社労士(社会保険労務士)の資格取得を目指しているあなたへ。「社労士は本当に稼げるのか」という疑問は、正確なデータと実態を知ることで解決できます。本記事では、社労士の平均年収の実態、開業と勤務による年収の違い、年収1,000万円を目指す具体的な方法について、最新の調査データを交えて詳しく解説します。
この情報をもとに、社労士としてのキャリアプランと収入目標の実現に向けて、具体的な一歩を踏み出しましょう。
- 社労士の平均年収の実態(開業・勤務別、男女別、年齢別)
- 年収に影響する5つの重要な要因
- 年収1,000万円を目指すための具体的な方法
- 開業社労士と勤務社労士のメリット・デメリット
- 社労士の平均年収は460~900万円と幅広い:働き方により年収は大きく異なります。勤務社労士は400~500万円で安定していますが、開業社労士は300万円から1,000万円超まで実力次第で変動します。
- 年収を左右する最大の要因は働き方:開業か勤務かの選択が年収に最も大きく影響します。その他、実務経験、専門分野、営業力、地域なども重要な要素となります。
- 年収1,000万円はコンサルティング業務がカギ:単純な書類作成業務だけでは収入に限界があります。コンサルティング業務への注力、ダブルライセンス、専門特化が高収入実現の近道です。
社労士(社会保険労務士)の平均年収はいくら?最新データで解説
社労士の年収を正確に把握することは、キャリアプランを立てる上で欠かせません。ここでは、最新の調査データをもとに、社労士全体の平均年収から働き方別の収入まで詳しく見ていきます。サラリーマンとの比較も交えて解説しますので、社労士の収入水準を客観的に理解できるでしょう。
社労士全体の平均年収は460~900万円
社労士全体の平均年収は、調査によって460万円から900万円程度と報告されています。この幅が大きい理由は、開業社労士と勤務社労士で収入構造が大きく異なるためです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では約567万円、民間の調査会社では460万円程度という結果もあり、データの取り方によって差が生じています。
重要なのは、社労士という資格が必ずしも高収入を保証するわけではないという点です。同じ社労士資格を持っていても、働き方や営業力、専門性によって年収は大きく変動します。
勤務社労士の平均年収は400~500万円
勤務社労士とは、社労士事務所や一般企業に雇用されて働く社労士を指します。勤務社労士の平均年収は400~500万円程度で、比較的安定した収入が特徴です。社労士事務所に勤務する場合は400万円前後、一般企業の人事部門では450~550万円程度が相場となっています。
勤務社労士の収入は、勤続年数とともに緩やかに上昇する傾向にあります。初年度は300~350万円からスタートし、5年程度で450万円前後、10年以上のベテランで500~600万円に到達するケースが一般的です。ただし、大手企業や官公庁を除き、600万円を大きく超えることは少ないと言えるでしょう。
開業社労士の平均年収は売上1,657万円・中央値550万円
開業社労士の収入状況はさらに複雑です。日本社会保険労務士会連合会の調査によると、開業社労士の年間売上高の平均は約1,657万円となっています。ただし、これは売上であって手取り収入ではありません。事務所の経費を差し引いた実質的な年収は、売上の30~40%程度となるのが一般的です。
注目すべきは年収の中央値が550万円程度という点です。平均値よりも中央値が低いということは、一部の高所得者が平均を押し上げている状況を示しています。実際、年収500万円未満の開業社労士が全体の36.5%を占める一方で、年収1,000万円を超える社労士も一定数存在します。
開業社労士の年収分布は以下のようになっています。
年収区分 | 割合 |
---|---|
500万円未満 | 36.5% |
500~1,000万円 | 45.0% |
1,000~2,000万円 | 15.0% |
2,000万円以上 | 3.5% |
一般的なサラリーマンとの年収比較
国税庁の民間給与実態統計調査によると、日本の給与所得者の平均年収は約461万円です。これと比較すると、勤務社労士の平均年収は同水準からやや高い程度、開業社労士の実質年収は中央値で見るとほぼ同水準と言えます。
ただし、社労士資格を活かして大企業の人事部門で働く場合や、成功した開業社労士の場合は、一般的なサラリーマンの平均を大きく上回る年収を得られる可能性があります。社労士という資格自体が高収入を保証するのではなく、資格をどう活かすかが重要なポイントです。
このセクションで確認した通り、社労士の年収は働き方によって大きく異なります。次のセクションでは、開業と勤務の違いについてさらに詳しく見ていきましょう。
社労士(社会保険労務士)の年収は開業と勤務でどう違う?
