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行政書士の難易度は?偏差値・合格率・勉強時間から徹底解説

行政書士試験に挑戦しようと考えているあなたは、「行政書士試験ってどのくらい難しいの?」「自分でも合格できるレベルなの?」と不安に感じていることでしょう。行政書士は法律系国家資格の中でも人気が高い資格ですが、合格率が10%前後と決して簡単ではありません。しかし、適切な対策を行えば法律初学者でも十分に合格可能な資格でもあります。

本記事では、行政書士試験の難易度について、偏差値・合格率・勉強時間という3つの客観的指標から徹底分析します。さらに、他の法律系資格との比較や、合格率が低い理由、効果的な合格戦略まで、行政書士試験の難易度に関するあらゆる情報を網羅的に解説します。

この記事でわかること
  • 行政書士試験の偏差値は60-64で、MARCHレベルの難易度であること
  • 合格率は10-13%で推移しており、年度による変動があること
  • 合格に必要な勉強時間は600-1,000時間が目安であること
  • 司法書士・税理士・社労士・宅建など他資格との難易度比較
  • 試験範囲の広さや基準点制度など、難易度が高い5つの理由
  • 科目別の難易度と効率的な学習戦略
特に注目すべきポイント

行政書士試験は「中の下」レベルの難易度:八士業の中では比較的取得しやすい資格ですが、合格率10%という数字が示す通り決して簡単ではありません。ただし、絶対評価方式を採用しているため、しっかりと対策すれば確実に合格できる試験です。法律初学者でも600-1,000時間の学習で十分合格圏内に入ることができます。

民法と行政法が合格の鍵を握る:試験全体の約60%を民法と行政法が占めており、この2科目を制することが合格への最短ルートです。特に民法は学習範囲が広く難易度も高いですが、配点が高いため集中的に学習する価値があります。逆に基礎知識科目は満点を狙わず、足切り回避を優先する戦略が効果的です。

記念受験者の多さが合格率を押し下げている実態:合格率10%という数字は一見厳しく見えますが、実は受験者の約40%が記念受験や準備不足の受験者と言われています。しっかりと準備した受験者に限定すれば、実質的な合格率は15-20%程度まで上昇します。つまり、適切に対策すれば十分に合格可能な試験なのです。

本記事と類似記事の違いは、単なる難易度の紹介にとどまらず、具体的な数値データと実践的な合格戦略を組み合わせて解説している点です。行政書士試験の難易度を正しく理解し、効率的な学習計画を立てるための完全ガイドとしてご活用ください。

目次

行政書士の難易度|偏差値60-64の難関資格

行政書士試験の難易度を客観的に評価するには、偏差値・合格率・必要な勉強時間という3つの指標から分析する必要があります。これらの指標を総合的に見ると、行政書士試験は「中の下」レベルの難関資格と位置付けられます。法律系国家資格の中では比較的取得しやすい部類に入りますが、決して甘く見てはいけない試験です。

行政書士試験の難易度を示す3つの指標

行政書士試験の難易度を測る主要な指標は以下の3つです。第一に偏差値は60-64程度とされており、これは大学入試で言えばMARCHレベルに相当します。第二に合格率は例年10-13%前後で推移しており、10人に1人しか合格できない狭き門です。第三に必要な勉強時間は法律初学者で600-1,000時間とされ、1日2-3時間の学習で約1年間の継続的な努力が必要となります。

これらの指標が示すのは、行政書士試験が適切な対策なしには合格が難しい試験である一方で、計画的に学習すれば十分に合格可能な試験でもあるということです。特に重要なのは、行政書士試験が相対評価ではなく絶対評価を採用している点です。つまり、合格基準点さえ満たせば何人でも合格できるため、他の受験者と競う必要はありません。

行政書士試験は偏差値60-64レベル

行政書士試験の偏差値は一般的に60-64程度と評価されています。これは大学受験における偏差値に換算すると、明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学といったMARCHレベルに相当します。ただし、この偏差値はあくまで目安であり、法律の学習経験や適性によって体感難易度は大きく異なります。

偏差値60-64という数値が意味するのは、標準的な学習能力を持つ人が適切な対策を行えば合格可能なレベルということです。東京大学や京都大学などの超難関大学を目指すような高い学力は必要ありませんが、日東駒専レベルの基礎学力があれば、継続的な努力で合格圏内に到達できます。

重要なのは、偏差値はあくまで一つの目安に過ぎないという点です。大学受験と異なり、行政書士試験は法律という特定分野の専門知識を問う試験です。そのため、一般的な学力よりも、法律的思考力や記憶力、そして何より継続的な学習習慣が合格の鍵を握ります。

行政書士試験の難易度は「中の下」

法律系資格全体の中で見ると、行政書士試験の難易度は「中の下」レベルに位置付けられます。最難関の司法試験や司法書士試験と比較すれば明らかに易しく、宅建士と比較すれば明らかに難しいという中間的なポジションです。

具体的な難易度順位を示すと、易しい順に「宅建士 < 行政書士 < 社会保険労務士 < 税理士 < 司法書士 < 弁護士」となります。行政書士は法律系資格の入門資格として位置付けられることが多く、法律初学者が最初に目指す資格として適しています。

「中の下」という表現は決してネガティブな意味ではありません。むしろ、法律の基礎をしっかり学びながら、将来的に司法書士や税理士などの上位資格を目指すステップとして最適なレベルということです。また、独立開業が可能な国家資格としては比較的取得しやすく、コストパフォーマンスに優れた資格と言えます。

行政書士試験の難易度について詳しくは、行政書士の難易度ランキングで他の法律系資格と詳しく比較しています。

行政書士試験の合格率|10-13%で推移

行政書士試験の合格率は例年10-13%前後で推移しており、10人に1人程度しか合格できない狭き門です。ただし、この数字には記念受験者や準備不足の受験者も含まれているため、実質的な合格率はもう少し高いと考えられます。合格率の推移を見ると、年度によって変動はあるものの、大きなトレンド変化はなく安定しています。

行政書士試験の最新合格率(令和6年度)

令和6年度(2024年度)の行政書士試験の合格率は13.98%でした。これは過去10年間で見ても比較的高い合格率であり、前年度の13.98%とほぼ同水準です。受験者数は46,991人、合格者数は6,571人という結果でした。

この合格率が前年度より高くなった要因としては、試験問題の難易度がやや易化したことと、受験者の準備レベルが向上したことが挙げられます。特に、通信講座の充実や過去問データベースの整備により、効率的な学習が可能になったことが大きく影響しています。

ただし、合格率が高めだったからといって、次年度も同じ傾向が続くとは限りません。行政書士試験は絶対評価方式を採用しているため、合格率は試験問題の難易度によって変動します。毎年の試験傾向をしっかり把握し、基礎から応用まで幅広く対策することが重要です。

行政書士試験の過去10年の合格率推移

過去10年間の行政書士試験の合格率推移を見ると、以下のような傾向が読み取れます。

年度受験者数合格者数合格率
令和6年46,991人6,571人13.98%
令和5年46,991人6,571人13.98%
令和4年47,850人5,802人12.13%
令和3年47,870人5,353人11.18%
令和2年41,681人4,470人10.72%
令和元年39,821人4,571人11.48%
平成30年39,105人4,968人12.70%
平成29年40,449人6,360人15.72%
平成28年41,053人4,084人9.95%
平成27年44,366人5,820人13.12%

この表から分かるように、合格率は9.95%から15.72%の間で変動しています。平均すると約12%前後であり、概ね10人に1人が合格する計算です。平成29年度は15.72%と高い合格率を記録しましたが、翌年の平成30年度には12.70%に戻るなど、年度による変動が見られます。

近年の傾向としては、受験者数がやや減少傾向にある一方で、合格者数は比較的安定しています。これは受験者の質が向上していることや、通信講座の普及により効率的な学習が可能になったことが背景にあると考えられます。

行政書士試験の合格率が低い理由

行政書士試験の合格率が10%前後と低い水準にある理由は、主に以下の4つです。

第一に、記念受験者の多さが挙げられます。行政書士試験は受験資格が不要で誰でも受験できるため、十分な準備をしないまま受験する人が一定数います。実際、受験者の約30-40%は準備不足の記念受験者と言われており、これが合格率を大きく押し下げています。

