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中小企業診断士二次試験の内容・対策・合格率を詳しく解説

中小企業診断士二次試験について知りたいあなたへ。「二次試験はどのような内容なのか」「どのように対策すれば合格できるのか」という疑問は、試験の仕組みと効果的な学習方法を理解することで解決できます。

本記事では、中小企業診断士二次試験の筆記試験・口述試験の内容、4つの事例の特徴、合格率の推移と難易度、そして具体的な対策方法について、実際のデータを交えて詳しく解説します。この情報をもとに、中小企業診断士二次試験合格に向けて、戦略的な学習計画を立てましょう。

この記事を読むとわかること
  • 中小企業診断士二次試験の筆記試験・口述試験の具体的な内容と形式
  • 4つの事例(組織・マーケティング・生産・財務)の出題傾向と対策
  • 二次試験の合格率推移と難易度の実態
  • 解答の「型」をマスターする具体的な学習方法と過去問演習の進め方
押さえておきたい3つのポイント
  1. 筆記試験は4事例の記述式:中小企業診断士二次試験の筆記試験は、組織・マーケティング・生産・財務の4事例からなる記述式試験で、与件文を読み解き適切な解答を導き出す応用力が求められます。合格基準は総得点60%以上かつ各科目40%以上で、平均合格率は約19%と狭き門です。
  2. 解答の「型」の習得が合格の鍵:中小企業診断士二次試験では、与件文の読み方、設問要求の理解、解答骨子の作成という標準化されたプロセスを身につけることが重要です。過去問を10年分×複数回解き、ふぞろいな合格答案で多様な解答例を研究することで、合格レベルの解答力を養成できます。
  3. 口述試験は約99%が合格:中小企業診断士二次試験の口述試験は筆記試験合格者のみが受験でき、合格率は約99%です。筆記試験の事例をもとにした質問に対して適切に答えられれば合格できるため、筆記試験対策が口述試験対策にもつながります。
目次

中小企業診断士(SME診断士)二次試験の概要

中小企業診断士二次試験は、一次試験合格者のみが受験できる記述式の試験です。このセクションでは、二次試験の基本情報から受験資格、試験日程、受験料まで、受験に必要な情報を詳しく解説します。

二次試験の基本情報(筆記試験・口述試験の2段階)

中小企業診断士二次試験は、筆記試験と口述試験の2段階で構成されています。筆記試験は毎年10月に実施される記述式試験で、4つの事例問題に対して制限時間内に解答を作成します。各事例の試験時間は80分で、1日で4事例すべてを受験する集中的な試験形態です。

筆記試験に合格した受験者のみが口述試験に進むことができます。口述試験は毎年12月中旬に実施され、約10分間の個人面接形式で行われます。試験官2名に対して受験者1名という形式で、筆記試験の事例をもとにした質問に口頭で答える試験です。

この2段階の試験制度により、中小企業診断士として必要な記述力と口頭でのコミュニケーション能力の両方が評価されます。

受験資格(一次試験合格者のみ)

中小企業診断士二次試験の受験資格は、一次試験に合格していることが必須条件です。一次試験の合格は2年間有効なため、一次試験合格年とその翌年の2回、二次試験にチャレンジすることができます。

たとえば、2024年度の一次試験に合格した場合、2024年度と2025年度の二次試験を受験できます。この2年間で二次試験に合格できなかった場合、再度一次試験から受験する必要があります。

一次試験では7科目すべてに合格する必要がありますが、科目合格制度により部分合格も可能です。一次試験の詳細については後述の関連セクションで解説します。

試験日程と申込方法

中小企業診断士二次試験の筆記試験は、例年10月の第3日曜日に実施されます。試験時間は午前と午後に分かれており、午前に事例Ⅰと事例Ⅱ、午後に事例Ⅲと事例Ⅳが実施されます。各事例80分の試験時間で、昼休憩を挟んで1日で4事例すべてを受験します。

口述試験は例年12月中旬の日曜日に実施されます。筆記試験の合格発表から約1週間後に実施されるため、準備期間は非常に短いです。

申込方法は、一般社団法人中小企業診断協会のウェブサイトから電子申請で行います。申込期間は例年8月下旬から9月上旬の約2週間です。一次試験の合格発表前に申込期間が設定されているため、一次試験を受験した方は必ず申込期間を確認しておきましょう。

受験料と試験会場

中小企業診断士二次試験の受験料は17,800円です。受験料は申込時にクレジットカードまたはコンビニ決済で納付します。一度納付した受験料は、いかなる理由があっても返還されませんので注意が必要です。

試験会場は全国の主要都市に設置されます。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇の8都市が試験地として指定されています。受験地は申込時に選択でき、原則として変更はできません。

試験会場の詳細な場所は、受験票に記載されて試験の約2週間前に郵送されます。会場によってはアクセスが不便な場所もあるため、事前に交通手段を確認し、当日は余裕を持って到着できるよう計画しましょう。

中小企業診断士(SME診断士)二次試験の合格基準

中小企業診断士二次試験の合格基準は、一次試験とは異なる独自の評価システムで判定されます。このセクションでは、筆記試験と口述試験それぞれの合格基準、ABCDランク判定の仕組み、一次試験との違いについて詳しく解説します。

筆記試験の合格基準(総得点60%以上、各科目40%以上)

中小企業診断士二次試験の筆記試験における合格基準は、総得点の60%以上を獲得し、かつ1科目でも40%未満の得点がないことです。これは相対評価ではなく絶対評価による基準です。

各事例は100点満点で採点され、4事例合計で400点満点となります。合格するには240点以上が必要で、さらに各事例で40点以上を取る必要があります。つまり、3事例で高得点を取っても、1事例が40点未満だと不合格となる厳しい基準です。

実際の採点では、解答の内容だけでなく、与件文の活用度、論理的整合性、設問要求への適合性など、多角的な観点から評価されます。そのため、単に知識を詰め込むだけでなく、与件文を正確に読み解き、適切な解答を構成する力が求められます。