社労士の年収を語る上で最も重要なのが、開業社労士と勤務社労士の違いです。この選択が年収に与える影響は非常に大きく、それぞれに明確なメリットとデメリットがあります。ここでは、両者の年収構造の違いと、どちらを選ぶべきかの判断基準を解説します。
開業社労士:年収の幅が大きく実力次第(300万~1,000万円超)
開業社労士の最大の特徴は、年収の幅が非常に大きいという点です。開業初年度は年収300万円以下というケースも珍しくありませんが、順調に顧問先を獲得できれば500~700万円、さらにコンサルティング業務を展開して成功すれば年収1,000万円超も実現可能です。
開業社労士の収入は主に以下の3つで構成されます。
- 顧問契約収入:月額2~5万円程度の顧問料を継続的に受け取る安定収入
- 手続き報酬:労働保険や社会保険の手続きごとに発生する収入
- コンサルティング報酬:就業規則作成、人事制度設計などの高単価案件
年収1,000万円を超える開業社労士の多くは、単純な手続き業務だけでなく、企業の人事労務全般に関わるコンサルティング業務を主軸としています。顧問先を30社以上確保し、加えて高単価のコンサルティング案件を年間複数件受注することで、高収入を実現しています。
勤務社労士:安定収入だが上限あり(400~500万円)
勤務社労士の年収は、開業社労士と比べて予測可能性が高いのが特徴です。毎月の給与が安定しており、業績による収入変動も少ないため、生活設計がしやすいメリットがあります。社労士事務所勤務の場合は年収400万円前後、一般企業の人事部門では450~550万円程度が相場です。
勤務社労士の年収推移は比較的緩やかです。入社時は300~350万円程度からスタートし、5年で400万円台、10年で500万円台に到達するのが一般的なパターンとなります。ただし、600万円を超えるには管理職への昇進や大企業への転職が必要となるケースが多く、年収の上限が見えやすいという面もあります。
勤務社労士として高収入を目指す場合は、以下のようなキャリアパスが考えられます。
- 大手社労士法人のマネージャー職:年収600~800万円
- 上場企業の人事部長クラス:年収800~1,200万円
- 官公庁の労務管理職:年収600~900万円
開業社労士が全体の約6~8割を占める理由
社労士全体のうち、開業社労士が占める割合は約6~8割と非常に高くなっています。この背景には、社労士という資格の性質が大きく関係しています。社労士の主要業務である労働社会保険手続きや就業規則作成は、独立開業に適した業務形態だからです。
また、勤務社労士として経験を積んだ後、40代や50代で独立開業するというキャリアパスが一般的であることも要因の一つです。勤務社労士として10年程度実務経験を積み、人脈を築いてから独立することで、開業リスクを抑えられます。
さらに、社労士の開業は比較的低コストで始められることも、開業率の高さに寄与しています。事務所を自宅に構えれば、初期費用100万円程度で開業可能です。
開業と勤務、どちらを選ぶべきか判断基準
開業と勤務のどちらを選ぶかは、個人の志向性とライフステージによって判断すべきです。以下の判断基準を参考にしてください。
開業に向いている人
- 高収入を目指したい(年収1,000万円以上)
- 営業活動や人脈構築が得意
- 収入の不安定さを受け入れられる
- 自分のペースで仕事をしたい
- 実務経験が5年以上ある
勤務に向いている人
- 安定した収入を重視したい
- 営業活動が苦手
- ワークライフバランスを大切にしたい
- 実務経験を積みたい新人社労士
- リスクを避けたい
多くの社労士は、まず勤務社労士として3~10年程度実務経験を積み、その後独立開業するという段階的なキャリアを選択しています。このアプローチにより、開業時の失敗リスクを大幅に減らせます。
社労士(社会保険労務士)の年収を男女別・年齢別で比較
社労士の年収は、性別や年齢によっても差が見られます。ここでは、厚生労働省の統計データや社労士会の調査結果をもとに、男女別・年齢別の年収実態を詳しく見ていきます。これらのデータは、自分のキャリアステージに応じた年収目標を設定する上で参考になるでしょう。
男性社労士の平均年収は約950万円
賃金構造基本統計調査によると、男性社労士の平均年収は約950万円と報告されています。ただし、この数値には開業社労士の高所得者が含まれているため、実態よりも高めに出ている可能性があります。男性社労士の多くは開業しており、特に40代以降で独立開業して収入を伸ばすケースが一般的です。
男性社労士の年収分布を見ると、勤務社労士では400~600万円のレンジに集中している一方、開業社労士では300万円から2,000万円超まで大きく分散しています。特に50代以降の開業社労士では、長年の実績と人脈を活かして年収1,000万円以上を実現している人の割合が高くなります。
女性社労士の平均年収は約790万円(男女差150万円の実態)
女性社労士の平均年収は約790万円で、男性との差は約150万円となっています。この男女差の主な要因は、働き方の違いにあります。女性社労士は勤務社労士として働く割合が男性より高く、また開業している場合でも規模の小さい事務所を運営するケースが多い傾向にあります。
ただし、女性社労士の活躍の場は確実に広がっています。女性ならではの視点を活かした労務相談や、ワークライフバランス支援のコンサルティングなど、独自の専門性を打ち出して成功している女性社労士も増えています。実際、近年の社労士試験合格者の約4割が女性となっており、今後さらに女性社労士の活躍が期待されます。
男女の年収差については、以下の要因が影響しています。
- 開業率の違い(男性の方が開業率が高い)
- 勤続年数の差(育児などによる離職の影響)
- 営業スタイルの違い(女性は安定志向が強い傾向)
- 事務所規模の違い(女性は小規模事務所運営が多い)
年代別の年収推移:30代・40代・50代のデータ
社労士の年収は年齢とともに変化します。年代別の年収推移を見ると、キャリアステージに応じた収入の変化が明確に表れています。
年代 | 勤務社労士 | 開業社労士 |
---|---|---|
20代 | 300~400万円 | 200~400万円 |
30代 | 400~550万円 | 300~700万円 |
40代 | 500~700万円 | 400~1,200万円 |
50代 | 550~800万円 | 500~1,500万円 |
60代以降 | 400~600万円 | 400~1,000万円 |
30代は実務経験を積む時期であり、勤務社労士として安定した収入を得られる年代です。開業社労士の場合は、この時期に顧問先の獲得に注力し、収入基盤を作ることが重要となります。
