答に詰まったら、「少し考えさせていただけますか」と一呼吸置くことも許されます。

笑顔と明るい受け答えを心がける

表情は評価に大きく影響します。可能な範囲で笑顔を心がけ、明るい受け答えをすることで、試験官に好印象を与えることができます。緊張していても、礼儀正しく丁寧な対応を心がければ、十分に評価されます。「よろしくお願いします」「ありがとうございました」といった基本的な挨拶をはっきりと述べることも、好印象につながります。

中小企業診断士二次試験に関してもっと詳しい記事はこちら
中小企業診断士二次試験の内容・対策・合格率を詳しく解説

中小企業診断士口述試験に関連するよくある質問(FAQ)

Q. 中小企業診断士の口述試験で本当に不合格になることはありますか?

はい、合格率約99%ではありますが、毎年わずかながら不合格者が出ています。2022年度では約700名中5名が不合格でした。不合格となる主な理由は、質問に対して完全に沈黙してしまう、態度や言葉遣いが著しく不適切、試験を放棄する、などのケースです。適切な準備をして真摯な態度で臨めば、合格は確実です。

Q. 中小企業診断士の口述試験で服装は必ずスーツでないとダメですか?

服装に明確な規定はなく、私服でも受験可能です。ただし、大多数の受験生がスーツで臨んでおり、スーツであれば服装で評価が下がる心配はありません。私服の場合は、ビジネスカジュアル程度の清潔感のある服装が推奨されます。極端にカジュアルな服装は避けた方が無難でしょう。

Q. 中小企業診断士の口述試験で答えられない質問があったらどうすればいいですか?

答えられない質問があっても、完全に沈黙することは避けましょう。「申し訳ございませんが、その点については記憶が曖昧です」と正直に伝えた上で、「ただし、私なりの考えとしては〜」と自分の意見を述べることが重要です。不完全でも何か答える姿勢を示すことが評価されます。

Q. 中小企業診断士の口述試験で想定問答集は必ず見るべきですか?

想定問答集は非常に有用な対策ツールです。過去に実際に出題された質問とその回答例を確認することで、どのような質問が出るか、どのように答えるべきかの指針を得られます。ただし、回答例を丸暗記するのではなく、考え方を理解して自分の言葉で説明できるように練習することが重要です。

Q. 中小企業診断士の口述試験で模擬面接は受けた方がいいですか?

時間と予算が許せば、模擬面接を受けることを強く推奨します。実際の試験形式で練習することで、緊張感に慣れることができ、試験官役の講師から具体的なフィードバックを受けられます。模擬面接に参加できない場合は、家族や友人に質問してもらうなど、声に出して練習することが重要です。

Q. 中小企業診断士の口述試験で筆記試験の事例を全て覚えていないといけませんか?

細かい数値や固有名詞を完全に記憶している必要はありません。試験官も完全な記憶を期待していません。企業の全体像、主要な強みと弱み、経営課題などの重要なポイントを理解していれば十分です。「正確な数値は覚えていませんが、概ね〜という状況でした」と前置きして説明すれば問題ありません。

Q. 中小企業診断士の口述試験の当日は何を持っていけばいいですか?

必須の持ち物は受験票と身分証明書です。試験室への資料持ち込みは禁止されていますが、待機時間に確認するため、まとめた要点ノートを持参すると良いでしょう。その他、筆記用具(メモ用)、腕時計(会場に時計がない場合)、交通費、飲み物などを持参すると安心です。

まとめ:中小企業診断士口述試験は事例の復習と落ち着いた受け答えが鍵

本記事では、中小企業診断士の口述試験について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. 口述試験は約10分間の個人面接形式:筆記試験の4事例をもとに質問を受け、合格率は約99%と非常に高い水準です。ただし、完全な沈黙や不適切な態度は不合格の理由となるため、適切な準備は必要です。
  2. 対策期間は10日間と短い:合格発表から約10日後に実施されるため、効率的な準備が求められます。事例の復習、想定問答の練習、声に出しての練習を段階的に行うことで、短期間でも十分な準備ができます。
  3. 真摯な態度と誠実な受け答えが評価される:完璧な回答よりも、診断士としての基本的な姿勢が重視されます。分からないことは正直に伝えた上で自分の考えを述べる、礼儀正しい対応を心がける、といった基本的な姿勢で十分に合格できます。

中小企業診断士の口述試験対策が理解できたら、次は具体的な準備を始めましょう。中小企業診断士二次試験の全体像効果的な勉強法を参考に、計画的に進めることをおすすめします。

本記事を通じて、口述試験の実態と効果的な対策方法を理解いただけたはずです。適切な準備と落ち着いた受け答えで、中小企業診断士資格取得という目標の実現に向けて、最後の関門を突破しましょう。

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