口述試験の合格基準(評価60%以上)

中小企業診断士二次試験の口述試験における合格基準は、評価項目の60%以上を獲得することです。評価項目は明確に公表されていませんが、一般的には回答内容の妥当性、論理性、コミュニケーション能力などが評価されると考えられています。

口述試験では、筆記試験の4事例に関連する質問が出題されます。試験時間は約10分間で、事例ごとに2〜3問程度の質問に答えます。完璧な回答を求められるわけではなく、自分の考えを論理的に説明できれば合格できます。

口述試験の合格率は約99%と非常に高く、筆記試験に合格した実力があれば、ほぼ確実に合格できる試験です。ただし、質問に全く答えられない、的外れな回答を続けるなど、極端に準備不足の場合は不合格になる可能性もあります。

ABCDランク判定の仕組み

中小企業診断士二次試験では、各事例の得点がA・B・C・Dの4段階でランク判定されます。このランク判定は合否判定とは別に行われ、不合格者にのみ通知されます。

ランク判定の基準は以下の通りです。Aランクは概ね60点以上、Bランクは50点以上60点未満、Cランクは40点以上50点未満、Dランクは40点未満とされています。合格するには、全事例でC以上のランクを取る必要があります。

不合格だった場合、どの事例が弱点だったのかをランク判定から把握できます。たとえば、事例ⅠがAランク、事例ⅡがBランク、事例ⅢがAランク、事例ⅣがDランクという結果であれば、事例Ⅳの財務・会計分野を重点的に強化する必要があることが分かります。

このランク判定を活用して、次年度の受験に向けて効果的な対策を立てることができます。

一次試験との合格基準の違い

中小企業診断士の一次試験と二次試験では、合格基準に重要な違いがあります。一次試験は科目合格制度があり、1科目ずつ合格を積み重ねることができますが、二次試験には科目合格制度がありません。

一次試験では、合格基準を満たした科目は翌年度と翌々年度の2年間、受験が免除されます。そのため、計画的に科目を分けて受験することも可能です。一方、二次試験は4事例すべてを同日に受験し、総合的に合格基準を満たす必要があります。

また、一次試験はマークシート形式の択一式試験ですが、二次試験は記述式試験です。一次試験では知識の正確性が重視されますが、二次試験では知識を活用して問題を分析し、解決策を提案する応用力が求められます。

この違いを理解し、一次試験合格後は早期に二次試験対策に切り替えることが重要です。

中小企業診断士二次試験(筆記試験)の4事例を徹底解説

中小企業診断士二次試験の筆記試験は、4つの事例問題で構成されています。このセクションでは、各事例の特徴と出題内容について詳しく解説します。

事例Ⅰ:組織・人事の経営戦略と管理

中小企業診断士二次試験の事例Ⅰは、組織・人事を中心とした経営戦略と管理に関する事例です。一次試験の「企業経営理論」の知識をベースに、企業の組織構造、人事制度、企業文化、経営戦略などについて問われます。

事例Ⅰでは、主に製造業を題材とした中小企業が登場します。創業からの成長過程、組織の変遷、後継者問題、人材育成などが与件文で描かれ、組織・人事面での課題と解決策を問う設問が出題されます。

典型的な出題テーマとしては、「組織構造の変更による効果」「人事制度改革の方向性」「企業文化の醸成方法」「事業承継における課題」などがあります。解答では、与件文に記載された企業の状況を踏まえ、組織論や人事管理の理論を適用した提案が求められます。

事例Ⅰの攻略には、一次試験で学んだ経営組織論、モチベーション理論、リーダーシップ論などの知識を、実際の企業課題に適用できる応用力が必要です。

事例Ⅱ:マーケティング・流通戦略

中小企業診断士二次試験の事例Ⅱは、マーケティングと流通戦略に関する事例です。一次試験の「企業経営理論」のマーケティング分野と「運営管理」の店舗管理分野の知識を活用します。

事例Ⅱでは、小売業やサービス業を題材とした中小企業が多く登場します。顧客ターゲット、商品戦略、価格戦略、販売促進、顧客関係管理などが主なテーマです。与件文では、企業の立地条件、顧客層、競合状況、販売実績などが詳細に記載されます。

典型的な出題テーマとしては、「新規顧客の獲得方法」「既存顧客の維持戦略」「商品ミックスの改善」「販売促進策の提案」「Webマーケティングの活用」などがあります。特に近年は、デジタルマーケティングやSNS活用に関する設問が増加傾向にあります。

事例Ⅱの攻略には、STP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)や4P分析(製品・価格・流通・プロモーション)といったマーケティングのフレームワークを使いこなす力が必要です。

事例Ⅲ:生産・技術のオペレーション管理

中小企業診断士二次試験の事例Ⅲは、生産管理と技術管理を中心としたオペレーション管理に関する事例です。一次試験の「運営管理」の生産管理分野の知識がベースになります。

事例Ⅲでは、製造業を題材とした中小企業が登場します。生産工程、品質管理、在庫管理、納期管理、生産性向上などが主なテーマです。与件文では、工場のレイアウト、生産フロー、設備の稼働状況、不良品の発生状況などが具体的に記載されます。

典型的な出題テーマとしては、「生産リードタイムの短縮」「在庫削減の方法」「品質改善の提案」「多品種少量生産への対応」「生産性向上施策」などがあります。QCD(品質・コスト・納期)の観点から、現状の問題点を分析し、改善策を提案する能力が求められます。

事例Ⅲの攻略には、生産管理の基本的な知識に加えて、IE(インダストリアル・エンジニアリング)手法やQC手法を実務的に適用できる力が必要です。与件文に記載された数値データを活用して、定量的な分析と提案を行うことが重要です。

事例Ⅳ:財務・会計(計算問題含む)