40代は社労士としてのキャリアの分岐点です。勤務社労士として管理職を目指すか、独立開業するかを判断する時期となります。開業社労士の場合、この年代で年収1,000万円を超えるケースが増えてきます。
50代は社労士として最も収入が高くなる年代です。長年の実績と人脈を活かし、開業社労士では年収1,000万円超を実現している人の割合が最も高くなります。勤務社労士でも、人事部長クラスに昇進すれば700~800万円程度の年収を得られます。
社労士1年目の年収は300~400万円が相場
社労士資格を取得して1年目の年収は、300~400万円程度が相場です。社労士事務所に就職した場合は300~350万円、一般企業の人事部門では350~400万円程度からスタートします。開業した場合は、顧問先がゼロからのスタートとなるため、初年度の年収は200万円以下というケースも珍しくありません。
社労士1年目は、資格を持っているだけでは高収入を得られないという現実を理解しておく必要があります。実務経験を積み、専門性を高め、人脈を広げることで、徐々に年収を上げていくことが可能です。社労士になるにはのページでも解説していますが、資格取得はスタートラインであり、その後のキャリア形成が年収を大きく左右します。
年代別・男女別のデータから分かるように、社労士の年収は一律ではありません。自分のキャリアステージと目標に応じて、適切な働き方を選択することが重要です。
社労士の年収に影響する5つの要因
社労士の年収は、さまざまな要因によって変動します。ここでは、年収に大きな影響を与える5つの主要な要因について詳しく解説します。これらの要因を理解することで、自分の年収を上げるための戦略を立てやすくなるでしょう。
要因1:働き方(開業or勤務)が最も大きい
社労士の年収に最も大きな影響を与えるのが、開業社労士として独立するか、勤務社労士として雇用されるかという働き方の選択です。前述の通り、勤務社労士の年収は400~500万円程度で安定している一方、開業社労士は300万円から1,000万円超まで実力次第で大きく変動します。
開業社労士の場合、顧問先の数が年収に直結します。1社あたりの月額顧問料が3万円とすると、20社で月収60万円(年収720万円)、40社で月収120万円(年収1,440万円)となります。さらにコンサルティング業務を加えることで、年収は大幅に増加します。
一方、勤務社労士の場合は、勤続年数や役職によって年収が決まるため、急激な収入増は期待しにくい面があります。ただし、収入の安定性や集客の負担がないというメリットがあります。
要因2:勤続年数と実務経験
社労士の年収は、勤続年数と実務経験に比例して増加する傾向があります。実務経験が豊富になるほど、複雑な案件への対応力が高まり、クライアントからの信頼も厚くなるからです。
勤務社労士の場合、一般的に以下のような年収推移が見られます。
- 経験1~3年:年収300~400万円
- 経験4~7年:年収400~500万円
- 経験8~15年:年収500~600万円
- 経験16年以上:年収600~700万円
開業社労士の場合も、実務経験が顧問先獲得に大きく影響します。経験10年以上のベテラン社労士は、新規開業の社労士と比べて顧問料を高く設定できる傾向にあります。また、複雑な労務問題への対応力が評価され、高単価の案件を受注しやすくなります。
要因3:地域による違い(都市部vs地方)
社労士の年収は、活動する地域によっても差が生じます。一般的に、東京や大阪などの大都市圏では顧問料の相場が高く、地方では低めに設定される傾向があります。
都市部と地方の年収差は以下のようになっています。
地域 | 勤務社労士 | 開業社労士(顧問料相場) |
---|---|---|
東京圏 | 450~600万円 | 月額3~5万円 |
大阪圏 | 400~550万円 | 月額2.5~4万円 |
地方都市 | 350~500万円 | 月額2~3.5万円 |
地方 | 300~450万円 | 月額1.5~3万円 |
ただし、地方では生活費が安いため、実質的な生活水準は都市部とそれほど変わらない場合もあります。また、地方では競合が少ないため、地域に密着した営業活動により安定した顧問先を確保しやすいというメリットもあります。
要因4:専門分野・得意領域の有無
社労士の年収を大きく左右するのが、専門分野や得意領域を持っているかどうかです。「何でもやります」という社労士よりも、特定分野に強みを持つ社労士の方が高単価の案件を獲得しやすい傾向にあります。
高収入を実現しやすい専門分野には以下のようなものがあります。
- 労使紛争解決:未払い残業代問題や解雇トラブルなど
- 人事制度設計:評価制度や賃金制度の構築支援
- 助成金申請支援:雇用関係の助成金に特化
- メンタルヘルス対策:職場の健康管理支援
- 特定業界特化:医療・建設・飲食など業界に特化
専門分野を持つことで、一般的な顧問料(月額2~3万円)よりも高い料金設定が可能になります。例えば、人事制度設計のコンサルティングでは、1件あたり50~200万円の報酬を得られるケースもあります。
要因5:営業力と人脈の広さ
開業社労士にとって、営業力と人脈は年収に直結する重要な要素です。どれだけ専門知識があっても、顧問先を獲得できなければ収入にはつながりません。年収1,000万円を超える開業社労士の多くは、優れた営業力と広い人脈を持っています。
営業力を高めるためには、以下のような取り組みが効果的です。
- セミナー・勉強会の開催による認知度向上
- SNSやブログでの情報発信
- 既存顧問先からの紹介獲得
- 異業種交流会への積極的な参加
- 税理士や弁護士との連携による紹介ネットワーク構築
特に、税理士との連携は効果的です。税理士は企業の経営者と密接な関係を持っているため、税理士からの紹介により質の高い顧問先を獲得できます。社労士のダブルライセンスとして税理士資格を取得することも、営業面で大きなアドバンテージとなります。
これら5つの要因を理解し、自分の強みを活かせる領域で努力を重ねることが、社労士として高収入を実現する近道となります。
社労士で年収1,000万円を目指す5つの方法
社労士として年収1,000万円を実現することは決して不可能ではありません。ここでは、実際に高収入を得ている社労士が実践している具体的な方法を5つ紹介します。これらの方法を組み合わせることで、年収1,000万円という目標に近づくことができるでしょう。
方法1:コンサルティング業務(3号業務)に注力する