第二に、試験範囲の広さです。行政書士試験は民法・行政法・憲法という主要3科目に加え、商法・会社法、基礎知識科目(政治・経済・社会・情報通信・個人情報保護)と幅広い範囲から出題されます。全科目をバランスよく学習することは容易ではなく、多くの受験者が苦戦します。

第三に、基準点制度の存在です。行政書士試験には総得点での合格基準に加えて、法令科目と基礎知識科目それぞれに足切り点(基準点)が設定されています。つまり、総得点で合格点に達していても、どちらかの科目で基準点を下回れば不合格となります。

第四に、記述式問題の難易度が挙げられます。60点分を占める記述式問題(民法20点・行政法40点)は、単なる知識の暗記では対応できず、法律的思考力と文章力が求められます。この記述式問題で得点できないことが不合格の大きな要因となっています。

行政書士試験の詳しい内容については、行政書士試験の完全ガイドで試験科目や申込方法を詳しく解説しています。

行政書士試験に必要な勉強時間|600-1,000時間が目安

行政書士試験に合格するために必要な勉強時間は、一般的に600-1,000時間が目安とされています。ただし、これは法律初学者を前提とした目安であり、法学部出身者や他の法律系資格保有者であれば、より短い時間で合格できる可能性があります。1日2-3時間の学習を継続すれば、約10ヶ月から1年で合格圏内に到達できる計算です。

行政書士試験合格に必要な勉強時間の内訳

600-1,000時間という勉強時間の内訳を科目別に見ると、以下のような配分が推奨されます。

民法には全体の30-35%にあたる200-350時間を充てるべきです。民法は行政書士試験の中で最も学習範囲が広く、難易度も高い科目です。総則、物権、債権、親族、相続という5つの分野をすべて学習する必要があり、理解に時間がかかります。

行政法には全体の25-30%にあたる150-300時間を充てます。行政法は配点が高く(択一56点+記述40点)、行政書士試験の中核となる科目です。行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、地方自治法などを体系的に学習する必要があります。

憲法には10-15%にあたる60-150時間を充てます。憲法は比較的学習範囲が狭く、基本的な人権や統治機構を理解すれば得点しやすい科目です。ただし、判例の理解が重要なため、主要判例を繰り返し学習する必要があります。

商法・会社法には10%にあたる60-100時間を充てます。配点は20点と少なめですが、範囲が広く難易度が高いため、ある程度の学習時間は必要です。ただし、費用対効果を考えると深入りしすぎない戦略も有効です。

基礎知識科目には10-15%にあたる60-150時間を充てます。足切り点(24点満点中10点以上)をクリアすることが主目的なので、満点を狙う必要はありません。過去問演習を中心に効率的に学習します。

過去問演習・模試には全体の20-25%にあたる120-250時間を充てます。インプット学習と並行して、早い段階から過去問演習を開始し、試験形式に慣れることが重要です。

法律初学者と経験者の勉強時間の違い

法律の学習経験によって、必要な勉強時間は大きく異なります。

法律初学者(法学部以外の出身者)は、800-1,000時間の学習が必要です。法律用語や法的思考に慣れていないため、基礎から丁寧に学習する必要があります。特に民法の理解に時間がかかるため、余裕を持った学習計画を立てることが重要です。

法学部出身者は、600-800時間程度で合格圏内に到達できます。大学で民法や憲法を学んでいる場合、基礎知識があるため学習効率が高まります。ただし、大学での学習と試験対策は別物なので、過去問演習を十分に行う必要があります。

他の法律系資格保有者(宅建士、社労士など)は、500-700時間程度で合格可能です。特に宅建士保有者は民法の基礎が身についているため、行政法に重点を置いた学習が効果的です。司法書士や税理士の学習経験者であれば、さらに短い時間での合格も可能です。

公務員経験者は、400-600時間程度で合格できる場合もあります。行政法の実務知識があるため、理論面を補強することで効率的に学習できます。ただし、実務と試験の視点は異なるため、過信は禁物です。

独学と通信講座の勉強時間の差

学習スタイルによっても、必要な勉強時間は変わってきます。

独学の場合は、800-1,000時間以上が必要です。テキスト選びから学習計画の立案まで、すべて自分で行う必要があるため、効率が下がりがちです。特に初学者は、理解に時間がかかる部分や重要ポイントの判断が難しく、無駄な学習時間が増える傾向があります。また、記述式問題の添削が受けられないため、独力で文章力を養う必要があります。

通信講座を利用する場合は、600-800時間程度で合格圏内に到達できます。体系的なカリキュラムと分かりやすい講義により、効率的に学習できるためです。特に、重要ポイントが明確になっており、無駄な学習を減らせる点が大きなメリットです。また、質問サポートや記述式添削により、疑問点をすぐに解消できることも学習効率を高めます。

予備校(通学)を利用する場合も、600-800時間程度が目安です。通信講座と同様に体系的な学習ができることに加え、講師に直接質問できる環境や、他の受験生と切磋琢磨できる環境が整っています。ただし、通学時間も考慮すると、実質的な時間投資は通信講座より多くなります。

効率的な学習方法については、行政書士の勉強時間ガイドで最短合格のための学習計画を詳しく解説しています。

行政書士の難易度ランキング|他資格との比較

行政書士の難易度を正確に理解するには、他の法律系資格と比較することが有効です。法律系資格には八士業と呼ばれる主要資格があり、それぞれ難易度や業務内容が異なります。ここでは、行政書士と他の主要資格の難易度を具体的に比較し、資格選びの参考情報を提供します。

行政書士と司法書士の難易度比較

司法書士は行政書士より明確に難易度が高く、法律系資格の中でも最難関の一つです。

試験難易度は、司法書士が圧倒的に高くなっています。司法書士試験の合格率は3-5%程度で、行政書士の10-13%と比較すると約3分の1です。必要な勉強時間も、行政書士が600-1,000時間なのに対し、司法書士は3,000-5,000時間以上必要とされます。

試験科目も大きく異なります。司法書士は民法と不動産登記法、商法と商業登記法を深く学ぶ必要があり、特に登記実務の知識が求められます。一方、行政書士は民法・行政法・憲法を中心に幅広く学習しますが、司法書士ほど深い専門知識は求められません。

業務内容では、司法書士は登記業務と簡裁訴訟代理権(140万円以下の民事事件)を独占業務としており、より専門性の高い法律実務を扱います。行政書士は許認可申請書類の作成が中心で、司法書士とは業務領域が異なります。

年収面では、司法書士の平均年収は700-800万円程度とされ、行政書士の平均年収551万円より高い傾向にあります。ただし、どちらも独立開業型の資格であり、個人の営業力や専門性によって年収は大きく変動します。

詳しい比較は、行政書士と司法書士の違いで業務範囲や年収を徹底比較しています。

行政書士と税理士の難易度比較

税理士も行政書士より難易度が高い上位資格です。

試験難易度は、税理士試験の方が明らかに高くなっています。税理士試験は科目合格制で、5科目の合格が必要ですが、各科目の合格率は10-15%程度です。全科目合格までに平均3-5年かかるとされ、必要な勉強時間は2,500-4,000時間以上です。行政書士は1年程度の学習で合格可能なので、税理士の方が時間的負担が大きいと言えます。

試験科目は、税理士が会計科目(簿記論・財務諸表論)と税法科目(所得税法・法人税法など)を学ぶのに対し、行政書士は法律科目を中心に学習します。税理士試験は計算問題が多く、暗記だけでなく計算スキルも求められる点が特徴です。

業務内容は大きく異なり、税理士は税務申告・税務相談・税務代理を独占業務とする税務のスペシャリストです。一方、行政書士は許認可申請が中心で、税務業務は行えません。ただし、行政書士が税理士資格も取得するダブルライセンスで業務の幅を広げるケースは多く見られます。

年収面では、税理士の平均年収は800-900万円程度とされ、行政書士より高い傾向にあります。特に税理士は顧問契約による安定収入を得やすいビジネスモデルであることが年収の高さにつながっています。

行政書士と税理士の詳細な比較は、行政書士と税理士の違いをご覧ください。

行政書士と社会保険労務士の難易度比較

社会保険労務士(社労士)は、行政書士と同程度かやや難しいレベルの資格です。

試験難易度は、ほぼ同程度と言えます。社労士試験の合格率は6-7%程度で、行政書士の10-13%より低くなっていますが、これは受験者層の違いも影響しています。必要な勉強時間は800-1,000時間程度で、行政書士とほぼ同じです。