中小企業診断士二次試験の事例Ⅳは、財務・会計に関する事例で、4事例の中で唯一計算問題が出題されます。一次試験の「財務・会計」の知識を直接活用する事例です。

事例Ⅳは大きく2つのパートに分かれています。第1パートは経営分析で、与えられた財務諸表データから収益性、効率性、安全性などの経営指標を計算し、企業の財務状況を分析します。第2パートは投資判断や資金繰り、CVP分析(損益分岐点分析)、NPV(正味現在価値)計算などの応用問題です。

典型的な出題テーマとしては、「経営分析と改善提案」「設備投資の経済性計算」「資金調達方法の検討」「CVP分析による利益計画」「キャッシュフロー計算」などがあります。計算問題が約50〜60点、記述問題が約40〜50点の配点となっています。

事例Ⅳの攻略には、正確な計算力とスピードが必要です。計算ミスを防ぐため、普段から電卓操作に慣れ、計算過程を丁寧に記述する習慣をつけることが重要です。また、計算結果をもとにした記述問題では、数値の意味を正しく解釈し、経営的な視点から提案できる力が求められます。

中小企業診断士二次試験と一次試験の科目関連性

中小企業診断士二次試験の4つの事例は、一次試験の科目と密接に関連しています。このセクションでは、各事例と一次試験科目の対応関係を解説します。

事例Ⅰと企業経営理論の関係

中小企業診断士二次試験の事例Ⅰは、一次試験の「企業経営理論」の経営組織論と人的資源管理の分野に対応しています。一次試験で学習した組織構造、経営戦略、人事制度、モチベーション理論などの知識が、事例Ⅰの解答作成に直接活用されます。

一次試験では理論や用語の暗記が中心でしたが、二次試験では与件文に描かれた企業の状況に対して、適切な理論を選択し、具体的な施策として提案する応用力が求められます。たとえば、一次試験で学んだマズローの欲求階層説やハーズバーグの二要因理論を、事例企業の人事課題解決に活用する形です。

事例Ⅰで高得点を取るには、一次試験の企業経営理論の知識を確実に定着させ、実務的な場面で活用できるレベルまで理解を深めることが重要です。

事例Ⅱと企業経営理論・運営管理の関係

中小企業診断士二次試験の事例Ⅱは、一次試験の「企業経営理論」のマーケティング分野と「運営管理」の店舗・販売管理の分野に対応しています。マーケティングの4P、STP分析、顧客関係管理などの知識が事例Ⅱの基礎となります。

一次試験の企業経営理論では、マーケティング理論全般を学習しますが、事例Ⅱでは特に小売業やサービス業の実務的なマーケティング戦略が問われます。また、運営管理で学習した店舗レイアウト、商品陳列、接客サービスなどの知識も、事例Ⅱの解答に活用されます。

事例Ⅱで高得点を取るには、一次試験で学んだマーケティングのフレームワークを使いこなし、与件文の情報から顧客ニーズを的確に把握し、実現可能な戦略を提案する力が必要です。

事例Ⅲと運営管理の関係

中小企業診断士二次試験の事例Ⅲは、一次試験の「運営管理」の生産管理分野に対応しています。生産方式、工程管理、品質管理、在庫管理などの知識が事例Ⅲの解答作成に直接活用されます。

一次試験の運営管理では、生産管理の基本的な用語や手法を学習しますが、事例Ⅲでは与件文に記載された生産現場の具体的な課題を分析し、改善策を提案する実践力が求められます。たとえば、ジャストインタイム生産方式やリーンシックスシグマといった手法を、事例企業の状況に合わせて適用します。

事例Ⅲで高得点を取るには、一次試験の運営管理で学んだ生産管理の知識を確実に理解し、QCDの観点から現状を分析して具体的な改善提案ができる力が必要です。

事例Ⅳと財務・会計の関係

中小企業診断士二次試験の事例Ⅳは、一次試験の「財務・会計」の知識を直接活用する事例です。経営分析、原価計算、損益分岐点分析、投資判断、資金調達などの知識が、事例Ⅳの計算問題と記述問題の両方で必要とされます。

一次試験の財務・会計では、会計の基礎知識から財務分析、管理会計まで幅広く学習しますが、事例Ⅳでは特に経営分析と意思決定会計の分野が重視されます。計算問題では正確性とスピードが求められ、記述問題では計算結果を経営的な視点から解釈する力が必要です。

事例Ⅳで高得点を取るには、一次試験の財務・会計の内容を完全に理解し、素早く正確に計算できる力と、数値を経営課題解決に活用できる応用力の両方を身につける必要があります。

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中小企業診断士一次試験の科目・難易度・合格率と対策方法

中小企業診断士二次試験(口述試験)の内容と対策

中小企業診断士二次試験の口述試験は、筆記試験合格者のみが受験できる最終試験です。このセクションでは、口述試験の形式、出題内容、合格率、対策方法について詳しく解説します。

口述試験の形式(個人面接・約10分間)

中小企業診断士二次試験の口述試験は、個人面接形式で実施されます。試験時間は1人約10分間で、試験官2名に対して受験者1名という形式です。試験会場では、受験者が椅子に座り、試験官と対面して質問に答えます。

口述試験の流れは、まず受験者が受験番号と氏名を名乗り、その後試験官から質問が出されます。質問は筆記試験の4事例に関連した内容で、各事例について2〜3問程度、合計で10問前後の質問がなされることが一般的です。

回答時間に特別な制限はありませんが、簡潔かつ論理的に答えることが求められます。試験官は受験者の回答を聞きながらメモを取り、評価シートに記入します。試験終了後、受験者は退室し、次の受験者が入室する流れです。

緊張しやすい状況ですが、試験官は受験者を落とすための試験ではなく、合格させるための試験という姿勢で臨んでいます。リラックスして自分の考えを伝えることが重要です。

筆記試験の事例をもとにした質問

中小企業診断士二次試験の口述試験では、筆記試験で出題された4つの事例をもとにした質問が出されます。筆記試験の設問とは異なる角度から、事例企業の課題や解決策について問われることが多いです。