社労士の業務は、1号業務(書類作成)、2号業務(手続き代行)、3号業務(コンサルティング)に分類されます。この中で最も高単価なのが3号業務のコンサルティングです。年収1,000万円を目指すなら、1・2号業務だけでなく、3号業務の比重を高めることが必須となります。
コンサルティング業務の具体例と報酬相場は以下の通りです。
- 就業規則の作成・改定:10~50万円
- 人事評価制度の設計:50~200万円
- 賃金制度の見直し:50~150万円
- 労務デューデリジェンス:30~100万円
- 企業研修の講師:1回5~20万円
月額2万円の顧問料だけで年収1,000万円を達成するには約42社の顧問先が必要ですが、コンサルティング案件を年間10件(平均単価50万円)受注できれば、顧問先は25社程度で年収1,000万円に到達できます。
コンサルティング業務を受注するためには、専門知識の深化と提案力の向上が不可欠です。単なる手続き代行ではなく、企業の課題を発見し解決策を提示できる能力を磨きましょう。
方法2:ダブルライセンスで業務範囲を拡大する
社労士資格に加えて他の資格を取得することで、業務範囲が広がり収入増につながります。特に相性の良い資格との組み合わせにより、クライアントへのワンストップサービスが可能となり、付加価値が高まります。
社労士と相性の良いダブルライセンスは以下の通りです。
資格 | メリット | 年収への影響 |
---|---|---|
税理士 | 労務と税務をセットで提供可能 | +200~500万円 |
中小企業診断士 | 経営コンサルティングの幅が広がる | +100~300万円 |
行政書士 | 許認可申請も対応可能 | +50~150万円 |
FP | 従業員の資産形成支援も可能 | +30~100万円 |
特に税理士とのダブルライセンスは強力です。税理士は企業と継続的な関係を持っているため、労務面でも相談を受けやすく、自然な形で業務を拡大できます。ただし、税理士資格の取得は難易度が高いため、中小企業診断士や行政書士から検討するのも一つの選択肢です。
方法3:独立開業して顧問先を増やす
勤務社労士として年収1,000万円を実現するのは困難ですが、独立開業すれば可能性が広がります。開業社労士として年収1,000万円を達成するには、月額顧問料と単発案件を組み合わせた収入構造が必要です。
年収1,000万円を実現する開業社労士の典型的な収入モデルは以下の通りです。
パターン1:顧問先重視型
- 顧問先30社 × 月額3万円 = 月収90万円(年収1,080万円)
- 単発手続き業務:年間120万円
- 合計年収:約1,200万円
パターン2:コンサルティング重視型
- 顧問先20社 × 月額2.5万円 = 月収50万円(年収600万円)
- コンサルティング案件10件 × 50万円 = 年間500万円
- 合計年収:約1,100万円
開業して顧問先を増やすには、3~5年程度の時間がかかるのが一般的です。開業初年度から年収1,000万円を実現するのは現実的ではありません。まずは勤務社労士として実務経験を積み、人脈を構築してから独立することをおすすめします。
方法4:大企業の人事部門でキャリアアップする
勤務社労士として年収1,000万円に近づく方法もあります。それは、大企業の人事部門で管理職以上のポジションを目指すことです。従業員1,000人以上の大企業の人事部長クラスであれば、年収800~1,200万円も実現可能です。
大企業での高収入を目指すキャリアパスは以下のようになります。
- 社労士資格取得後、大企業の人事部門に転職(年収450~550万円)
- 5~8年で人事課長クラスに昇進(年収650~800万円)
- 10~15年で人事部長クラスに昇進(年収900~1,200万円)
このルートでは営業活動は不要で、安定した高収入を得られます。ただし、大企業での昇進競争は厳しく、管理職になれる人は限られているという現実もあります。また、社労士の転職市場では実務経験が重視されるため、資格取得前から人事部門での経験を積んでおくことが重要です。
方法5:専門特化して高単価案件を獲得する
社労士として年収1,000万円を目指すなら、専門特化戦略が効果的です。「何でもやります」という社労士ではなく、特定分野のスペシャリストとして認知されることで、高単価案件を獲得しやすくなります。
高単価案件を獲得しやすい専門分野は以下の通りです。
労務リスクマネジメント専門
- 労使トラブルの予防と解決に特化
- 顧問料相場:月額5~10万円
- コンサルティング単価:30~100万円
人事制度設計専門
- 評価制度・賃金制度の構築に特化
- プロジェクト単価:50~300万円
- 年間3~5件で150~1,000万円の売上
M&A労務デューデリジェンス専門
- 企業買収時の労務リスク調査に特化
- 1件あたり50~200万円
- 年間5~10件で250~2,000万円の売上
専門特化することで、一般的な社労士よりも高い報酬を設定できます。ただし、専門性を高めるには継続的な学習と実務経験の積み重ねが必要です。まずは得意分野を見つけ、その分野での実績を積み上げていくことから始めましょう。
年収1,000万円の実現には、これら5つの方法のいずれか、または複数の組み合わせが有効です。自分の強みと志向性に合った方法を選択し、計画的にキャリアを築いていきましょう。
開業社労士のメリット・デメリットと年収の現実
開業社労士として独立することは、高収入を目指す上で有力な選択肢です。しかし、メリットだけでなくデメリットも正確に理解しておく必要があります。ここでは、開業社労士の実態を年収面から詳しく解説します。
開業社労士のメリット:年収の上限なし・裁量の自由
開業社労士の最大のメリットは、年収に上限がないことです。勤務社労士の年収が600万円程度で頭打ちになるのに対し、開業社労士は実力次第で年収1,000万円、2,000万円以上も実現可能です。顧問先を増やし、高単価のコンサルティング案件を受注することで、収入は青天井に伸ばせます。
開業社労士のメリットは年収面だけではありません。働き方の自由度も大きな魅力です。顧問先との契約や業務量を自分でコントロールできるため、ワークライフバランスを自分の理想に合わせて調整できます。また、得意分野に特化した業務展開も可能で、自分の専門性を最大限に活かせます。
その他の開業社労士のメリットとしては以下が挙げられます。
- 定年がなく、70代まで現役で働ける
- 人間関係のストレスが少ない(上司がいない)
- 好きなクライアントと仕事ができる
- 事務所の場所や規模を自由に決められる
- 節税対策により手取りを増やせる
開業社労士のデメリット:収入不安定・営業力必須