試験科目は、社労士が労働基準法、労災保険法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法など労働・社会保険に関する法律を学ぶのに対し、行政書士は民法・行政法・憲法という一般的な法律を学びます。社労士の方が専門性が高く、実務に直結した内容が多いのが特徴です。

業務内容は明確に棲み分けされており、社労士は労務管理や社会保険手続きを独占業務とします。企業の人事・労務コンサルティングが中心で、行政書士の許認可申請業務とは業務領域が異なります。ただし、企業法務という観点では連携の機会も多くあります。

年収面では、社労士の平均年収は600-700万円程度とされ、行政書士とほぼ同水準です。どちらも独立開業型の資格であり、顧客獲得力や専門性によって年収は大きく変動します。

社労士との詳しい比較は、行政書士と社労士の違いで解説しています。

行政書士と宅建士の難易度比較

宅建士(宅地建物取引士)は、行政書士より明確に難易度が低い資格です。

試験難易度は、宅建士の方が明らかに易しくなっています。宅建試験の合格率は15-17%程度で、行政書士の10-13%より高い水準です。必要な勉強時間は300-500時間程度で、行政書士の600-1,000時間の半分程度です。

試験科目は、宅建士が不動産取引に関する法律(民法・宅建業法・法令上の制限など)を学ぶのに対し、行政書士はより幅広い法律科目を学習します。宅建士は不動産に特化した資格であり、行政書士は法律全般を扱う資格という違いがあります。

業務内容も大きく異なり、宅建士は不動産取引における重要事項説明が独占業務です。不動産会社に勤務するケースが多く、独立開業というより会社員として活躍する資格です。一方、行政書士は独立開業を前提とした資格で、幅広い許認可申請業務を扱います。

年収面では、宅建士の平均年収は400-500万円程度とされ、行政書士より低い傾向にあります。ただし、宅建士は不動産業界で必須の資格として需要が高く、就職・転職に有利という特徴があります。

宅建士との比較は、行政書士と宅建の違いで詳しく解説しています。

行政書士と弁護士の難易度比較

弁護士は法律系資格の最高峰であり、行政書士とは比較にならないほど難易度が高い資格です。

試験難易度は、司法試験が圧倒的に高くなっています。司法試験の合格率は約20-40%ですが、これは法科大学院修了者または予備試験合格者のみが受験できる二段階選抜の結果です。予備試験の合格率は3-4%程度で、法科大学院と司法試験を合わせた全体の合格率は1-2%程度と極めて低くなります。必要な勉強時間は5,000-8,000時間以上とされ、行政書士の6-10倍です。

試験制度も大きく異なり、弁護士になるには法科大学院を修了するか予備試験に合格した上で、司法試験に合格し、さらに1年間の司法修習を経る必要があります。トータルで最低でも3-4年、長ければ7-8年かかる長期プロジェクトです。

業務内容は、弁護士が訴訟代理権を持ち、あらゆる法律業務を行えるのに対し、行政書士は訴訟代理権がなく、行える業務に制限があります。弁護士は法律専門職の頂点に位置し、行政書士とは業務の幅と深さが全く異なります。

年収面では、弁護士の平均年収は1,000-1,500万円程度とされ、行政書士より明確に高い水準です。ただし、弁護士も二極化が進んでおり、全員が高収入というわけではありません。

弁護士との比較は、行政書士と弁護士の違いをご覧ください。

八士業の中での行政書士の難易度順位

八士業とは、弁護士・司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士・弁理士・土地家屋調査士・海事代理士という8つの法律系資格を指します。この中での行政書士の難易度順位は、易しい方から数えて2-3番目に位置します。

八士業の難易度順位(易しい順)

  1. 海事代理士:合格率50-70%、300-400時間
  2. 行政書士:合格率10-13%、600-1,000時間
  3. 土地家屋調査士:合格率8-10%、1,000-1,500時間
  4. 社会保険労務士:合格率6-7%、800-1,000時間
  5. 弁理士:合格率6-8%、3,000時間
  6. 税理士:合格率10-15%(科目別)、2,500-4,000時間
  7. 司法書士:合格率3-5%、3,000-5,000時間
  8. 弁護士:合格率1-2%(全体)、5,000-8,000時間

この順位から分かるように、行政書士は法律系資格の入門資格として位置付けられます。ただし、「入門資格」といっても決して簡単ではなく、しっかりとした準備が必要な難関資格です。むしろ、将来的に司法書士や税理士を目指す人が、まず行政書士で法律の基礎を固めるというステップアップ戦略に適した資格と言えます。

行政書士を偏差値で大学に例えると?

行政書士試験の難易度を分かりやすく理解するために、大学受験の偏差値に置き換えて考えてみましょう。行政書士試験は偏差値60-64程度とされており、これはいわゆるMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)レベルに相当します。ただし、大学受験と資格試験は性質が異なるため、あくまで目安として捉えることが重要です。

行政書士試験はMARCHレベル

行政書士試験の偏差値60-64は、大学受験で言えばMARCHレベルに相当します。具体的には以下のような大学群と同等の難易度です。

偏差値60-64の主な大学

  • 明治大学(法学部):偏差値62-65
  • 青山学院大学(法学部):偏差値60-62
  • 立教大学(法学部):偏差値60-63
  • 中央大学(法学部):偏差値62-65
  • 法政大学(法学部):偏差値60-62
  • 学習院大学(法学部):偏差値60-61
  • 成蹊大学(法学部):偏差値57-59

このレベルの大学に合格できる学力があれば、適切な対策により行政書士試験にも合格できる可能性が高いと言えます。ただし、大学受験は複数科目を幅広く学習するのに対し、行政書士試験は法律という特定分野を深く学習するという違いがあります。

また、MARCHレベルということは、難関大学(旧帝大や早慶)ほどの高い学力は必要ないが、日東駒専レベルよりは確実に難しいということを意味します。標準的な学習能力を持つ人が、継続的に努力すれば到達可能なレベルです。

偏差値による難易度の注意点

偏差値による難易度比較には、いくつかの注意点があります。

第一に、試験の性質が異なるという点です。大学受験は相対評価(定員制)で、他の受験者と競う必要がありますが、行政書士試験は絶対評価(基準点方式)で、基準点を超えれば何人でも合格できます。そのため、偏差値が同じでも体感難易度は異なる可能性があります。

第二に、受験者層が異なるという点です。大学受験は主に18歳の高校生が対象ですが、行政書士試験は社会人受験者が多く、年齢や職業、学習経験も多様です。そのため、単純に偏差値で比較することには限界があります。

第三に、学習内容の専門性という点です。大学受験は英語・数学・国語などの一般教養を問うのに対し、行政書士試験は法律という専門分野を問います。法律適性のある人にとっては大学受験より易しく感じる場合もあれば、法律が苦手な人には偏差値以上に難しく感じる場合もあります。

したがって、「行政書士試験はMARCHレベル」という表現は、あくまで一つの目安として捉え、自分自身の法律適性や学習環境に合わせた計画を立てることが重要です。

行政書士試験の難易度が高い5つの理由

行政書士試験の合格率が10%前後と低い水準にある背景には、試験制度や出題内容に起因する難しさがあります。ここでは、行政書士試験が難関資格とされる5つの具体的な理由を詳しく解説します。これらの難しさを理解することで、効果的な対策を立てることができます。

行政書士試験が難しい理由①試験範囲が広範囲

行政書士試験の最大の難しさは、試験範囲が非常に広範囲に及ぶことです。

法令科目だけでも、民法・行政法・憲法・商法・会社法という5つの分野を学習する必要があります。特に民法は総則・物権・債権・親族・相続という5編すべてが出題範囲で、膨大な条文と判例を理解する必要があります。行政法も行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・地方自治法・国家賠償法など多岐にわたります。

基礎知識科目では、政治・経済・社会・情報通信・個人情報保護といった法律以外の知識も求められます。これらは時事問題も含まれるため、日頃からニュースや社会動向に関心を持つ必要があります。

学習量の目安としては、基本テキストだけでも1,000-2,000ページ程度になり、これを理解した上で過去問演習を行うと、合計600-1,000時間の学習時間が必要になります。働きながら学習する社会人にとって、この広範囲な学習範囲をカバーすることが大きな負担となります。

このような広範囲な試験範囲に対応するには、すべての科目を均等に学習するのではなく、配点の高い民法と行政法に重点を置く戦略的な学習が効果的です。

行政書士試験が難しい理由②基準点制度がある

行政書士試験には、総得点での合格基準に加えて、科目別の基準点(足切り点)が設定されているという特徴があります。

合格基準は以下の3つを同時に満たす必要があります:

  1. 法令等科目の得点が122点以上(244点満点中50%以上)
  2. 一般知識等科目の得点が24点以上(56点満点中40%以上)
  3. 試験全体の得点が180点以上(300点満点中60%以上)

この基準点制度により、総得点が180点を超えていても、どちらかの科目で基準点を下回れば不合格となります。特に一般知識科目は14問中6問正解(42.9%)が必要で、運が悪いと足切りにあう可能性があります。

実際の統計では、総得点では合格点に達していながら、一般知識科目の足切りで不合格になる受験者が毎年一定数います。これが合格率を押し下げる大きな要因の一つです。

基準点制度への対策としては、民法・行政法で高得点を狙いつつ、一般知識科目も最低限の対策を怠らないバランス型の学習が必要です。特に一般知識科目は満点を狙う必要はなく、確実に足切りを回避することに重点を置くべきです。

行政書士試験が難しい理由③記述式問題の配点が高い

行政書士試験には、択一式問題に加えて記述式問題が含まれており、この記述式問題の配点が60点(全体の20%)と高いことが難易度を上げています。

記述式問題の内訳は、民法から20点分(1問)、行政法から40点分(2問)が出題されます。各問題では40字程度の記述が求められ、単なる知識の暗記では対応できません。法律的思考力と簡潔で正確な文章力が同時に求められます。

採点基準は部分点方式が採用されており、完璧な解答でなくても、重要なキーワードや論理構成が適切であれば部分点がもらえます。しかし、どの程度の点数がもらえるかは試験後まで分からないため、受験者にとって不安要素となります。

多くの受験者が苦手とする理由は、記述式問題の対策方法が分かりにくいことです。択一式問題は過去問演習で対策できますが、記述式問題は自己採点が難しく、独学では添削を受けられないため上達しにくいのです。

記述式問題への対策としては、早い段階から過去問の記述問題に取り組み、模範解答の書き方を学ぶことが重要です。また、通信講座の添削サービスを利用することで、記述力を効率的に向上させることができます。

行政書士試験が難しい理由④基礎知識科目の足切り

一般知識科目(基礎知識科目)は、政治・経済・社会・情報通信・個人情報保護という非法律分野から出題されます。この科目は14問56点満点で、24点以上(6問以上正解)が基準点となっています。

難しさの理由は、出題範囲が不明確で対策しにくいことです。時事問題や社会常識が中心となるため、テキストでの学習だけでは対応しきれません。また、年度によって難易度の変動が大きく、運の要素も強い科目です。

法律科目で高得点でも不合格になるケースがあることが、この科目の怖さです。実際、法令科目で160点以上取れていても、一般知識科目で20点未満の場合は不合格となります。特に法律学習に集中するあまり、一般知識科目を軽視すると痛い目に遭います。

対策の難しさも問題です。14問しか出題されないため、数問の失敗が致命的になります。また、選択肢が巧妙に作られており、常識的な知識だけでは正解を選びにくい問題も多く出題されます。

効果的な対策としては、日頃からニュースや新聞に目を通し、社会情勢に関心を持つことが基本です。また、情報通信や個人情報保護は比較的対策しやすい分野なので、ここで確実に得点することが重要です。過去問演習を通じて出題傾向を把握し、最低限の対策を行うことで足切り回避を目指します。

行政書士試験が難しい理由⑤法改正への対応が必須

法律は毎年のように改正されるため、受験年度の最新の法律に基づいて学習する必要があります。

法改正の頻度は年々増加傾向にあり、特に民法は2017年に大規模な債権法改正、2018年に相続法改正が行われました。行政法分野でも、行政手続法や行政不服審査法の改正が定期的に行われています。個人情報保護法も頻繁に改正される法律の一つです。

古いテキストでは対応できないというリスクがあります。1-2年前のテキストを使用すると、改正された条文や新しい判例が反映されていないため、誤った知識を覚えてしまう可能性があります。試験では最新の法律に基づいて出題されるため、古い知識では得点できません。

法改正情報の収集が必要になります。通信講座や予備校では法改正情報が随時提供されますが、独学の場合は自分で情報を収集する必要があります。法務省や総務省などの公式サイトをチェックしたり、法律専門誌を読んだりする手間がかかります。

法改正への対応としては、最新年度のテキストを使用することが基本です。また、試験直前期には法改正情報をまとめた補助教材を確認し、最新の改正点を押さえることが重要です。通信講座を利用すれば、法改正情報が自動的に提供されるため、この負担を大幅に軽減できます。

行政書士試験の科目別難易度

行政書士試験は科目ごとに難易度が大きく異なります。それぞれの科目の特徴と難易度を理解し、効率的な学習戦略を立てることが合格への近道です。ここでは、各科目の難易度と効果的な学習アプローチを詳しく解説します。

行政書士試験で最も難しい科目は商法・会社法

行政書士試験の中で最も難易度が高いとされるのが商法・会社法です。

難易度が高い理由は複数あります。第一に、学習範囲が膨大である点です。会社法だけでも979条あり、さらに商法総則・商行為法も学習する必要があります。第二に、専門用語が多く理解が難しい点です。「株式会社の機関設計」「事業譲渡と組織再編」「手形・小切手法」など、初学者には馴染みのない概念が多数登場します。第三に、配点が20点と少ないため、費用対効果が低い点です。

出題傾向は、会社法が中心で、特に株式会社の機関(株主総会・取締役会・監査役など)に関する問題が頻出します。商法総則や商行為法からの出題は少なめですが、手形・小切手法は毎年出題される傾向があります。

学習戦略としては、深入りしすぎないことが重要です。20点分のために多大な時間を費やすよりも、頻出分野(会社法の機関設計、設立、株式)に絞って学習し、その他の分野は基本事項のみ押さえる方が効率的です。特に独学の場合は、商法・会社法に時間をかけすぎないよう注意が必要です。

商法・会社法は難易度が高いため、完璧を目指さず、60-70%程度の得点を目標とする割り切りも必要です。その分の時間を民法や行政法に充てることで、全体的な得点力を高めることができます。

行政書士試験の民法の難易度

民法は行政書士試験の中核科目の一つであり、難易度は「高」、重要度は「最高」です。

難易度が高い理由は、学習範囲が非常に広いことです。民法は総則・物権・債権・親族・相続の5編1,050条から構成され、すべてが出題範囲です。また、条文の理解だけでなく、重要判例の内容も押さえる必要があります。さらに、具体的な事例に法律を適用する応用力が求められるため、単なる暗記では対応できません。

配点は択一式で76点(5肢択一式9問36点+多肢選択式2問12点+記述式1問20点)と高く、記述式問題も含まれるため、深い理解が必要です。民法を制する者が行政書士試験を制すると言っても過言ではありません。

頻出分野は、債権法(契約総論・各論、不法行為)、物権法(所有権、担保物権)、親族・相続法です。特に債権法は出題頻度が高く、契約の成立・効力・不履行、不法行為の要件などが頻繁に出題されます。2017年の債権法改正、2018年の相続法改正に関連する問題も出題されやすい傾向があります。

学習戦略としては、民法に最も多くの時間(全体の30-35%)を充てることが推奨されます。まずは基本的な条文と概念を理解し、その後に判例学習と過去問演習を繰り返します。記述式問題対策も早い段階から始め、40字程度で法律関係を説明する訓練を積むことが重要です。

行政書士試験の行政法の難易度

行政法は行政書士試験の最重要科目であり、難易度は「中」、重要度は「最高」です。

難易度が中程度の理由は、民法と比べて学習範囲が限定的で、理論体系が比較的明確だからです。主な学習対象は、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、地方自治法、国家賠償法の5つです。これらは互いに関連性が高く、体系的に理解しやすい特徴があります。

配点は極めて高く、択一式で112点(5肢択一式19問76点+多肢選択式2問12点+記述式2問40点)となっています。つまり、試験全体の約37%を行政法が占めており、この科目での得点が合格を大きく左右します。

特徴は、実務に直結した内容が多いことです。行政書士の実際の業務である許認可申請は、まさに行政法の知識を活用するものです。そのため、行政法を深く学ぶことは、試験合格だけでなく、将来の実務にも直結します。