典型的な質問例としては、「事例Ⅰの企業が組織変革を成功させるために重要なポイントは何ですか」「事例Ⅱの企業が新規顧客を獲得するために、どのようなプロモーション戦略が有効ですか」「事例Ⅲの企業で生産リードタイムを短縮するために、どのような改善策が考えられますか」「事例Ⅳの企業の財務状況について、どのような課題がありますか」といった内容です。

質問に対しては、与件文の内容を思い出しながら、中小企業診断士としての視点で回答することが求められます。筆記試験で書いた解答と同じである必要はなく、むしろ別の視点からの分析や提案を示すことで、幅広い知識と応用力をアピールできます。

口述試験の合格率は約99%

中小企業診断士二次試験の口述試験における合格率は約99%と非常に高いです。筆記試験に合格した実力があれば、ほぼ確実に合格できる試験と言えます。過去のデータを見ても、口述試験で不合格になるケースは極めて稀です。

口述試験で不合格になるのは、質問に全く答えられない、試験を放棄する、試験官とトラブルを起こすなど、極端なケースに限られます。多少言葉に詰まったり、完璧な回答ができなくても、誠実に自分の考えを説明しようとする姿勢があれば合格できます。

ただし、合格率が高いからといって準備を怠ってはいけません。筆記試験の内容を復習し、各事例の企業課題と解決策を整理しておくことで、自信を持って試験に臨むことができます。

口述試験の対策ポイント

中小企業診断士二次試験の口述試験対策として、まず筆記試験の4事例の内容を復習することが重要です。与件文を読み直し、企業の概要、主要な課題、自分が提案した解決策を整理しておきましょう。

次に、想定質問に対する回答を準備します。各事例について、「企業の強みと弱みは何か」「主要な課題は何か」「課題解決のための施策は何か」といった基本的な質問に答えられるようにしておきます。回答は暗記する必要はありませんが、要点を整理しておくことで、本番でスムーズに答えられます。

また、模擬面接を行うことも効果的です。予備校や通信講座で実施される口述試験対策セミナーに参加したり、受験仲間と練習したりすることで、面接形式に慣れることができます。実際に声に出して答える練習をすることで、本番での緊張を軽減できます。

当日は、落ち着いて試験官の質問をよく聞き、分からないことがあれば確認することも大切です。「もう一度質問をお願いします」「〜という理解で合っていますか」といった確認は問題ありません。誠実な姿勢で臨めば、口述試験は必ず合格できます。

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中小企業診断士口述試験の内容と対策|合格率と注意点

中小企業診断士二次試験の合格率推移と難易度

中小企業診断士二次試験の難易度を理解するには、合格率の推移を知ることが重要です。このセクションでは、過去の合格率データと難易度の実態について詳しく解説します。

過去10年の合格率推移(平均約19%)

中小企業診断士二次試験の筆記試験における合格率は、過去10年間の平均で約19%です。年度によって変動はありますが、概ね15%から25%の範囲で推移しています。たとえば、2023年度は18.7%、2022年度は18.3%、2021年度は18.4%という結果でした。

口述試験を含めた最終合格率も、筆記試験の合格率とほぼ同じです。これは口述試験の合格率が約99%と非常に高いためです。したがって、中小企業診断士二次試験の合格率は、実質的に筆記試験の合格率で決まると言えます。

合格率の推移を見ると、極端な変動は少なく、安定して約19%前後を維持しています。これは、試験問題の難易度調整が適切に行われていることを示しています。ただし、年度によって問題の難易度には差があり、受験者の体感的な難しさは年によって異なることがあります。

一次試験よりも低い合格率の理由

中小企業診断士の一次試験における合格率は、過去10年間の平均で約25〜30%です。二次試験の合格率約19%と比較すると、二次試験の方が難関であることが分かります。この合格率の差には、いくつかの理由があります。

第一に、試験形式の違いです。一次試験は択一式のマークシート試験で、知識があれば正解できます。一方、二次試験は記述式試験で、知識を活用して与件文を分析し、適切な解答を構成する応用力が求められます。記述式試験は採点者の主観が入る余地もあり、合格基準を満たす解答を作成する難易度が高いです。

第二に、科目合格制度の有無です。一次試験には科目合格制度があり、一度合格した科目は2年間有効です。そのため、複数年かけて全科目合格を目指すことができます。二次試験には科目合格制度がなく、4事例すべてで合格基準を満たす必要があります。

第三に、学習方法の確立度です。一次試験は出題範囲が明確で、過去問を繰り返し解くことで対策できます。二次試験は模範解答が公表されず、「正解」が一つではないため、学習方法の確立が難しいという特徴があります。

最終合格率は約5%の狭き門

中小企業診断士試験全体の最終合格率は、一次試験と二次試験の合格率を掛け合わせると約5%になります。たとえば、一次試験の合格率が25%、二次試験の合格率が19%の場合、最終合格率は4.75%です。これは非常に狭き門と言えます。

ただし、この5%という数値には注意が必要です。一次試験と二次試験を同じ年度で連続して合格する人だけでなく、一次試験合格から数年後に二次試験に合格する人も含まれます。また、一次試験には科目合格制度があるため、複数年かけて合格を目指す戦略も可能です。

実際には、一次試験に合格した人の約40〜50%が最終的に二次試験にも合格しています。したがって、一次試験に合格できれば、適切な対策を行うことで二次試験合格の可能性は十分にあると言えます。

記述式試験の難しさ

中小企業診断士二次試験が難しいとされる最大の理由は、記述式試験という形式にあります。択一式試験では、知識があれば正解を選択できますが、記述式試験では与件文を読み解き、設問の要求を理解し、適切な解答を自分で構成する必要があります。

記述式試験の難しさは、以下の点にあります。第一に、与件文の情報量が多く、限られた時間内で重要な情報を見極める必要があることです。第二に、設問の要求を正確に理解し、求められている解答の方向性を把握することです。第三に、解答の字数制限内で、論理的で分かりやすい文章を作成することです。