開業社労士のデメリットで最も大きいのが、収入の不安定性です。顧問先が解約されれば即座に収入が減少しますし、開業初期は顧問先がゼロで収入もゼロというケースも珍しくありません。勤務社労士のように毎月決まった給与が入るわけではないため、資金繰りに苦労する場面もあるでしょう。
また、営業力が必須という点も大きなハードルです。社労士としての専門知識があっても、それを必要とするクライアントを見つけられなければ収入にはつながりません。特に開業直後は、知名度もなく実績もないため、顧問先獲得に苦労するケースが多くあります。
開業社労士のその他のデメリットは以下の通りです。
- 社会保険料や事務所経費の負担が大きい
- 営業活動に多くの時間を割く必要がある
- クレーム対応や労務トラブルのプレッシャーが大きい
- 孤独を感じやすい(相談相手がいない)
- 継続的な学習が必須(法改正への対応)
開業に必要な初期費用は100~300万円
社労士として開業する際の初期費用は、事務所の形態によって大きく異なりますが、一般的には100~300万円程度が目安となります。自宅開業であれば100万円程度、賃貸事務所を借りる場合は200~300万円程度が必要です。
開業時の主な費用項目は以下の通りです。
費用項目 | 金額 |
---|---|
社労士会への入会金・年会費 | 20~30万円 |
社労士賠償責任保険 | 年間3~5万円 |
事務所の敷金・礼金(賃貸の場合) | 50~100万円 |
パソコン・プリンター等の設備 | 20~30万円 |
社労士ソフトウェア | 10~20万円 |
名刺・ホームページ作成 | 10~20万円 |
運転資金(3~6ヶ月分) | 50~100万円 |
開業初期は顧問先がないため、生活費を含めた運転資金を確保しておくことが重要です。最低でも6ヶ月分、できれば1年分の生活費を貯蓄してから開業することをおすすめします。
開業社労士で年収500万円未満が36.5%の現実
開業社労士の華々しい成功例が紹介されることが多いですが、現実には厳しい面もあります。日本社会保険労務士会連合会の調査によると、開業社労士の36.5%が年収500万円未満となっており、決して全員が高収入を得ているわけではありません。
開業社労士の年収分布を見ると、以下のような実態が見えてきます。
- 年収500万円未満:36.5%(約3人に1人)
- 年収500~1,000万円:45.0%(約半数)
- 年収1,000万円以上:18.5%(約5人に1人)
開業して最初の3年間は特に厳しく、多くの社労士が年収300~400万円程度で苦労しています。顧問先の獲得には時間がかかり、口コミや紹介による集客が軌道に乗るまでには3~5年程度かかるのが一般的です。
開業社労士として成功するためには、以下のポイントが重要です。
- 開業前に5年以上の実務経験を積む
- 勤務時代に人脈を構築しておく
- 専門分野を明確にする
- 営業活動を継続的に行う
- 初期の収入減少を想定した資金計画を立てる
開業社労士は高収入の可能性がある一方で、リスクも大きいという現実を理解した上で判断することが重要です。
勤務社労士のメリット・デメリットと年収の現実
勤務社労士として働くことも、安定したキャリアを築く上で有効な選択肢です。ここでは、勤務社労士のメリット・デメリットを年収面から詳しく解説します。開業との比較を通じて、自分に合った働き方を見つけましょう。
勤務社労士のメリット:安定収入・集客不要
勤務社労士の最大のメリットは、毎月安定した給与を得られることです。顧問先の獲得に悩む必要もなく、営業活動に時間を割く必要もありません。社会保険や福利厚生も整っており、経済的な安心感があります。
勤務社労士は、決められた業務をこなすことで確実に収入を得られます。開業社労士のように収入が不安定になるリスクがないため、住宅ローンなどの長期的な資金計画も立てやすいでしょう。また、ボーナスや昇給制度がある職場では、勤続年数に応じて着実に年収が増加していきます。
勤務社労士のその他のメリットは以下の通りです。
- 実務経験を体系的に積める
- 先輩社労士から指導を受けられる
- 有給休暇や育児休業が取得しやすい
- 多様な案件に触れられる
- 営業ストレスがない
特に、社労士資格を取得したばかりの人や、実務経験が浅い人にとっては、勤務社労士として経験を積むことが将来のキャリアの土台となります。
勤務社労士のデメリット:年収上限あり・業務範囲限定
勤務社労士のデメリットは、年収に上限があることです。一般的な社労士事務所では年収600万円程度が上限となるケースが多く、それ以上の収入を目指すのは困難です。大企業の人事部門であれば管理職として年収800~1,000万円も可能ですが、そこまで到達できる人は限られています。
また、業務範囲が限定されるという点もデメリットです。勤務先の方針や業務内容に従う必要があり、自分が得意な分野や興味のある業務だけを選ぶことはできません。上司や同僚との人間関係にも配慮が必要で、組織内での立ち回りが求められます。
勤務社労士のその他のデメリットは以下の通りです。
- 働き方の自由度が低い
- 定年制がある(60~65歳)
- 転勤の可能性がある
- 評価が上司の判断に左右される
- 副業が制限される場合が多い
これらのデメリットは、安定性とのトレードオフの関係にあります。自分が何を優先するかによって、開業か勤務かの判断が変わってくるでしょう。
勤務先別の年収目安(社労士事務所・一般企業・官公庁)
勤務社労士の年収は、勤務先の種類によって大きく異なります。以下に、勤務先別の年収目安を示します。
勤務先 | 初年度年収 | 5年後年収 | 10年後年収 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
社労士事務所(小規模) | 300~350万円 | 400~450万円 | 450~550万円 | 実務経験を積みやすい |
社労士事務所(大手) | 350~400万円 | 450~550万円 | 550~700万円 | 体系的な研修制度 |
一般企業(中小) | 350~400万円 | 450~550万円 | 500~650万円 | 企業文化に慣れる必要 |
一般企業(大手) | 400~500万円 | 550~700万円 | 700~1,000万円 | 福利厚生が充実 |
官公庁 | 350~400万円 | 500~600万円 | 650~850万円 | 安定性が高い |
社労士事務所に勤務する場合、小規模事務所では年収が低めですが、多様な案件に触れられるため実務経験を積みやすいというメリットがあります。大手社労士法人では年収は高めですが、専門分野が限定されることもあります。