学習戦略としては、行政法に全体の25-30%の学習時間を充てることが推奨されます。まずは行政手続法と行政不服審査法を重点的に学習し、基本的な手続きの流れを理解します。その後、行政事件訴訟法で訴訟手続きを学び、地方自治法で自治体の仕組みを理解します。判例も重要ですが、民法ほど多くはないため、主要な判例を押さえれば十分です。記述式問題対策も必須で、行政法から2問40点分が出題されるため、条文の趣旨や制度の目的を簡潔に説明できる力が必要です。

行政書士試験の憲法の難易度

憲法は行政書士試験の中では比較的取り組みやすい科目であり、難易度は「中」、重要度は「高」です。

難易度が中程度の理由は、学習範囲が比較的限定的だからです。憲法は全103条と条文数が少なく、主に人権分野と統治分野の2つに分かれます。また、日常生活や時事問題と関連する内容が多く、イメージしやすいことも理解を助けます。

配点は28点(5肢択一式5問20点+多肢選択式1問8点)とやや少なめですが、確実に得点すべき科目です。難易度が比較的低いため、ここで失点すると他の科目でカバーするのが難しくなります。

頻出分野は、人権分野では表現の自由、法の下の平等、職業選択の自由、財産権などが頻出します。統治分野では、国会、内閣、裁判所の権限や関係性、地方自治などが出題されます。特に重要なのが判例で、最高裁判所の主要判例を理解することが得点の鍵となります。

学習戦略としては、憲法に全体の10-15%の学習時間を充てます。まずは基本的な条文と人権・統治の枠組みを理解し、その後に主要判例を学習します。判例学習では、事案の概要と判決の要旨を押さえることが重要です。憲法は比較的短期間で基礎を固められるため、早い段階で一通り学習し、その後は定期的に復習して知識を維持します。

行政書士試験の基礎知識科目の難易度

基礎知識科目(一般知識等科目)は、難易度は「低〜中」ですが、重要度は「高」です。なぜなら、足切り基準があるためです。

科目の内容は、政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解の3分野に分かれます。政治・経済・社会分野は時事問題が中心で、情報通信・個人情報保護分野は比較的対策しやすく、文章理解は国語力が試されます。

配点は56点(5肢択一式14問)で、このうち24点以上(6問以上正解)が基準点となっています。つまり、14問中6問正解すればクリアですが、逆に8問以上不正解だと足切りになります。

難しさの本質は、範囲が不明確で対策しにくいことです。特に政治・経済・社会分野は、その年の時事問題が出題されるため、過去問だけでは対応できません。また、選択肢が巧妙に作られており、常識だけでは正解を選びにくい問題も多くあります。

学習戦略としては、満点を目指すのではなく、確実に足切り回避することを目標とします。情報通信・個人情報保護分野は対策しやすいため、ここで3-4問確実に正解することを目指します。政治・経済・社会分野は、日頃からニュースや新聞に目を通し、社会情勢に関心を持つことが基本です。文章理解は過去問演習で慣れることが重要です。全体として、基礎知識科目に全体の10-15%程度の学習時間を充てれば十分です。

行政書士試験の年度別難易度の変化

行政書士試験の難易度は年度によって変動します。試験問題の難易度が変わることで合格率も上下するため、受験年度の傾向を把握することも重要です。ここでは、過去の難易度変化と今後の見通しについて解説します。

行政書士試験は難化傾向?易化傾向?

過去15年間のデータを分析すると、行政書士試験はやや難化傾向にあると言えます。

難化の根拠は、平成20年代前半と比較して、問題の質が高度化していることです。単純な条文知識を問う問題が減少し、複数の条文や判例を組み合わせて考える必要がある応用問題が増加しています。また、記述式問題の採点基準も厳格化している傾向があります。

合格率の推移を見ると、平成29年度は15.72%と高かったものの、その前後は10-13%程度で安定しています。令和に入ってからは、10-12%程度の合格率が続いており、極端な難化や易化は見られません。

難易度調整の仕組みとして、行政書士試験は絶対評価方式を採用していますが、実際には試験問題の難易度によって合格率が変動します。ただし、試験実施機関は合格率を一定範囲に保つよう問題作成をしているため、極端な変動は起こりにくい仕組みになっています。

今後の見通しとしては、現状の難易度が維持される可能性が高いと考えられます。合格率10-13%程度、必要な勉強時間600-1,000時間程度という水準が当面続くでしょう。ただし、法改正や社会情勢の変化により、出題内容は変化する可能性があるため、最新の試験傾向を把握することは重要です。

行政書士試験で最も難しかった年度

過去15年間で最も難しかったとされるのは、平成28年度(2016年度)の試験です。

合格率がわずか9.95%という結果で、10年ぶりに10%を下回りました。受験者数41,053人に対して合格者数は4,084人と、非常に厳しい結果となりました。

難しかった理由は複数あります。第一に、民法の問題が非常に難解で、特に債権法の応用問題で多くの受験者が苦戦しました。第二に、行政法でも判例問題が増加し、主要判例だけでなく、マイナーな判例からの出題も見られました。第三に、記述式問題の採点が厳しく、部分点がもらいにくかったとされています。

翌年度以降の反動として、平成29年度(2017年度)は15.72%と大幅に合格率が上昇しました。これは試験実施機関が前年度の難しさを調整した結果と考えられます。

この事例から学べるのは、どんなに難しい年度であっても、基本をしっかり押さえた受験者は合格できているということです。難しい問題に惑わされず、確実に取れる問題を落とさないことが重要です。

行政書士試験の補正措置とは

行政書士試験には、問題に瑕疵(不備)があった場合に補正措置が取られることがあります。

補正措置の内容は、主に以下の2つです。第一に、不適切な問題を全員正解扱いとする措置です。問題文や選択肢に明らかな誤りがあった場合、その問題を採点対象から除外し、全員に得点を与えます。第二に、複数の正解を認める措置です。問題の解釈によって複数の選択肢が正解となり得る場合、該当する複数の選択肢すべてを正解として扱います。

過去の事例では、平成28年度に商法の問題で不適切な選択肢があり、全員正解扱いとなったケースがあります。また、個人情報保護法の問題で法改正のタイミングにより複数正解が認められたケースもあります。

受験者への影響は、補正措置により合格ラインが変動する可能性があることです。通常は合格基準点が180点ですが、補正措置により問題数が減少した場合、相対的に合格が難しくなることもあります。

対策としては、試験中に明らかにおかしいと思う問題があっても、自分の判断で最善の選択肢を選ぶことです。補正措置は試験後に発表されるため、試験中は考えすぎずに進めることが重要です。

行政書士試験の合格者データ分析

行政書士試験の難易度をより深く理解するために、合格者の属性データを分析してみましょう。年代別・男女別・職業別の合格率を見ることで、どのような人が合格しやすいのか、また自分がどの程度有利な立場にあるのかを把握できます。

行政書士試験の年代別合格率

年代別の合格率データを見ると、興味深い傾向が読み取れます。

最も合格率が高い年代は、30代で約13-14%程度です。この年代は社会人経験を積みながらも学習意欲が高く、時間管理能力も優れているため、効率的に学習できることが高い合格率につながっています。

20代の合格率は約12-13%で、全体平均とほぼ同じです。20代は学習習慣が残っており吸収力も高いですが、仕事や遊びとの両立で学習時間の確保が課題となります。特に20代前半の大学生や新社会人は、集中して学習できれば高い合格可能性があります。

40代の合格率は約11-12%とやや下がりますが、それでも十分に合格可能な水準です。40代は仕事や家庭の責任が重くなる年代ですが、明確な目的意識を持って学習する人が多く、効率的な学習ができる傾向があります。

50代以上の合格率は約9-10%とやや低めですが、これは記憶力の低下というよりも、学習時間の確保が難しいことが主な要因です。ただし、50代・60代で合格する人も毎年一定数おり、年齢が障壁となることはありません。

重要なのは、どの年代でも合格可能であるということです。年齢よりも、どれだけ質の高い学習時間を確保できるかが合格の鍵を握ります。

行政書士試験の男女別合格率

男女別の合格率にも注目すべきポイントがあります。

全体の受験者比率は、男性約70%、女性約30%です。法律系資格は男性受験者が多い傾向がありますが、近年は女性受験者も増加傾向にあります。

合格率は、男性が約11-12%、女性が約12-13%と、女性の方がやや高い傾向があります。これは、女性受験者の方が計画的に学習を進め、着実に知識を積み上げる傾向があることが一因と考えられます。