さらに、二次試験では模範解答が公表されないため、自分の解答の出来栄えを客観的に評価することが困難です。そのため、予備校や通信講座の添削指導を受けて、第三者の評価を得ることが重要になります。

記述式試験の攻略には、過去問を繰り返し解き、解答の「型」を習得することが効果的です。後述するセクションで、具体的な対策方法を詳しく解説します。

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中小企業診断士試験の難易度|他資格との比較と合格への道筋

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中小企業診断士二次試験に必要な勉強時間

中小企業診断士二次試験の合格には、一次試験とは異なる学習アプローチが必要です。このセクションでは、二次試験に必要な勉強時間と効果的な学習スケジュールについて解説します。

二次試験の勉強時間は300~400時間

中小企業診断士二次試験の対策に必要な勉強時間は、一般的に300〜400時間とされています。一次試験の勉強時間が800〜1,000時間程度であることと比較すると、二次試験の勉強時間は相対的に短いですが、質の高い学習が求められます。

300〜400時間という時間は、一次試験の知識がある程度定着している前提での目安です。一次試験合格後、すぐに二次試験対策を始めた場合、約3〜4ヶ月で必要な学習時間を確保できます。ただし、一次試験からブランクがある場合や、一次試験の知識が不十分な場合は、さらに時間がかかることもあります。

勉強時間の内訳としては、過去問演習に約200時間、ふぞろいな合格答案などの教材研究に約50時間、模試受験と復習に約50時間、その他の学習に約50〜100時間といった配分が一般的です。

一次試験終了後からの学習スケジュール

中小企業診断士の一次試験は例年8月上旬に実施され、二次試験は10月中旬に実施されます。一次試験終了後から二次試験までの期間は約2ヶ月半しかありません。この限られた期間で効果的に学習を進めることが、二次試験合格の鍵となります。

理想的な学習スケジュールは、一次試験の自己採点で合格の可能性が高いと判断したら、すぐに二次試験対策を始めることです。8月中旬から学習を開始すれば、10月中旬の試験日までに約2ヶ月の学習期間を確保できます。

週あたりの学習時間としては、平日に1日2時間、週末に1日4〜5時間確保できれば、1週間で約20時間の学習が可能です。これを8週間続けると、合計160時間になります。さらに、試験直前の2週間で集中的に学習すれば、合計200〜250時間の学習時間を確保できます。

働きながら受験する場合は、朝の時間や通勤時間を活用するなど、工夫して学習時間を捻出することが重要です。

事例別の勉強時間配分

中小企業診断士二次試験の4事例それぞれに、バランスよく学習時間を配分することが重要です。ただし、自分の得意・不得意や、一次試験での各科目の出来栄えに応じて、時間配分を調整することも必要です。

基本的な時間配分の目安としては、事例Ⅰに約25%、事例Ⅱに約25%、事例Ⅲに約25%、事例Ⅳに約25%と均等に配分するのが理想です。ただし、事例Ⅳは計算問題があるため、計算が苦手な人はやや多めに時間を配分することをおすすめします。

また、過去問演習を進める中で、自分の弱点事例が明確になったら、その事例に重点的に時間を配分します。たとえば、事例Ⅲの生産管理が苦手であれば、一次試験の運営管理の復習も含めて、事例Ⅲの学習時間を増やします。

重要なのは、特定の事例だけに偏らず、4事例すべてで合格基準を満たす実力を養成することです。1つの事例が苦手でも他の事例でカバーできるという考え方は危険です。各事例で最低40点以上を取る必要があるため、苦手事例を作らないことが合格への近道です。

過去問演習の時間確保が重要

中小企業診断士二次試験対策において、最も重要なのは過去問演習です。過去問演習に十分な時間を確保できるかどうかが、合格を左右すると言っても過言ではありません。

過去問演習の時間確保のポイントは、まず過去問を10年分以上準備することです。10年分の過去問があれば、各事例10回分、合計40回分の演習ができます。これを2周以上繰り返せば、80回分以上の演習量になります。

1事例の演習には、試験時間80分に加えて、復習時間が約2〜3時間必要です。したがって、1事例あたり3〜4時間の学習時間が必要です。これを80回分行うと、240〜320時間の学習時間になります。

過去問演習を効果的に進めるには、計画的にスケジュールを立てることが重要です。たとえば、最初の1ヶ月で過去問10年分を1周し、次の1ヶ月で弱点事例を中心に2周目を行い、試験直前の2週間で重要な年度を3周目として解き直すといった計画です。

時間が限られている中で、いかに質の高い過去問演習を繰り返すかが、二次試験合格の鍵となります。

中小企業診断士の勉強時間に関してもっと詳しい記事はこちら
中小企業診断士試験に必要な勉強時間|合格までのスケジュール

中小企業診断士二次試験の解答の「型」をマスターする

中小企業診断士二次試験で合格するには、解答の「型」を習得することが重要です。このセクションでは、解答プロセスの標準化について詳しく解説します。

解答プロセスの標準化が重要

中小企業診断士二次試験では、試験時間80分という限られた時間の中で、与件文を読み、設問を理解し、解答を作成する必要があります。この一連のプロセスを標準化し、毎回同じ手順で解答することが、安定して高得点を取るための鍵となります。

解答プロセスの標準化とは、「与件文の読み方」「設問分析の方法」「解答骨子の作成方法」「解答の記述方法」という4つのステップを、自分なりのルールとして確立することです。このプロセスを何度も繰り返し練習することで、本番でも焦らず確実に解答できるようになります。

標準化されたプロセスを持つことで、試験当日に難しい問題に直面しても、冷静に対処できます。また、時間配分も安定し、最後まで丁寧に解答を作成できるようになります。過去問演習を通じて、自分に合った解答プロセスを確立しましょう。

与件文の読み方と情報整理

中小企業診断士二次試験において、与件文を正確に読み解くことは解答作成の基礎です。与件文には、企業の沿革、事業内容、経営者の考え、現状の課題など、膨大な情報が含まれています。これらの情報を適切に整理し、設問に答えるために必要な情報を見極めることが重要です。