一般企業の人事部門に勤務する場合、企業規模によって年収が大きく異なります。大企業であれば管理職として年収1,000万円近くまで到達できる可能性がありますが、昇進競争は厳しくなります。
官公庁に勤務する場合、年収の伸びは緩やかですが、雇用の安定性は最も高くなります。ワークライフバランスも取りやすく、長期的なキャリア形成に適しています。
資格手当の有無で年収が変わる
勤務社労士の年収を左右する重要な要素の一つが、資格手当の有無です。社労士資格に対する資格手当を支給する企業は多く、その金額は月額1~5万円程度となっています。年間では12~60万円の差が生じるため、無視できない金額です。
資格手当の相場は以下の通りです。
- 社労士事務所:月額1~3万円(年間12~36万円)
- 一般企業:月額2~5万円(年間24~60万円)
- 官公庁:月額1~2万円(年間12~24万円)
資格手当とは別に、社労士資格を持っていることで昇進や昇給の際に有利になるケースもあります。人事部門では社労士資格保有者を優遇する企業が多く、管理職への昇進確率が高まる傾向にあります。
勤務社労士として就職・転職する際は、基本給だけでなく資格手当の有無や昇給制度も確認しておくことをおすすめします。長期的に見れば、資格手当の有無が累計で数百万円の差を生むこともあります。
勤務社労士は開業社労士と比べて年収の上限は低いものの、安定性と実務経験の積みやすさという大きなメリットがあります。自分のライフスタイルやキャリアプランに合わせて、最適な働き方を選択しましょう。
社労士で「稼げない人」の5つの共通点と対策
社労士資格を持っていても、十分な収入を得られない人が一定数存在します。ここでは、「稼げない社労士」に共通する5つのパターンと、それぞれの対策について解説します。これらのポイントを理解することで、同じ失敗を避けることができるでしょう。
営業力が不足している
開業社労士で稼げない最大の理由は、営業力の不足です。どれだけ専門知識があっても、顧問先を獲得できなければ収入にはつながりません。「良い仕事をしていれば自然と顧客は増える」という考えは甘く、積極的な営業活動が不可欠です。
営業力不足の社労士の特徴は以下の通りです。
- 既存顧問先からの紹介だけに頼っている
- セミナーや交流会に参加しない
- ホームページやSNSでの情報発信をしていない
- 異業種との連携(税理士・弁護士など)がない
- 営業活動を「恥ずかしい」と感じている
対策
営業力を高めるには、継続的な活動が重要です。毎月1回以上のセミナー開催、週1回以上のSNS投稿、月2回以上の異業種交流会への参加など、具体的な行動目標を設定しましょう。また、税理士や弁護士とのネットワークを構築し、相互紹介の仕組みを作ることも効果的です。
営業活動は「売り込み」ではなく「価値提供」と考えることで、心理的なハードルを下げられます。企業が抱える労務課題の解決策を提案するという姿勢で臨めば、自然な形で顧問契約につながります。
専門性や差別化ポイントがない
「何でもやります」という姿勢の社労士は、実は選ばれにくい傾向にあります。クライアントは、自社の課題に特化した専門家を求めているからです。専門性や差別化ポイントがない社労士は、価格競争に巻き込まれやすく、低単価での受注を余儀なくされます。
専門性がない社労士の特徴は以下の通りです。
- 「社労士業務全般対応可能」としか言えない
- 得意分野を明確に説明できない
- ホームページに特色がない
- 他の社労士との違いを説明できない
- 低価格を売りにするしかない
対策
自分の得意分野や興味のある領域を見つけ、そこに特化することが重要です。例えば、「建設業の労務管理専門」「医療機関の人事制度設計専門」「労使トラブル解決専門」など、明確なポジションを確立しましょう。
専門特化することで、その分野での実績と知識が蓄積され、さらに専門性が高まるという好循環が生まれます。また、専門分野を持つことで、一般的な顧問料よりも高い料金設定が可能になります。
人脈構築を怠っている
社労士業界では、人脈が仕事につながるケースが非常に多くあります。既存顧問先からの紹介、異業種交流会での出会い、同業者からの協力依頼など、人脈が収入に直結します。逆に、人脈構築を怠っている社労士は、新規顧問先の獲得に苦労します。
人脈構築を怠っている社労士の特徴は以下の通りです。
- 社労士会の活動に参加しない
- 同業者との交流がない
- 異業種交流会を「意味がない」と避ける
- 既存顧問先とビジネスライクな関係しか築かない
- オンライン・オフラインでの交流を避ける
対策
人脈構築は一朝一夕にはできません。継続的な活動が必要です。まずは社労士会の研究会や勉強会に参加し、同業者との関係を築きましょう。また、商工会議所や青年会議所などの経営者団体にも積極的に参加することで、潜在顧客との接点を増やせます。
特に重要なのが、税理士・弁護士・司法書士との連携です。これらの士業は企業経営者と密接な関係を持っているため、信頼関係を構築できれば質の高い紹介を受けられます。定期的に情報交換会を開催するなど、継続的な関係維持を心がけましょう。
単純業務(1・2号業務)だけに依存している
書類作成や手続き代行といった単純業務(1号・2号業務)だけに依存している社労士は、収入に限界があります。これらの業務は単価が低く、かつAIやシステムによる自動化の影響を受けやすい分野だからです。
単純業務に依存している社労士の特徴は以下の通りです。
- 月次の給与計算や社会保険手続きだけで満足している
- コンサルティング業務の提案をしない
- クライアントの課題発見能力が低い
- 「言われたことだけやる」という姿勢
- 付加価値の高いサービスを提供していない
対策
1号・2号業務を入口としつつ、3号業務(コンサルティング)へと業務範囲を拡大することが重要です。例えば、給与計算を担当している顧問先に対して、「賃金制度の見直し」や「評価制度の導入」を提案するなど、付加価値の高いサービスへと誘導しましょう。
また、社労士の将来性を考えても、単純な手続き業務だけでは今後厳しくなることが予想されます。AIに代替されにくい高度なコンサルティング能力を磨くことが、長期的な収入確保につながります。
継続的な学習とスキルアップを怠っている
社会保険労務士法や労働関連法は頻繁に改正されるため、継続的な学習が不可欠です。また、人事労務の分野は常に新しいトレンドや課題が生まれているため、最新の知識をキャッチアップしていない社労士は、クライアントからの信頼を失いかねません。
継続的な学習を怠っている社労士の特徴は以下の通りです。
- 法改正情報をチェックしていない
- 研修やセミナーに参加しない
- 専門書を読まない