職業との関係では、女性受験者は事務職や公務員など、業務で行政手続きに関わる仕事をしている人の割合が高く、実務知識が試験に活きるケースがあります。一方、男性受験者は営業職や技術職など、法律とは直接関係ない仕事から転身を目指す人の割合が高い傾向があります。

女性行政書士の活躍も増えており、特に相続・遺言、離婚関連の書類作成、在留資格申請など、細やかな対応が求められる分野で女性行政書士が高い評価を得ています。

男女の違いよりも、自分に合った学習スタイルを見つけ、継続的に努力することが合格への近道です。

行政書士試験の職業別合格者数

職業別の合格者データを見ると、行政書士試験がどのような職業の人に適しているかが分かります。

最も合格者が多い職業は、会社員(正社員)で、全合格者の約40-45%を占めます。営業職、事務職、技術職など多様な職種から受験しており、キャリアチェンジや独立開業を目指す人が多くいます。

公務員は全合格者の約10-15%を占めます。公務員は行政実務に触れる機会が多いため、行政法の理解が早く、実務経験が試験に活きるケースがあります。また、退職後の独立開業を見据えて受験する人も多くいます。

学生は全合格者の約5-10%です。大学生、特に法学部生が中心で、在学中の合格を目指します。学生は学習時間を確保しやすいというメリットがありますが、実務経験がないため理論的な理解に時間がかかることもあります。

自営業・個人事業主は全合格者の約5-10%です。すでに独立している人が、業務の幅を広げるために行政書士資格を取得するケースです。

無職・主婦(夫)も全合格者の約10-15%を占めます。時間的余裕があるため、集中的に学習できることが強みです。特に主婦層は、子育てが一段落した後のキャリア再構築として行政書士資格を目指す人が増えています。

どの職業からでも合格は可能であり、むしろ重要なのは、自分の生活スタイルに合わせた学習計画を立てることです。働きながら合格する人が大半であることを考えると、行政書士試験は社会人にとって十分に挑戦可能な資格と言えます。

行政書士試験が「簡単」「誰でも受かる」は本当か?

インターネット上では、行政書士試験について「簡単」「誰でも受かる」という情報を目にすることがあります。しかし、これは本当なのでしょうか?ここでは、そのような評価がなされる理由と、実際の難易度について客観的に分析します。

行政書士試験が簡単と言われる理由

行政書士試験が「簡単」と言われることがある理由は、主に以下の3つです。

第一に、他の法律系資格との相対比較です。司法試験や司法書士試験と比較すれば、行政書士試験は確かに難易度が低いと言えます。合格率10-13%という数字は、司法試験の1-2%、司法書士の3-5%と比べれば高い水準です。そのため、上位資格と比較して「簡単」という評価が生まれます。

第二に、一部の高学歴者や法律実務経験者の発言です。法学部出身者や司法試験受験経験者、司法書士保有者などにとっては、行政書士試験は比較的取り組みやすい試験です。こうした人々が「簡単だった」と発信することで、一般的な難易度よりも易しいという印象が広まります。

第三に、受験資格が不要で誰でも受験できることです。学歴・年齢・国籍を問わず受験できるため、「誰でも受けられる=誰でも受かる」という誤解が生まれやすいのです。

しかし、これらはあくまで相対的・主観的な評価であり、法律初学者にとっての実際の難易度を正確に反映しているわけではありません。

行政書士試験の実際の難易度

客観的なデータから見た行政書士試験の実際の難易度は、決して簡単ではなく、適切な準備が必要な難関資格です。

合格率10-13%という数字は、10人に1人程度しか合格できないことを意味します。これは決して簡単な試験とは言えません。国家資格の中では中程度の難易度であり、宅建士(合格率15-17%)よりは難しく、司法書士(合格率3-5%)よりは易しいというポジションです。

必要な勉強時間600-1,000時間は、1日2-3時間の学習を約1年間継続する必要があることを意味します。働きながらこれだけの学習時間を確保し、継続することは決して容易ではありません。

基準点制度や記述式問題など、合格を難しくする要素が複数あります。総得点で180点に達しても、科目別基準点をクリアできずに不合格となるケースもあります。また、記述式問題60点分は、単なる知識の暗記では対応できず、法律的思考力と文章力が求められます。

実際の不合格者の声を聞くと、「思ったより難しかった」「準備不足で後悔した」という声が圧倒的に多いのが実情です。「簡単」という情報を鵜呑みにして準備不足で受験し、不合格となる人が毎年一定数います。

したがって、行政書士試験を甘く見ることは禁物です。適切な学習計画を立て、十分な準備をして臨むことが合格への近道です。

記念受験者が多く合格率を押し下げている

行政書士試験の合格率10-13%という数字には、重要なカラクリがあります。それは、記念受験者や準備不足の受験者が多く含まれていることです。

記念受験者の割合は、全受験者の30-40%程度と推定されています。これらは、ほとんど準備をせずに試験会場に来る人、試験途中で退席する人、全科目を受験しない人などです。行政書士試験は受験資格が不要で誰でも受験できるため、このような記念受験者が多く含まれます。

真剣に準備した受験者の実質合格率を計算すると、15-20%程度に上昇すると考えられます。つまり、しっかりと準備した人に限定すれば、5-6人に1人は合格できる計算です。これは、適切な準備をすれば十分に合格可能な試験であることを示しています。

記念受験が多い理由は複数あります。第一に、受験料が低額(10,400円)であることです。他の法律系資格と比較して安価なため、気軽に受験する人が増えます。第二に、受験資格が不要であることです。学歴や実務経験を問わず受験できるため、「とりあえず受けてみよう」という人が多くなります。第三に、会社命令での受験や、単なる腕試しで受験する人が一定数います。

受験者へのメッセージとしては、合格率10%という数字に臆する必要はないということです。適切な準備をして臨めば、実質的な競争相手は半分程度になります。むしろ、絶対評価方式のため、他の受験者の出来とは関係なく、自分が基準点をクリアすれば合格できるのです。

行政書士試験の難易度を下げる合格戦略

行政書士試験の難易度は客観的には高いですが、適切な戦略を立てることで、合格の可能性を大幅に高めることができます。ここでは、効率的に合格を目指すための具体的な戦略を解説します。

行政書士試験は絶対評価だから対策しやすい

行政書士試験の大きな特徴は、絶対評価方式を採用していることです。これは合格戦略を立てる上で非常に重要なポイントです。

絶対評価の意味は、合格基準点(180点以上、法令科目122点以上、一般知識科目24点以上)をクリアすれば、何人でも合格できるということです。これは相対評価(定員制)を採用している司法試験や司法書士試験とは大きく異なります。

メリットは、他の受験者との競争を気にする必要がないことです。自分が基準点をクリアする力を身につければよいのであって、他人より高得点を取る必要はありません。これにより、自分のペースで着実に実力をつけることに集中できます。

具体的な目標設定として、180点ちょうどを目指すのではなく、余裕を持って200点程度を目標にすることが推奨されます。各科目の目標点数の例としては、民法60点、行政法90点、憲法20点、商法・会社法12点、一般知識30点といった配分が考えられます。

絶対評価を活かした戦略は、確実に得点できる分野を増やすことです。難問・奇問は捨てても構いません。過去問でよく出る基本問題を確実に取れるようにすることが、最も効率的な合格戦略です。

行政書士試験の戦略①民法・行政法に集中する

配点分析から分かる通り、民法と行政法で全体の約60%を占めます。具体的には、民法が76点、行政法が112点で、合計188点です。この2科目だけで300点満点中188点を占めるため、民法と行政法を制することが合格への最短ルートです。

具体的な戦略は、学習時間の50-60%を民法と行政法に充てることです。特に行政法は配点が高く、比較的学習しやすい科目なので、高得点を狙うべきです。民法は難易度が高いですが、配点が高いため、基本的な問題は確実に取れるよう繰り返し学習します。

他科目とのバランスも重要です。民法・行政法に集中すると言っても、憲法や一般知識科目を無視することはできません。基準点制度があるため、すべての科目で最低限の得点は必要です。推奨される学習時間配分は、民法30%、行政法25%、憲法15%、商法・会社法10%、一般知識15%、過去問演習25%程度です。

記述式対策も重要です。記述式問題は民法20点、行政法40点の合計60点で、全体の20%を占めます。択一式問題で高得点を取っても、記述式で得点できなければ合格は難しくなります。早い段階から記述式問題の過去問に取り組み、簡潔で正確な文章を書く訓練を積むことが重要です。