効果的な与件文の読み方としては、まず1回目は全体を通読し、企業の概要と主要な課題を把握します。2回目は設問を確認した後で精読し、設問に関連する部分に線を引いたり、キーワードに印をつけたりします。3回目は設問ごとに必要な情報を抽出し、解答の材料として整理します。

情報整理の方法としては、与件文の余白にメモを書き込む、段落ごとにキーワードを書き出す、時系列で情報を整理するなどの方法があります。自分に合った方法を見つけ、過去問演習で繰り返し練習することで、短時間で的確に情報を整理できるようになります。

設問要求の正確な理解

中小企業診断士二次試験では、設問が何を求めているのかを正確に理解することが、正解への第一歩です。設問文には、「〜について説明せよ」「〜のメリット・デメリットを述べよ」「〜の改善策を提案せよ」など、様々な要求が含まれています。

設問要求を正確に理解するには、設問文のキーワードに注目します。「説明せよ」という要求であれば現状分析が必要で、「提案せよ」という要求であれば具体的な施策を示す必要があります。また、「〜の観点から」「〜に配慮して」といった制約条件も見逃してはいけません。

設問分析のポイントは、解答の方向性を明確にすることです。与件文のどの情報を使うべきか、どのような理論やフレームワークを適用すべきか、解答の構成はどうすべきかを、設問文から読み取ります。設問要求を誤解すると、どれだけ丁寧に解答を書いても点数に結びつかないため、設問分析には十分な時間をかけるべきです。

解答骨子の作成方法

中小企業診断士二次試験で高得点を取るには、いきなり解答用紙に書き始めるのではなく、まず解答骨子を作成することが重要です。解答骨子とは、解答の構成や盛り込むべき要素を簡潔にまとめたメモのことです。

解答骨子の作成方法としては、設問ごとに解答の構成を考えます。たとえば、「現状の課題」「課題の原因」「改善策」「期待される効果」という4つの要素を盛り込むと決めたら、それぞれに対応する与件文の情報や使用する理論を書き出します。

解答骨子を作成することで、解答の論理構成が明確になり、書きながら迷うことがなくなります。また、字数配分も事前に検討できるため、解答用紙を効率的に使えます。解答骨子の作成には5〜10分程度かかりますが、この時間をかけることで、最終的にはより質の高い解答を作成できます。

過去問演習では、解答骨子を作成する練習も含めて行いましょう。最初は時間がかかるかもしれませんが、繰り返すことで短時間で的確な骨子を作成できるようになります。

中小企業診断士二次試験の効果的な対策方法

中小企業診断士二次試験に合格するには、効果的な対策方法を実践することが重要です。このセクションでは、具体的な学習方法について詳しく解説します。

過去問を繰り返し解く(10年分×複数回)

中小企業診断士二次試験対策の基本は、過去問を繰り返し解くことです。過去問演習を通じて、出題傾向を把握し、解答の「型」を習得し、時間配分の感覚を身につけることができます。

過去問演習の効果的な進め方は、まず最新10年分の過去問を準備します。古すぎる過去問は出題傾向が現在と異なる場合があるため、直近10年分を中心に演習するのが効果的です。10年分の過去問を2〜3周繰り返すことで、各事例の出題パターンが見えてきます。

1周目は、本番と同じ80分の制限時間で解きます。時間配分の感覚を掴むことと、現時点での実力を把握することが目的です。2周目は、復習を重視します。模範解答例や優秀答案と自分の解答を比較し、どこが不足していたかを分析します。3周目は、弱点事例や重要な年度を選んで解き直し、確実に得点できる実力を養成します。

過去問演習では、必ず時間を計って本番と同じ環境で解くことが重要です。自宅で集中できる時間帯を選び、試験会場と同じように解答用紙に記入する練習も行いましょう。

ふぞろいな合格答案の活用法

「ふぞろいな合格答案」は、中小企業診断士二次試験の受験生にとって必携の教材です。この書籍には、実際の合格者が作成した解答例が多数掲載されており、合格レベルの解答がどのようなものかを理解できます。

ふぞろいな合格答案の特徴は、模範解答ではなく、実際の合格者の多様な解答例を示している点です。二次試験には唯一の正解があるわけではなく、複数の合格レベルの解答が存在します。ふぞろいな合格答案を読むことで、解答の幅の広さを理解し、自分なりの解答スタイルを確立できます。

活用方法としては、過去問を解いた後で、ふぞろいな合格答案に掲載されている解答例と自分の解答を比較します。どのような要素が盛り込まれているか、どのような表現が使われているか、論理構成はどうなっているかを分析します。特に、自分が気づかなかった視点や、与件文の使い方に注目すると、解答力が向上します。

ふぞろいな合格答案は、各年度版が出版されているため、自分が受験する年度に向けて最新版を購入することをおすすめします。

添削指導を受ける重要性

中小企業診断士二次試験は記述式試験であるため、自分の解答を客観的に評価してもらうことが重要です。独学で過去問を解いているだけでは、自分の解答の問題点に気づきにくいため、予備校や通信講座の添削指導を受けることを強くおすすめします。

添削指導では、プロの講師が解答内容、論理構成、文章表現、与件文の活用度などを評価し、具体的な改善点を指摘してくれます。どこが良かったのか、どこが不足していたのかを明確に理解できるため、次回の演習で改善できます。

添削指導を受ける際のポイントは、同じ事例を複数回添削してもらい、改善の過程を確認することです。また、添削結果をノートにまとめ、自分の弱点を可視化することも効果的です。たとえば、「設問要求の読み取りが甘い」「与件文の活用が不足している」「結論が曖昧」といった指摘が繰り返されるようであれば、その点を重点的に改善します。