- 業界のトレンドに疎い
- 「資格を取ったからもう勉強しなくていい」と考えている
対策
毎月最低1冊は専門書を読む、年間5回以上は研修に参加するなど、具体的な学習目標を設定しましょう。また、厚生労働省のホームページや社労士会からの情報を定期的にチェックし、法改正情報を常に把握しておくことが重要です。
特に、働き方改革関連法、同一労働同一賃金、ハラスメント防止法など、近年の重要な法改正については深い理解が必要です。これらの分野でクライアントに的確なアドバイスができれば、信頼関係が深まり、継続的な収入につながります。
社労士で稼げない人の共通点を理解し、早めに対策を打つことで、収入アップの可能性は大きく広がります。自分に当てはまる点がないか振り返り、必要な改善を実行していきましょう。
社労士の将来性と年収の見通し
社労士を目指す上で、将来的な需要と年収の見通しは重要な判断材料です。ここでは、社会情勢の変化や技術の進歩を踏まえて、社労士の将来性と年収への影響について解説します。長期的なキャリアプランを立てる際の参考にしてください。
働き方改革で社労士需要は増加傾向
働き方改革関連法の施行により、企業の労務管理はますます複雑化しています。時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金など、企業が対応すべき法令が増加しており、社労士への相談ニーズは高まっています。
特に中小企業では、専門的な人事部門を持たないケースが多く、外部の社労士に頼らざるを得ない状況です。2024年以降も、以下のような分野で社労士の需要が拡大すると予想されます。
- ハラスメント対策支援:パワハラ防止法への対応
- テレワーク労務管理:リモートワークの適切な運用支援
- 副業・兼業の労務管理:複雑な労働時間管理への対応
- 高齢者雇用対策:70歳までの就業機会確保への支援
- 外国人雇用管理:在留資格と労務管理の両立支援
これらの新しい分野で専門性を持つ社労士は、今後も安定した需要と高収入が期待できます。需要の増加に伴い、社労士全体の平均年収も緩やかに上昇する可能性があるでしょう。
AIに代替される業務と残る業務
技術の進歩により、社労士業務の一部はAIやシステムによって自動化される可能性があります。特に単純な手続き業務や給与計算などは、すでにシステム化が進んでおり、今後さらに効率化が進むと予想されます。
AIに代替されやすい業務
- 定型的な社会保険手続き
- 給与計算の自動化
- 労働時間の集計・管理
- 定型文書の作成
- データ入力作業
一方で、AIに代替されにくい業務も明確に存在します。これらは高度な判断力や対人スキルが必要な業務であり、今後も社労士の付加価値として残り続けるでしょう。
AIに代替されにくい業務
- 複雑な労務問題への対応(労使トラブル、ハラスメント対策)
- 人事制度設計のコンサルティング
- 経営者への戦略的なアドバイス
- 従業員とのカウンセリング
- オーダーメイドの就業規則作成
AIの進化により、単純業務だけを行う社労士の年収は今後低下する可能性があります。一方で、高度なコンサルティング能力を持つ社労士の年収は上昇が見込まれます。つまり、社労士の年収格差が今後さらに拡大すると予想されます。
コンサルティング業務の需要が今後も拡大
企業の人事労務課題は多様化・複雑化しており、単なる手続き代行ではなく、戦略的なコンサルティングを求める企業が増えています。この傾向は今後も続くと予想され、コンサルティング業務に強みを持つ社労士の年収は上昇する見通しです。
特に需要が拡大すると予想されるコンサルティング分野は以下の通りです。
人材定着支援
- 離職率の高い企業向けに、人事制度や職場環境の改善を提案
- プロジェクト単価:50~200万円
ダイバーシティ推進
- 女性活躍、障害者雇用、外国人材活用などの支援
- プロジェクト単価:30~150万円
メンタルヘルス対策
- ストレスチェック実施支援や職場環境改善
- 継続支援:月額3~10万円
人材育成体制の構築
- 研修制度や評価制度の設計・運用支援
- プロジェクト単価:50~300万円
これらのコンサルティング業務は、単純な手続き業務と比べて単価が高く、継続的な関係性を築きやすいという特徴があります。コンサルティング能力を磨くことが、将来的な年収アップの最も確実な方法と言えるでしょう。
女性社労士のキャリア展望
社労士は女性が活躍しやすい資格の一つです。近年の社労士試験合格者の約4割が女性であり、今後も女性社労士の割合は増加すると予想されます。女性社労士ならではの強みを活かすことで、高収入を実現している人も増えています。
女性社労士が活躍しやすい理由は以下の通りです。
- ワークライフバランスを重視した働き方が可能
- 育児や介護と両立しやすい(開業なら時間の融通が利く)
- 女性目線での労務相談に対応できる
- ハラスメント対策や女性活躍推進で専門性を発揮できる
- 細やかな対応やコミュニケーション能力が評価される
特に、女性活躍推進やハラスメント対策、育児・介護と仕事の両立支援といった分野では、女性社労士への相談ニーズが高まっています。これらの専門分野で実績を積むことで、年収600~1,000万円も十分に実現可能です。
また、女性社労士同士のネットワークも活発で、情報交換や相互支援が行われています。女性ならではの視点と専門性を活かせば、社労士として長期的なキャリアを築けるでしょう。
社労士の将来性は、単純業務への依存度によって大きく変わります。AIに代替されにくい高度なコンサルティング能力を磨き、継続的に学習を続けることで、安定した需要と収入が期待できる職業です。
社労士の年収に関連するよくある質問(FAQ)
ここでは、社労士の年収に関してよく寄せられる質問に回答します。これから社労士を目指す方や、キャリアプランを考えている方の疑問解決に役立ててください。
Q. 社労士は本当に稼げる資格ですか?
社労士が稼げる資格かどうかは、働き方と実力次第です。勤務社労士として働く場合は年収400~600万円程度で安定していますが、開業社労士として成功すれば年収1,000万円以上も実現可能です。ただし、開業社労士の36.5%が年収500万円未満という現実もあります。
社労士資格を取得しただけでは高収入は保証されません。実務経験を積み、専門性を高め、営業力を磨くことで、初めて高収入を得られます。「稼げる資格」というよりは「稼ぐための土台となる資格」と考えるべきでしょう。
一般的なサラリーマンの平均年収と比較すると、社労士の平均年収は同程度からやや高い水準です。安定を求めるなら勤務社労士、高収入を目指すなら開業社労士という選択が現実的です。