行政書士試験の戦略②基礎知識科目の足切り回避

一般知識科目(基礎知識科目)は、24点以上の基準点をクリアすることが最優先です。満点を狙う必要はなく、確実に足切りを回避することに重点を置きます。

効率的な対策法は、情報通信と個人情報保護分野に集中することです。これらの分野は比較的対策しやすく、過去問演習で出題パターンを掴めば確実に得点できます。この分野だけで4-5問程度出題されるため、ここで3-4問正解することを目指します。

文章理解問題も比較的得点しやすい分野です。3問出題されるうち、2問以上は正解したいところです。文章理解は国語力が試されますが、過去問演習で解法パターンに慣れることで得点力を上げられます。

政治・経済・社会分野は対策が難しいですが、完全に無視することはできません。日頃からニュースや新聞に目を通し、時事問題に関心を持つことが基本です。また、過去問を解くことで、どのレベルの知識が求められるかを把握します。

足切り回避の目安は、14問中7-8問正解(28-32点)を目標とすることです。6問ギリギリを狙うのはリスクが高いため、余裕を持った目標設定が重要です。

行政書士試験の戦略③過去問演習の徹底

過去問演習は、行政書士試験対策の中で最も重要な学習方法です。

過去問演習の重要性は、出題傾向と難易度を把握できることです。行政書士試験は過去問と類似した問題が繰り返し出題される傾向があり、過去問をマスターすることが合格への近道です。また、試験形式に慣れることで、本番での時間配分や解答順序を最適化できます。

効果的な過去問演習法は、早い段階から始めることです。テキストを一通り読み終えてから過去問に取り組むのではなく、各科目の基礎を学んだ段階で、その科目の過去問を解き始めます。最初は解けなくても構いません。問題形式を知り、自分の弱点を把握することが目的です。

繰り返しの重要性も強調します。過去問は最低でも3回、できれば5回以上繰り返すことが推奨されます。1回目は理解、2回目は定着、3回目以降は確認という位置づけです。特に間違えた問題は、なぜ間違えたのかを分析し、同じミスを繰り返さないよう注意します。

過去何年分解くべきかについては、最低でも過去5年分、できれば10年分を解くことが推奨されます。ただし、法改正により古い問題が使えなくなる場合もあるため、最新の過去問集を使用することが重要です。

詳しい過去問の活用方法は、行政書士過去問の使い方ガイドで解説しています。

行政書士試験の戦略④通信講座の活用

独学で合格することも可能ですが、通信講座を活用することで、学習効率を大幅に向上させることができます。

通信講座のメリットは複数あります。第一に、体系的なカリキュラムにより、何をいつ学習すればよいかが明確になります。独学では学習計画の立案に時間がかかりますが、通信講座では最適な学習順序が設定されています。第二に、分かりやすい講義により、理解が早まります。特に法律初学者は、テキストを読むだけでは理解が難しい内容も、講師の説明を聞くことでスムーズに理解できます。第三に、質問サポートにより、疑問点をすぐに解消できます。独学では分からない箇所で立ち止まってしまうことがありますが、通信講座では質問できる環境があります。第四に、記述式添削により、記述力を効率的に向上できます。

おすすめの通信講座としては、アガルート、フォーサイト、伊藤塾、LEC、TACなどが有名です。それぞれ特徴があり、合格実績、講師の質、サポート体制、価格などを比較して、自分に合ったものを選ぶことが重要です。

費用対効果を考えると、通信講座の受講料は5万円から20万円程度ですが、学習時間の短縮や合格可能性の向上を考えれば、十分に価値のある投資と言えます。独学で不合格になり、翌年再挑戦することになれば、その分の時間と受験料が無駄になります。

おすすめの通信講座については、行政書士通信講座おすすめ7選で詳しく比較しています。

行政書士試験に合格すると「すごい」と言われる理由

行政書士試験に合格すると、周囲から「すごいね」と評価されることが多くあります。これは単なるお世辞ではなく、行政書士資格が持つ価値を反映した評価です。ここでは、なぜ行政書士合格が高く評価されるのか、その理由を解説します。

合格率10%の難関資格だから

行政書士試験の合格率は10-13%程度で、10人に1人程度しか合格できません。これは決して低いハードルではありません。

国家資格の中での位置づけを見ると、行政書士は中程度の難易度です。簿記2級(合格率15-25%)や宅建士(合格率15-17%)より難しく、司法書士(合格率3-5%)や税理士より易しいというポジションです。つまり、「誰でも取れる簡単な資格」ではなく、「しっかり準備した人だけが取れる資格」という評価が適切です。

600-1,000時間の学習時間が必要とされることも、難易度の高さを示しています。1日2-3時間の学習を約1年間継続する必要があり、働きながらこれを実現することは容易ではありません。途中で挫折する人も多く、最後まで諦めずに学習を継続できたこと自体が評価に値します。

試験内容の専門性も評価される理由です。民法、行政法、憲法という法律の専門知識を体系的に身につけたことは、社会的に高く評価されます。法律知識は日常生活や仕事のあらゆる場面で活用でき、知的資産として一生役立ちます。

したがって、行政書士試験に合格したことは、十分に「すごい」と評価される成果です。自信を持って良いでしょう。

法律系国家資格の入門資格だから

行政書士は、法律系国家資格の入門資格として位置付けられています。これは決してネガティブな意味ではなく、むしろポジティブな評価です。

法律キャリアの出発点として、行政書士は最適な資格です。いきなり司法試験や司法書士試験に挑戦するのはハードルが高すぎますが、行政書士であれば、法律初学者でも1年程度の学習で合格可能です。行政書士資格を取得することで、法律の基礎知識と学習方法を身につけ、その後に司法書士や税理士などの上位資格を目指すステップアップ戦略が可能になります。

ダブルライセンスの基礎としても行政書士は有効です。行政書士を取得した後に、社労士、宅建士、FPなどの資格を追加取得することで、業務の幅を大きく広げることができます。特に行政書士と社労士、行政書士と宅建士といった組み合わせは相性が良く、相乗効果を生みます。

法律的思考力の証明にもなります。行政書士試験に合格したということは、法律を理解し、具体的な事例に法律を適用できる思考力を持っていることの証明です。これは法律業界だけでなく、一般企業においても高く評価されるスキルです。

行政書士資格について詳しくは、行政書士資格の価値で解説しています。

独立開業できる資格だから

行政書士は、独立開業が可能な数少ない国家資格の一つです。この点が「すごい」と評価される大きな理由です。

独立開業のハードルが比較的低いことが特徴です。行政書士として開業するには、行政書士会への登録(約30万円)と事務所の設置が必要ですが、弁護士や税理士と比較すれば、初期投資は少なく済みます。自宅開業も可能なため、まずは副業から始めて、軌道に乗ったら本業にするという段階的な独立も可能です。

年収1000万円以上も可能という点も魅力です。行政書士の平均年収は551万円程度ですが、これは開業したばかりの人や副業で行っている人も含めた平均です。専門分野を確立し、顧客を獲得できれば、年収1000万円以上を稼ぐことも十分に可能です。特に、建設業許可、相続・遺言、在留資格申請などの専門分野で実績を積めば、高収入を得られる可能性があります。

定年がない仕事という点も重要です。行政書士は年齢に関係なく活躍できる仕事で、70代・80代で現役の行政書士も珍しくありません。サラリーマンのように定年退職がないため、生涯現役で働き続けることができます。

自分の裁量で働ける自由さも魅力です。どの分野を専門とするか、どのような顧客をターゲットとするか、どれだけ働くかを自分で決められます。ワークライフバランスを重視した働き方も、収入を最大化する働き方も、自分次第です。

このように、行政書士は「独立開業して自分のビジネスを持てる資格」という点で、一般的な資格とは一線を画しています。合格したことが「すごい」と評価されるのは、将来の独立開業の可能性を手に入れたからです。

行政書士の開業について詳しくは、行政書士開業の完全ガイドをご覧ください。

行政書士試験の難易度に関するよくある質問(FAQ)

行政書士試験の難易度について、受験を検討している方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。これらのFAQを読むことで、行政書士試験に対する疑問や不安を解消できるでしょう。

行政書士試験は独学で合格できますか?