独学で二次試験に合格する人もいますが、添削指導を受けることで合格の確率は大幅に高まります。予算が許す限り、添削指導を積極的に活用しましょう。

模試で時間配分を体得する

中小企業診断士二次試験では、80分という限られた時間で与件文を読み、設問を分析し、解答を作成する必要があります。この時間配分を体得するには、本番と同じ環境で受験できる模試が非常に有効です。

模試の活用方法としては、まず複数の予備校が実施する模試を受験します。大手予備校では、8月から10月にかけて複数回の模試が実施されます。模試を受験することで、本番の雰囲気に慣れることができます。また、他の受験生と同じ会場で受験することで、緊張感のある環境での実力を測定できます。

模試受験後は、必ず復習を行います。模試の解答解説を読み、自分の解答と比較し、改善点を見つけます。特に、時間配分で失敗した部分があれば、次回の模試や本番に向けて改善策を考えます。

時間配分の目安としては、与件文の読み込みに約15分、設問分析と解答骨子の作成に約10分、解答の記述に約50分、見直しに約5分という配分が一般的です。ただし、自分に合った時間配分を見つけることが重要です。模試を通じて、自分なりの最適な時間配分を確立しましょう。

中小企業診断士の過去問活用法に関してもっと詳しい記事はこちら
中小企業診断士試験の過去問活用法|入手方法と効果的な解き方

中小企業診断士二次試験の事例別対策ポイント

中小企業診断士二次試験の4つの事例は、それぞれ特徴が異なります。このセクションでは、事例ごとの効果的な対策ポイントを解説します。

事例Ⅰ対策:組織論・人事戦略の理解

中小企業診断士二次試験の事例Ⅰで高得点を取るには、組織論と人事戦略の理論を深く理解し、実務的に適用できる力が必要です。一次試験の企業経営理論で学んだ内容を復習し、組織構造、リーダーシップ、モチベーション、企業文化などの理論を使いこなせるようにしましょう。

事例Ⅰの特徴は、企業の歴史や経営者の人物像が詳細に描かれることです。与件文から、企業の成長過程、組織の変遷、人材の状況などを読み取り、現在の組織・人事上の課題を分析します。解答では、理論を踏まえつつ、与件文の情報に基づいた具体的な提案が求められます。

対策のポイントは、過去問を解く際に、組織図を描いてみる、経営者や従業員の視点で考えてみるなど、企業の内部を深く理解する姿勢を持つことです。また、組織変革のプロセスや人事制度の設計など、実務的な知識も身につけておくと、より説得力のある解答を作成できます。

事例Ⅱ対策:ターゲット設定とマーケティング戦略

中小企業診断士二次試験の事例Ⅱで高得点を取るには、ターゲット顧客を明確に設定し、適切なマーケティング戦略を提案する力が必要です。STP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)と4P分析(製品・価格・流通・プロモーション)のフレームワークを確実に使いこなせるようにしましょう。

事例Ⅱの特徴は、小売業やサービス業を題材とすることが多く、顧客との接点が重視される点です。与件文から、既存顧客の特性、商圏の状況、競合の動向などを読み取り、新規顧客獲得や既存顧客維持のための戦略を提案します。

対策のポイントは、ターゲット顧客を具体的に設定することです。「若年層」といった曖昧な表現ではなく、「30代の共働き夫婦」「60代のアクティブシニア」といった具体的なターゲット像を描くことで、説得力のある戦略を提案できます。また、近年はデジタルマーケティングやSNS活用に関する設問が増えているため、最新のマーケティング手法にも注目しましょう。

事例Ⅲ対策:生産管理とQCDの改善提案

中小企業診断士二次試験の事例Ⅲで高得点を取るには、生産管理の基本原則を理解し、QCD(品質・コスト・納期)の観点から改善提案ができる力が必要です。一次試験の運営管理で学んだ生産方式、工程管理、品質管理などの知識を復習し、実務的に適用できるようにしましょう。

事例Ⅲの特徴は、製造業を題材とし、生産現場の具体的な状況が詳細に描かれることです。与件文には、工場レイアウト、生産フロー、設備の稼働状況、在庫の状況などが記載されます。これらの情報から、生産上の問題点を分析し、改善策を提案します。

対策のポイントは、与件文に記載された数値データを活用することです。たとえば、リードタイム、稼働率、不良率などの数値から、定量的に問題点を把握します。また、改善提案では、具体的な手法(ジャストインタイム、かんばん方式、5S活動など)を示すことで、実現可能性の高い提案になります。

事例Ⅲは、他の事例に比べて専門用語が多く、初学者には難しく感じられることがあります。生産管理の用語と概念をしっかり理解し、過去問演習を繰り返すことで、確実に得点できる実力を養成しましょう。

事例Ⅳ対策:財務計算と経営分析

中小企業診断士二次試験の事例Ⅳで高得点を取るには、正確な計算力と経営分析力の両方が必要です。計算問題では、経営指標の算出、CVP分析、NPV計算などが出題されます。記述問題では、計算結果をもとにした経営課題の分析と改善提案が求められます。

事例Ⅳの特徴は、4事例の中で唯一計算問題が出題されることです。計算問題は配点が高く、正確に解答できれば確実に得点できるため、計算力の強化が重要です。一次試験の財務・会計で学んだ内容を復習し、素早く正確に計算できるようにしましょう。

対策のポイントは、電卓操作に慣れることです。普段から電卓を使って練習し、本番でミスをしない計算スピードを身につけます。また、計算問題では、途中の計算過程も記述することで、部分点をもらえる可能性があります。最終的な答えが間違っていても、計算過程が正しければ評価されるため、丁寧に記述しましょう。

記述問題では、計算結果を経営的な視点から解釈する力が求められます。たとえば、ROEが低下している場合、その原因を分析し、改善策を提案します。財務データを読み解き、経営課題を発見する練習を繰り返すことで、記述問題にも対応できるようになります。

中小企業診断士二次試験に関連するよくある質問(FAQ)