Q. 社労士で年収1,000万円は現実的ですか?
社労士で年収1,000万円を達成することは可能ですが、簡単ではありません。開業社労士全体の約18.5%が年収1,000万円以上を実現しており、決して不可能な目標ではないものの、相応の努力と戦略が必要です。
年収1,000万円を実現するには、以下のいずれかのアプローチが必要です。
- 顧問先を30社以上確保し、月額平均3万円以上の顧問料を得る
- コンサルティング業務を主軸とし、年間10件以上の高単価案件を受注する
- ダブルライセンスで業務範囲を拡大し、付加価値を高める
- 大企業の人事部長クラスまで昇進する
実現には通常5~10年程度の期間が必要です。開業直後から年収1,000万円を達成するのは非現実的であり、段階的なキャリア構築が重要となります。
Q. 開業してすぐに稼げるようになりますか?
開業してすぐに稼げるようになることは、ほとんどの場合困難です。開業初年度の年収は200~400万円程度が一般的で、中には赤字になるケースもあります。顧問先の獲得には時間がかかり、安定した収入を得られるようになるまでに3~5年程度かかるのが現実です。
開業後の年収推移の目安は以下の通りです。
- 開業1年目:200~400万円(顧問先5~10社)
- 開業3年目:400~600万円(顧問先15~25社)
- 開業5年目:600~900万円(顧問先25~35社)
- 開業10年目:700~1,500万円(顧問先30社以上+コンサル案件)
開業前に実務経験を5年以上積み、人脈を構築しておくことで、開業後の成功確率は大きく高まります。また、開業初期の収入減少を想定し、最低でも1年分の生活費を貯蓄してから独立することをおすすめします。
Q. 女性でも社労士で高収入を得られますか?
女性でも社労士で高収入を得ることは十分可能です。実際に年収800万円以上を稼ぐ女性社労士は増えており、女性ならではの視点を活かした専門分野で成功している人も多くいます。女性社労士の平均年収は約790万円で、男性との差は約150万円ですが、これは主に働き方の違いによるものです。
女性社労士が高収入を得るためのポイントは以下の通りです。
- ハラスメント対策や女性活躍推進など、女性視点が活きる分野に特化する
- ワークライフバランス支援や育児・介護と仕事の両立支援を専門とする
- 女性経営者や女性管理職をターゲットにした営業活動を行う
- オンライン面談やフレキシブルな働き方で効率化を図る
女性だからといって年収の上限があるわけではありません。専門性と営業力を磨けば、男性と同等かそれ以上の年収を実現できます。
Q. 社労士の年収が低いと言われる理由は何ですか?
社労士の年収が低いと言われる理由は、主に以下の3つです。
第一に、開業社労士の年収分布に大きな幅があるためです。年収500万円未満が36.5%を占める一方で、年収1,000万円以上も18.5%存在します。平均値だけを見ると実態が見えにくく、「稼げない人」の存在が目立ってしまいます。
第二に、単純な手続き業務だけでは高収入を得にくいという構造的な問題があります。給与計算や社会保険手続きといった1号・2号業務は単価が低く、これらだけで年収1,000万円を超えるのは困難です。高収入を得るにはコンサルティング業務への展開が必須ですが、すべての社労士がそこまで到達できるわけではありません。
第三に、営業力不足や専門性の欠如により、十分な顧問先を獲得できない社労士が一定数存在します。社労士資格を持っているだけでは仕事は来ず、自ら顧客を獲得する努力が必要ですが、これが苦手な人も多いのが現実です。
ただし、適切な戦略とスキルアップにより、社労士として十分な収入を得ることは可能です。「年収が低い」というイメージだけで判断せず、自分に合った働き方とキャリアプランを考えることが重要です。
まとめ:社労士の年収は働き方と実力次第で大きく変わる
本記事では、社労士の年収について、開業・勤務別、男女別、年齢別のデータをもとに詳しく解説しました。重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 社労士の年収は460~900万円と幅広い:勤務社労士は400~500万円で安定しているのに対し、開業社労士は300万円から1,000万円超まで実力次第で大きく変動します。働き方の選択が年収に最も大きな影響を与えます。
- 年収1,000万円はコンサルティング業務がカギ:単純な手続き業務だけでは収入に限界があります。コンサルティング業務への注力、ダブルライセンスによる業務拡大、専門分野への特化が高収入実現の近道です。
- 将来性は専門性とスキル次第:AIによる自動化で単純業務の価値は低下しますが、高度なコンサルティング能力を持つ社労士の需要は今後も拡大します。継続的な学習とスキルアップが重要です。
安定志向なら勤務社労士、高収入を目指すなら開業
自分に合った働き方を選ぶことが、社労士として充実したキャリアを築く第一歩です。安定した収入とワークライフバランスを重視するなら勤務社労士が適しています。一方、高収入を目指し、自分の裁量で仕事をしたいなら開業社労士が選択肢となります。
多くの社労士は、まず勤務社労士として実務経験を積み、その後独立開業するという段階的なキャリアを選択しています。このアプローチにより、開業時のリスクを抑えながら高収入を目指せます。
年収アップにはコンサルティング能力と専門性が鍵
社労士として年収を上げるためには、単純な手続き業務から脱却し、コンサルティング能力を磨くことが不可欠です。人事制度設計、労務リスクマネジメント、働き方改革支援など、付加価値の高いサービスを提供できる社労士が高収入を実現しています。
また、特定分野への専門特化も有効な戦略です。「何でもやります」ではなく、明確な専門性を打ち出すことで、高単価の案件を獲得しやすくなります。自分の興味や経験を活かせる分野を見つけ、そこでの実績を積み上げていきましょう。
まずは実務経験を積んでから独立を検討しよう
社労士資格を取得したばかりの人は、すぐに開業するのではなく、まず勤務社労士として実務経験を積むことをおすすめします。実務経験を通じて、社労士業務の実態を理解し、専門性を高め、人脈を構築することができます。
社労士の開業を検討する際は、最低でも5年程度の実務経験を積んでからが理想的です。また、社労士の転職市場でも実務経験は重視されるため、キャリアの選択肢を広げる意味でも経験は重要です。
本記事を通じて、社労士の年収の実態と、年収を上げるための具体的な方法を理解いただけたはずです。これらの情報を活用して、社労士として充実したキャリアと満足のいく収入の実現に向けて、一歩を踏み出しましょう。
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