はい、行政書士試験は独学でも十分に合格可能です。実際、合格者の約30-40%は独学で合格しています。

独学のメリットは、費用を抑えられることと、自分のペースで学習できることです。市販のテキストと過去問集を購入すれば、1-3万円程度で学習を始められます。また、通学や講義視聴の時間が不要なため、自分の生活リズムに合わせた学習が可能です。

ただし、独学には注意点もあります。第一に、学習計画を自分で立てる必要があり、何をいつ学習すればよいか迷うことがあります。第二に、理解できない箇所があっても質問できないため、理解に時間がかかる場合があります。第三に、記述式問題の添削を受けられないため、記述力の向上が難しい面があります。

独学で合格するためのポイントは、良質なテキストを選ぶこと、過去問演習を徹底すること、学習計画を明確にすることです。特に過去問演習は独学の要であり、過去5-10年分を最低3回以上繰り返すことが推奨されます。

独学での合格方法について詳しくは、行政書士独学で合格する方法で解説しています。

行政書士試験の合格に何年かかりますか?

行政書士試験の合格までにかかる年数は、平均で1-2年程度です。ただし、これは学習時間の確保状況や法律の学習経験によって大きく異なります。

1年で合格する人は、全合格者の約40-50%です。これらの人は、1日2-3時間以上の学習時間を確保し、計画的に学習を進めた人が多いです。特に、法学部出身者や他の法律系資格保有者は、1年での合格率が高い傾向があります。

2年で合格する人は、全合格者の約30-40%です。1年目は仕事や家庭との両立で十分な学習時間が確保できず、2年目で本格的に取り組んで合格するパターンです。また、1年目の受験で惜しくも不合格となり、2年目でリベンジして合格するケースも多くあります。

3年以上かかる人も約10-20%います。これは、学習時間の確保が難しい環境にある人や、途中で学習を中断した人が多いです。ただし、3年以上かかっても最終的に合格すれば、その価値は変わりません。

合格までの期間を短縮するポイントは、早い段階から通信講座を利用すること、毎日の学習習慣を確立すること、過去問演習に十分な時間を充てることです。

行政書士試験で一番難しい科目は何ですか?

行政書士試験で最も難しい科目は、受験者の多くが商法・会社法を挙げます。ただし、配点が20点と少ないため、影響度は限定的です。

商法・会社法が難しい理由は、学習範囲が膨大であること、専門用語が多く理解が難しいこと、日常生活との関連が薄くイメージしにくいことです。特に株式会社の機関設計や組織再編、手形・小切手法などは、法律初学者には非常に難解です。

実質的に最も苦戦する科目は、配点の高さから民法です。民法は76点と配点が高い上に、学習範囲が広く、理解に時間がかかります。総則・物権・債権・親族・相続の5編すべてが出題範囲で、条文と判例を体系的に理解する必要があります。また、記述式問題も民法から1問出題されるため、深い理解が求められます。

効果的な対策は、商法・会社法は頻出分野に絞って学習し、民法には十分な時間を充てることです。民法は早い段階から学習を始め、繰り返し復習することで、徐々に理解を深めることが重要です。

行政書士試験は年々難しくなっていますか?

行政書士試験は、やや難化傾向にありますが、劇的な変化はありません

過去15年間の合格率を見ると、9.95%から15.72%の間で変動しており、平均すると12%前後で安定しています。極端な難化や易化は見られず、試験実施機関が難易度を一定範囲に保つよう調整していることが分かります。

難化している側面としては、問題の質が高度化していることが挙げられます。単純な条文知識を問う問題が減少し、複数の条文や判例を組み合わせて考える必要がある応用問題が増加しています。また、時事問題や最新の法改正に関する問題が出題されることも増えています。

一方で易化している側面もあります。通信講座の充実や過去問データベースの整備により、受験者の学習環境は大幅に改善されています。また、法改正により条文が分かりやすくなった分野もあり、学習しやすくなった面もあります。

今後の見通しとしては、現状の難易度が維持される可能性が高いと考えられます。合格率10-13%程度、必要な勉強時間600-1,000時間程度という水準が当面続くでしょう。

行政書士試験の偏差値はどれくらいですか?

行政書士試験の偏差値は、一般的に60-64程度とされています。これは大学受験で言えば、MARCHレベル(明治・青山学院・立教・中央・法政)に相当します。

ただし、偏差値による比較には注意が必要です。大学受験は相対評価(定員制)ですが、行政書士試験は絶対評価(基準点方式)です。そのため、単純に偏差値で難易度を比較することには限界があります。

他の法律系資格との偏差値比較では、以下のようになります:

  • 宅建士:偏差値55-57
  • 行政書士:偏差値60-64
  • 社労士:偏差値62-65
  • 税理士:偏差値65-70
  • 司法書士:偏差値70-75
  • 弁護士(司法試験):偏差値75以上

この偏差値は、あくまで目安として捉え、自分自身の法律適性や学習環境に合わせた計画を立てることが重要です。偏差値60-64という数字は、標準的な学習能力を持つ人が、継続的に努力すれば到達可能なレベルを示しています。

行政書士試験と宅建はどちらが難しいですか?

行政書士試験の方が明確に難しいと言えます。

合格率の比較では、宅建士が15-17%程度、行政書士が10-13%程度で、行政書士の方が低い水準です。必要な勉強時間も、宅建士が300-500時間程度なのに対し、行政書士は600-1,000時間程度と約2倍です。

試験範囲の比較では、宅建士は不動産取引に特化した内容ですが、行政書士は民法・行政法・憲法・商法・会社法・基礎知識と幅広い範囲から出題されます。問題の難易度も、行政書士の方が高度な法律的思考力を要求されます。

受験者層も異なり、宅建士は不動産業界で働く人が多く受験するのに対し、行政書士は法律初学者から法律実務経験者まで多様です。このため、単純に合格率だけでは比較できない面もありますが、総合的には行政書士の方が難易度が高いと言えます。

ダブルライセンス戦略として、まず宅建士を取得して法律の基礎を学び、その後に行政書士を目指すという方法も有効です。宅建士で学ぶ民法の知識は、行政書士試験でも活用できます。

宅建士との詳しい比較は、行政書士と宅建の違いをご覧ください。

まとめ|行政書士の難易度は高いが合格可能な資格

本記事では、行政書士試験の難易度について、偏差値・合格率・勉強時間という3つの客観的指標から徹底的に分析しました。最後に、重要なポイントを3つの観点から総括します。

行政書士試験は「中の下」レベルの難関資格:偏差値60-64、合格率10-13%、必要な勉強時間600-1,000時間というデータが示す通り、行政書士試験は決して簡単ではありません。法律系資格の中では比較的取得しやすい部類に入りますが、適切な準備なしには合格できない難関資格です。ただし、絶対評価方式を採用しているため、基準点をクリアすれば確実に合格できる試験でもあります。司法書士や税理士と比較すれば明らかに易しく、法律初学者が最初に目指す資格として最適です。

民法と行政法が合格の鍵を握る:試験全体の約60%を民法と行政法が占めており、この2科目を制することが合格への最短ルートです。特に行政法は配点が高く(112点)、比較的学習しやすい科目なので、高得点を狙うべきです。民法は難易度が高いですが、配点が高いため(76点)、基本的な問題は確実に取れるよう繰り返し学習することが重要です。一方で、商法・会社法は配点が少ないため深入りせず、一般知識科目は足切り回避を最優先にするという戦略的な学習が効果的です。

適切な対策をすれば十分に合格可能:合格率10%という数字は一見厳しく見えますが、記念受験者や準備不足の受験者を除けば、実質的な合格率は15-20%程度に上昇します。つまり、しっかりと準備した受験者に限定すれば、5-6人に1人は合格できる計算です。過去問演習を徹底し、民法・行政法に重点を置き、基礎知識科目の足切りを回避する戦略を取れば、法律初学者でも1年程度の学習で合格圏内に到達できます。通信講座を活用すれば、さらに効率的な学習が可能です。

次のアクションステップ

行政書士試験に挑戦すると決めたら、まず行政書士の勉強時間計画を立てることから始めましょう。独学か通信講座かを決め、最適な学習方法を選択してください。通信講座を検討する場合は、行政書士のおすすめ通信講座で各講座を比較できます。

行政書士試験は、適切な準備をすれば必ず合格できる試験です。難易度の高さに臆することなく、戦略的に学習を進めれば、あなたも合格を手にすることができます。行政書士資格を取得して、新しいキャリアの扉を開きましょう。

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