中小企業診断士二次試験に関して、受験生からよく寄せられる質問について回答します。

Q. 中小企業診断士二次試験は一次試験終了後から勉強して間に合いますか?

中小企業診断士二次試験は、一次試験終了後から本格的に勉強を始めても十分間に合います。一次試験から二次試験までは約2ヶ月半の期間があり、この間に集中して学習すれば、合格レベルの実力を養成できます。実際に、多くの合格者が一次試験後から二次試験対策を本格化させています。ただし、一次試験の自己採点で合格の可能性が高いと判断したら、すぐに二次試験対策を始めることが重要です。過去問演習を中心に、効率的に学習を進めましょう。

Q. 中小企業診断士二次試験に科目合格制度はありますか?

中小企業診断士二次試験には科目合格制度はありません。4つの事例すべてを同日に受験し、総合的に合格基準を満たす必要があります。一次試験には科目合格制度があり、合格した科目は2年間有効ですが、二次試験は4事例すべてで合格基準(総得点60%以上かつ各事例40%以上)を満たす必要があります。そのため、特定の事例だけに偏った学習ではなく、4事例すべてでバランスよく得点できる実力を養成することが重要です。

Q. 中小企業診断士二次試験は独学で合格できますか?

中小企業診断士二次試験に独学で合格することは可能ですが、予備校や通信講座を活用した方が効率的です。二次試験は記述式試験であり、自分の解答を客観的に評価してもらうことが重要です。独学の場合、過去問演習を繰り返し、ふぞろいな合格答案などの教材を活用して、合格レベルの解答を研究する必要があります。ただし、添削指導を受けられない分、合格までに時間がかかる可能性があります。予算が許す限り、添削指導付きの通信講座などを活用することをおすすめします。中小企業診断士の独学勉強法では、独学のメリット・デメリットと効果的な学習方法を詳しく解説しています。

Q. 中小企業診断士二次試験のふぞろいな合格答案とは何ですか?

ふぞろいな合格答案とは、中小企業診断士二次試験の合格者が実際に作成した解答例を集めた書籍です。試験実施機関は模範解答を公表していないため、ふぞろいな合格答案は受験生にとって貴重な参考資料となっています。この書籍の特徴は、完璧な模範解答ではなく、実際の合格者の多様な解答例を示している点です。二次試験には唯一の正解があるわけではないため、複数の合格レベルの解答を見ることで、解答の幅や評価のポイントを理解できます。過去問演習と併せて活用することで、合格レベルの解答力を養成できます。

Q. 中小企業診断士二次試験の口述試験で不合格になることはありますか?

中小企業診断士二次試験の口述試験で不合格になることは極めて稀です。口述試験の合格率は約99%と非常に高く、筆記試験に合格した実力があれば、ほぼ確実に合格できます。不合格になるのは、質問に全く答えられない、試験を放棄する、試験官に対して不適切な態度を取るなど、極端なケースに限られます。多少言葉に詰まったり、完璧な回答ができなくても、誠実に自分の考えを説明しようとする姿勢があれば合格できます。筆記試験の内容を復習し、自信を持って試験に臨みましょう。

Q. 中小企業診断士二次試験の模範解答は公表されますか?

中小企業診断士二次試験の模範解答は、試験実施機関である中小企業診断協会からは公表されていません。これは、二次試験が記述式試験であり、唯一の正解があるわけではないためです。複数の合格レベルの解答が存在するため、特定の模範解答を示すことが適切でないと考えられています。そのため、受験生は予備校が作成する解答速報や、ふぞろいな合格答案などの教材を参考にして、自分の解答を振り返ることになります。模範解答がないことは不安に感じるかもしれませんが、多様な解答例を研究することで、柔軟な解答力を養成できます。

Q. 中小企業診断士二次試験の事例Ⅳの計算問題が苦手ですが大丈夫ですか?

中小企業診断士二次試験の事例Ⅳで計算問題が苦手な場合でも、十分に対策すれば合格できます。計算問題は配点が高いですが、基本的な問題を確実に解答できれば、合格基準の40点以上は十分に達成可能です。対策としては、一次試験の財務・会計の内容を復習し、基本的な計算パターンを繰り返し練習することが重要です。また、計算問題では部分点がもらえるため、途中の計算過程を丁寧に記述することで、最終的な答えが間違っていても評価される可能性があります。過去問演習を通じて、頻出の計算パターンを習得し、電卓操作に慣れることで、計算力は確実に向上します。

まとめ:中小企業診断士二次試験は解答の「型」と過去問演習が合格の鍵

本記事では、中小企業診断士二次試験の内容・対策・合格率について詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。

  1. 二次試験の特徴を理解する:中小企業診断士二次試験は、4つの事例からなる記述式の筆記試験と口述試験で構成されています。筆記試験の合格基準は総得点60%以上かつ各事例40%以上で、合格率は約19%です。口述試験の合格率は約99%と高いため、筆記試験が実質的な関門となります。
  2. 解答の「型」を習得する:二次試験で合格するには、与件文の読み方、設問分析の方法、解答骨子の作成、解答の記述という一連のプロセスを標準化することが重要です。過去問を10年分×複数回解き、ふぞろいな合格答案で多様な解答例を研究することで、合格レベルの解答力を養成できます。
  3. 事例別の対策を徹底する:事例Ⅰは組織・人事、事例Ⅱはマーケティング、事例Ⅲは生産管理、事例Ⅳは財務・会計と、それぞれ特徴が異なります。各事例の出題傾向を把握し、弱点事例を作らないようバランスよく学習することが合格への近道です。

中小企業診断士二次試験の合格には、300〜400時間の学習時間が必要です。一次試験終了後から本格的に学習を始めても十分間に合いますが、早めに対策を始めることで余裕を持って試験に臨めます。過去問演習を中心に、添削指導を受けながら、計画的に学習を進めましょう。中小企業診断士の勉強法中小企業診断士の通信講座比較を参考に、自分に合った学習方法を見つけてください。

本記事を通じて、中小企業診断士二次試験の全体像と効果的な対策方法を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、中小企業診断士試験合格に向けて着実に前進しましょう。

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